「国民年金基金」に加入すべき?国民年金との違いや節税効果など徹底解説!
みなさんは、さまざまなメリットのある「国民年金」とは別に、「国民年金基金」という制度があることをご存知ですか?国民年金と国民年金基金は名称が似ているため、両者は同じもの、もしくは付随するものと混合されがちですが、全く別のものです。今回は国民年金基金にスポットをあて、国民年金との違いや節税効果などについて解説していきます。
目次
国民年金基金とは?
「国民年金基金」とは、加入が義務とされている国民年金に加えて、任意に掛け金を拠出することによって将来の年金受給額を増やすことができる国民年金法の規定に基づく制度です。
会社員などの給与所得者の場合は、国民年金に上乗せして「厚生年金」や「老齢厚生年金」に加入するのが一般的です。そのため、老後は国民年金と厚生年金の両方を受給できます。
一方、個人事業主やフリーランスの場合は、厚生年金に加入することができません。そのため、将来、老後で受給できる額に大きな差が生じます。
そこで、この差を解消するために、平成3年4月に「国民年金基金制度」と呼ばれる年金制度が導入されました。つまり、国民年金基金は、主に個人事業主やフリーランスなど国民年金の第1号被保険者の方を対象としている制度です。
国民年金との違いとは?
では、国民年金基金と国民年金には、具体的にどのような違いがあるのでしょうか?
【加入対象者】
・国民年金
20歳以上~60歳未満の日本在住者全員に加入義務の対象者。
・国民年金基金
加入するかどうかは任意。ただし、国民年金第1号被保険者のみが選択できる。
国民年金第1号被保険者とは、日本国内に在住している20歳以上~60歳未満の自営業とその家族・自由業・学生など。また、60歳以上で65歳未満の国民年金任意加入被保険者や海外に居住している人も加入対象者。
【保険料】
・国民年金
加入者全員一律。(ただし、免除などの適用を受ける場合は除く)
・国民年金基金
プランによって掛金が異なる。(受給額を増やす場合は掛金も増える)
また、加入は「口数制」。何口加入するかにより、老後の給付額が変わってくる。1口あたりの掛金は、加入時の年齢・性別・選択した給付の型で決まるり、最大掛金は月額68,000円の範囲内で選択する事が可能。1年分の掛金を前払いすると、0.1ヶ月分掛金が割引となる。
【年金受給形態】
・国民年金
受給開始年齢~死亡するまで受給できる「終身年金」
・国民年金基金
「終身年金」に加え、受給期間があらかじめ設定されている「確定年金」プランの選択も可能。
国民年金の加入条件とは?
国民年金基金の加入対象者
国民年金基金には、加入条件が設けられています。上記でも少し触れましたが、国民年金の加入を検討する際には、加入対象条件を満たしているか確認する必要があります。国民年金の加入条件とは、次のいずれかに該当しなければいけません。
条件:日本国内に在住している20歳以上~60歳未満の自営業者とその家族・開業医や弁護士などの自由業・学生などの国民年金第1号被保険者
条件:60歳以上~65歳未満の方で、国民年金加入被保険者や海外に居住している方
国民年金基金に加入できない対象者
次に該当する方は、国民年金に加入することができません。
・厚生年金保険や共済組合に加入している会社員など(国民年金の第2号被保険者)
・厚生年金保険や共済組合に加入している方の被扶養配偶者の方(国民年金の第3号被保険者)
・国民年金の第1号被保険者に該当していても、国民年金の保険料を免除(一部免除・学生納付特例・若年者納付猶予を含む)をしている方
・国民年金の第1号被保険者に該当していても、農業者年金の被保険者の方
・国民年金の付加保険料を納めている方
国民年金基金は、国民年金の保険料を全額支払っていることが前提となっています。つまり、国民年金に上乗せする、という位置付けの年金制度です。したがって、国民年金保険料を免除している方や支払っていない方は、加入対象外となります。
国民年金基金の加入資格を失うケースとは?
国民年金基金は、公的な年金制度なので、原則、加入後は自由に脱退することはできません。しかし、国民年金基金加入後に、加入資格を失うケースもあります。
それは「60歳になったとき」と「国民年金の任意加入者が65歳になったとき」です。どちらのケースも、掛金を拠出することができなくなるため、加入資格を失います。
また別のケースとして、会社員などの「給与所得者になったとき」も挙げられます。この場合、厚生年金に加入することになるため、第2号被保険者となります。そのため、加入条件の対象から外れることになります。
国民年金基金に加入するメリットとは?
では、国民年金基金に加入すると、どのようなメリットを得ることができるのでしょうか?
メリット①節税効果を得られる
民間の個人年金に加入した場合、平成24年1月以降に契約したものは、年額最大4万円までしか所得控除されません。一方、国民年金基金の場合、支払う掛金すべて、つまり「全額」が所得控除の対象となります。
つまり、所得から全額控除できるので、その年の「所得税」「住民税」「健康保険料」などの負担が軽減され、その結果、節税につながります。所得控除を受ける場合は、確定申告をする際に、毎年11月頃に送付されてくる「社会保険料控除証明書」を申告書に添付するだけです。
書類には、すでに控除対象金額が記載されているので、控除額の計算をする必要なく、ただ金額を転記するだけで完了します。また、国民年金基金から受け取る年金は、雑所得の「公的年金控除」が適用されますが、民間の保険会社から受け取る年金には適用されません。
さらに国民年金基金の場合は、年金受給前もしくは保証期間内に、万が一死亡した場合は、保証期間付きのプランであればご家族へ一時金(非課税)が支払われます。
メリット②年金が確定しており変動しない
国民年金基金は、年金額が確定していることもメリットのひとつです。国民年金基金の掛金は、経済上税によって、将来受け取る年金額が変動するということはありません。したがって、すでに受給できる年金額が確定しているのであれば、資産計画やライフプランも立てやすくなります。
それとは反対に、個人事業主やフリーランスが老後に備える貯蓄制度のひとつの個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」を選択する方もいることでしょう。iDeCo(イデコ)の場合、個人で掛け金の運用先を選定したうえで運用し、運用結果によって将来の年金額が決まる仕組みを採用しています。
そのため、掛け金の累計額よりも年金受給額が増える可能性もありますが、少なくなるリスクもあります。しかし、国民年金基金では年金額がすでに確定しており、それが変動しないので、安定した額を受給したい方にとってはメリットと言えます。
メリット③終身年金の選択も可能!
国民年金基金は、終身年金を選択することも可能です。特に年金額を増やしたい場合は、「確定年金」もしくは「終身年金」を選択する必要があります。終身年金を選択するなら、生存している限り年金支給が続くので、長生きすることで資金が不足するということはありません。(後述しますが、1口目は終身年金にする必要がある)
国民年金とは異なり、将来受け取る年金給付の型を希望できたり、老後の資産計画やライフプランに合わせて設計することができるのも国民年金基金のメリットと言えるでしょう。なお、個人型確定給付年金「iDeCo(イデコ」では、終身年金という受給形態として選択することできません。
国民年金基金に加入することのデメリットとは?
メリットの多い国民年金基金ですが、加入することによるデメリットもあります。加入する際には、デメリットについても理解しておくことは必要です。
デメリット①物価上昇に対応していない
国民年金基金の最大のデメリットは、物価上昇に対応していない、ことが挙げられます。そもそも国民年金基金の年金受給額は、加入したときの将来の物価上昇や金利水準の「予想」に基づいて年金額が確定します。
すでに受給する年金額が確定しているため、年金を受給するまでの間に、加入したときに予想していたよりも物価が上昇したとしても、物価上昇分に比例して年金額が増額するということはありません。
つまり、インフレになるためお金の価値が下がり、実質的には年金額が下がってしまいます。一方、物価が下落するなら、年金額が上がるということになります。
デメリット②自己都合で解約できない
国民年金基金の加入は、義務ではなく任意ですが、一度加入したら、原則として自己都合で解約することはできません。なぜなら、老後の資金を確保するために、公的に支援することを目的としている公的制度だからです。そのため、たとえ家計の状況が変わり、掛金の負担が大きくなったとしても脱退することはできません。
ただし、どうしても掛金を支払うことができない場合は、申請をすれば、例外として2年間支払いを猶予することが可能です。支払猶予を行った場合、後に未納分を支払うなら、老後に満額受給することができます。
また、国民年金基金の加入を解約することはできませんが、掛け金の減額をすることは可能です。家計の状況が変わり、支払が難しくなった場合は、掛け金の変更や猶予制度の利用を検討されることをおすすめします。
国民年金基金に加入するには?
前述した国民年金基金の加入条件を満たしているなら、国民年金基金へ加入することができます。国民年金基金の公式ホームページから、資料請求をするなら、後日、申込書類が届きます。
【給付の型】
国民年金基金に加入する場合は、年金受給形態を選択する必要があります。受給形態である給付の型は、終身年金である「終身型」にはAとB、確定年金である「確定型」は1~5、合計7種類の給付の型があります。加入する際には、これらの給付の型とそれぞれの口数を選択します。
なお、給付の型を選択する際には、まず1口目として必ず「終身型」である「A」もしくは「B」のどちらかを選択しなければいけません。つまり、終身年金を必ず1つは含める必要があるということです。それに加え、、2口目以降は終身型と確定型の合計7種類から自由に選択することができます。
【口数】
1口目は必ず終身型である必要がありますが、その後、同じ給付の型に複数加入することも認められています。給付の型と口数を決めると、それに応じて自動的に掛け金が決まります。ただし、掛け金の合計は月額6万8000円が上限として設定されていますので、この金額を上回る口数の加入はできません。
加入前に毎月の掛け金の負担額はどのくらいになるか、将来受け取れる年金額はいくらになるのか、などをしっかり考慮した上で、給付の型や口数を決めるようにしましょう。
給付の型や口数を決める際のポイント
前述したように、国民年金基金は、年金受給前もしくは保証期間内に、万が一死亡した場合は、ご遺族へ「一時金(非課税)」が支払われます。しかし、残された家族の有無により、遺族一時金が不要になる方もいることでしょう。遺族一時金は非課税ですが、家族の状況を考慮して給付の型を決めることができるかもしれません。
また、国民年金基金は公的な制度です。そのため、民間の保険などとは違い、破綻するという心配がありません。ですから、「老後が心配」という方にとっては、国民年金基金の利用が安心でおすすめです。ただし、加入資格を失わない限り、途中で解約することはできませんが、掛け金や口数などの変更は可能です。
もし現段階で事業の売上が安定していなくても、売上が安定した際には売上に応じで掛け金や口数を調整することもできるので安心して加入できるでしょう。
まとめ
・国民年金基金とは、個人事業主やフリーランスなど国民年金の第1号被保険者の方を対象とした、任意で加入できる公的年金制度。
・国民年金とは違い、年金給付の型や口数を自由に設定できる。
・国民年金基金に加入すると、掛け金全額が所得控除となるので節税効果を得られる。その他にも、年金額が確定していることや、終身年金を選択できるなどのメリットもある。
・国民年金基金は、物価上昇に対応していないことや、一度加入すると原則的には自己都合で解約することはできないなどのデメリットがある。
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