領収書等の保管は、紙でなくてもOKに?【オンライン化・ペーパーレス化】
日頃の経理や、確定申告のために領収書等を取っておかなくてはならない、ということは広く理解されているところだと思います。
業務に必要なものを買ったときや、交通費を負担したとき等、従業員は領収書を持って経理担当者のところに精算しにいきます。また、経理担当者や経営者の方からすると、そうして増えていく領収書をきちんと管理し、いざというときに備えるということは日頃から行われていることでしょう。
しかし、領収書やレシート、請求書といった各種書類は日々どんどん溜まっていきます。これらの保管にはスペースも必要ですし、担当者の労力も小さくはありません。どうして、領収書等は保管しなくてはならないのでしょうか? また、もっと楽に保管する方法はないのでしょうか?
目次
どうして税理士は「領収書を保管しておいて」と言うのか?
税理士も「領収書はきちんと保存しておいてください」と言うはずです。それは、領収書に限ったことではありませんが、帳簿や決算関係の書類は、法律により保管すべきと定められているためです。原則としては、確定申告書提出後7年間保存しなくてはなりません(書類等の種類や申告方法によっては、異なる期間が定められています)。
また、正確に金銭の流れを掴むことは、健全な経営や事業の発展のために必要なことでもあります。領収書等の保管は無意味に求められているわけではありません。しかし、やみくもにひたすら溜めていくこともお薦めできません。業務内容や社内体制にもよりますが、ペーパーレス化やオンライン化を上手く導入すれば、社内の負担を軽減できるためです。
領収書等の保管にも、オンライン化・ペーパーレス化の流れ
毎日のように発生する領収書等を保存するのは、なかなか大変なことです。ノートに貼り付けたり、ファイリングしたりといった方法で対応しているところが多いようです。
しかし、時間の経過により感熱紙レシートの文字が消えてしまうためにコピーをとったり、インターネットでの取引のために紙の領収書等が発行されずプリントアウトをしたり…といった手間も増えているのが実情です。社会でオンライン化・ペーパーレス化が進んでも、管理上の問題から紙にしている会社は少なくありません。
オンライン化・ペーパーレス化を加速する法整備
社会のオンライン化・ペーパーレス化の流れに伴い、法律や行政の対応も変化しています。例えば、2020年10月1日に「電子帳簿保存法」の改正法が施行されました。
「電子帳簿保存法」は、1998年に制定された法律で、紙の保存による負担を軽減するために作られたものです。この法律は、制定後もスキャナを用いた保存や、スマートフォンで撮影した領収書の画像も認める等、時代に合わせた改正が重ねられてきました。
電子帳簿保存法により、仕訳帳や総勘定元帳、決算書類等は電子保存、つまり、データによる保存が認められています。また、見積書や注文書等、取引関係書類についても一定の要件を満たせば電子保存可能とされてきました。2020年の改正法では、タイムスタンプの使用等により電子保存可能とされる対象範囲がさらに広がりました。
税理士を頼るのがオンライン化・ペーパーレス化の近道?
しかし、事前に届出が必要だったり、書類の内容によってスキャンの方法に指定があったりする等、すべてを自社内の手作業で対応していくということは難しい、というのが現状ではないでしょうか。
各種会計ソフト、会計サービスが展開されており、そうしたことに長けている経営者の方は自らが導入に取り組まれていますが、いざ導入となると時間的にも費用的にもそれなりの負担となります。本業で多忙を極めている経営者の方や、経理担当者が少ない・忙しい場合等の事情により、導入に踏み切れない会社も少なくありません。
また、こうしたサービスは日々刷新されていくものですが、古いタイプのサービスを利用したまま何年も経ってしまっているという会社もあります。どのサービスを更新すればよいのかわからないまま、不便さを感じながらも手をつけられない…という場合もあるでしょう。
しかし、法改正や行政対応変化の速度からも察することができるように、こうした流れについていくのは専門家でないとなかなか難しいものです。
オンライン化もペーパーレス化も、何か一つだけ、というわけにはいきません。領収書をペーパーレス化するのであれば、その領収書の内容を記録する帳簿はどのような形にするのか。契約書のやり取りをオンライン化するのであれば、取引先にはどのような対応を求めるのか。
新たなシステムを会社に取り入れると、細かな「では、これはどうする?」という業務のほころびのようなものが発生しがちです。安易にオンライン化・ペーパーレス化に踏み切った結果、経理や申告に不備が生じたり、税務調査が入った際にきちんと資料を提示できなかったりしては大変です。
自社の領収書等の保管についてかなりの負担が生じている場合や、会社全体としてオンライン化・ペーパーレス化を進めたい場合は、まずは税理士に相談してみることをお薦めします。
税理士が、オンライン化・ペーパーレス化に乗り気でない場合
オンライン化・ペーパーレス化は、時代の流れです。上記のように、領収書等の管理に加え、最近では新型コロナウイルス感染予防対策という側面からも、一層加速しているといえます。
例えば、2020年12月、国税庁がLINE公式アカウントを開設したことが大きな話題となりました。LINEを用いて、確定申告会場への入場整理券を事前発行や、所得税の確定申告に関する情報の検索ができるとのことです。
また、インターネット上で確定申告ができるe-taxの利用者は増えていますが、さらに2020年分の申告から最大65万円の控除を受けるために電子帳簿保存かe-Taxの利用が必要という要件が設けられました(青色申告)。近年ではスマートフォンによる申告の拡充も顕著で、一層オンライン化が進められていくことが予想されます。
参考:
国税庁 青色申告特別控除額・基礎控除額が変わります!!(pdf)
国税庁 スマホ × 確定申告 スマート申告始まります!
参考記事:
【e-tax申告】e-taxでスマホ確定申告も簡単に!申告の手順を解説
このような流れに無関係でいることは、経営上難しいといえます。もちろん、会社の規模や事業運営のスタイルによっては、オンライン化しないほうが煩雑にならずに済む場合や、紙での管理のほうが適している場合もあるでしょう。
しかし、経営者の方や経理担当者、従業員等が強く興味を示しているにも関わらず、税理士のほうは「領収書等はきちんと保管しておく」というところから一歩も歩み寄ってくれないようであれば、考えものです。一度、きちんと税理士と話し合い、それでも納得できないようであれば税理士の変更を視野に入れてもよいかもしれません。
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まとめ
「領収書等はきちんと保管しておく」ことが大切であることに、変わりはありません。しかし、その方法に変化が生じているのです。大量の紙を保管しておくこと、必要なときに必要なものが取り出せるようにしておくことの負担は小さいものではありません。
自社の現状と社内のニーズを検討し、オンライン化・ペーパーレス化を進めるメリットがあるようなら、一度税理士に相談してみることをお薦めします。
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