マイナンバー制度のメリットとデメリット
2015年にマイナンバー制度が始まり、早くも数年経過しました。マイナンバー制度が導入したことで、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?この記事では、マイナンバー制度について徹底解説していきます。
目次
マイナンバー制度とは?
マイナンバー制度とは、皆さんもご存知の通り、住民票を持つ日本国内の全住民一人ひとりにマイナンバー、個人番号が与えられる制度です。マイナンバーは、12桁の番号で成り立っており、主に社会保障、税金、災害対策などの分野で効率的に情報を管理し、活用されています。
マイナンバー制度で掲げられた当初の目的とは?
政府はマイナンバー制度を導入する際に、3つの目的を掲げました。それは行政の効率化、国民の利便性の向上、公平や公正な社会を実現することの3つです。
1、行政の効率化
マイナンバー制度を導入することで、行政機関や地方公共団体などの連携がスムーズになるため、行政が効率化します。また、災害時に作成される被災者台帳にもマイナンバーが活用されるので、確認作業や手間などが軽減します。
2、国民の利便性の向上
マイナンバーが導入する前は、年金などの社会保障や税金関係の申請や手続きをするために、申請者は必要な書類を揃える必要がありました。マイナンバーを導入することで、申請者は添付書類不要で、行政機関へ提出することが可能となります。
また、行政機関に登録されている自分の情報を簡単に確認することができます。このように行政手続きを簡素化することで、国民の利便性の向上につながります。
3、公平や公正な社会の実現
マイナンバー制度を導入することで、所得などの受給状況をより正確に把握することが可能となります。それにより、きめ細やかな社会保障度設計を目指し、公平で公正な社会を実現することを目的としています。
マイナンバー制度が導入されてから数年経過した現在では、主に行政分野での活用に限定されています。しかも行政分野の中でも税制、社会保障、災害対策など活用できる幅が限定されています。主に確定申告やe-tax(国税電子申告・納税システム)などに使用することができています。
では、マイナンバー制度にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?
マイナンバー制度のメリット
マイナンバー制度のメリットには、次のことが挙げられます。
メリット1:手続きが簡単になった
日本では、住民登録番号(住民票)、基礎年金番号(年金)、健康保険者番号(健康保険)、整理番号(税金)と様々な番号がすでに個人ごとに振り分けられており、それぞれの目的に合わせて使い分けなければいけませんでした。ある機関に書類を提出するためには、別の機関から書類を取得して添付する必要があったため、とても複雑で手間がかかりました。
しかし、マイナンバー制度が導入されたことにより、すべての番号がひとつに統一化され、行政への手続きが簡単になりました。
メリット2:マイナポータルの開設で必要な情報を受け取れる
マイナンバー制度の導入と同時に、マイナンバー制度に関する個人のポータルサイト「マイナポータル」が開設されました。
マイナポータルでは、自分の特定個人情報の閲覧、国や自治体との間で交わした特定個人情報の記録閲覧、予防接種や年金などのお知らせ情報の表示、引っ越しなどのライフイベントに関する手続きのワンストップサービス、各種電子私書箱、電子決済サービスなどが行えます。
メリット3:災害時の情報確保
マイナンバー制度を導入することで、災害時における正確な要支援者情報を確保することが可能となっています。自治体は必要に応じて家族の状況や持病、障害などを把握することができるので、要支援者のリストをしやすくなります。また、災害後の被災者生活再建支援金などを給付する際にも、個々の健康状態や資産状況を把握しやすいので、適切な給付につながります。
メリット4:生活保護の不正受給の回避
生活保護とは、生活が困窮している方を対象に、最低限の生活が送れるようにする支給する制度です。支給を受けるためにはいくつかの条件がありますが、そのひとつに収入の有無や貯蓄の有無の審査があります。
収入や貯蓄がない、と偽装して不正受給する方が多くいましたが、マイナンバー制度を導入することでその人の収入や資産が役所間で情報を共有できるようになります。そのため、今まで調査には限界がありましたが、生活保護の不正受給を回避することにつながります。
マイナンバー制度のデメリット
マイナンバー制度のデメリットには、次のことが挙げられます。
デメリット1:情報が流出する可能性がある。
マイナンバー制度は本来、社会保障、税制、災害対策などの分野で、効率よく情報を管理することを目的としていました。そのため、マイナンバーには、個人の様々な情報が入っています。
では、もし誰かにマイナンバーを誰かに知られてしまったらどうなるのでしょうか?
マイナンバー制度では、個人情報の流出を予防するため、制度面とシステム面から次のような措置を講じています。
制度面
本人確認の措置 |
番号法規定以外での特定個人情報の収集や保管は禁止 |
番号法規定以外での特定個人情報ファイルの作成は禁止 |
第三者による特定個人情報保護委員会による監視や監督 |
特定個人情報流出に対して罰則を強化 |
マイナポータルによる情報提供などの記録確認 |
システム面
個人情報を分散して管理 |
個人番号をダイレクトに使用せず、符号を用いた情報 |
アクセスを制御して閲覧者を制限 |
通信を暗号化 |
このようにそれぞれの機関がそれそれの個人情報を管理する「分散管理」方法を採用することで、個人情報の流出を予防することができますが注意は必要です。
デメリット2:なりすまし被害や事件の可能性
大小問わず、一般の企業や個人事業主が、従業員や取引先のマイナンバーを取り扱うことで、情報漏えいの危険性が高まります。
すでにアメリカや韓国などでは、マイナンバーともいえる「社会保障番号」を導入しています。アメリカでは社会保障番号が多くのIDと関連付けられており、社会保障番号自体が身分証明書として用いられることもあります。
そのため、「なりすまし」による被害が数多く報告されており、社会問題のひとつとなっています。このように社会保障番号を本人認証の手段として使用しているため、なりすまし被害が後を絶たないと言われています。
日本のマイナンバー制度は、アメリカでのデメリットの反省を活かし、マイナンバーを口頭で伝えることだけを本人認証として行うことはしていません。本人認証が必要な場合は、マイナンバーカードや運転免許証、パスポート等の顔写真付きの身分証明書も使って本人確認をすることが法律によって規定されており、行政の各機関には義務付けられています。
このような徹底的な本人確認をすることで、日本のマイナンバー制度ではなりすまし被害の発生を抑えることができています。
日本の「マイナンバー」とアメリカのマイナンバー「社会保障番号」の違いとは?
アメリカの社会保障番号は、その名前の通り、社会保障分野で個人を特定する番号制度として1936年に導入されました。社会保障番号は9桁の数字で構成されており、アメリカ国民はもちろんのこと、労働許可を持つ在留外国人(本人からの任意に申請)などにも発行されています。ひと昔前までは14歳前後までは社会保障番号を持つことはありませんでしたが、現在では出生と同時に社会保障番号発行の手続きが行われています。
上記でもみたように、アメリカでは社会保障番号を口頭で伝えるだけで本人認証できてしまうため、なりすまし被害が社会問題となっています。銀行口座の開設やクレジットカードの発行なども、社会保障番号を口頭で伝えるだけで簡単に手続きができてしまうのです。また、官公庁や大手企業、銀行などがハッキングされてしまい、社会保障番号が大量に流出する事件が起きています。
一方、日本のマイナンバー制度では、マイナンバーを用いた手続きをする際、個人番号カードや運転免許証、パスポートなど顔写真付きの証明書も併用した本人確認をすることが義務づけられています。また、民間事業者には、マイナンバーを法律規定外で用いることを厳格に禁止しているので、アメリカのように情報が流出することが社会問題へと発展することは回避できています。
マイナンバーの利用範囲を拡大
マイナンバーの利用範囲は、少しづつ拡大しています。福祉分野でも2018年から、健康保険証と一本化することが検討されていましたが、様々な問題があったためまだ現実化していません。今年2020年から利用を開始する予定でしたが、遅れているようです。いずれにせよ今後、様々な分野にわたってマイナンバーが利用されることが予想されています。
まとめ
マイナンバー制度には、メリットともあればデメリットもあります。当初掲げていた目的は、現段階ではすべて実現していませんが、メリットを得ることはできています。マイナンバー制度が導入された目的を理解していれば、事業主や個人としても作業を効率よく進めることができるでしょう。
今後、マイナンバーの利用範囲が、幅広くなることが予想されますので、マイナンバーの最新動向に注意していきましょう。
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