会計ソフトを選ぶ場面で迷いが生まれるのは、機能の一覧を眺めても自社に要る範囲が決まらないからです。年商の規模と記帳を担う人数が変われば、求める水準もそのまま入れ替わります。
費用と運用を同じ土俵へ載せる比較の軸を先に決めておくと、クラウド型とインストール型のどちらが自社に向くかは落ち着いて絞り込めます。判断に使う材料を順に整理します。

会計ソフトの選び方は自社の記帳を誰が担うかで最初の分かれ目が決まる

製品の一覧を先に開くと、機能の多さに目が向いて自社に要る範囲が決まりません。最初に決めておくのは、日々の記帳を社内で回すのか外部へ預けるのかという一点です。ここが変われば、そのあとの要件も大きく変わります。
社内で回す前提なら、入力する人が毎日触る画面の分かりやすさが重要になります。外部へ預ける前提なら、税理士との資料の受け渡しと閲覧の経路が先に来ます。同じ製品でも、この前提が違えば評価はひっくり返ります。
会計ソフトの機能表は、この一点を決めてから読むと半分ほどが自社に関係のない欄だと分かります。読む欄が減れば、残った欄の差だけを落ち着いて見比べられます。要件の順位づけは、ここで初めてできます。
経理を担う人数も判断を左右します。一人で回している体制では入力の速さが、二人以上で分担する体制では同じ帳簿へ同時に触れるかどうかが重くなります。人数は年商よりも先に確かめておきたい数字です。
担い手と人数が決まると、比較の表に並べる項目もおのずと決まります。欄が決まらないうちに候補を集めても、集めた情報を同じ条件で比べられません。順番を守るだけで、後戻りはほとんど起きません。
会計ソフトへ求める水準は、拠点の数と在宅の作業が混ざるかどうかでも変わります。拠点が一つで全員が同じ場所にいるなら、端末の置き場所は論点になりません。作業する場所が散らばると、どこからでも同じ帳簿にアクセスできることが要件になります。
ここまでを紙に書き出すと、要件は五つ前後に収まります。絞り込みが終われば候補は二つか三つへ減り、残るのは費用と運用の比べ方だけになります。最初の分かれ目を飛ばしたまま候補を増やすと、比べる軸が最後まで定まりません。
記帳の担い手が数年のうちに変わる見込みがあるなら、どちらの前提でも使える範囲を要件へ一つだけ足しておきます。要件の紙を毎年見直す習慣が、そのまま無駄な支出を抑えます。
クラウド型は利用料を払い続けるかぎり手元の端末を選ばない仕組みである
クラウド型は、帳簿のデータを提供元の設備に置き、手元の端末からは画面越しに触る形をとります。端末が変わっても同じ帳簿へ入れるため、拠点や在宅の作業が混ざる体制と噛み合います。支払いは月ごとか年ごとの利用料です。
使い続けるかぎり支出は続きますが、システムの更新は提供元側で行われます。手元で入れ替えの作業を抱えないため、担当者が一人の体制でも運用しやすくなります。様式の変更への対応も、提供元に任せられます。
会計ソフトをクラウド型でそろえると、銀行の入出金や証憑の取り込みが最初から組み込まれています。取り込んだ明細から仕訳の候補が出るため、入力の手数は目に見えて減ります。月末に机へ積み上がる紙の量も変わります。
ただし候補が出ることと、仕訳が確定することは別の工程です。勘定科目の割り当てと修正は人の手に残り、確認の工程はそのまま残ります。取り込める範囲を過大に見積もると、初月で予定が崩れます。
クラウド型を選ぶ場合は、取り込みの設定にどれだけ手が要るかを試用期間で確認します。設定が終われば毎月の手数は落ち着きますが、最初の月だけは多めに時間を見ておきます。
会計ソフトの利用を止めた後にデータへどこまで触れるかは、提供元ごとに決まりが違います。契約の前に、書き出せる形式と保管の期間を確認しておくと後で困りません。確認する項目は二つだけで足ります。
通信が途切れた時間帯は作業が止まります。拠点の回線が細い体制では、月末の集中する時間に速度が落ちないかを試用の期間で確かめておきたいところです。回線の増強まで含めると、支出の見え方も変わります。
拠点が複数ある体制では、クラウド型の利点はそのまま人件費の削減につながります。移動して入力する時間が消えるだけで、月ごとの負担は目に見えて変わります。
インストール型は買い切りの版を自社の端末へ入れて使う形をとる
インストール型は、製品の版を買い取って自社の端末へ入れ、帳簿のデータも手元に置く形です。支出は買った年に大きく寄り、翌年からは保守の分だけになります。毎月の固定費を増やしたくない体制には向きます。
手元にデータがあるため、通信の状態に左右されずに作業が進みます。決算の時期に長時間触り続ける体制では、この安定は大きな利点になります。画面の反応の速さも、入力の量が多いほど重要になります。
会計ソフトをインストール型で持つと、端末の入れ替えや故障への備えは自社の仕事として残ります。控えの保管を誰がいつ取るかを決めておかないと、機器の故障がそのままデータの消失につながります。備えの手順は一枚の紙で足ります。
版が古いままでも動きますが、様式や税率の変更へ追いつくには更新が要ります。保守を更新しないと、その年の申告の様式に合わない場面が出てきます。更新の費用は毎年の支出として見ておきます。
インストール型を選ぶ場合は、保守をどこまで続けるかを購入の時点で決めておきます。続ける前提なら、毎年の支出は利用料と同じ性質のものとして扱えます。
会計ソフトを複数の人が同時に触る使い方では、上位の版や追加の設定が必要になります。人数が増える見込みがあるなら、後から足せる範囲を先に確かめておきます。足せない製品を選ぶと、増員の時期に入れ替えが重なります。
長く使い続ける前提なら、買い切りの支出は年数で割ると負担が小さくなります。三年で入れ替える前提なら、同じ金額でも重く感じられます。何年使うつもりかを先に決めると、金額の読み方が定まります。
インストール型は、外とつながらない場所でも動きます。工場や現場で入力する体制では、この条件が候補の絞り込みをそのまま決めることもあります。
機能の差は日々の記帳よりも決算と証憑の扱いに表れてくる
日々の仕訳を入れるだけなら、どの製品でも大きな差は出ません。差がはっきりするのは、決算の組み立てと証憑の保存という年に数えるほどの工程です。試用の期間で日々の入力だけを触ると、この差に気づけないことがあります。
部門ごとの収支を見たい体制では、部門の設定が最初から入っているかどうかで手間が変わります。後から部門を足す工程では、過去の仕訳へさかのぼる手間が増えます。店舗が増える予定があるなら、先に確かめておきます。
会計ソフトに求める機能は、月次の試算表をどこまで自動で組めるかで測ると分かりやすくなります。手で組み直す欄が多いほど、月末の残業が増えやすくなります。組み直しの時間は、一年の単位で数えると差が出ます。
証憑の保存は、紙で受け取るか電子で受け取るかで扱いが分かれます。受け取りの経路が二つある体制では、両方を同じ場所へ集められるかが要件になります。集める場所が分かれると、探す時間が毎月かかります。
機能の比較は、使う予定のある欄だけで行います。使わない欄まで並べると、必要な差が分かりにくくなります。並べる欄は、要件の紙から順に写していきます。
会計ソフトの機能表で見落としやすいのは、書き出しの形式です。試算表や総勘定元帳を汎用の形式で出せると、外部へ渡すときの手戻りが減ります。渡す先が決まっている体制ほど、この欄は重く見ます。
給与や請求の仕組みとつなぐかどうかも、早い段階で決めておきます。つなぐ前提なら、対応している組み合わせがそのまま候補を絞り込みます。つながない前提なら、機能の欄は思い切って減らせます。
クラウド型は取り込みの自動化で応じ、インストール型は手元での処理の速さで応じます。どちらの強みが自社の業務に合っているかで、重視すべき機能は変わります。
費用の比較は月額の金額だけでなく五年分の総額へ置き換えて行う

月ごとの支払いと買い切りの支出は、そのままでは並びません。同じ土俵へ載せるには、年数を決めて総額へ置き換える手順が要ります。置き換える前の数字を並べても、安い側が表面的に有利に見えるだけです。
五年という区切りは、機器の入れ替えと体制の変化が一度は起きる長さとして置いています。三年でも構いませんが、社内で一度決めれば比べる軸は安定します。年数を候補ごとに変えると、表の意味がなくなります。
会計ソフトの費用を総額で見ると、初期の金額の差は思ったより小さくなります。影響が大きいのは毎年の保守や利用料と、増える人数の分の追加です。人数の伸びを見込まない表は、途中で作り直しになります。
仮に月額が3,000円であれば、60か月で18万円になります。触る人が二人へ増えれば、同じ期間で36万円へ動きます。金額そのものよりも、どう増えるかを押さえておくほうが役に立ちます。
総額の比較では、途中で増える人数と減る人数を同じ表に置きます。五年のあいだ人数が動かない前提は、伸びている会社ほど当たりません。動く前提で並べておけば、比較の結果は後から崩れません。
会計ソフトの費用には、社内で使う時間も含めて見ておきたいところです。入力の手数が減って月に五時間浮くなら、その時間の価値は金額の差を越えることもあります。時間の価値は、担当者の人件費から自社で置けます。
金額の欄だけを並べると、安い製品の方が有利に見えてしまいます。総額と時間を同じ表へ置いたときに、初めて自社の答えが出ます。比較の目的は、安い製品を見つけることではなく、続けられる形を選ぶことにあります。
クラウド型は支出が一定に続き、インストール型は買った年に支出が大きくなります。資金の予定が薄い年に山を作らないことも、判断材料の一つになります。
会計ソフトの導入で実際に増える作業は初期設定と科目の整理である
入れ替えの負担は、操作を覚えることよりも最初の設定に集中します。勘定科目の並びと補助科目の粒度を決める作業が、そのまま後の使い勝手を決めます。ここを急ぐと、一年分の入力が読みにくい帳簿になります。
科目の整理は、過去の帳簿を見ながら使っていない欄を減らす工程から始まります。残す欄が減るほど、入力の迷いも減ります。落とした欄は一覧に残しておくと、必要になったときに戻せます。
会計ソフトへ移す残高は、期首の数字を一度そろえてから入れます。期中で切り替える体制では、切り替え日の残高を確定させる工程が先に来ます。確定しないまま動かすと、後で突き合わせる手間が残ります。
銀行や決済の明細をつなぐ設定は、口座の数だけ手順が要ります。使っていない口座を先に閉じておくと、設定の時間はそれだけ短くなります。口座の棚卸しは、入れ替えの前に済ませておきたい作業です。
設定の負担は、候補を比較する段階で見積もっておきます。口座の数と科目の数を数えておけば、必要な日数はおおよそ読めます。見積もった日数は、切り替えの日を決める判断材料になります。
会計ソフトの初期設定は、記帳を担う人と一緒に進めると後の手戻りが減ります。設定した人と使う人が違うと、決めた理由が伝わらないまま運用が始まります。理由の一行を設定の横に残しておくと、引き継ぎもしやすくなります。
試用期間があるなら、実際の一か月分を入れてみます。数字が合うかどうかよりも、詰まる工程がどこかを見つけるために使います。詰まった箇所が二つ以内なら、その製品は自社の体制に合っています。
クラウド型では初期の設定を提供元の手引きに沿って進められる場合には、手元での作業は少なく済みます。手引きの有無は、候補を残すかどうかの小さな分かれ目になります。
年商の規模ごとに会計ソフトへ求める水準は段階的に上がっていく
開業して間もない時期は、取引の数も種類も限られています。この段階では、価格の高い製品を選んでも使う欄が増えません。使わない欄に毎年払う形は、支出な支出だけが残ります。
『税理士に顧問料を払う本当の理由』という書籍は、開業からおよそ年商2億円から3億円の範囲までは弥生会計で足りるとしています。理由として挙げているのは、シェアが六割程度であるため、税理士を変えることがあっても引き継ぎやすいという点です。
会計ソフトの選定で引き継ぎやすさが重要になるのは、帳簿を確認する側が代わる場面です。広く使われている製品であれば、渡した先で読み替えの作業が起きにくくなります。読み替えが起きた分だけ、初年度の負担は増えます。
同書は、年商が3億円を超えたあたりから事情が変わるとも述べています。事業の内容や店舗が多岐にわたる体制では、上位の版や勘定奉行のような別の製品を入れる企業が増えるとしています。部門別に収支を見る必要が出てくるためです。
規模の段階と比較の表は、同じ紙に並べておくと読みやすくなります。いまの段階で足りる欄と、次の段階で要る欄を分けて書くだけで十分です。
会計ソフトを段階で見ると、入れ替えの時期は年商よりも取引の種類の増え方に連動します。部門や店舗が増えた月から、必要な欄は静かに増えていきます。年商だけを目安に置くと、入れ替えの判断は遅れます。
いま要らない機能へ先に払う必要はありません。要るようになった時点で足せる形かどうかを、選ぶ段階で確かめておけば足ります。足せる形であれば、規模が変わっても入れ替えは一度で済みます。
広く使われている製品を選ぶ理由は、価格よりも引き継ぎの軽さにあります。読み手が代わる場面まで含めて考えると、選ぶときに重視する点も変わります。
結論から言いますと、開業から年商2~3億までは弥生会計で十分です。シェア率も6割程度ですから、もし税理士を変えることがあっても弥生会計であればほとんどの事務所が対応可能です。
帳簿の保存期間を満たせるかどうかが会計ソフトの前提条件になる

帳簿と書類には、保存しておく期間が定められています。製品を選ぶ前に、この期間を自社の体制で満たせるかを確かめておきます。満たせない形を選ぶと、数年後に手作業の保管が戻ります。
国税庁は、法人の帳簿書類について保存の期間を示しています。十年間になるのは、青色申告書を提出した事業年度のうち欠損金額が生じたものです。自社がどちらに当たるかは、過去の申告から確かめられます。
会計ソフトの契約を止めた後にデータをどう残すかは、この期間から逆算して決めます。書き出した控えを自社の場所へ置くところまでを、運用の手順に入れておきます。手順に入っていない作業は、止めた月に忘れやすくなります。
手元にデータを置く形でも、それだけで足りるわけではありません。端末が壊れた時点で控えが無ければ、期間の途中で帳簿が読めなくなります。控えを別の場所へ置く作業は、どちらの形でも残ります。
クラウド型では控えの取得を提供元の機能でまかなえる場合には、手元での作業は少なく済みます。まかなえる範囲は契約の内容で変わるため、書面で確かめておきます。
会計ソフトの版が変わると、古いデータを開けない場面が出てきます。読み出せる形式で書き出した控えを年に一度取っておくと、版の違いに引きずられません。書き出しの日を決算の翌月に固定すると忘れません。
保存の要件は、紙で受け取る書類と電子で受け取る書類で扱いが分かれます。自社がどちらの経路で受け取っているかを一度数えておくと、必要な機能の範囲がはっきりします。数えるのは一年分で足ります。
インストール型では、控えの保管先を自社で決めておきます。端末とは別の場所へ置く手順まで書いておけば、期間の途中で困ることはありません。
法人は、帳簿(注1)を備え付けてその取引を記録するとともに、その帳簿と取引等に関して作成または受領した書類(注2)を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間(注3)保存しなければなりません。
移行の手順を先に決めておくと会計ソフトの入れ替えは軽く済む

入れ替えの負担が増えるのは、手順を決めないまま新旧を並行で動かす時期が延びるからです。切り替えの日を先に置くと、並行の期間は短く収まります。日を置かずに始めると、両方へ入力する月が積み重なります。
期首で切り替えるのが最も軽く、期中で切り替えると残高の確定が一工程増えます。決算の翌月を目安に置くと、社内の負担は分散します。繁忙の時期と重なる月は、最初から候補から外します。
会計ソフトの入れ替えでは、過去のデータをどこまで移すかを最初に決めます。全部を移す必要はなく、読める控えがあれば足りる範囲も多く残ります。移す範囲が狭いほど、切り替えの手間は短く終わります。
記帳を外部へ預けている体制では、税理士との受け渡しの形も同時に変わります。どちらの側で入力するかを決め直すところから始めると、話が前後しません。決め直しは、切り替えの二か月前に済ませておきます。
移行の前には、候補の比較で使った表をもう一度開きます。決めた理由と実際の手順が食い違っていれば、切り替えの前に直せます。直すのは表の内容だけで、結論までやり直す必要はありません。
会計ソフトを変える前後の一か月は、入力作業が一時的に増えます。繁忙の時期を外して置くだけで、この増加はかなり吸収できます。増える分を見込んで予定を空けておくと、当月の残業は抑えられます。
手順を紙に落としておくと、担当者が代わっても同じ順で進められます。次の入れ替えのときに、そのまま下敷きとして使えます。一度書いた手順は、規模が変わっても基本は変わりません。
クラウド型へ移る場合は、端末の入れ替えを同じ月に重ねないようにします。二つの変更が重なると、詰まった原因がどちらにあるのか分からなくなります。
- 切り替える日を決めて社内へ知らせる
- いまの帳簿の残高を締めて確定させる
- 勘定科目と補助科目の並びを新しい側へ写す
- 期首または切り替え日の残高を入れる
- 口座と決済の明細をつなぐ設定を行う
- 一か月を並行で動かして数字を突き合わせる
- 古い側のデータを書き出して控えを保管する
二つの形式を同じ表へ並べると比較の軸がはっきりする
並べる欄を決めないまま候補を増やすと、印象の言葉だけが残ります。欄を固定してから数字と事実を入れると、差が分かりやすくなります。欄の数は最初から多くせず、四つほどで始めます。
置く欄は、初期の支出と毎年の支出、データの置き場所、同時に触れる人数の四つから始めます。足りなければ後から足しても、最初の四つは変更しません。変更すると、候補どうしを同じ基準で比べられなくなります。
会計ソフトの比較表は、候補ごとに同じ日に取った情報で埋めます。取った日が違うと、価格や機能の前提がずれたまま並ぶことになります。取得した日を表の隅に書いておくと、後から読み返せます。
埋められない欄が出たら、そこは空欄のまま残します。推測で埋めると、判断の材料と見分けがつかなくなります。空欄が多い候補は、判断の材料が足りない候補だと読めます。
比較の表は、候補の数を三つまでに抑えると検討しやすくなります。四つを超えると欄の数と掛け合わさり、読む量が一気に増えます。比較の作業は、要件の紙が済んでいれば難しくありません。
会計ソフトの表を読むときは、勝ち負けを数えません。自社の要件に当たる欄だけを見て、そこで足りているかどうかだけを見ます。要件に当たらない欄で差がついても、判断は動かしません。
表は一度作れば、次の入れ替えのときにも使えます。欄の並びを残しておくと、数年後の判断が速くなります。残すのは表の形であって、そのときの数字ではありません。
クラウド型とインストール型を同じ表へ載せると、どちらが優れているかという問いは消えます。残るのは、自社の欄で足りているかどうかという比較だけです。
| 比べる欄 | クラウド型 | インストール型 |
|---|---|---|
| 初期の支出 | 小さく抑えられる | 購入時にまとまる |
| 毎年の支出 | 利用料が続く | 保守の範囲にとどまる |
| 五年分の総額(月額三千円で一人と仮定) | 十八万円 | 購入額に保守の四年分を足した額 |
| データの置き場所 | 提供元の設備 | 自社の端末 |
| 版の更新 | 提供元が進める | 自社で入れ替える |
| 同時に触れる人数 | 契約の数で増やせる | 上位の版が要る |
| 七年間の保存への備え | 書き出した控えを自社へ置く | 端末の外へ控えを取る |
判断基準を五つに絞れば自社に合う形式はその場で決まる

判断に使う基準は、多く並べるほど決まらなくなります。五つに絞ると、その場で結論まで届きます。絞る手順は、要件を書き出した紙の上でそのまま進められます。
一つ目は、記帳を担う場所が一か所にまとまっているかどうかです。散らばっているなら、端末を選ばない形が要件へ上がります。まとまっているなら、この欄で差はつきません。
会計ソフトを選ぶ二つ目の基準は、支出の形をどちらで持ちたいかです。毎年の固定費として持つか、買った年に寄せるかで、向いている形式は分かれます。資金の予定と合う側を選べば、途中で無理が出ません。
三つ目は同時に触る人数、四つ目は税理士へ預ける工程の範囲です。五つ目は、保存の期間を自社の手順で満たせるかどうかに置きます。五つの答えは、いずれも一行で書けます。
五つの答えが出そろったら、比較の表の該当する欄だけをもう一度読みます。読む欄が五つなら、判断そのものに長い時間はかかりません。迷いが残る欄には、印を付けて先へ進みます。
会計ソフトの判断は、五つの答えが出た時点でほぼ決まります。残った迷いは、試用の期間で触って確かめれば足ります。触って決まらない迷いは、要件の側がまだ粗いという合図です。
決めた理由を一行ずつ書き残しておきます。次に見直すときに、何が変わったから変えるのかを迷わずに言えます。書き残しは、担当者が代わった後にも役立ちます。
基準を五つに保つ理由は、増やすほど比較が止まるからです。増やしたくなったときは、既にある五つのどれかと入れ替えます。入れ替えなら、判断の速さは落ちません。
- 入力を行う場所が一つに定まっているかどうか
- 支出を毎年の固定費として持ちたいか
- 同時に帳簿へ触れる人数が増える見込みがあるか
- 外部へ預ける工程がどこまであるか
- 保存の期間を自社の手順で満たせるか


税理士コンシェルジュ事務局からのコメント
会計ソフトの選び方は、製品の優劣よりも自社の記帳の回し方から決まります。クラウド型とインストール型のどちらにも向く体制があり、要件が合えば長く使えます。会計ソフトを入れ替える時期が近づいたら、保存の期間と引き継ぎのしやすさを先に確かめてください。記帳を外部へ預けている場合は、税理士との受け渡しの形も同じ時期に一度決め直しておくと、その後の運用が軽くなります。