あなたが払う顧問料は、税理士の「腕」ではなく、あなたの会社の「売上」で決まっている。

前回の記事で、税理士は「明確な問いに応えて力を発揮するデータベース」だとお伝えしました。こちらから具体的なゴールを投げかければ、優れた税理士はその力を発揮してくれる、と。ところが、です。明確なゴールを、必要な情報を開示したうえで相談しているのに、それでも「へえ、そうなんですね」で終わってしまう。手応えのある答えが、どうしても返ってこない。もしあなたがそういう状況にいるなら、それは問いの立て方の問題ではないかもしれません。相手の立っている「層」の問題である可能性が高いのです。ここで、多くの経営者が無意識に信じている常識があります。「良い税理士ほど、顧問料は高い」。価格と品質は比例する、という、ごく当たり前の感覚です。ところが税理士の世界では、この常識が、静かに、しかし確実に裏切られています。あなたが払っている顧問料は、その税理士の実力ではなく、別のあるもので決まっているのです。税理士紹介サービス「税理士コンシェルジュ」を運営し、1,600名を超える税理士と直接面談してきました。その経験から断言できることがあります。ひとくちに「税理士」と言っても、その実力と役割には、はっきりとした段階の違いがある。そして、その段階と料金が、しばしば噛み合っていない。
この記事を読み終えるころには、自分の税理士が今どの層にいて、その料金が見合っているのかどうか、その地図が手に入ります。
税理士には「5つの段階」がある。探し物を明確にする地図

私が税理士を探している経営者に、いつも最初に言うことがあります。「探し物を、明確にしてください」。税理士に限らず、探し物というのは、何を探しているかが明確でなければ見つかりません。当たり前のようですが、税理士探しに失敗している方の話を聞くと、そもそも「どんな税理士を探しているのか」が、ご自身の中で明確になっていないケースが本当に多いのです。
なぜ「レベル分け」が必要なのか
それも無理はありません。なぜなら、ほとんどの経営者は「世の中にどんな税理士がいるのか」「その税理士をどう探すのか」を、これまで誰からも教わってこなかったからです。
学校でも、商工会でも、税理士の選び方を体系的に教えてくれる場所はありません。情報がどこにもなかったのです。
そこで、まずは「世の中にどんな税理士がいるのか」を、地図として描いてみます。私は、税理士をレベル1からレベル5までの5段階に分けて捉えています。あなたの会社の状況によって、どの段階の税理士がふさわしいのかが変わります。
先に全体像をお伝えすると、レベル1とレベル2は、状況によっては変更を考えたほうがよい層。レベル3とレベル4は、出会えたら付き合い続けるとよい層。そしてレベル5は、税理士の中でも特に貴重な層です。
ただし、注意してほしいことがあります。「レベルが高いほど無条件に良い」わけではない、という点です。
レベル5は確かに別格ですが、報酬が高額になりがちで、しかも税理士の側が顧客を選ぶことも多い。会社の規模や状況によっては、そもそも必要ないことも多いのです。
大切なのは「一番上」を目指すことではなく、「今の自社に合った層」を知ることです。では、それぞれの層を詳しく見ていきましょう。
税理士の5段階ピラミッド【完全定義】

レベル1。基本的な処理が雑で、ミスが多い
最も土台にあたるレベル1は、率直に言って、基本的な税務処理が雑で、ミスが多い層です。
このレベルの税理士にあたってしまうと、年商1,000〜2,000万円規模であっても、決算書にミスがあったり、いざ借り入れをしたいときに「融資が通りにくい決算書」になってしまっていたりすることがあります。
報酬は安い、あるいは安すぎることもよくあります。年齢の若い激安事務所もあれば、昔ながらの、どこか否定的で上から目線の事務所もある。
「こんなことをやりたい」と相談しても、「だめ」「やめたほうがいい」「勝手にどうぞ」と、無関心な反応が返ってくることが多いのが特徴です。
このレベルに依頼している経営者は、まだ会社の規模が小さいことが多く、規模が小さいと税務署もいちいち来ないため、「まあ、これで問題ないか」となってしまっているケースもあります。
レベル2。資格に忠実だが、経営には無関心
レベル2は、税理士の資格に忠実な人が多い層です。「税金の計算をするのが仕事」「税務署への申告を期日までにすればよい」という考え方を、まじめに持っている人たちです。
税理士としての仕事はきちんとしますが、経営そのものには無関心で、アドバイスや相談には前向きに応じてくれないことが多い。当然、節税などの提案も少なくなります。ときに結論は出してくれても、その根拠の説明はほとんどない。
レベル1と違ってミスは少ないのですが、ここに大きな落とし穴があります。実は費用は、必ずしも安くないのです。この点は、後ほど「顧問料パラドックス」で詳しく触れます。
この層と付き合っている経営者からは、「なんだか不満があるんだよね」「こちらから聞かないと何も教えてくれない」という、漠然とした不満の声をよく聞きます。
それでいて、長い付き合いの事務所も多く、不満はあっても変更に踏み切れない、という方が多いのも事実です。律儀であること自体は、決して悪いことではありません。
具体的な場面で言えば、こういうことです。あなたが「来期、思い切って設備投資をしたいのですが、資金繰りは大丈夫でしょうか」と相談したとします。
レベル2の税理士からは、「まあ、決算書を見る限り、すぐにどうということはないと思いますよ」という、当たり障りのない返事が返ってくる。間違ったことは言っていない。でも、投資の是非も、資金調達の選択肢も、リスクの所在も、何も示してくれない。
相談したのに、判断材料が一つも増えない。この「手応えのなさ」こそが、レベル2と付き合う経営者が抱える不満の正体です。
レベル3。士業から「サービス業」へ(ここが最低ライン)
レベル3になると、景色が大きく変わります。この層は、レベル2と同じく税理士として間違いのない仕事をしたうえで、それに加えて「士業」ではなく「サービス業」として、対等な目線で相談に乗ってくれます。
レベル2とレベル3の違いは、非常に大きい。経営者の悩みを親身に聞いてくれ、レスポンスも早い。料金としても、提供される価値に対して適正な金額です。
ここで強調しておきたいのは、未来の設計を税理士に求めるなら、レベル3が最低ラインだということです。前回の記事でお伝えした「時代が変わり、税理士に求められる役割が変わった」という話を覚えているでしょうか。
経営者が今求めている「未来を一緒に考えてくれる」役割は、レベル3から上で初めて手に入るのです。逆に言えば、レベル1・2に未来の設計を期待しても、それは相手の層の外にある要求になってしまいます。
先ほどの「設備投資の相談」を、レベル3の税理士にしたらどうなるか。今度はこう返ってきます。
「その投資、回収にどれくらいを見込んでいますか。手元資金を一気に減らすより、今のうちに融資の枠を作っておく手もありますよ。その場合、決算書のここを整えておきましょう」。
同じ相談でも、判断材料が一気に増える。これがレベル2とレベル3の、決定的な差です。
レベル4。人脈で解決する「会社のホームドクター」
レベル4は、ミスなく計算し、話も聞いてくれる、サービス業としての仕事をしたうえで、さらに一歩進みます。レベル3が「受け身で話を聞いてくれる」のに対し、レベル4の税理士は、自分のブレーンや人脈を使って、経営者の悩みを能動的に解決しようと努めてくれます。
たとえば、借り入れをしたいときには馴染みの金融機関を紹介してくれたり、一緒に出向いて説明してくれたりする。助成金に強い専門家を紹介してくれることもある。自分一人では解決できないことも、人脈を使って解決へ導こうとしてくれるのです。
イメージとしては、会社の「ホームドクター」です。症状に対して適切な処方をするだけでなく、必要なら紹介状を書いて専門医につないでくれる。そういう存在です。報酬は、やはり少し高くなります。
前回の記事で「人間の税理士に残る価値」として挙げた信用(人脈というAIに貸せないもの)を、まさに体現しているのが、このレベル4だと言えます。
レベル5。PDCAと人事評価まで連動させる、希少な存在
最上位のレベル5は、もはやコンサルティングの領域にまで踏み込みます。ただし、すべての会社に必要なわけではありません。一事業部だけの会社なら、あまり必要ないでしょう。事業部や事業所が増えて業務が多岐にわたってきたときや、上場を考えるときに最適な層です。
この層の税理士は、自身の事務所でも人材を育てて組織を大きくしてきた経験を持ち、会社が立てた事業計画と、現場スタッフの行動を連動させるところまで手伝ってくれます。PDCAサイクルを、現場の実行レベルで回してくれるのです。
先月の計画を達成できた事業部とできなかった事業部をつぶさに見て、「管理の問題か、現場の問題か、それとも計画自体の問題か」まで掘り下げる。事業計画に即した行動計画の見直し、さらには行動計画と人事評価・給与の連動まで設計する。回せば回すほど、組織全体の達成力が高まり、利益体質の会社へ変わっていきます。
通常のコンサルティングと違うのは、「こうしなさい」と指示するのではなく、「どこに原因があるか」を指摘してくれる点です。なお、レベル5に依頼する際は、社内でリアルタイムに数字を把握する体制が大前提になり、しかも税理士の側が顧客を選ぶため、断られることもあります。
あなたの会社は今、どの層を必要としているか

では、誰もがレベル5を目指すべきなのか
いいえ、そうではありません。ここが最も誤解されやすい点です。レベル5は確かに別格ですが、報酬は高額で、しかも自計化が前提、税理士側も顧客を選びます。一事業部の会社には、その能力を活かしきる場面がそもそもありません。オーバースペックな契約は、ただのコスト過剰です。
多くの成長を志す中小企業にとっての現実的な目的地は、レベル3、あるいはレベル4です。士業ではなくサービス業として親身に相談に乗ってくれる(レベル3)、さらに人脈で解決まで導いてくれる(レベル4)。
この層の税理士と出会えるかどうかが、会社の財務を大きく左右します。重要なのは「一番上」ではなく「自社のフェーズに合った層」を見極めることなのです。
顧問料パラドックス。「払った額」と「受け取る価値」は逆転する

年商5,000万円の会社における、レベル別・月額料金イメージ
年商5,000万円規模の会社が支払う、月額顧問料のおおよそのイメージは、次のようになります。多くの事例を見てきた中での、実感に近い相場感です。
- レベル1:1万5千円〜2万円ほど。
- レベル2:4万円〜5万円ほど。
- レベル3:2万円ほど。
- レベル4:4万円ほど。
- レベル5:最低でも10万円ほど。
この並びを、よく見てください。おかしな点に気づくはずです。レベル2(4万〜5万円)は、レベル4(4万円)と、ほぼ同じ料金を取っているのです。
レベル4は、人脈を使って融資を助け、専門家を紹介し、能動的に問題を解決してくれる「会社のホームドクター」でした。一方のレベル2は、資格に忠実なだけで、経営には無関心、こちらから聞かないと何も教えてくれない層です。提供される価値はまったく違うのに、支払う金額はほぼ同じ。
さらに言えば、親身に相談に乗ってくれるレベル3(2万円)のほうが、無関心なレベル2(4万〜5万円)よりも安いことすらある。これが「顧問料パラドックス」の正体です。価格は、必ずしも実力を映していないのです。
なぜレベル2は「割高」になるのか
なぜ、こんなことが起きるのか。レベル2の税理士は、決してぼったくっているわけではありません。彼らは「税金の計算をし、期日までに申告する」という、資格に忠実な仕事をきちんとしている。その対価として、相応の金額を請求しているだけです。
問題は、その金額が「未来の設計」という付加価値を含んでいないにもかかわらず、結果としてレベル4並みになってしまっている、という構造にあります。
ここでも、敵は税理士個人ではありません。「顧問料の金額を見ても、その税理士がどの層なのか分からない」という、情報の不透明さこそが問題なのです。料金表からは、レベルが読み取れない。だからこそ、金額ではなく「層」で見る目が必要になります。
なお、顧問料は安ければいいわけでもありません。最も安いレベル1は、ミスが多く、融資に通らない決算書を作ってしまうことすらある層です。適正な顧問料とは「金額の絶対値」ではなく、「払った額に対して、どれだけの価値が返ってくるか」で判断すべきものです。
多くの経営者がハマる「負のループ」
この顧問料パラドックスを知らないと、経営者は高い確率で、ある「負のループ」にはまります。これは、現場で何度も見てきた、典型的な失敗のパターンです。
まず、レベル2の税理士と付き合っている経営者が、「費用を払っているのに、何もしてくれない」と感じ始めます。当然の感覚です。月4万〜5万円を払って、相談にも乗ってもらえないのですから。
すると、その経営者はこう考えます。「同じ何もしてくれないなら、せめて安いほうがいい」。そして、より安いレベル1の税理士へと乗り換えてしまうのです。
ところが、レベル1はミスが多い層です。乗り換えた結果、「何もしてくれない」どころか「ミスまで増えた」という状態になる。そして経営者は、ついにこう結論づけてしまいます。「税理士なんて、ろくな人がいない」と。
この思い込みにとらわれると、レベル1とレベル2のあいだを、何度も行ったり来たりすることになります。このループの恐ろしさは、本当に必要だったレベル3・4の存在に、最後まで気づけないことです。
「税理士なんてどこも同じ」という諦めが、出会うべき相手との縁を、自ら断ってしまう。料金の安さという分かりやすい基準に逃げた結果、価値という本質を見失ってしまうのです。
このループから抜け出す唯一の方法は、「金額」ではなく「層」で見ること。そして、レベル3以上が確かに存在することを知ることです。
では、レベル3以上を、どう見つけるか

ここまで読んで、「では、レベル3以上の税理士を、どうやって見つければいいのか」と思われたはずです。正直にお伝えすると、これは簡単ではありません。なぜなら、1,600名を超える税理士と面談してきた実感として、レベル3・4に相当する層はそう多くなく、レベル5はさらに希少だからです。裏を返せば、レベル1・2に相当する層のほうが多い。普通に探せば、変更を検討すべき層にあたってしまう確率のほうが高い、という現実があります。この「どう見つけるか」には、2つの側面があります。ひとつは、探し方そのものの問題です。大手に頼むのか、銀行の紹介を受けるのか、知人の紹介か。いずれにも、見えにくい落とし穴があります。この点は、探し方の構造を扱う別の記事に譲ります。もうひとつは、目の前の税理士が「本物(レベル3以上)」かどうかを、どう見抜くかという問題です。実は、相手のレベルを見極めるための、具体的な「質問」があります。
専門知識がなくても、いくつかの問いを投げかけるだけで、相手がどの層にいるのかが見えてくる。この見極めの方法は、選び方の核心を扱う記事で、詳しくお伝えします。
地図を手にした、次に確かめること

税理士には5つの段階があり、未来の設計を求めるなら最低でもレベル3が必要です。レベル1・2は変更を検討してよい層、レベル3・4は付き合い続けたい層、レベル5は希少な別格の層。ただし重要なのは「一番上」ではなく「自社のフェーズに合った層」を選ぶことです。そして、顧問料の金額は、必ずしも実力を映しません。レベル2がレベル4並みの料金を取る「顧問料パラドックス」が現実に存在し、これを知らない経営者は「より安く」を求めて負のループにはまります。抜け出す鍵は、金額ではなく「層」で見ることです。では、レベル3以上の税理士は、具体的に何を見て、どう動いてくれる人なのか。その違いは、たとえば「リスクへの向き合い方」に、はっきりと表れます。あなたの会社が出したいスピードを正しく把握し、踏んでいい範囲の上限まで示してくれるかどうか。次に読む あなたの税理士は時速何キロでは、節税という身近なテーマを入り口に、本物の税理士が「リスクとスピード」をどう扱うのかを見ていきます。
「本物を見抜く具体的な質問」を知りたい方は 4つの出口と3つの質問へ。
金額ではなく「層」で見極める。その物差しを、誠実さ・専門知識・教育体制という具体的な基準に落とし込みたい方は、税理士を選ぶ基準で整理しています。
もし「自分の税理士が今どの層にいるのか、客観的に整理してみたい」と感じたなら、税理士コンシェルジュに相談するという選択肢もあります。
20年・27,000件超の実績と、1,600名との面談で積み上げた視点から、ご自身の状況の整理をお手伝いできます。まずはこの地図を、ご自身の状況を見つめ直すきっかけにしていただければ幸いです。
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税理士コンシェルジュコラム
税理士コンシェルジュ事務局からのコメント
顧問料の金額だけでは、税理士がどの層にあたるのかを判断しにくいものです。本記事の5段階の整理を、現在のご契約内容を見直す際の目安としてご活用ください。