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連結納税とは?「連結納税制度」の廃止と新設「グループ通算制度」について

2021年6月23日
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連結納税とは、親会社と子会社を企業グループをひとつとみなし、法人税を計算することです。令和2年度の税制改正において、連結納税制度が廃止され、グループ通算制度へと移行することになります。本記事では、連結納税制度とグループ通算制度について詳しく解説します。

連結納税とは?

平成24年に導入された連結納税制度とは、親会社と子会社を企業グループのひとつとみなして、法人税を課税する制度のことです。つまり、企業グループをひとつの納税単位とし、親会社がそのグループの連結した所得の金額を「連結確定申告書」に記載し、法人税の申告・納付をします。

連結納税制度を導入した理由

そもそも連結納税制度を導入した大きな理由は、子会社を利用した粉飾決算が多発していたため、会社の監査を充実させるためでした。

政府は企業が連結納税制度を導入するために、さまざまな税制改正を行いました。しかし、上場企業でも全体の2割ほどしか導入していないのが現状となっています。

連結納税制度のメリット・デメリット

この制度を導入したことで、企業グループ全体の利益が見えやすくなり、企業グループ内の各企業の黒字と赤字を損益通算して扱うことができるため、単体での申告と比較すると、法人税が少なくなるため節税につながります。

また、連結事業年度で生じた繰越欠損金を連結法人全体で控除できるというメリットもあります。このように連結グループ全体で納税額を抑え、親会社は繰越欠損金を早期に解消できることが連結納税制度の利点でした。

しかし、デメリットがあったのも事実です。親会社は連結納税を開始するためには、100%子会社がもつ繰越欠損金を切り捨てる必要があります。また、事務負担が大きい上、グループ経営の多様化に対応するのが難しく、税務調査に多くの時間を要するなどのデメリットもありました。

「連結納税制度」の廃止

令和2年度(2020年度)税制改正により、令和4年度(2022年度)3月期をもって連結納税制度が廃止され、令和4年度(2022年度)4月1日から「グループ通算制度」へと移行されることになりました。では、グループ通算制度への移行で何がどのように変わるのでしょうか?

令和4年度から「グループ通算制度」へ移行

グループ通算制度へ移行となった背景

連結納税制度は、平成14年度(2002年度)に導入され、約16年余りが経過しました。前述したように、企業グループ全体が一体となって経営をすることで、節税効果を得るなど多くのメリットがありました。

一方、事務負担が大きいだけでなく複雑で、税務調査やその後の修正・更生多くの時間を要するなどのデメリットもありました。それにより、節税効果が得られるのに、連結納税制度を導入していない企業グループが多く存在していました。

これらのデメリットを解消するために、「連結納税制度」が廃止され、「グループ通算制度」が新設されることになります。

グループ通算制度の概要

国税庁のホームページでは、グループ通算制度とは、完全支配関係にある企業グループ間の各法人を納税単位とし、各法人が個別に法人税額の計算・申告を行い、損益通算等の調整を行う制度のことと説明しています。

参照:国税庁「グループ通算制度の概要」

改正点

連結納税制度からグループ通算制度への移行することで、以下の点が改正されます。

①グループ申告方式→個別申告方式
連結納税制度では、グループ全体の損益通算をし、親会社が連結申告書において申告・納税をしていました。しかし、グループ通算制度へ移行することにより、各会社が個別に申告・納税をすることになります。これを「個別申告方式」といいます。よって、連結納税制度で提出していた連結申告書を作成・提出は不要となります。

②開始・加入時の直評価及び欠損金の切り捨て
連結納税制度では、子法人は特定連結子法人に該当する場合を除き、時価評価が必要です。そして、開始・加入前の繰越欠損金が切り捨てられていました。

しかし、グループ通算制度へ移行することで、時価評価が不要(開始・加入時に親法人との間で100%親子関係の継続が見込まれる場合のみ)となります。また、開始・加入前の繰越欠損金の切り捨ても行われません。

グループ通算制度のメリット・デメリット

グループ通算制度へ移行することにより、対象法人は個別申告をします。それにより、事務負担が軽減されることが期待されます。また、連結納税制度では、税務調査が入り、修正や更正があった場合は、連結納税の全社、つまりグループ全体を対象とした修正手続きが必要でした。

しかし、グループ通算制度では、修正や更生にかかるグループ全体の再計算は不要となります。よって、複雑な事務負担の軽減につながります。(なお、法人税の負担を減少させるために、あえて誤った当初申告を行ったと判断された場合は、グループ全体を対象とした再計算が必要となる可能性があります。)

一方、グループ通算制度へ移行することによるデメリットとして、親会社の欠損金の取り扱いが挙げられます。連結納税制度では、親会社が代表して申告・納税をしていたため、グループ全体の所得計算後に控除することができました。しかし、グループ通算制度移行後は、親会社も子会社同様、所得の上限しか使用することができません。

グループ通算制度を適用するには?

グループ通算制度の適用を受けるには、まず要件を満たしていなければいけません。では、グループ通算制度の適用を受けるためにすべきことをみていきましょう。

グループ通算制度の対象となる法人

グループ通算制度の適用を受けられる法人は、原則、親法人と完全支配関係のある企業グループ内の子法人です。ただし、以下の法人に該当する場合は、グループ通算制度の適用対象外となります。

【親法人としてグループ通算制度が適用されない法人】
・清算中の法人
・外国法人を除く普通法人、又は協同組合等との間に完全支配関係がある法人
・通算承認の取りやめの承認を受けた法人で、その承認日の属する事業年度終了後、5年(1事業年度を1年とした場合)を経過する日の属する事業年度終了の日を経過していない法人
・青色申告の承認の取消通知を受けた法人で、その通知後、5年(1事業年度を1年とした場合)を経過する日の属する事業年度終了の日を経過していない法人
・青色申告の取りやめの届出書を提出した法人で、その提出後、1年(1事業年度を1年とした場合)を経過する日の属する事業年度終了の日を経過していない 法人
・投資法人、特定目的会社
・ その他一定の法人(普通法人以外の法人や、破産手続開始の決定を受けた法人など)

【子会社としてグループ通算制度が適用されない法人】
・通算承認の取りやめの承認を受けた法人で、その承認日の属する事業年度終了後、5年(1事業年度を1年とした場合)を経過する日の属する事業年度終了の日を経過していない法人
・青色申告の承認の取消通知を受けた法人で、その通知後、5年(1事業年度を1年とした場合)を経過する日の属する事業年度終了の日を経過していない法人
・青色申告の取りやめの届出書を提出した法人で、その提出後、1年(1事業年度を1年とした場合)を経過する日の属する事業年度終了の日を経過していない 法人
・投資法人、特定目的会社
・ その他一定の法人(普通法人以外の法人や、破産手続開始の決定を受けた法人など)

グループ通算制度の適用方法

グループ通算制度の適用方法は、以下の2つの手順で行います。
①申請
②承認
では、それぞれの手続きについて詳しくみてみましょう。

ステップ①申請
親会社、または子会社がグループ通算制度の適用が受けられる場合は、原則、グループ通算制度の適用を受けようとする親法人の最初の事業年度開始の日の3か月前の日までに、親法人の納税地の所轄税務署に「承認申請書」を提出する必要があります。その際、承認申請書には、親法人、子法人の全ての連名を記載します。

ステップ②承認
グループ通算制度の適用を受けるには、国税庁長官の承認が必要です。グループ通算制度の適用を受けようとする最初の事業年度開始の日の前日までに、その申請についての通算承認又は却下の処分がなかったときは、承認がされたということです。つまり、何の連絡もなければ、グループ通算制度での申告が適用となります。

グループ通算制度の申請が却下されるケースとは?

国税庁長官は、グループ通算制度の「承認申請書」の提出があった場合、以下のケースに該当する企業に起きては、その申請を却下することが認められています。

・通算予定法人のいずれかがその申請を行っていない場合。
・申請を行っている法人に、通算予定法人以外の法人が含まれている場合。
・申請を行っている通算予定法人について、その備え付ける帳簿書類に取引の全部又は一部を隠し、又は仮装して記載し、又は記録していること、その他不実の記載、又は記録があると認められるなどのいずれかに該当する場合。

グループ通算制度における申告と納付

グループ通算制度の適用が国税庁長官によって承認されたら、法人税の申告と納付をグループ通算制度で行うことができます。では、その手続き方法についてみていきましょう。

グループ通算制度による「個別申告方式」

グループ通算制度では、その適用を受ける通算グループ内の各法人を納税単位としています。よって、各法人が個別に法人税額の計算し、申告を行う「個別申告方式」を行います。

連帯納付の責任

グループ通算制度の場合、グループ内の他の法人に連帯責任が生じます。つまり、もしもグループのひとつの法人が、税金の納付をできない場合は、グループに属する他の法人がその税金を納付する、つまり、連帯納付の責任をおいます。

e-Taxによる申告

通算法人は、事業年度開始時の資本金の額が1億円以下であるか否かを問わず、電子申請によるe-Taxを利用した納税申告書を提出しなければいけません。

連結納税制度とグループ通算制度の違い

ここまでで、廃止される「連結納税制度」と、それに代わって新設される「グループ通算制度」について解説しました。連結納税制度とグループ通算制度の主な違いをまとめると、以下のようになります。

・納税単位
連結納税制度:連結納税を行う企業グループ / 親会社がグループの代表として申告・納税)
グループ通算制度:各法人による個別式申告・納税

・適用方法
連結納税制度:申請による選択制
グループ通算制度:申請による選択制

・事業年度
連結納税制度:親法人の事業年度に統一
グループ通算制度:親法人の事業年度に統一

・損益通算
連結納税制度:実施
グループ通算制度:実施

・税務調査後の修正・更生
連結納税制度:グループ全体が対象
グループ通算制度:原則として、個別対象

まとめ

令和2年度(2020年度)税制改正により、令和4年度(2022年度)3月期をもって「連結納税制度」が廃止されます。そして、それに代わり、令和4年度(2022年度)4月1日から「グループ通算制度」へと移行されます。

本記事では、現段階で発表されている改正点についてご紹介しましたが、今後、新たに修正などがあるかもしれません。ですから、「グループ通算制度」の適用を検討している企業グループは、今後の動きも目を離さないようにしつつ、今から準備をはじめましょう。

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