「軽減税率」がスタート!事業者が知るべき消費税8%と10%の影響とは? | 税理士コンシェルジュ

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「軽減税率」がスタート!事業者が知るべき消費税8%と10%の影響とは?

2020年3月19日
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消費税8%

昨年の10月から消費税の増税に伴い、消費税の「軽減税率」制度の導入も始まりました。この制度経過措置という位置づけになっており、国税庁はその期限は2023年(令和5年)9月末までとしています。消費税8%の軽減税率が導入されることで、消費者だけでなく、企業や経理事務などにも影響が出てきます。この記事では、軽減税率について分かりやすく解説していきます。

軽減税率とは?

2014年4月に消費税率が8%へ引き上げられた後、2015年10月から消費税が10%に引き上がる予定でしたが、2%の増税が経済や生活に与える影響から増税が先送りされていました。しかし、2019年10月1日から、とうとう消費税率が10%へと引き上げられました。それと同時に、政府は「軽減税率」制度を経過措置として導入しました。

消費税の軽減税率とは、特定の商品の消費税を一般的な消費税率よりも低く設定することです。この制度は、消費者が日常生活において幅広く利用しているものに関しては消費税の負担を軽減する、という考え方に基づいています。つまり、低所得者への経済的な配慮を示すことを目的としています。したがって、生活していく上で欠かすことができない食料品など特定の品目に関しては、税率が低く(8%)設定されています。

ただし、「外食」に関しては、食べる場所などによって細かな規定が設けられているので注意しなければいけません。

軽減税率の対象は?

軽減税率の対象となる品目は基本的に、アルコールを除く「飲食料品」と「新聞」となっています。ただし、飲食料品の場合、外食やケータリングなどは軽減税率の対象外となります。また、新聞の場合は、定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞が軽減税率の対象となっています。特に飲食料品の場合は、標準税率との線引きが複雑なので、正しく理解していないなら、予期せぬ2%が生じる可能性があるかもしれません。

飲食料品の8%と10%の見極め方とは?

では、予期せぬ2%が発生しないためにも、どのように飲食料品の8%と10%を見極めることができるでしょうか?すでにそのコツを掴んでいる方もいるかもしれませんが、ここでは3つのポイントをご紹介します。

ポイント1:人の飲食用の飲食料品かどうか?

軽減税率の対象となっている飲食料品とは、人のための飲食用のことです。つまり、人が食べれるものであったとしても、動物に与えるものは軽減税率の対象外となります。

ポイント2:飲食設備を利用するかどうか?

外食は、飲食料品の購入ではないため、消費税が10%になります。軽減税率制度における外食の定義とは、テーブルや椅子、カウンターなどの飲食設備がある場所で飲食すること、となっています。つまり、まとめるなら次のようになります。

・ハンバーガー店や牛丼屋などの場合
テイクアウトは8%、店内飲食は10%

・コンビニなど場合
お弁当屋お惣菜の持ち帰り8%、イートインコーナーで飲食するなら10%

・屋台やフードコートなどの場合
テーブルや椅子などの飲食設備がないなら8%、飲食設備がありその場で飲食するなら10%

・給食やケータリングなどの場合
有料老人ホームや学校給食などは8%、出張料理やケータリングなどは10%

・そば屋やピザ屋、Uber Eats(ウーバーイーツ)などの場合
出前や宅配などは8%、店内での飲食は10%

ポイント3:1万円以下、もしくは2/3以上の一体資産かどうか?

一体資産とは、食品と食品以外のものが一体、つまりセットになっているもので、それぞれの価格が記載されていないもののことです。例えば、価格の高い重箱とおせち料理のセットやおまけの付いているお菓子などが挙げられます。これらは一体資産として扱われるため、一体資産の価格が税抜き1万円以下、もしくは食品の価値が3分の2以上ある場合は、軽減税率の対象となります。

軽減税率と経過措置の8%の内訳とは?

改正後の税率は、適用開始日以後に行われる各種の取引に対して適用することになっていますが、請負工事や資産の貸し付け、予約販売などの一部の取引に関しては、改正前の税率を適用する「経過措置」が採用されています。経過措置は、適用開始日は消費税10%引き上げ開始の2019年10月1日から適用されています。指定日は、2019年4月1日、つまり消費税10%の引き上げ開始日の半年前からとなっています。

消費税率 地方消費税率2.2% 合計
2019年10月1日以前 6.3% 1.7% 8.0%
2019年10月1日以降(標準税率) 7.8% 2.2% 10.0%
2019年10月1日以降(軽減税率) 6.24% 1.76% 8.0%
2019年10月1日以降(経過措置) 6.3% 1.7% 8.0%

企業が対応しなければならないこと

軽減税率制度が導入されることで影響を受けたのは消費者だけではありません。商品やサービスを提供する企業側にもその影響は及んでいます。具体的には、実店舗の小売店を構えている企業の場合、レジやPOSシステムなどの回収が必要になりました。

また、インターネット販売を展開している企業でも、軽減税率の対象商品を販売しているところはシステムの変更が必要でした。では、これから事業を始ようとしている場合は、どのようなことに注意すればよいのでしょうか?

正しい価格表示

まず経営者や店長などは、自店て取り扱うすべての商品の税率を正しく確認しておく必要があります。消費税が8%の対象になっているものは、アルコール類や外食以外の飲食料品と週2回以上発行されている定期購読の新聞のみ、と規定されていますが、例外のケースもたくさんあります。ですから、その例外のケースをしっかり理解し、価格表示をする必要があります。

軽減税率対応レジや新システムの導入

軽減税率制度の導入で、消費税率8%と10%に対応していないレジやPOPシステム、受発注システムなどは使用することができません。軽減税率制度導入前から事業を運営していた企業に対しては、新システムの導入のために公的な補助金がありました。しかし、これから起業を始める企業は補助金を受けることはできませんので、購入前に消費税率8%と10%に対応しているかどうかをしっかり確認するようにしましょう。

帳簿や請求書の記載方式に注意

軽減税率が導入されることで、帳簿や請求書の記載方式にも変更が加えられました。消費税8%の軽減税率に対応する請求書は「区分記載請求書」といい、標準税率(10%)対象のものと別に分けて記載する必要があります。また、軽減税率に対応する新たな経理事務は、「区分経理」といいます。

軽減税率導入前の請求書は、課税仕入れの相手の名称、取引年月日、取引内容、税込取引額のみの記載事項でしたが、導入後は、軽減税率の対象品目であることの明記、が記載事項として付け加わりました。では、さらに詳しくみていきましょう。

2019年(令和元年)10月からスタートした「区分記載請求書等保存方式」とは?

2019年(令和元年)10月1日~2023年(令和5年)までの4年間は、従来通りの「請求書等保存方式」に加えて、軽減税率に対応するための区分経理措置として「区分記載請求書等保存方式」が導入されます。上記でも簡単に触れましたが、「区分記載請求書」の記載事項は、次のようになっています。

・請求書発行者の氏名もしくは名称
・取引年月日
・取引の内容
・受領者の氏名もしくは名称
・(追加項目)軽減税率の対象品目(「※」マークなどをつけて明記する)
・(追加項目)税率ごとに区分し合計した対価の税込価格

なお、軽減税率の対象品目である旨の記載は、必ずしも「※」マークを付けなければいけない、というわけではありません。売り手と買い手の両者が、どの商品が軽減税率適用対象なのかが分かるのであれば、他の方法を採用することも可能です。

例えば、適用税率ごとに請求書を分けたり、それぞれの請求書に税率を明記することなどもひとつの方法と言えるでしょう。また、受け取った請求書に新たに追加された2つの項目が記載されていない場合は、請求書に追記することができます。

従来の「請求書等保存式」と変わらない点とは?

では、2019年(令和元年)9月末まで使用していた「請求書等保存方式」と変わらないこととは何でしょうか?それには、次のような点が挙げられます。

・「区分記載請求書」には、一定の記載事項を満たした領収書や納品書、小売事業者等が交付するレシートなどの取引の事実の証拠となる書類も含まれること。

・「区分記載請求書」の交付義務、もしくは交付した「区分記載請求書」の写しの保存義務はないこと。

・「区分記載請求書」もしくは「帳簿」の保存が、仕入先に支払った消費税相当額を差しい引いた仕入税控除額となること。

・仕入対価の額が3万円未満、また「区分記載請求書」の交付を受けなかったなどの理由がある場合は、必要な事項を記載した帳簿の保存の仕入税額控除が行えること。

税額の計算方法について

消費税率が8%と10%の2つあるので、適用税率ごとに税額を算出する必要があります。適用税率ごとの取引総額に110分の10、もしくは108分の8をかけて売上(仕入れ)にかかる消費税額を算出します。つまり、「売上税額(売上総額×110分の10・108分の8)-仕入税額(仕入総額110分の10・108分1)=税額(国・地方)」という算式(簡易課税制度を適用しない場合)になります。

税額計算の特例とは?

軽減税率制度実施後は、税率ごとに区分して経理をすることが事業者側に必要となりました。しかし、中小企業者の準備などの負担を考慮し、2019年10月1日から2023年9月30日までの一定の期間、税額計算の特例が設けられています。この特例が適用となる中小企業者とは、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税事業者が対象者となっています。

・売上税額の特例の計算方法
売上税額の特例は、売上を税率ごとに区分することが難しい中小企業者が適用できる制度です。課税売上の一定の割合に乗じて、軽減税率対象品目の売上を計算するとが可能です。

特例による売上税額の計算方法は、「軽減税率対象の売上税額=軽減税率対象の課税売上高(課税売上高×一定の割合)×108分の8(もしくは10)」という算式で算出します。なお、一定の割合とは、卸売業者や小売業など、それぞれの事業者によって異なります。

・仕入税額の特例の計算方法
仕入税額の特例は、仕入を税率ごとに区分することが難しい中小企業者が適用できる制度です。課税仕入に一定の割合を乗じて、軽減税率対象品目の仕入れを計算することが可能です。簡易課税制度の事後選択による適用などの特例が、2019年10月1日から2020年9月30日までに1年間設けられています。

特例による仕入税額の計算方法は、「軽減税率対象の仕入税額=軽減税率対象の課税仕入高(課税仕入高×一定の割合)×108分の8(もしくは10)」という算式で算出します。なお、一定の割合は、売上税額の計算同様、それぞれの事業者によって変わってきます。

2023年(令和5年)10月には「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」がスタート!

2019年10月1日にスタートした軽減税率制度の経過措置期間は、2023年9月末までの4年間です。経過措置期間終了後、2023円10月1日からは「適格請求書等保存方式」、通称「インボイス制度」が導入されます。この制度の最大の特徴は、仕入税額を控除するためには、取引先からの適格請求書が必要になります。

適格請求書とは、課税事業者のみが登録できる適格請求書発行事業者の登録をしている個人事業主や企業のみが発行できる請求書のことです。つまり、免税事業者は、課税事業者にならないとこの制度を利用することができません。適格請求書等保存方式では、区分記載請求書等保存方式」より、さらに2つの項目が増え、適格請求書発行事業者の登録番号を記載することになります。

なお、適格請求書等保存方式の項目は、次のようになります。

・請求書発行者の氏名もしくは名称
・取引年月日
・取引の内容
・受領者の氏名もしくは名称
・軽減税率の対象品目(区分記載請求書で追加された項目)
・税率ごとに区分し合計した対価の税込価格(区分記載請求書で追加された項目)
・(追加項目)適性請求書発行事業者の登録番号
・(追加項目)税率ごとの消費税額もしくは適用税率

なお、適格請求書発行事業者の登録は、2021年10月1日より申請の受付がスタートします。課税事業者は早めに登録をすることができるでしょう。また、免税事業者はまだ時間がありますので、課税するかどうかを検討することができるでしょう。

まとめ

2019年10月1日から消費税が10%に引き上げられことに伴い、軽減税率制度が導入され、「区分記載請求書等保存方式」での請求書を発行することになりました。しかし、4年後の2023年(令和5年)10月には、「適格請求書等保存方式」、つまり、「インボイス制度」が導入されます。

業種によっては、消費税率8%と10%の商品を扱っている事業所や免税事業者もあります。是非、これからも今後の動きに注目しながら正しい情報を収集し、事業を円滑に進めるための方針をじっくり検討されることをおすすめします。また、分からないことや不安な点があるなら、専門家の信頼できる税理士に相談してみることができるでしょう。


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