残業代を正しく計算していますか?知っておくべき残業代の基本ルール | 税理士コンシェルジュ

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残業代を正しく計算していますか?知っておくべき残業代の基本ルール

2020年5月9日
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残業代の出る仕組みや計算方法など残業代に関する基本ルールは、労働基準法で定められています。しかし、労働基準法上で決められている正しい計算方法で残業代を支払っていない会社は少なくありません。ですから、経営者は経理担当者はもちろんのこと、給与をもらっている従業員も残業代の正しい計算方法やルールを知っておくことはとても大切です。この記事では、残業代の正しい計算方法を中心に、残業代について詳しく解説していきます。

残業代の定義

残業代とは、会社で定められた所定労働時間を超えて働いた場合、給与と一緒に支払われる労働の対価のことです。労働時間には、労働基準法で定められている「法定労働時間」と、会社ごとに決めた「所定労働時間」の2種類あります。そして、残業代は実際に働いた時間が法定労働時間以内におさまっているか、それとも法定労働時間を超えているかによって計算方法が異なってきます。

法定労働時間とは?

法定労働時間とは、労働基準法で定められている労働時間のことです。法定労働時間は1日8時間以内、週40時間以内と規定されています。これは正社員、パート、アルバイトなど雇用形態問わず、すべての人がこのルールの対象となっています。

所定労働時間とは?

所定労働時間とは、各企業ごとに決められている始業時間から終業時間(休憩時間を除く)のことです。所定労働時間は、法定労働時間以内におさまっていれば、社内の事情に合わせて自由に決めることが認められています。

残業するには「36協定」を結ぶことが必須!

法律上、従業員が法定労働時間を超えて働くことは認められていません。事実、労働基準法32条では、「使用者は労働者に・・・1週間40時間を超えて労働をさせてはならない」、「使用者は労働者に・・・1日につき8時間を超えて労働をさせてはならない」などの規定を設けています。また、労働基準法35条では、「使用者は労働者に・・・毎週少なくとも1回の休日を与えるべき」とも規定されています。

しかし、事業をしている以上、どうしても残業や休日出勤が必要な場合があります。そのように会社側が従業員に対して、法定労働時間を超えて残業をさせる場合は、会社側と従業員の間で「36(さぶろく)協定」と呼ばれる特別な協定を結ばなければいけません。「36協定」という言葉を初めて聞いたという方もいるのではないでしょうか?残業をする前に、36協定についてしっかり理解しておくことは大切です。

36協定とは?

原則、会社側は、法定労働時間を超えて従業員を働かせることが禁止されています。しかし、会社側が労働組合、もしくは労働者の過半数以上に代表者と協定を結び、労働基準監督署に届出を提出している場合は、割増賃金を支払えば法定労働時間を超えても従業員を働かせることが認められます。この協定は、労働基準法36条に定められているため、「36(さぶろく)協定」と呼ばれています。

36協定に定められている基準

36協定を結んでいても、上限なしに残業ができるわけではありません。36協定には、延長できる労働時間の基準がしっかり規定されています。しかし、臨時的に残業時間が一時的に増える場合は、その旨を届出することで6ヶ月以内の限定で従業員を働かせることが可能となっています。

また、36協定では、1日8時間以内の労働であったとしても、22時から翌朝5時までの深夜労働をさせた場合は、深夜時間帯の労働は多めの給与を支払うよう規定されています。ただし、所定労働時間を短く設定している場合は、8時間に満たない労働時間だとしても割増賃金が発生すると定められています。

残業代の種類

残業代は、大きく3つの種類が存在しています。それは「法定時間外労働」「法定時間内残業」「深夜残業」です。

法定時間外労働と法定時間内残業

法定時間外労働とは、労働基準法で定められた労働時間(原則1日8時間・1週40時間)を超えた残業のことを指します。一方、法内残業とは、会社が定めた所定労働時間を超え、労働基準法で定められた労働時間内の範囲で行った残業のことを指します。次の例から法定時間外労働と法内残業についてみていきましょう。

例:午前9時から午後5時までの勤務で、休憩が1時間ある会社の場合は、会社が定めた所定労働時間は1日7時間になります。労働基準法では1日8時間までが労働時間として認められていますから、この会社は1時間短い所定労働時間と言えます。では、このケースで、午後20時まで残業をした場合は、どうなるのでしょうか?

午後17時から午後18時までの1時間は、所定労働時間は超えていますが、法定労働時間の範囲内の残業なので「法内残業」に該当します。そして、午後18時から午後20時までの2時間は、法定労働時間を超えているため「法定時間労働」に該当します。

深夜残業

深夜残業とは、就業時間が午後22時から翌朝5時までの時間帯に働く残業を指します。業種など事業所によっては深夜帯に業務を行う必要があります。労働時間が深夜帯になる場合は、所定労働時間または法定労働時間に該当しているとしても、「割増賃金」を支払うことが義務付けられています。

割増賃金の支払い義務があるのは「法定時間外労働」だけ

残業には上記で述べた2種類ありますが、そのうち「法定時間外労働」だけ労働基準法によって支払い義務が定められています。つまり、法内残業に関しては、労働基準法上では割増賃金の支払い義務が規定されていないということです。そのため、法内残業をした場合の賃金の有無、金額などは、労働契約もしくは就業規則(賃金規定)などの規定に定めておく必要があります。

なお、常時10人以上の労働者(パートやアルバイトなども含む)を使用している事業所では、就業規則が作成されているはずですので、自社の残業代のルールを知らない方は確認してみることができるでしょう。

残業代の計算方法とは?

残業代の計算ルールは、普段の給料に何倍増して支払うか、ということが基本となります。そのため、まず時給を算出する必要があります。

時給の計算方法

具体的には、まず時給(月給や日給の場合は時給に換算した金額)を1と考えるため、1時間当たりの賃金を計算します。月給の場合は、「月給(円)÷1ヶ月あたりの平均所定労働時間(時間)=時給」という算式で求めます。また、1ヶ月当たりの平均所定労働時間は、「(365日-年間所定休日)×1日の所定労働時間÷12ヵ月」という算式で計算します。

その後、時給が算出できたらそれを1と考え、「割増率」と呼ばれる数字を決めます。例えば、残業代の割増率を0.25と規定したら、時給が1,000円の場合はその1.25倍の1,250円が残業代となります。

残業単価の計算対象外となる手当

月給や日給を時給に換算する際、手当も計算に含めることができますが、労働基準法では、一部の手当については、残業手当の単価を計算する際に除外することが認められています。それは家族手当、通勤手当、単身赴任手当、住宅手当、子女教育手当、臨時賃金、1ヶ月を超える期間ごとに支払う賃金などの7種類の手当です。

各種手当は、法律で定めている手当に即しているかどうかを判断基準としています。そのため、残業代を節約するために名称を変えたとしても、除外できるわけではありません。

・家族手当
扶養家族の人数に合わせて支給額が決定される家族手当の場合、扶養の家族に人数に合わせて手当を支給しているかどうかが判断の基準となります。例えば、家族手当を配偶者は1万円、配偶者以外の家族は5千円と規定している場合、配偶者1人扶養家族が2人いる従業員に家族手当を2万円支給しているなら、残業代単価の計算から除外することができます。

一方、扶養家族の人数を問わずに一律1万円と規定している場合は、家族手当を残業代単価の計算に含める必要があります。

・通勤手当
通勤距離や通勤にかかる費用に応じで支給額が決定される通勤手当の場合、実費もしくは距離に応じて通勤手当が支給されているかどうかが判断の基準となります。つまり、異動距離に合わせて通勤手当が支給されている場合は、残業代単価の計算から除外できます。しかし、1日○○円など一律に通勤手当を支給している場合は、通勤手当を残業代単価の計算に含める必要があります。

・住宅手当
住宅に要する費用に応じて支給額が決定される住宅手当の場合も、住宅に要する費用に応じて手当を支給しているかどうかが判断基準となります。例えば、、家賃もしくは住宅ローンの返済額に一定の支給率をかけた住宅手当を支給している場合や、家賃もしくは住宅ローンの返済額に応じて段階的に手当支給している場合などは、残業手当の単価から除外することができます。

しかし、住宅手当の支給額(支給の有無)を賃貸かどうか、持家かどうか、扶養家族の有無、役職などを判断基準としている場合は、住宅に要する費用が支払われているため除外することはできません。

残業時間

残業時間は、所定労働時間を超えた分を残業時間として計算することができます。つまり、労働者が使用者の指揮監督下のもとにいれば、始業時間から就業時刻までの間が労働時間となるため、所定労働時間を超えた分を残業時間に該当します。しかし、使用者の指揮監督下のもとにいない休憩時間、有給休暇などは実働時間時間には該当しません。ただし、休憩時間中に使用者から指示があり、作業に戻った場合は労働時間となります。

残業の種類

残業は、いくつかの種類に分類されています。残業の種類と最低割増率は、次のように定められています。

・時間外労働(1日8時間、週40時間を超える法定労働を超える労働)
最低割増率:0.25%

・深夜労働(午後10時~翌朝5時までの労働)
最低割増率:0.25%

・時間外+深夜労働(1日8時間、週40時間を超えで、午後10時~翌朝5時までの労働)
最低割増率:0.5%

・休日労働(会社で定めた所定休日)
なし

・休日深夜労働(会社で定めた所定休日の深夜労働時間)
最低割増率:0.25%

・法定休日労働(法定休日週1日もしくは4週4日の労働)
最低割増率:0.35%

・法定休日+深夜労働(法定休日の深夜労働)
最低割増率:0.6%

勤務体系別の残業代

残業代は上記でみたような労働時間や時間帯だけでなく、勤務体系別で考えることもあります。では、勤務体系別の残業代の考え方についてみてみましょう。

裁量労働制

裁量労働制は、あらかじめ設定した時間を働いた時間とみなす「みなし労働時間」を定めた勤務体系となっています。一般的な勤務体系とは違い、業務の性質上、勤務時間帯が決められないため出退勤が自由なことが特徴となっています。つまり、裁量労働制には、出勤と退勤の概念がないのです。そのため、1日のうちどの時間帯でも働くことができます。

例えば、みなし労働時間が8時間と設定されている場合、1日6時間働いた日でも8時間労働として扱われます。それとは逆に、1日10時間働いた日も8時間労働として給与が計算されます。しかし、1ヶ月単位の総労働時間が法定労働時間を超えた場合は、残業代が発生することになります。裁量労働制の場合、月の残業代をあらかじめ規定し、固定額を支払う形式が一般的となっています。

フレックスタイム制

フレックスタイム制は、労働者が始業時刻と終業時刻を自由に決めることができる勤務体系となっています。つまり、出勤時間を1時間早めれば、退勤時間を1時間早めることができます。フレックスタイム制の場合、残業代は月単位、もしくは年単位で精算することが一般的となっています。

具体的には、月単位の場合は30日で171.4時間、31日で177.1時間を超えた分は残業として扱われます。そのため、1日8時間以上働いたとしても、精算時に実働時間の合計が所定労働時間を超えていなければ残業時間として認められません。

変形労働時間制

変形労働時間制は、月単位もしくは年単位で労働時間を調整する勤務体系となっています。。フレックスタイム制同様、変形労働時間制の場合も月単位、もしくは年単位で労働時間が計算されます。しかし、変形労働時間制は、あらかじめ設定した日や週以外で法定労働時間が超えた場合は、残業代を支払わなければいけません。この勤務体系は、土日出勤が多い業種や勤務時間が不規則になりがちな職種などによく採用されています。

日給制

日給制は、1日単位で金額を定め、勤務日数に応じて賃金を支払う勤務体系となっています。主に日雇い労働者や派遣労働者を使用するときに利用されています。日給制だとしても、労働者一人ひとりに労働基準法が適用されるため、所定労働時間を超えた場合は残業代を支払わなければいけません。つまり、所定労働時間である8時間を超えた場合は、法定外残業として扱われます。

年俸制

年俸制とは、年単位で労働契約を結び報酬が支払われる勤務体系のことです。年単位で評価を下されるため、結果を残すことができなければ年俸は下がります。年俸制と聞くと残業とは無関係のように思われがちですが、年俸制だとしても労働基準法が適用されるため、残業代を支払う必要があります。そのため、法定労働時間以上の労働をした場合は、残業代が発生することになります。

しかし、年俸制でも残業代が発生しないケースもあります。それは、個人事業主と業務委託契約を結んでいる場合は、残業代が発生しません。なぜなら、個人事業主が税金や給与、社会保障などが労働基準法で保護されていないからです。

管理職

労働基準法では、労働者が管理職の場合は残業代を支払う義務はない、と規定しています。その理由は、経営者に近い権限を与えられていること、始業と終業時間が自由であること、他の労働者よりも高い優遇と給与を受けていること、などの状況下で働いているからです。

従業員から残業代の未払いを請求されたら?

従業員から未払い残業代を請求されるトラブルはよく発生しています。そのような場合、必ずしも請求された金額を全額支払わなければならない、というわけではありません。会社側はまず、法律上どのような反論ができるかを検討することができます。では、従業員から未払い残業代を請求されたときに、会社側が確認すべき5つのチェックポイントをみてみましょう。

1、残業代について消滅時効が成立しているかどうか?

まず残業代の消滅時効が成立しているかどうかを確認することができます。残業代の請求権は、労働基準法150条によると、給与の支払日の翌日から起算して、一定期間(2年)を経過すると消滅時効が完成すると規定されています。つまり、請求されている未払いの残業代の支払日から2年経過しているなら、消滅時効が完成しているため、支払義務が消滅しています。(ただし例外ケースもあり、2年分以上の請求が認められることもあります)

このように残業代についての消滅時効が成立していることを「時効の援用」といいます。なお、時効の援用は口頭で伝えるだけでも成立しますが、時効援用通知書を作成し、内容証明郵便で送付するならその事実を証明することができます。

2、従業員が主張している労働時間は正しいか?

従業員が主張している労働時間が、使用者が指揮下に置いた時間と異なっていないかどうかを確認することもできます。必ずしも従業員が主張する請求が正しいという保証はありません。請求の根拠となっている資料などと事実を確認しましょう。

3、残業禁止令を出していなかったか?

会社が残業禁止命令を従業員に出していた場合は、従業員が残業代を請求してこてもそれを否定することが可能です。しかし、ただ「残業を禁止する」という命令だけでは残業代を支払わない根拠になりません。残業を禁止するという命令に加えて、財務についての具体的な指示まで出しておかなければいけません。

4、管理職は残業代は発生しない

先述したように、管理職には残業代が発生しないことが、労働基準法で定められています。つまり、残業代を請求した従業員が管理職に該当するなら、会社側は残業代を支払う義務はありません。しかし、深夜労働に対する割増賃金は、管理職に該当する従業員にも支払う義務があるので注意が必要です。

5、固定残業手当で残業代は支払済みになっていないか?

みなし残業など毎月固定の残業代を支給している会社であれば、雇用契約書や就業規則の規定を確認することができます。たいてい残業代は支払い済みになっているはずです。その際、固定残業代制度が法律上有効かどうかを前もって確認しておかれることをおすすめします。

残業代請求を放置するとどうなる?

労働者は、労働基準法によって雇用、給与、税金、社会保障などが保護されています。したがって、雇用主は労働基準法を遵守することが義務付けられています。もし規定を破った場合は、罰則や罰金などのペナルティが科されることもあります。残業代の未払いに関しては、労働基準法違反に当たるため、6ヶ月以下の懲役、もしくは30万円以下の罰金が科されます。

また、従業員が在職中は年6%、退職後は年14.6%の遅延損害金が発生したり、従業員から労働審判を申立られることもあります。裁判まで発展すれば、残業代未払いトラブルは長期化して遅延損害金が増すだけでなく、残業代の額と同額の付加金の支払いが追加されることもあります。

さらに残業代を支払わないブラック企業としてインターネット上などで噂が広がり、会社の事業に大きなダメージを受ける可能性もあります。このように残業代に関するトラブルは、経営者にとって事業リスクのひとつとも言えます。トラブルが長期化すればするほどデメリットも増えてきますので、残業代を正しく計算し、健全な会社を運営することはとても重要と言えるでしょう。

まとめ

残業代には、基本となる賃金や残業代計算の基にする時間、法定労働時間と所定労働時間、さまざま勤務体系など多くのことが関係してきます。そのため、残業代を計算することは複雑で間違えやすい作業としても知られています。また、残業代は経営トラブルとして発生しやすいものです。

ですから、経営者はもちろん、経理担当者は従業員一人ひとりの残業代を正しく計算することはとても大切です。残業代の計算方法などで分からないことや悩みがあるなら専門家の税理士、また従業員から残業代を請求されているなら専門家の弁護士に相談することができるでしょう。


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