本文へ移動

税理士を探す・選ぶ

優秀な税理士とは、何ができる人なのか。その答えは「演奏」ではなく「指揮」にある。

優秀な税理士が様々な条件を踏まえ指揮をとっているイラスト
前回まで、税理士の選び方、見極め方、そして変更の仕方をお伝えしてきました。あなたはもう、税理士を選び、付き合い、必要なら変える視点を手にしています。ここで、いったん立ち止まって、より根本的な問いに向き合いたいと思います。そもそも、なぜこれほどまでに「財務のパートナー」が重要なのでしょうか。

多くの経営者は、税理士を「申告を正しくやってくれる人」だと考えています。間違いではありません。けれど、それは税理士という存在の、ほんの入口にすぎない。優秀な税理士が本当にしていることは、自分で楽器を演奏することではなく、会社という一つの楽団全体を響かせる「指揮」なのです。

税理士紹介サービス「税理士コンシェルジュ」を運営し、1,600名を超える税理士と直接面談してきた経験から、私はこう考えています。優秀な税理士は、単なる「税務処理の代行者」ではありません。会社の航海を支える「財務の責任者」、いわばCFO(最高財務責任者)の役割を担う存在なのです。

この記事を読み終えたとき、あなたは税理士を「コスト」ではなく「会社の航海を支えるパートナー」として捉える、新しい視点を手にしているはずです。沈みゆく舟を立て直すのではなく、そもそも沈ませない。その鍵が、ここにあります。

監修者:山下 健一(株式会社タックスコム代表)
20年・27,000件超の実績と1,600名との面談をもとに、経営者向けの税理士選びの情報を発信しています。

なぜ「財務」がないと、会社は脆くなるのか

机をはさんで、経営者と年配の税理士が落ち着いて向かい合っているイラスト ・留意(重要):本文は会社を舟にたとえるが、船・舟・波・嵐は一切描いていない。強語「沈みゆく舟」をビジュアルの主題にしない(画像デザイン仕様書v0.3 §3の留意)。守りが固まっているから安心して進める、という安定した空気で表現した。

会社を、大海を進む一艘の舟にたとえてみます。売上を伸ばすことは、舟を前へ進める「推進力」です。

エンジンを強くし、帆を大きく張る。これは確かに大切です。しかし、推進力だけでは、舟は安全に航海できません。

船底に穴が開いていないか、浸水していないか、嵐が来たときに耐えられるか。こうした「船体の守り」がなければ、どれだけ速く進んでも、ひとたび波を受ければ沈んでしまいます。

売上という「攻め」だけでは、舟は守れない

この連載で繰り返し見てきたことを、思い出してください。売上が過去最高でも現金がなければ黒字倒産する。

無借金にこだわって備えを怠れば、いざというときに動けない。フェーズを取り違えれば、成長したはずが苦しくなる。これらはすべて、「攻め」はあっても「守り」がない会社に起こる現象です。

攻めと守りは、舟の両輪です。推進力(売上・成長)と、船体の堅牢さ(財務)。このどちらかが欠けても、安全な航海はできません。

そして多くの中小企業は、攻めには熱心でも、守りである財務に、専門の担い手を置いていないのです。好調なときには、この守りの不在は見えません。追い風が吹いているうちは、船底の穴に気づかない。

しかし、市場の変化や予期せぬ出来事という「波」が来たとき、守りのない舟は、あっけなく傾きます。売上はあったのに、財務という守りが弱く、波が来た瞬間に沈んでいく。だからこそ、舟が順調に進んでいる今こそ、守りの専門家が必要なのです。

ここで強調しておきたいのは、「守り」とは、ただ守備的に縮こまることではない、という点です。むしろ逆です。

船体が頑丈で、浸水への備えがあるからこそ、安心して全速力を出せる。財務という守りが固まっているからこそ、経営者は思い切った攻めに出られるのです。

守りの弱い舟は、怖くてアクセルを踏み込めません。少し波が高くなっただけで、沈没を恐れて減速せざるをえない。

つまり、CFOという守りは、攻めの足を引っ張るものではなく、攻めを可能にする土台なのです。これまでの記事で「現金のダム」「致命傷リスクは避ける」とお伝えしてきたことも、すべてこの「守りがあるから攻められる」という一点につながっています。

CFO(最高財務責任者)という役割

明るい窓のあるオフィスで、経営者と年配の税理士が肩を並べて立ち、同じ方向を静かに見ているイラスト

その「守りの専門家」を、経営の世界ではCFO(最高財務責任者)と呼びます。

大企業にはいて、中小企業にいない「守りの専門家」

大企業には、たいていCFOがいます。会社のお金の流れを管理し、資金繰りを設計し、投資判断にリスクの視点を持ち込み、金融機関と交渉する。

経営者(CEO)が攻めのアクセルを踏むその隣で、財務という守りを一手に引き受ける専門家。それがCFOです。

ところが、中小企業には、このCFOがほとんどいません。理由は単純で、財務の専門家を一人、役員として雇うのは、コストが非常に高いからです。

優秀な財務の専門家を正社員で迎えようとすれば、年間で多額の人件費がかかります。多くの中小企業にとって、これは現実的ではありません。

結果として、中小企業では、経営者が攻めも守りも一人で抱えることになります。本業で忙しいなか、財務まで一人で見るのは、限界があります。こうして「守りの専門家がいないまま航海する」という、危うい状態が生まれるのです。

中小企業のCFOは、優秀な顧問税理士が担える

ここに、顧問税理士の本当の価値があります。優秀な顧問税理士は、中小企業にとっての「CFO」の役割を担えるのです。しかも、財務担当の役員を一人雇うよりも、はるかに安いコストで。

月々の顧問料で、会社のお金の流れを見てもらい、資金繰りを設計してもらい、リスクを洗い出してもらい、金融機関との関係まで支えてもらう。これは、見方を変えれば「安く、優秀なCFOを雇っている」のと同じことなのです。

この連載で見てきた「レベル3以上の税理士」「未来を設計してくれる税理士」「リスクの地図を渡してくれる税理士」とは、つまるところ、CFOとして機能してくれる税理士のことだったのです。単なる記帳代行や申告代行としか付き合っていないなら、それは、せっかく雇えるCFOを、ただの事務員として使っているようなものかもしれません。

具体的に、CFOとして機能する税理士は、こんな働きをしてくれます。

  • 「来月、大口の支払いが集中します。今のうちに当座の資金を確保しておきましょう」と資金繰りを先読みする。
  • 「この設備投資なら、自己資金より融資を使ったほうが、手元を厚く保てます」と投資判断にリスクの視点を持ち込む。
  • 「銀行との関係は私が間に入りますので、次の融資交渉は一緒に進めましょう」と金融機関との窓口になる。
  • 「この事業、数字を見る限り、来期は撤退ラインを決めておくべきです」と撤退の基準まで一緒に考える。

これらは、まさに大企業のCFOがやっていることです。それを、月々の顧問料の範囲で担ってもらえる。中小企業にとって、これほど費用対効果の高い「守りの投資」は、なかなかありません。

自社にCFOは必要か、それともまだ早いのか

年商5,000万円を超えたあたりから、CFO的な機能が必要になってくる、というのが一つの目安です。それ以下の規模では、まだ攻め(売上づくり)が最優先で、守りの専門性をフルに活かす場面が少ないかもしれません。

しかし、年商5,000万円を超え、資金調達、投資判断、出口戦略といった「お金にまつわる重要な決断」が増えてくると、守りの専門家の有無が、会社の安定と成長を大きく左右します。

「うちにはまだCFOなんて早い」と感じるかもしれませんが、自分で財務担当役員を雇うのではなく顧問税理士にCFOの役割を担ってもらうのであれば、コストを抑えて、今すぐにでも守りを固められます。早すぎるということは、あまりないのです。

むしろ注意すべきは「遅すぎる」ケースです。多くの経営者は、資金繰りが本当に苦しくなってから、あるいは大きな失敗をしてから、初めて財務の重要性に気づきます。しかしそのときには、すでに船体に大きな穴が開いている。

CFOという守りは、問題が起きてから慌てて用意するものではなく、順調なうちに備えておくものです。これは、この連載で繰り返しお伝えしてきた「困ってから動くのでは遅い」という話と、まったく同じ構造です。今、自社が順調だと感じているなら、それこそが守りを固める好機だと考えてください。

優秀な税理士とは「リスクを洗い出す精度」が高い人

机をはさんで、年配の税理士が机上の一点を指先で静かに示し、経営者がそこを見ているイラスト

CFOとして機能する税理士の、最も重要な能力は何か。それは「リスクを洗い出す精度」の高さです。

この連載の前半で、ランニングのたとえを使いました。ある道を走り続けたとき、その先で起こりうることは、かすり傷か、骨折か、それとも致命傷となる地雷か。

優秀な税理士は、これを事前に見抜いて教えてくれる、という話でした。CFOとしての価値は、まさにこの「精度」にあります。

極めて優秀な税理士は、会社の膨大な資料に目を通しながら、次々と問題点やリスクを洗い出していきます。経営者本人も気づいていなかった船底の小さな穴を、的確に見つけ出す。この洞察力こそ、守りの専門家としてのCFOの真骨頂です。

問題を「指摘」してくれるが、「指示」はしない

ここで、優秀なCFO型税理士の、大切な特徴があります。彼らは問題を「指摘」してくれますが、「こうしなさい」と「指示」はしないのです。

「ここにこういうリスクがあります」「この数字は、こういう問題を示しています」と、事実とリスクを明らかにする。しかし、それを受けてどう決断するかは、経営者に委ねる。なぜなら、この連載で繰り返しお伝えしてきたように、経営の最終的な結果責任は、経営者にあるからです。

リスクを洗い出すのはCFOの仕事、それを踏まえて舵を切るのは船長である経営者の仕事。この役割分担を理解している税理士こそ、本物のCFOパートナーだと言えます。

顧問料を払う本当の理由。見えない不安を解消し「決断」するため

経営者が机の椅子に座って正面を向き、静かに心を決めた表情をしている。斜め後ろに年配の税理士が少し離れて立ち、穏やかに見守っているイラスト

CFOとしての税理士は、経営者に「決断する力」をもたらします。これは、顧問料を払う本質的な理由の一つです。

経営者は、正解の分からない決断を迫られ続ける

経営者は、常に決断を迫られる立場にあります。しかも、一般的な正解がどちらなのかすら分からない状況で、決めなければならないことが少なくありません。この「見えないことへの不安」は、孤独な経営者にとって、想像以上に重いものです。

決断を先延ばしにすれば、機会損失につながります。かといって、専門家には見えているリスクが経営者には見えないまま、誤った決断を下せば、会社を危険にさらしかねません。この「見えない」という状態こそが、不安の正体です。

CFOとして機能する顧問税理士がいれば、この見えなかったものが、見えるようになります。「この投資には、こういうリスクがあります」「この数字から見て、今は攻めどきです」と、霧が晴れるように、判断材料が示される。結果として、経営者はより自信を持って、より速く決断できるようになります。

決断を「支える」こと、これは、CFOが経営者にもたらす、何よりの価値です。孤独な決断を、一人で抱えなくてよくなる。この安心は、金額には換えられません。

経営者の決断の遅れや誤りは、しばしば「情報不足」ではなく「相談相手の不在」から来ます。数字は手元にあっても、それが何を意味するのか、どう判断すればいいのかを、一緒に考えてくれる相手がいない。

だから、決められない。あるいは、誰にも相談できないまま、孤独に決めて、後悔する。CFOとして機能する税理士は、この「相談相手の不在」を埋めてくれる存在です。

最終決定は経営者が下すとしても、その手前で「専門家の目から見て、これはどうか」を率直に話せる相手がいるかどうか。これが、決断の質とスピードを大きく変えるのです。一人で抱える経営と、信頼できる専門家と共に考える経営とでは、長い目で見たとき、たどり着く場所がまるで違ってきます。

顧問料を払う本当の理由。月次の振り返りで「強み」を洗い出す

CFOとしての税理士がもたらす、もう一つの価値があります。会社の「強み」を洗い出してくれることです。

経営者は忙しく、つい目の前の業務に忙殺され、自社の強みを活かしきれないまま日々を過ごしてしまいがちです。毎日が目の前のことの連続で、一歩引いて自社を客観的に見る時間が、なかなか取れません。

ここで活きるのが、顧問税理士との「月次の打ち合わせ」です。月に一度、現場からいったん離れ、客観的な視点で「何がうまくいって、何がうまくいっていないのか」を振り返る。

この時間を継続することで、多くの気づきが得られます。そして、改めて自社の強みに気づくことができるのです。

意外に思われるかもしれませんが、経営者は自社の本当の強みを、案外わかっていないものです。毎日その中にいるからこそ、何が特別なのかが見えなくなる。「うちは当たり前にやっているだけ」と思っていたことが、数字で見ると突出した利益率を生んでいた、ということは珍しくありません。

第三者である税理士が、数字という客観的なレンズを通して「御社のこの事業、利益率がほかと比べて際立っていますよ。ここにもっと資源を割いてはどうですか」と指摘してくれる。そこで初めて、経営者は自社の強みに気づく。

月次の振り返りは、こうした「自分では見えない強み」を、外の目で発見してもらう貴重な機会なのです。

月次の打ち合わせは、本当に意味があるのか

大いにあります。むしろ、月次の振り返りこそ、CFO型税理士の価値が最も発揮される場面の一つです。経営学者のピーター・ドラッカーも、定期的に過去を振り返ることが、自分の強みを引き出すために必要だと説いています。

強みを活かした経営は、レバレッジが利きます。自社の強みが分かれば、そこに資源を集中でき、利益体質に近づき、資金繰りも楽になり、決断のスピードも上がっていく。

逆に、月次を「ただの数字の報告会」で終わらせているなら、それは大きな機会損失です。本物のCFO型税理士との月次は、過去の数字を確認する場ではなく、「次の一手を見出し、自社の強みを再発見する」戦略の時間になります。この違いが、1年、3年と積み重なって、会社の成長に大きな差を生むのです。

指揮者は、自分では演奏しない

オフィスの中央にやや前へ出て立つ経営者が全体を見渡し、その左右で年配の税理士と担当者がそれぞれの持ち場に構えているイラスト

最後に、経営者とCFO型税理士の理想的な関係を、オーケストラにたとえてお伝えします。オーケストラには、指揮者がいます。

指揮者は、自分では楽器を演奏しません。しかし、全体を見渡し、どの楽器をいつ、どう響かせるかを差配することで、一つの音楽を作り上げます。

経営者は、この指揮者です。会社全体を見渡し、方向を定め、最終的な決断を下す。一方、CFOとして機能する税理士は、財務という「楽器」のスペシャリストです。

指揮者である経営者が「財務という楽器を、今どう響かせるべきか」を判断できるよう、専門家として的確な情報とリスクを提示する。優秀な指揮者は、すべての楽器を自分で演奏しようとはしません。それぞれの専門家を信頼し、その力を引き出すことに集中します。

経営者も同じです。財務まで一人で抱え込むのではなく、CFOという専門家を信頼し、その力を引き出す。そうして初めて、会社という舟は、攻めと守りのそろった、安定した航海ができるのです。

なお、こうした「人間にしか担えない役割」が、なぜAIには代替できないのか。その理由は、この連載の最初の記事で詳しくお伝えしています。ここでは深入りせず、CFOという役割の本質に話を絞ってきました。

CFOという視点を手に、最後に確かめること

明るい窓のあるオフィスで、経営者・年配の税理士・担当者の三人が片づいた机の傍らに立ち、これから進む方向を静かに確かめ合っているイラスト

売上という「攻め」だけでは、会社という舟は守れません。財務という「守り」がなければ、好調な会社ほど、波が来たときに脆い。その守りを担うのが、CFO(最高財務責任者)です。

大企業には当たり前にいるこの専門家が、中小企業にはいない。しかし、優秀な顧問税理士は、財務担当役員を雇うよりはるかに安いコストで、そのCFOの役割を担えます。

CFOとしての税理士の価値は、リスクを洗い出す精度の高さにあり、問題を指摘しても指示はせず、決断は経営者に委ねます。そして、見えない不安を解消して決断を支え、月次の振り返りで会社の強みを洗い出す。これらが、顧問料を払う本当の理由なのです。

あなたは今、税理士を「コスト」ではなく「会社の航海を支えるCFO」として捉える視点を手にしました。この連載もいよいよ最終回を残すのみです。

ここまで、税理士との付き合い方、5つの段階、リスクとスピード、財務戦略、効率化、選び方の基準、変更の仕方、そしてCFOという本質、多くのことをお伝えしてきました。あなたはもう、自社に必要な税理士を見極める、確かな目を持っています。

しかし、最後に、一つの現実が立ちはだかります。「見極める目は持った。では、その基準を満たす優秀な税理士と、どうやって実際に出会えばいいのか」という問題です。これまで見てきたように、レベル3以上の税理士は、決して多くありません。

次に読む 失敗しない税理士の探し方・5つの経路では、この最後の問い、優秀な税理士との出会い方に、正面から答えます。

「AIで十分では」という疑問に立ち返りたい方は 税理士Netflix理論とAI時代の人間の価値へ。

CFOとして機能する税理士の核心は「リスクを洗い出す精度」でした。その精度を、実際に何を見て選ぶのか。税理士を選ぶ基準(誠実さ・専門知識・教育体制)で整理しています。

税理士コンシェルジュ事務局からのコメント
本記事は、顧問税理士との関係を財務面の役割という観点から整理した内容です。現在の顧問契約や打ち合わせのあり方を見直す際の参考としてお読みください。

もし、この記事を読んで「自社にも、CFOとして機能してくれる税理士が必要だ」と感じたなら、税理士コンシェルジュに相談するという選択肢があります。20年・27,000件超の実績と、1,600名との面談で培った視点から、あなたの会社の航海を支える守りの専門家を見つけるお手伝いができます。

厳選税理士紹介ご依頼はこちら

MAIL FORM

業界20年のプロが、御社に合う税理士を選びます。

必要事項をご入力のうえ、確認画面にお進みください。必須 は必須項目です。

お問合せ内容必須
依頼したい業務必須

該当するものをすべて選択してください。

個人情報保護方針(別タブ)