KSK2で税務調査はどう変わるか、照会シグナルに引っかからない対策
KSK2による税務調査で変わるのは、調べる相手の絞り込み方と、税務署からの連絡が届く形です。国税庁は、AIを使った予測モデルで調査必要度の高い法人を抽出し、その判定に申告書や手元の資料情報を重ねて分析したうえで、最後は調査官が実施の要否を決めていると公表しています。反対に、事前通知や終了時の説明といった手続の骨格は、国税通則法の定めのまま動きません。
令和8年9月24日に予定されているKSK2への更改では、様式や、税務署から届く通知の見た目も切り替わります。変わる部分と変わらない部分を分けて解説していきます。
伊東大介(税理士法人 イデアコンサルティング代表)税理士登録番号:97281
本記事の税務に関する記述について、内容の正確性を確認しています。

KSK2の税務調査でまず変わるのは、調査対象を絞り込む選定手順
国は、令和8年9月24日を期日として国税システムを更改すると公表しています。KSK2による税務調査という言い方で語られている変化は、この更改を境に、誰を調べるかを決める過程と、納税者へ連絡が届く形が入れ替わることを指しています。
ただし、KSK2という言い方を納税者向けの案内に用いているわけではありません。案内の見出しは「国税システムの更改」であり、KSK2という記号は仕様書の名称として出てきます。呼び名の違いを事前に把握しておけば、必要な情報を探す際の混乱を防げます。
KSK2で動く部分は、大きく3つの視点で整理できます。ひとつめは税務調査の絞り込みにデータ分析が組み込まれること、ふたつめは通知や様式の形が切り替わること、みっつめは資料のやり取りがデータのまま進む場面が増えることです。
反対に、KSK2になっても動かない部分もはっきりしています。税務調査を行う側の権限と手続の骨格は国税通則法に書かれており、機器が新しくなったからといって条文が書き換わるわけではありません。ここを取り違えると、備える方向がずれます。
KSK2による税務調査という話題は、どうしても身構える形で伝わりがちです。けれども公表資料を順に読むと、書かれているのは効率化と重点化であって、対象そのものを広げるという記述は見当たりません。
数のうえでも、実地調査の件数は前の事務年度より減りました。減ったなかで一件あたりの追徴税額が上がっている、という形です。税務調査の手を広げるのではなく、絞ったところへ人手を寄せる。KSK2の資料から読み取れる方向はそれに近いものです。
中小企業にとっては、件数の多寡よりも、当たったときの追徴課税の重さのほうが実感に近いはずです。だからこそ、身構えるより先に、聞かれたときに申告書の数字を説明できるかどうかを確かめておきたいところです。
そしてもう一つ、初動を左右するのが顧問税理士との連絡の順序です。税務署からの電話を受けた人が、その日のうちに顧問税理士へ共有できているか。ここでいったん止まる会社ほど、日程の調整も資料の用意も後ろへずれていきます。連絡の宛先が社内で決まっていないだけで、数日は簡単に溶けます。
経営者が構えるべきは潔白の証明ではありません。以下、KSK2で動く部分と動かない部分を順に分けていきます。
- KSK2への更改を境に動くもの……調べる相手の絞り込み、税務署から届く通知の形、様式、資料の受け渡しの経路
- KSK2になっても動かないもの……事前通知の考え方、質問検査の範囲、終わりの際に説明を受けられること、修正申告の勧奨に応じるかどうかが任意であること
- 公表資料から読み取れないもの……予測モデルが用いる項目やしきい値、個々の法人が選ばれた具体的な理由
KSK2として公表された基幹システムの刷新は、書面中心からデータ中心への転換である

KSK2の中身は、令和5年6月に公表された「税務行政の将来像 2023」に、システムの高度化として書かれています。三つのコンセプトが並んでおり、そのどれもが税務署の事務のやり方に直結します。
一つめは、紙の帳票を回して処理する形から、画面の上で処理してデータで残す形への移行です。二つめは、税目ごと・事務系統ごとに分かれていたデータベースと機能を一つに束ねること。三つめは、独自の大型機から一般的な構成の機器へ入れ替えることです。
束ねる、という二つめが実務にとっていちばん大きい変化です。これまで別々に置かれていた申告の記録、収納の記録、催告の記録が同じ土台に載れば、横断して見ることが技術的に容易になります。KSK2による税務調査が語られるのは、この点があるからです。
同じ資料には、統合されたデータベースの上でBIやBAのツール、プログラミング言語、AIを用いる姿が図で示されています。分析の道具が別置きの表計算ソフトから、業務の土台の側へ移ってくるということです。
あわせて、内部の事務を業務センターへ集める取り組みも進んでいます。同じ資料には、令和8年には全524署を対象に実施する予定だと記されています。署の人手の配分が変わる、という話でもあります。
この集約が意味するのは、内部の事務にあてていた人手を、税務調査の実地の対応や相談の対応へ回しやすくなるということです。誰かが増員されるわけではありませんが、同じ人数のなかでの置き場所は変わります。件数が減って一件あたりの追徴税額が上がる、という数字の動きとも、向きとしては揃っています。
ここまでが行政の側の設備の話であり、事業者に何かの義務を新しく課すものではありません。KSK2に備えるといっても、新しい届出や申請が生まれるわけではない点は、先に押さえておきたいところです。
それでもKSK2の資料を読んでおく値打ちはあります。相手側の道具立てが分かれば、こちらが用意しておくべき資料の形も見当がつくからです。紙の束ではなく、探せるデータで持っておく。それが結論の先取りになります。
なお、KSK2に伴う電子申告の仕様変更は、会計ソフトの提供元や顧問税理士側でも対応が進められています。自社だけで抱え込む話ではありません。顧問税理士がどこまで見てくれるのかを、9月より前に一度確かめておくと、当日になって手が止まりません。
以下のコンセプトに基づき、基幹システムを刷新します。⇒ 書面中心からデータ中心の事務処理(紙からデータ)⇒ 税目別・事務系統別のデータベース・アプリケーションの統合(縦割りシステムの解消)⇒ 独自の大型コンピュータ(メインフレーム)からオープンなシステムへの刷新(メインフレームからの脱却)
出典:国税庁「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像 2023-」(2026年8月取得)/将来像2023(PDF)
KSK2で対象を絞る仕組みは、AIの判定と調査官の最終判断からなる
絞り込みの手順は、報道発表資料のなかで説明されています。予測モデルが調査必要度の高い法人を抜き出し、想定される不正のパターンを判定する。そのうえで申告の内容や組織が持つ資料情報を併せて分析し、最後は調査官が実施の要否を決める、という順序です。
ここで大事なのは、機械が結論を出しているのではない、という点です。判定はあくまで下ごしらえであり、実施するかどうかを決めているのは人です。KSK2による税務調査を、機械が自動で相手を指名する仕組みと受け取ると、実態とかけ離れてしまいます。
税務調査の対象を選ぶ場面について、将来像の資料では、収集したデータを統計分析や機械学習の手法で分析し、申告漏れの可能性が高い納税者等を判定するとされています。過去の事績の傾向から確からしさを見積もる、という発想です。
では何を見て判定しているのか。この点はKSK2の公表資料からは確認できません。用いる項目もしきい値も示されておらず、示されない前提で組まれた仕組みです。ここを想像で埋めた税務調査の解説を信じても、実務には結びつきません。
「照会シグナル」といった言い回しも、世の中では使われていますが、公式に用いられている用語ではありません。合図を避ける技術のようなものがある、という捉え方はしないほうが健全です。
では打つ手がないのかというと、そんなことはありません。KSK2のもとで税務調査の材料になるもののうち、決算書と申告の内容はこちらが作って出したものです。数字の並びが年ごとに説明できるかは、自社で確かめられます。
令和6事務年度の資料には、原価が年々不審に増えていた法人で、想定された不正のパターンが的中した事例が載っています。裏を返せば、増えた理由を説明できる会社は、聞かれても答えられるということです。
そこで、実際にどんな聞かれ方をするのかを、決算書の項目ごとに並べてみます。以下は公表資料に書かれた設問ではなく、決算書と申告書から自然に生じる疑問を整理したものです。ここに挙げた程度の問いに一言で答えられるなら、KSK2への備えとしては十分です。
| 数字が動きやすい項目 | 想定される聞かれ方 | 手元に置いておきたい資料 |
|---|---|---|
| 売上高(期末月の計上) | 翌期に回した売上はないか。締め後の納品分をどう扱ったか | 期末月と翌期首月の請求書控、納品書、検収の記録 |
| 売上原価率 | 前期から数ポイント動いた理由は何か | 仕入先別の単価表、外注単価の改定通知、原価計算の内訳 |
| 期末棚卸高 | 実地の棚卸をいつ、誰が行ったか。評価はどの方法か | 棚卸表の原本、評価方法の届出控、廃棄の記録 |
| 外注費 | 給与ではなく外注として扱った根拠は何か | 業務委託契約書、請求書、指揮命令の実態が分かる記録 |
| 役員報酬・役員退職金 | 改定の時期と手続はどうなっているか | 株主総会議事録、取締役会議事録、支給の一覧 |
| 交際費・会議費 | 相手方と目的が記録に残っているか | 領収書の裏書き、参加者の記録、社内の精算申請 |
| 貸倒損失 | 回収できないと判断した時期と根拠は何か | 督促の記録、相手方の状況が分かる資料、社内の決裁 |
| 消費税の課税区分 | 非課税・不課税との区分をどう判断したか | 取引ごとの区分の一覧、インボイスの保存状況 |
表にすると、聞かれる中身が特別なものではないことが見えてきます。どれも、その取引を決めたときに社内で判断していたはずのことばかりです。困るのは判断が誤っていた場合ではなく、当時の判断を思い出せない場合のほうです。
そして、この一覧のうち何を自社で持ち、何を顧問税理士が持っているのかは、会社によって分かれます。決算の資料一式を税理士事務所へ預けたままになっていると、聞かれてから取り寄せる時間が上乗せされます。どちらが保管しているのかを、項目ごとに確かめておくだけでも違います。
逆に、理由を一行ずつ添えておけば、この表はそのまま社内の備忘録になります。翌期の決算のときにも同じ問いが立つので、一度作れば使い回せます。
説明の書き方にも、うまくいく型があります。「なぜ動いたか」ではなく「いつ、何が起きて、その結果どう動いたか」の順で書くことです。原価率が三ポイント上がったのなら、いつの仕入から単価が変わり、どの案件に効いたのか。時期と出来事が入っていれば、裏づけの資料も自然に決まります。
逆に、避けたいのは「景気の影響で」「業界全体の傾向で」といった書き方です。間違いではありませんが、自社の資料で裏づけられないため、その先の質問を呼び込みます。抽象的な説明ほど、話が長くなります。
この一枚を、決算が締まった直後に作っておくのが理想です。数か月経つと、当時の判断を担当者が思い出せなくなります。決算の資料を顧問税理士へ渡すタイミングで一緒に作れば、手戻りもありません。
国税庁においては、AIを活用した予測モデルにより調査必要度の高い法人を抽出し、予測モデルが判定した不正パターンに加え、申告書や国税組織が保有する様々な資料情報等を併せて分析・検討した後、調査官が調査実施の要否を最終的に判断しています。
出典:国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」(令和7年12月・2026年8月取得)/調査事績の概要(PDF)
実地調査に至らない簡易な接触は、書面照会や電話連絡というかたちで先に届く

税務署から何か届いたとき、それが税務調査の予告なのかどうかは、文面だけでは分かりにくいものです。公表資料では、調査必要度が高いと見た法人には実地の調査を、簡易な誤りが想定される法人には書面照会や電話連絡を、と使い分けていると説明されています。
後者は「簡易な接触」と呼ばれています。書面で照会する、電話で連絡する、税務署へ来てもらって面接する。この三つが挙げられており、いずれも申告の内容を自分で見直して出し直してもらうことを目的としています。
件数の規模感を知っておくと落ち着けます。令和6事務年度の法人税と消費税では、実地調査が54,000件だったのに対し、簡易な接触は85,000件でした。届く連絡の多くは、いきなりの税務調査ではないということです。
加えて、税務署の担当者は、これから行うのが税務調査なのか行政指導なのかを、手続に入る前に示すこととされています。分からなければ聞いてよい、というより、聞けば答えが返ってくる仕組みになっています。
この区別は金額にも効きます。行政指導を受けて自主的に修正申告書を出した場合、延滞税を納めることはあっても、過少申告加算税は賦課されないとされています。同じ誤りでも、経路によって追徴課税の重さが変わります。
だからこそ、届いた書面を机の隅に置いたままにするのは最も避けるべきです。KSK2で税務調査がどうなるかを心配するより、手元にある一通へ期限内に答えるほうが、はるかに実利があります。
中小企業では、こうした照会が経理の一人のところで止まってしまうことがあります。届いた書面を必ず経営者まで上げる、という社内の約束から始めるのが確実です。
実際に書面が届いた日に確かめる項目は、多くありません。次の順に見ていけば、返事の期限を落とすことはなくなります。
- 差出人はどこか……税務署の名称と、担当部門・担当者名を控える
- これは何の手続か……税務調査なのか行政指導なのかを、書面の記載で確かめる(分からなければ電話で聞く)
- いつまでに何を返すのか……回答の期限と、求められている資料の範囲を書き出す
- 対象はどの期間か……税目と課税期間を確かめ、その年度の決算資料を先に手元へ寄せる
- 誰に共有するか……その日のうちに経営者と顧問税理士へ回し、返答の担当を一人決める
- 控えを残したか……返送した書面と送付の記録を、社内に必ず一部残す
このうち二つめの見極めが、最終的な納税額を大きく左右します。行政指導の段階で自主的に直せた誤りと、税務調査で指摘されてから直した誤りとでは、加算税の扱いが変わるからです。書面の性格が読み取れないまま放置するのが、最も損の出る対応になります。
三つめの期限についても、間に合わないと分かった時点で連絡すれば、多くの場合は事情を聞いたうえで調整されます。黙ったまま過ぎるより、電話一本したほうが確実に軽く済みます。
回答の担当を一人に決めるのは、返事の中身をそろえるためです。複数の人がそれぞれの理解で答えると、あとから食い違いを説明する手間が生まれます。担当を決め、顧問税理士に一度目を通してもらってから返す。これで十分です。
国税庁においては、調査必要度の高い法人に対しては実地調査を行う一方で、それ以外の申告内容に簡易な誤り等が想定される法人に対しては、実地調査によらず、書面照会や電話連絡などにより、申告書の自発的な見直し・提出を要請する簡易な接触を実施しています。
出典:国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」(令和7年12月・2026年8月取得)/主要な取組(簡易な接触)
追徴課税の重さは、公表された事績の数字から見当をつけられる
追徴課税がどのくらいになるのかは、誰もが気にするところです。個別の予想はできませんが、規模の感覚をつかむ材料は毎年公表されています。令和6事務年度の法人税等の事績が、いちばん新しい手がかりです。
法人税と消費税の実地調査は54,000件で、前の事務年度より減りました。それでいて追徴税額の総額は3,407億円へ増え、直近十年で最も高い値になっています。一件あたりでは6,342,000円です。
この数字は平均であって、自社が税務調査を受けた場合に見込まれる追徴課税の額ではありません。金額の大きい事案が全体を押し上げる性質があるため、多くの会社にとっての実感より高く出ます。ここは冷静に読み分けたいところです。
意味があるのは、件数が減っても総額が増えているという傾向そのものです。同じ人手をどこへ置くかという配分が変わっている。KSK2をめぐる議論の中身は、突きつめるとこの配分の話に行き着きます。
簡易な接触の方も見ておきます。法人税と消費税では85,000件が行われ、追徴税額の総額は265億円でした。一件あたりの重さは実地調査よりずっと軽く、早い段階で片づけば追徴課税も小さくとどまることが読み取れます。
重さを分けるもう一つの軸が、加算税の種類です。行政指導を受けて自主的に申告書を出し直した場合と、税務調査で指摘を受けてから修正した場合とでは、賦課される加算税が変わります。対応の早さが、そのまま追徴課税の総額を左右するのです。
中小企業にとっては、この差は資金繰りの差でもあります。KSK2で何が起きるかを想像するより、届いた照会に早く答えるほうが、追徴課税を軽くする現実的な手段になります。
下の表は、公表された事績の主な数字を並べたものです。自社の規模と比べるためではなく、全体がどちらへ動いているかを見るための表として読んでください。追徴課税の水準も、その動きの一部です。
| 項目(法人税・消費税) | 令和5事務年度 | 令和6事務年度 | 対前年比 |
|---|---|---|---|
| 実地調査の件数 | 59千件 | 54千件 | 92.6% |
| 申告漏れ所得金額 | 9,741億円 | 8,198億円 | 84.2% |
| 追徴税額の総額 | 3,197億円 | 3,407億円 | 106.6% |
| 調査1件当たりの追徴税額 | 5,497千円 | 6,342千円 | 115.4% |
| 簡易な接触の件数 | 75千件 | 85千件 | 113.4% |
もう一枚、加算税も並べておきます。総額を押し上げるのは本税そのものより、そこに乗る加算税と延滞税だからです。どの経路で誤りを直したかによって、加算税の計算ルールが変わります。
割合は国税通則法に定められており、税目が変わっても考え方は共通です。KSK2への更改でこの割合が動くわけでもありません。下の表は、法人税と消費税を念頭に、公表されている割合を並べたものです。
| 誤りを直した経路 | 課される加算税 | 割合 | 延滞税 |
|---|---|---|---|
| 調査の通知前に、自主的に修正申告した | 過少申告加算税は課されない | ― | 納付の要あり |
| 行政指導を受けて、自主的に修正申告した | 過少申告加算税は賦課されない | ― | 納付の要あり |
| 調査の通知後・更正の予知前に修正申告した | 過少申告加算税 | 5%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は10%) | 納付の要あり |
| 調査の指摘を受けてから修正申告した/更正を受けた | 過少申告加算税 | 10%(同じく超える部分は15%) | 納付の要あり |
| 申告していなかった(調査の通知前に自主的に期限後申告) | 無申告加算税 | 5% | 納付の要あり |
| 申告していなかった(調査の通知後・決定の予知前) | 無申告加算税 | 50万円までの部分10%/50万円超300万円までの部分15%/300万円を超える部分25% | 納付の要あり |
| 申告していなかった(調査を受けた後) | 無申告加算税 | 50万円までの部分15%/50万円超300万円までの部分20%/300万円を超える部分30% | 納付の要あり |
| 仮装・隠蔽があったと認定された(過少申告の場合) | 重加算税 | 35%(過去5年以内に無申告加算税・重加算税を課されたことがあるときは45%) | 納付の要あり |
| 仮装・隠蔽があったと認定された(無申告の場合) | 重加算税 | 40%(同じ場合は50%) | 納付の要あり |
無申告加算税の三百万円を超える部分の割合は、令和六年一月一日以後に法定申告期限が到来するものから適用されます。加えて、調査で帳簿の提示や提出を求められたのに応じなかった場合や、帳簿への売上金額の記載が本来の額の二分の一に満たなかった場合には、さらに一〇%が加算されます。三分の二に満たない場合は五%です。
この加重は、前の見出しで触れた「探せば出てくる状態にしておく」という話と、そのまま地続きです。帳簿を出せないこと自体が、加算税の割合を押し上げる仕組みになっています。
修正申告書(期限後申告に係るものを除きます。)が、調査通知以後に提出され、かつ、その提出が調査による更正を予知してされたものでない場合には、その申告に基づいて納付すべき税額に5%(期限内申告税額と 50 万円のいずれか多い額を超える部分は 10%)の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課すこととされました。
出典:国税庁「加算税制度(国税通則法)の改正のあらまし」(平成28年12月・2026年8月取得)/加算税制度の改正のあらまし(PDF)。無申告加算税の割合および加重措置は国税庁タックスアンサーNo.2024(令和7年4月1日現在法令等)による。
この表で見ておきたいのは、上へ行くほど軽く、下へ行くほど重いという並びです。誤りの中身が同じでも、気づいた時期と直した経路で結果が変わります。だから「早く動く」ことに意味が出てきます。
そして最下段の重加算税だけは、性質が違います。単なる誤りではなく、事実を仮装または隠蔽したと認定された場合のものです。ここを避けるために必要なのは節税の工夫ではなく、記録をそのまま残しておくことに尽きます。
資金繰りの面では、指摘を受けてから納付までの期間が短いことも押さえておきたいところです。金額が大きくなりそうだと感じた時点で、顧問税理士と資金の手当てを並行して相談しておくと、決算や賞与の資金と衝突せずに済みます。
もう一つ見落とされやすいのが、法人税の修正が住民税や事業税へ波及することです。国税の追徴だけを見て資金を用意すると、地方税の分が後から乗ってきます。総額の見積もりは、必ず地方税を含めた形で顧問税理士に出してもらってください。
消費税の扱いも同じです。売上の計上時期が動けば、法人税と消費税の両方に影響します。表の一件あたりの数字が法人税と消費税の合計で示されているのは、実務でも両方が同時に動くからです。
ここまでを踏まえると、追徴課税を軽くする方法は二つしかないことが分かります。誤りを作らないことと、作ってしまった誤りに早く気づくことです。前者は日々の処理の話、後者は届いた書面への反応の速さの話であり、どちらも特別な知識を必要としません。
このような行政指導に基づき、納税者の方が自主的に修正申告書を提出された場合には、延滞税は納付していただく場合がありますが、過少申告加算税は賦課されません(当初申告が期限後申告の場合は、無申告加算税が原則5%賦課されます。)。
出典:国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」問2(令和8年7月時点・2026年8月取得)/FAQ(PDF)
KSK2への更改後でも、事前通知から終了までの手続は法令のまま動かない
備えを考えるうえで、KSK2でも変わらない部分を知っておくことは、変化を知ることと同じくらい役に立ちます。税務調査のうち実地の調査を行う場合、原則として相当の時間的余裕を置いて、電話等で通知が行われることになっています。
通知で伝えられるのは、実地の調査を行う旨、始める日時と場所、対象となる税目と課税期間、そして目的です。ただし、なぜ自社が選ばれたのかという理由は、法令上の通知事項ではなく、説明されません。
日時は動かせないものではありません。都合が悪ければ申し出てよく、申告や決算の繁閑にも配慮して調整することとされています。申し出の方法に決まりはなく、口頭で差し支えないとされています。
顧問の税理士がいる場合、税務代理権限証書に同意の記載があれば、事前の連絡はその税理士に対して行えば足りることになっています。中小企業では、誰が最初の電話を受けるかを決めておくだけで、社内が慌てずに済みます。
この同意の記載があるかどうかは、意外と確かめられていません。顧問税理士に一度確認し、なければ次の申告のときに入れてもらう。それだけで、最初の連絡が社内ではなく専門家のところへ入る形になります。
終わりの際の手続きも定められています。更正決定等をすべきと認められる非違があれば、その額と理由の説明があり、そのうえで修正申告が勧奨されます。応じるかどうかは納税者の任意です。
応じなければ更正等の処分になりますが、応じなかったことを理由に不利な取扱いを受けることは基本的にないとされています。もっとも、修正申告書を出すと不服申立てはできなくなる点は押さえておく必要があります。
いったん終わった税目と課税期間について、原則として再び税務調査を受けることはありません。例外は、新たに得られた情報に照らして非違があると認めるときです。KSK2への更改を経ても、この骨格は書き換わりません。
加算税の賦課決定も不利益処分にあたるため、理由が附記されます。何かを指摘されたとしても、根拠の書かれていない紙が届くことはない、ということです。帳簿書類と突き合わせて読めば、争点の所在が見え、追徴課税の内訳がどこから来ているのかも追えます。
- 通知される事項……実地の調査を行う旨、開始の日時、開始の場所、調査の目的、対象となる税目、対象となる課税期間、対象となる帳簿書類その他の物件
- 通知されない事項……自社が調査対象として選ばれた理由
- 申し出てよいこと……日時の変更(決算期や繁忙期を理由にした調整の申し出を含む)
- 任意であること……修正申告の勧奨に応じるかどうか
- 失われる権利……修正申告書を提出した場合、その部分についての不服申立て
- 確かめておくこと……税務代理権限証書に、顧問税理士への事前通知に関する同意の記載があるか
税務調査の流れも、順番で覚えておくと落ち着けます。通知が届いてから終わりまでは、おおむね次のように進みます。
まず事前の通知があり、日時と場所、税目と課税期間が伝えられます。ここで日程の調整を申し出るなら、この段階です。次に、決められた日に税務調査が始まり、質問と、帳簿書類の提示・提出の求めが行われます。
その後、内容の確認と、事実関係のすり合わせが行われます。見解が分かれる論点があれば、この段階で双方の言い分が出そろいます。納得できない点は、その場で黙って受け入れる必要はありません。
最後に、非違があるかどうかの結論が示されます。非違がなければその旨の通知書が書面で交付され、非違があれば額と理由の説明があり、修正申告が勧奨されます。応じるかどうかを決めるのはこの場面です。
この流れのどこにいるのかが分かっていれば、次に何を求められるかも読めます。社内で慌てが出るのは、多くの場合、今どの段階なのかを共有できていないときです。顧問税理士に同席してもらう会社では、段階の区切りごとに一度整理する時間を取るとよいでしょう。
なお、税務調査の期間中に、社内の別の担当者へ直接質問が及ぶこともあります。答えられないことを無理に答える必要はなく、確認して後日回答する、で構いません。曖昧なまま答えたことが、あとから食い違いとして残るほうが厄介です。
帳簿書類の提示と提出は、KSK2のもとでデータのまま求められる場面が増えていく

手続きの骨格は動かない一方で、やり取りの形は明らかに変わってきています。求められた帳簿書類が電磁的記録である場合の扱いは、令和8年7月に改訂されたFAQに整理されています。
提示は、内容を画面に映して調査官が確かめられる状態にすれば足ります。提出については、印刷して渡す、持参された媒体に保存する、あるいは電子申告やオンラインストレージ、メールを使って送るという方法が示されています。
将来像の資料でも、会議システムを用いた遠隔でのやり取りや、電子申告等を使った帳簿書類の受け渡しを積極的に用いていく方針が示されています。訪問して机を並べる形だけではなくなる、ということです。
この変化は、税務調査に向けた準備の質をそのまま映します。探せば出てくる状態なら、画面を見せるだけで話が終わります。逆に、どこにあるか分からない状態だと、探す時間そのものが日数として積み上がります。
預かりの手続も知っておくと安心です。書類を持ち帰る必要があるときは必要性の説明があり、承諾を得たうえで行われます。承諾なく強制的に留め置かれることはない、と明記されています。
返してほしいと申し出た場合も、特段の支障がない限り速やかに返却されます。時間がかかる場合には理由の説明があり、納得できなければ再調査の請求や審査請求という道も用意されています。
なお、正当な理由なく提示や提出を拒んだり、虚偽の記載をしたものを出したりした場合には、一年以下の拘禁刑または五十万円以下の罰金という罰則があります。KSK2に限った話ではなく、制度として置かれている定めです。
中小企業であれば、税務調査で求められる帳簿書類の置き場所は数えられる程度でしょう。数が少ないうちに一覧にしておけば、画面を開くまでの時間が短くなります。探す時間が短いほど論点は広がりにくく、結果として追徴課税の幅も抑えられます。
もう一点、実務で詰まりやすいのが権限の設定です。会計ソフトや経費精算のサービスに、経理担当者しか入れない設定になっていると、その人が不在の日に画面を出せません。経営者と顧問税理士にも閲覧できる権限を持たせておくのが、地味ですが効きます。
クラウド型の会計ソフトを使っている場合は、顧問税理士とデータを共有している会社が多いはずです。共有の範囲がどこまでかを一度確かめ、共有されていない領域(給与、契約書、稟議の記録など)を書き出しておくと、当日の段取りがそのまま組み立てられます。
棚卸しの単位は、次のように分けておくと抜けが出ません。種類ごとに、形式と置き場所と、出せる人を書き添えるだけです。作るのに半日もかかりません。
- 会計の記録……総勘定元帳、仕訳帳、補助簿(会計ソフト内かデータか、書き出せる形式は何か)
- 証憑……請求書、領収書、納品書、検収書(紙のファイルか、電子で保存しているか)
- 契約の記録……基本契約書、個別契約書、業務委託契約書(原本の保管場所と、写しの所在)
- 資金の記録……預金通帳、ネットバンキングの明細、手形・小切手の控(照会できる期間も併せて)
- 人にかかわる記録……賃金台帳、源泉徴収簿、扶養控除等申告書(給与ソフトの権限を持つのは誰か)
- 社内の決裁……稟議書、取締役会・株主総会の議事録(電子承認の場合は履歴の出し方)
- 在庫の記録……棚卸表の原本、評価の方法が分かる資料、廃棄の記録
- 顧問税理士が保管しているもの……申告書控、決算の内訳書、預けたままの証憑(返却の要否も確かめる)
この一覧の最後の行が、実は重要です。決算のたびに資料を預け、そのまま事務所に残っているケースは珍しくありません。どこに何があるか分からないまま日が過ぎると、聞かれたときに二か所へ問い合わせることになります。
一覧ができたら、共有の場所に一枚だけ置き、更新した日付を書き添えておきます。古い一覧ほど混乱を招くので、年に一度、決算の後に見直す約束にしておくと維持できます。
一方、提出については、電磁的記録を調査担当者が確認し得る状態でプリントアウトしたものをお渡しいただく場合、調査担当者が持参した電磁的記録媒体への記録の保存(コピー)をお願いする場合又はe-Tax、オンラインストレージサービスやメールを利用してご提出いただく場合がありますので、ご協力をお願いします。
出典:国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」問5(令和8年7月時点・2026年8月取得)/質問検査権・留置きに関する事項
KSK2で最初に目に入る変化は、通知に印字される番号である
KSK2で変わるもののうち、経営者がいちばん先に目にするのは通知の見た目でしょう。税務署から送られる通知等には、その一通を特定するための番号として、13桁の「お問い合わせ番号」が印字される予定です。
この番号を担当者に伝えれば、どの通知の話かがすぐに特定されます。以前は手元の書面を読み上げながら照合していた場面が、番号ひとつで済むようになる、という改善です。
納付書や所得税徴収高計算書でも、これまでの八桁の「整理番号」欄が、13桁の「お問い合わせ番号」欄に置き換わります。社内の記入見本や外注先へ渡す指示書を作り直す必要が出てきます。
もう一つ、処分通知等の電子交付についても対象が広がります。同意の取り方が、申請等のたびに行う個別のものから、事前の一括同意へ変わる予定です。手続きの入口が変わるということです。
電子交付を希望する場合は、これまで利用していた人も含めて、令和8年9月24日以降に電子申告の画面上で一括同意を行うよう案内されています。従来どおりのつもりでいると、同意が抜け落ちます。
受け取り方が変わるということは、社内で誰が最初に見るかを決め直す機会でもあります。紙で届いていたころは郵便物を開ける人が窓口でしたが、電子交付では画面を見る人が窓口になります。
ここを決めずにいると、届いていたのに気づかなかった、という事故が起こり得ます。KSK2への備えとして、まず手をつけられるのは、この受け取りの窓口を一人決めておくことです。
番号が入ることは、こちらから問い合わせるときにも効きます。KSK2のもとで税務調査に関わる連絡かどうかを電話口で確かめるにも、13桁を読み上げれば話が早い。更正や加算税の賦課決定といった、追徴課税につながる通知でも同じです。
下は、KSK2で切り替わる箇所を新旧で並べたものです。社内の書式や手順書のうち、どれを差し替えるかを判断する材料として使えます。
| 切り替わる箇所 | これまで | 更改後(令和8年9月24日以降) | 社内で直すもの |
|---|---|---|---|
| 納付書・所得税徴収高計算書の番号欄 | 「整理番号」欄(8桁) | 「お問い合わせ番号」欄(13桁) | 記入見本、外注先への指示書 |
| 税務署から届く通知等 | 番号による特定なし | 13桁の「お問い合わせ番号」を印字 | 問い合わせ時の連絡メモの様式 |
| 処分通知等の電子交付への同意 | 申請等の都度の「個別同意」 | 事前の「一括同意」 | 更改後にe-Tax画面で同意し直す |
| 電子申告の接続 | 固定の番地を指定して接続 | 接続の都度変わる方式(URLで接続) | 社内ネットワークの設定(情報担当) |
| 書面の申告書・申請書等の様式 | 控用あり・配色あり | 控用なし・原則として白黒 | 控えの保管方法、回覧の手順 |
この表のうち、期限があるのは三行目の一括同意だけです。ほかは気づいたときに直せば足ります。裏を返せば、同意の切り替えを忘れると、届いているはずの通知が手元に来ない状態になり得るということです。
四行目の接続の設定は、経理ではなく情報を扱う担当者の仕事になります。社内に担当がいない会社では、会計ソフトの提供元か顧問税理士のどちらが面倒を見るのかを、先に決めておくと安全です。
処分通知等の電子交付の対象が拡大され、電子交付への同意方法が、申請等の都度必要であった「個別同意」から、事前の「一括同意」に変わります。
出典:国税庁「国税システムの更改について」(2026年8月取得)/処分通知等の電子交付の対象を拡大します
中小企業が備えるべきは、聞かれたその日に説明できる状態である

ここまでの内容を、明日から動かせる形にまとめます。中小企業にとってのKSK2への備えは、制度を丸ごと覚えることではなく、資料を出せる形に整えておくことに尽きます。順番も難しくありません。
最初にやるのは置き場所の一覧づくりです。総勘定元帳、請求書と領収書、契約書、預金の記録といった帳簿書類が、それぞれどこにあるのか。紙なのかデータなのか。この一枚があるだけで、いざというときの日数が変わります。
次に、数字が大きく動いた勘定について、理由を一行ずつ書き添えておきます。売上が伸びた、原価率が上がった、経費に新しい科目が増えた。理由が書いてあれば、聞かれた場にそのまま持ち出せます。
ただし、何をどこまで整えるべきかは会社の規模で変わります。人が少ないうちは一人が全体を見渡せますが、拠点や部門が増えると、その前提が崩れます。下の表は、年商の規模ごとに詰まりやすい場所を並べたものです。
| 年商規模 | 経理の体制 | 詰まりやすいところ | 先に手をつけたいこと |
|---|---|---|---|
| 5,000万円前後 | 経理は一人、または経営者が兼務 | 担当者が不在だと何も出せない。紙とデータが混在している | 置き場所の一覧を一枚作る。会計ソフトの閲覧権限を経営者にも付ける |
| 3億円前後 | 経理2〜3名、購買や支払の窓口が分かれ始める | 部門ごとに契約書や請求書の保管場所が分かれ、経理が全体を把握できない | 部門別に保管の担当を決める。契約書の原本の所在を一覧化する |
| 10億円前後 | 経理部として独立、拠点や子会社が複数 | 拠点間で処理の基準が揃わない。グループ内取引の根拠資料が散る | 処理基準を文書化する。グループ内取引の契約と単価の根拠をまとめて保管する |
年商5,000万円を超えるあたりから、部門や拠点で保存の場所が分かれ始めます。誰も全体を一人では答えられない状態は、それだけで時間の損失になります。一覧を持つ人を決めるだけでも違います。
この規模では、顧問税理士との距離がそのまま準備の質になります。記帳を丸ごと任せている場合、社内には資料の原本しか残っていないことも珍しくありません。どちらが何を持っているかを一度そろえておくと、聞かれた日に迷いません。
年商3億円規模になると、購買や支払の窓口が複数に分かれ、経理だけでは全体をつかめません。KSK2への備えも、情報システムの担当者と現場を巻き込んだ形にしないと、一覧そのものが古びていきます。
この規模になると、月次の締めを翌月のいつまでに終えられるかが、実務上の対応力を大きく左右します。締めが遅れている会社は、過去の数字を説明する材料もそろっていないことが多いためです。まず締めの日を前へ動かすほうが、結果として近道になります。
年商10億円規模では、拠点や子会社ごとに処理の基準がずれていないかが論点になります。同じ取引を拠点によって別の科目で処理していると、その理由の説明から始めることになります。基準を一枚の文書にしておくだけで、説明の手間はかなり減ります。
この規模だと、顧問税理士に加えて、社内に一定の知識を持つ人を置いている会社も出てきます。それでも、経営者が全体の所在を把握していないと判断が止まります。詳しく知る必要はなく、誰に聞けば出てくるかを知っていれば十分です。
なお、規模が大きくなるにつれて、顧問税理士に求める役割も変わります。記帳の代行が中心だった関係から、資料の整え方や社内の体制まで一緒に見てもらう関係へ移っていく、という形です。KSK2への対応をどこまで任せられるのかは、KSK2への対応に税理士が必要な理由と、電子帳簿保存法との関係で整理しています。
ここで一つ申し添えると、こうした抜けは担当者の怠慢から生まれるものではありません。人数が限られたなかで日々の締めを回していれば、後回しになる仕事が出るのは当然です。責める先は人ではありません。
中小企業の強みは、決めれば翌日から変えられることです。KSK2という記号を意識するより、置き場所の一覧を一枚作るほうが、追徴課税を避ける近道になります。
体制を整えておくメリットは、税務調査や追徴課税の場面だけにとどまりません。融資の相談でも、事業を譲る話でも、聞かれた資料をその日に出せる中小企業は、話がまとまるまでの時間が短くなります。
最後に、進め方の順番だけ確かめておきます。一気にやろうとすると、たいてい途中で止まります。一週目に置き場所の一覧、二週目に数字が動いた勘定の理由書き、三週目に会計ソフトの権限の見直し。この程度の刻みで十分です。
三週目まで終われば、あとは維持するだけになります。決算の後に一覧を更新し、月次の締めのときに新しい通知が来ていないかを見る。年間で数時間の作業です。
そのうえで、自社だけでは判断がつかない論点が残ることもあります。過去の処理に迷いがある、拠点ごとの基準がそろっていない、といった場合です。そこは顧問税理士に、決算の相談とは別の時間を取って持ち込むのが早道になります。日々のやり取りに紛れさせると、たいてい流れてしまうためです。
KSK2で申告書の様式が新しくなる年は、社内で使う手引きも合わせて点検する
KSK2への更改に伴い、一部の書面の申告書や申請・届出の用紙、法定調書の様式が新しくなる予定です。書式だけの話に見えますが、社内の段取りにそのまま響くところがあるので、点検の対象として拾っておきます。
まず、控用が付かなくなり、色は原則として白黒に切り替わる予定だと案内されています。控えを綴じて回覧してきた会社では、提出を終えた証跡を何で残すのかを決め直すことになります。
手元にある用紙の在庫状況についても、あわせて確認が必要です。源泉所得税を毎月の納付書で納めているなら、手元にある分を使い切る時期と、新しい様式が始まる時期が噛み合うかを見ておくと、月末に慌てずに済みます。
電子申告の接続にも変更があります。固定の番地から接続のたびに変わる方式へ切り替わるため、番地を指定して接続している場合はURLでの接続に直す必要があります。これは経理ではなく情報の担当が対応すべき事項です。
文字の扱いも変わります。税務署から送られる文書や納税証明書等で使われる漢字と記号が、日本産業規格の第一水準から第四水準までとなるため、旧字体を含む名称では字形が置き換わる場合があります。
社名や代表者名に旧字体を使っている会社は、ここだけ先に確かめておくと安心です。届いた書面の字形が違っていても、それ自体は誤りではありません。取引先へ提出する納税証明書の字形が変わる可能性がある、という点だけ社内で共有しておけば足ります。
いずれも大きな作業ではありませんが、9月に入ってからまとめて気づくと窮屈になります。8月のうちに一覧にして、誰がいつ手をつけるかを埋めておくくらいで、ちょうどよい進み方です。
様式が変われば、記入見本も、外注先へ渡す指示書も、同じ日に使えなくなります。KSK2をめぐる税務調査への備えというより、日々の提出を止めないための作業として位置づけたほうが動きやすいはずです。
中小企業では、申告書の作成を顧問の税理士に任せていることが多いはずです。それでも、控えの綴じ方や番号欄の書き換えは社内の仕事として残ります。税務調査の話とは別に、ここは自社で拾う必要があります。
切り替えの時期に、顧問税理士の側のKSK2への対応が追いついているかを確かめておくのも一つです。連絡がないまま九月を迎えるようなら、そもそも情報の共有がどれくらいの頻度で行われているかを見直す機会にもなります。税理士の変更まで考える必要はありませんが、聞けば答えが返ってくる関係かどうかは、こういう場面で分かります。
- 新しい様式へ切り替わる書面……書面で出す申告の用紙の一部、申請や届出の用紙、法定調書、納付書と所得税徴収高計算書
- 見た目が変わる点……控用が付かなくなること、配色が原則として白黒になること
- 番号の置き換え……納付書等の「整理番号」欄(8桁)が「お問い合わせ番号」欄(13桁)に変わること
- 接続の設定……電子申告の接続先を、番地の指定からURLでの指定へ直すこと
- 文字の扱い……送付される文書や納税証明書等で使う漢字・記号が日本産業規格の第一水準から第四水準までになること
KSK2と国税の動向をめぐる情報は、読む場所を決めておくと追いかけやすい
制度が動く年は、情報が小分けに出てきます。まとめて発表されることはなく、案内が足されるたびに前提が少しずつ変わります。だからこそ、どこを見るかを先に決めておく効き目が大きくなります。
納税者に向けた案内は国税庁のサイトにあり、電子申告の仕様に関する情報はe-Taxのサイト側にあります。経営者や経理の担当者であれば、前者だけを追えば足ります。KSK2の仕様書まで見る必要があるのは開発をする側です。
税務調査の全体像を知りたい場合は、毎年12月ごろに出る報道発表資料が便利です。件数と追徴課税の総額、重点として置かれている課題、実際の事例までが数ページにまとまっており、噂話より早く実情がつかめます。
手続そのものについては、FAQに改訂の年月が記されています。どの問がいつ書き換わったかが分かるので、古い解説を読んでいないかを自分で確かめられます。
逆に、出どころのはっきりしない解説から読み始めると、いつの時点を指した話なのか見分けがつかなくなります。KSK2を扱った記事ほど、この点が曖昧なまま出回りがちです。日付の入った一次の資料を先に開き、解説はそのあとで読む。この順序であれば古い前提に足を取られずに済みます。
下に、見る場所と、見る時期の目安を並べておきます。全部を追う必要はありません。上から二つを押さえておけば、経営の判断に必要な情報はそろいます。
| 見る場所 | そこで分かること | 見る時期の目安 | 誰が見るか |
|---|---|---|---|
| 国税庁「国税システムの更改について」 | 様式・通知・番号・電子交付の変更点 | 更改前後は月に一度 | 経営者・経理 |
| 国税庁の報道発表(調査事績の概要) | 件数、追徴税額、重点として置かれた課題、事例 | 毎年12月ごろ | 経営者 |
| 税務調査手続に関するFAQ | 事前通知、質問検査、留置き、終了の手続 | 改訂の年月を確かめたいとき | 経理・顧問税理士 |
| 税務行政の将来像(最新版) | 中期の方針、システムと分析の使い方 | 公表されたとき | 経営者 |
| e-Taxサイトの仕様・お知らせ | 接続方式、電子申告の仕様変更 | 更改前後 | 情報担当・会計ソフトの提供元 |
ひと月に一度、案内のページを開く日を決めておきます。中小企業であれば、経理の月次の締めに紛れ込ませてしまうのが確実で、更新を見落とす事故はほぼなくなります。
もし、こうした変更点の連絡が顧問税理士から届いていないなら、それは情報の共有の頻度を話し合う機会です。どこまでを見てもらう関係なのかを確かめる話として持ち出せば、角も立ちません。KSK2そのものの全体像から確かめたい場合は、KSK2とは何か、国税庁のAIチェックに中小企業が備えるべきことから読むと順序がつかめます。
KSK2という言葉に落ち着かない気持ちになったときこそ、一次の資料に戻るのが早道です。書いてあることは案外そっけなく、そのそっけなさが、そのまま備えの輪郭になります。
税理士コンシェルジュ事務局からのコメント
KSK2による税務調査について寄せられるご相談は、「うちは選ばれるのか」という不安から始まることがほとんどです。ただ、KSK2の公表資料を一緒に読んでいくと、話はたいてい「聞かれたときに出せるか」へ移っていきます。KSK2を必要以上に恐れず、置き場所の一覧と、数字が動いた理由の一行を用意しておく。この二つを持っている会社は、連絡が届いた日から落ち着いて動けています。