偶発債務とは?その意味と会計処理について分かりやすく解説!
みなさんは「偶発債務」という言葉を耳にしたことがありますか?簿記や会計などを学んだ方であれば、その意味をご存知かもしれません。でも、おそらく多くの方が偶発債務についてあまり知らないのではないでしょうか?この記事では、偶発債務の意味やどのように会計処理できるか、などについて分かりやすく解説していきます。
偶発債務とは?
偶発債務とは、現時点ではまだ発生していなくても、将来一定の条件が成立したときに発生するかもしれないことです。偶発的に発生するため、その負債額を正確に予測することが難しいのが事実です。主に手形を裏書譲渡したときや、債務の保証人などになることなどが該当します。発生する可能性が高いので、金額を合理的に見積もるためには「引当金」として計上します。そして、債務と確定した時点で、「負債」として計上することになります。
偶発債務の具体的な例
では、偶発債務には、どのような具体的な例があるのでしょうか?それには、手形割引・裏書譲渡、債務保証、係争中の損害補償債務、デリバティブなどが挙げられます。ひとつづみていきましょう。
ケース1:手形割引・裏書譲渡
手形割引・裏書譲渡を行う場合、受取手形は手元に残りません。通常、手形の金額を支払うのは支払人で、手形を渡した側の責任が、手形を渡したときに生じます。渡した手形が不渡りになった場合は、手形を渡した人が、手形に係れている金額を支払う義務が発生します。その際には、時価で評価して、偶発債務として処理します。
ケース2:債務保証
債務保証とは、将来発生する可能性のある債務のことです。例えばA社がB社の債務の保証をしたと仮定します。B社の経営状況が悪化し、債務を返済することができなくなった場合、A社はB社の代わりに債務を返済する義務が発生します。このように将来発生する可能性のある債務のことを、偶発債務といいます。
ケース3:係争中の損害補償債務
訴えられて損害賠償責任を負うことになった場合、その金額は損失として計上します。なぜなら、その段階では訴訟の結果が分かっていないので、予測することが不可能だからです。結果が分かるまでは、偶発債務になります。
ケース4:デリバティブ
デリバティブとは、日本語に訳すと「金融派生商品」です。これには株式、債券、金利、外国為替など金融商品から派生したものが該当します。例えば、為替リスクの確立を低くするために為替予約をする場合、相場の変動で損益が発生します。そのため、原則として時価評価することになっています。
上場企業であれば貸借対照表に計上して処理されていますが、中小企業の中には、貸借対照表に計上していない企業も存在している可能性があります。もし計上していない場合は、偶発債務になるため、デリバティブ取引なのかを確認するために、取引をひとつづ確認する作業が必要となります。
偶発債務の会計処理について
偶発債務は、将来一定の条件が成立したときに発生するものです。そのため、決算日の時点では、負債額を予測することは困難な状況なので、通常は貸借対照表に計上することはありません。そもそも、貸借対照表とは、企業の財務状態を間歩主や債権者、利害関係者などに公開することが用途のひとつとなっています。
現時点で不確定である場合は、偶発債務の内容と金額を財務諸表に注記することによって情報を提供するようにします。そして、偶発債務が発生する可能性が高くなった場合に、貸借対照表に計上します。そのときに「債務」として確定することで、はじめて「負債」として貸借対照表に計上されます。
一方、「引当金」として貸借対照表に計上する場合には、次の条件を満たしている必要があります。
・将来の特定の費用、もしくは損失である
・偶発債務の発生は、当期以前の事象が要因となっている
・発生へと確定する可能性が高い
・その金額を合理的に見積もることが可能
これらの条件を満たしているなら、当期の負担は、当期の費用、もしくは損失として引当金に計上することができます。ただし、発生の可能性が低いと思われる偶発事象による費用、もしくは損失は、引当金として計上することはできません。
まとめ
偶発債務は、滞在的な債務のひとつです。債務として確定した際、その金額が大きい場合は、会社の運営に大きな影響を与えることが推定されます。そのため、偶発債務には注意する必要があります。また、偶発債務は、「簿外債務」とよく間違われるので気を付けましょう。
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