現金出納帳とは?現金出納帳が必要な3つの理由と書き方・作成方法
現金出納帳は、現金取引の収入と支出の金額とその内容を記録する重要な帳簿です。会社の大きさや規模に関係なく、各事業所は必ず作成しなければいけません。この記事では現金出納帳の基礎知識をはじめとし、具体的な書き方とそのポイントについて解説していきます。
目次
現金出納帳とは?
現金出納帳とは、お金の収入と支出の金額を記録した帳簿です。帳簿の中では、補助簿に分類されています。補助簿とは、仕訳帳や総勘定元帳などの主要簿を補助する帳簿のことです。補助簿は、補助記入帳と補助元帳に分類されており、現金出納帳は仕訳帳を補助する補助記入帳に該当します。
現金出納帳は、帳簿の残高と現金残高が一致しているかどうかを確認することができます。現金出納帳はとても重要な会計帳簿のひとつになるので、個人事業主やフリーランスだとしても、作成して保存しておく必要があります。
預金出納帳とは?
現金出納帳のほかに、「預金出納帳」と呼ばれる出納帳もあります。預金出納帳はその名前の通り、銀行預金の入出金を記入し、管理するものです。おそらくほとんどの事業所では、手元で現金を管理するのではなく、銀行の預金口座で売上や支払い、事業用資金などを管理していることでしょう。
銀行預金の入出金を現金出納帳に記入すると混乱してしまうため、現金出納帳と預金出納帳に分けて管理する事業所もあります。
小口現金出納帳とは?
小口現金出納帳とは、事業所に置いてある少額の現金の入出金を記入した出納帳のことです。法人では、交通費や接待費など少額の現金を会社に置いています。この現金は「小口現金」と呼ばれています。現金出納帳同様、小口現金の入出金があれば、その日に記入して管理します。
現金出納帳が必要な3つの理由
現金出納帳は、以下の3つの理由から作成する必要があります。
理由①お金の取引を可視化するため
現金の管理は、事業を運営していく上で欠かせません。原則として毎日記帳をし、現金出納帳の現金残高と現物の現金が一致しているかどうかを確かめる必要があります。現金出納帳を作成するなら、お金の取引を可視化することにつながります。
どこでどのように入金や出金があったかを記録することで、企業全体としてどのようにお金が流れているかを把握することができます。
理由②不正防止
さらに不正なお金の使い込みを防止することも可能です。会社という組織の中で、従業員による不正行為が起こりえない、という保証はありません。例えば経理担当者がプライベートの領収を会社の経費として計上したり、現金を持ち出したり、などの不正は起きることがあります。従業員を疑いたくないものですが、現金出納帳を作成していれば不正防止につながります。
理由③確定申告で義務付けられている
現金出納帳は、確定申告において作成が義務付けられている帳簿のひとつです。確定申告には青色申告と白色申告がありますが、どちらで申告するにせよ現金出納帳の提出は必要です。クレジットカードや電子マネーでの取引も増えていますが、現金取引をした場合は必ず現金出納帳を作成しましょう。
現金出納帳の様式について
現金出納帳は、特別な様式が決まってるわけではありません。ですから、使いやすいものを選ぶことができるでしょう。現金出納帳を作成する上で最低限必要な項目は、「日付」「勘定科目」「摘要(取引の内容)」「入金(収入)」「出金(支出)」「現金残高」です。複式簿記を採用する場合は、これらに加えて、何に対して現金の取引が発生したかを記載する、「相手勘定科目」の項目も必要となります。
現金出納帳の書き方について
では、現金出納帳の書き方について項目ごとにみていきましょう。
「日付」
日付の項目は、お金の入金、もしくは支払いがあった日付を記入します。基本、日付準に記入していきます。同じ日に収入と支出があった場合は、それぞれ別の欄に記載しなければいけません。
また、領収書の立替精算の振込みや受領した領収書の日付が空欄の場合などは、領収書の日付ではなく、清算日の出金として記載します。その際、摘要や備考欄に日付が異なることを記載しておくなら、後ほど混乱しないでしょう。
「勘定科目」
勘定科目の欄には、収入や支出などのお金がどこから入ってきて、どのような費用になったのかを記載します。例えば、現金で文房具を購入したときは、相手勘定科目欄に「事務用品費」もしくは「消耗品費」のどちらかを記載し、摘要に「筆記用具を購入」、出金欄に現金の金額を記入します。
例えば、勘定科目には、一時的に立て替えた「立替金」、電話代や郵便料金、インターネット利用料などの「通信費」、業務のための出張旅費や交通費などは「旅費交通費」、税金の支払いは「租税公課」、電気代・水道代・ガス代などは「水道光熱費」、事務所や店舗などの賃借料は「地代家賃」、会議や打ち合わせのための会場費や飲食代などは「会議費」など、様々な勘定科目があります。
「摘要(取引の内容)」
摘要には、収入や支出など取引先との間に起きた取引内容や、何のためにお金の出入りがあったのかを具体的に記入する項目です。例えば、「○○銀行から引き出し」などと、具体的に記入します。個人事業主が個人のお金を事業のために使用した場合は、「事業主、電気料金」などと記入します。
「収入・支出金額」
入金、もしくは出金した金額を記入します。消費税は、税込金額で記載します。
「残高」
残高欄は、入金があった場合は前の残高に加算します。一方、出金があった場合は前の残高から差し引きます。手元現金と保管している現金を数え、残高と一致しているかを確認します。日次で行う差引残高は、「差引残高=前日の差引残高+当日の収入金額-当日の支出金額」、という計算式で算出します。
月次や年次で差引残高を算出する際も、日次同様行います。つまり、「差引残高(月もしくは年度)=前月(前年)の繰越金+(月もしくは年度)収入合計-(月もしくは年度)収入合計」で算出します。月次や年次の場合は、差引残高は月(年)の収入と支出金額、月(年)の繰り越し金額を計算する必要があります。
万が一、金額が合わないときは、不一致の原因をその日のうちに調査しなければいけません。調査は、記帳した際に桁違いをしていないか、転記ミスをしていないか、誤って過大もしくは過少に入出していないか、などを再確認することができます。
それでも原因が分からないようであれば、「現金過不足」という勘定項目を使い、不一致になっている金額を処理します。その際、ポケットマネーを使って金額を合わせるなど、補填をすることはNGです。複式簿記を採用し、決算期まで「現金過不足」が勘定科目として残っている場合は、「雑損失」や「雑収入」などへ振り替えることができます。
現金出納帳を書く際に注意したいこと
現金出納帳は、基本、毎日記帳します。上記で解説した点と重なる点もありますが、以下の点に気を付けて作成しましょう。
・手書きの帳簿、つまり、ペンやボールペンを使用することが一般的となっています。鉛筆や消せるペンなどは使用不可です。
・数字など間違いを訂正するときには、二重線で消し、余白に正しい数字を記入します。修正テープや修正液の使用は不可となっています。
・一日の入出金を締めたら差引残高を記入します。そして、現金出納帳の残高と実際の現金残高が一致しているかどうかを必ず確認しましょう。
・月末の入出金を締めたら仕切り線を引き、次月へと繰り越しをしましょう。
・不一致があることに気付いたら、その原因を調べ、訂正をしましょう。もし原因が不明の場合は、勘定科目「現金過不足」を使って処理しましょう。
・入出金がなかった日も、現金の残高を確認してください。
・入金伝票を毎回忘れずに書くようにしましょう。
・出勤の場合は、出金伝票を作成し、領収書を添付してもらうようにしましょう。
・支払いには基本、領収書が必要です。しかし、香典や祝金など領収書が発行されない出金の場合は、挨拶状やパンフレットなども他の領収書と一緒に保管しておくことをおすすめします。
現金出納帳の作成方法
では、実際どのように現金出納帳を作成することができるでしょうか?代表的な3つの方法、手書き、Excelテンプレート、会計ソフトでの作成方法をみていきましょう。
手書きで作成
ノートに手書きで作成する、という従来の方法です。現金取引がほとんどなく、簿記の知識があるのであれば、手書きでの作成も苦にならないでしょう。一方、現金での取引が多い場合は、手書きでの作成は多くの時間と手間がかかります。
Excelテンプレートで作成
Excelテンプレートで作成することもできます。Excelが得意な方には、アレンジを加えることができるのでおすすめの方法です。また、ほとんど無料で使用することができるので、コストがかからないというメリットもあります。インターネット上には、様々なテンプレートを無料で試すことができるので、興味のある方は検索してみることができるでしょう。
会計ソフトで作成
近年は、会計ソフトを使って現金出納帳を作成する方が増えています。クラウド系の会計ソフトであれば、パソコン、タブレット、スマホなど様々なデバイスからログインすることが可能です。つまり、場所を問わずにいつでも記入することができます。
また手書きやExcelテンプレートでの作成よりもミスが少なく、時間と手間の削減にもつながるという魅力もあります。ただし、コストがかかります。なので、まだ会計ソフトを利用したことがないのであれば、まずは無料のお試し期間を利用し、使い心地を確認してみることをおすすめします。
まとめ
現金出納帳の作成は、難しいものではありません。実際に作成してみると、現金出納帳の残高と実際の残高が合わないこともよくあります。しかし、必ず原因がありますので、慌てずに原因を突きとめるために調査をしましょう。そして、たとえ現金の入出金がなかったとしても、現金の残高を確認することを忘れずに行うことを毎日の日課としましょう。
税理士コンシェルジュは、2008年サービス開始より株式会社タックスコムが運営する税理士専門の紹介サイトです。会計の実務経験を活かし、これまで1000名以上の税理士と面談し、1万件以上の相談実績がある税理士選びの専門家です。
サービス内容としては、税理士の口コミから無料相談・厳選した税理士の紹介まで提供しております。
▢こんな記事も読まれています
▢一番読まれている記事
- 小計・合計・総計・計・累計の違いって何?正しい使い方をマスターしよう!
- 決算書の「マイナス三角△」の意味とは?具体的な使い方など日本独特の会計事情
- 所得金額と収入金額の違いとは?確定申告で必要な基礎知識と計算方法
- 「棚卸し」とは?意味や目的、作業方法まで分かりやすく解説
- 金融機関お届け印とは?実印と同じ印鑑で兼用しても大丈夫?
- マイナンバーと預貯金口座が紐付けされるとどうなる?
- 「続柄」の正しい読み方・書き方とは?書き方一覧と基礎知識
- 年商とは?売上高との違いや一般的な使い方など年商の基礎知識
- 法定福利費とは?種類や負担料率、計算方法、福利厚生費との違いまで解説
- マネーの虎で最も成功した「フランスロール」成功者の波乱万丈な人生のまとめ