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賞与とは?賞与に社会保険料がかかる理由と計算方法について

2021年7月14日
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賞与社会保険料

一般的な会社員であれば、毎月の給与から所得税や社会保険料などの税金が天引きされています。それと同じように、賞与からも税金が天引きされます。

しかし、賞与の場合は、通常の給与での計算方法とは異なっています。本記事では、賞与の基礎知識やそれにかかる税金について解説していきます。

賞与とは?

賞与とは、労働基準法によると、臨時の賃金等のことで、これには○○手当という名称、賞与、ボーナスなど、どんな名称にも関わらず、労働者が労働の対象として受けるすべてのもののうち、年に3回以下支給されるもの、とされています。

これには自社製品などの現物支給されるものも賞与に該当します。また、年に4回以上支給されるものは賞与ではなく、月次給与となります。

賞与の有無・査定期間・支給日は企業の任意

賞与支給の有無、査定期間、計算方法、支給日、対象となる労働者の範囲などは、原則として各企業が任意で決めることになっています。つまり、労働基準法で賞与を支給するように、と定められているわけではありません。ですから、自社の就業規則で賞与に関する規定を確認されることをおすすめします。

賞与に社会保険料がかかる理由とは?

毎月の給与同様、なぜ賞与にも社会保険料がかかるのでしょうか?結論から述べるなら、法律が賞与からも社会保険料を控除するように定めたからです。

もともと賞与には、社会保険料は一律1%しかかかっていなかったため、賞与の金額が多い場合は負担が軽く、それとは逆に、賞与の金額が少ない場合は負担が重くなっていました。

そのため、賞与を支給する多くの企業では、月額の給与を少し抑えて、その分賞与で還元する、という手法を用いていました。その結果、事業主側は、社会保険料の負担の軽減する、というメリットを得ていました。

政府は、このような不公平を解消するために、平成15年度以降に「総報酬制」を導入することにしました。これは現在も実施されている通り、賞与からも社会保険料を徴収するという仕組みです。

この制度では、導入前の一律1%ではなく、「標準報酬月額」を基準として保険料率をかけて保険料を負担するしくみになっています。したがって、現在では、賞与の額に応じて、負担する割合も多くなるようになっています。

賞与の社会保険料の計算方法

賞与にかかる社会保険料と所得税は、社会保険料を差し引いたあとに所得税を差し引いて計算します。ではまず社会保険料、つまり、健康保険料と厚生年金保険にかかる保険料率と計算方法からみてみましょう。

賞与の健康保険料の計算方法

賞与に対する社会保険料は、賞与の支給額から計算される「標準賞与額」に社会保険料率をかけて算出します。つまり、「健康保険料=標準賞与額×社会保険料率」という算式で計算します。

社会保険料率は、保険料額表などで確認することができますが、毎年改定されるので注意してください。なお、健康保険料は、事業主と被保険者が半分ずつ負担する割合となっています。

標準賞与額は、原則として、賞与の支給総額から千円未満を切り捨てた値です。例えば、賞与の支給額が19,999円の場合、従業員の標準賞与額は19,000円になり、その19,000円に対して社会保険料がかかってきます。

参照:全国健康保健協会「標準報酬月額・標準賞与額とは?」

厚生年金保険料の計算方法

健康保険料同様、厚生年金保険の場合も、賞与額から1,000円未満を切り捨てた標準賞与額に保険料をかけて算出します。つまり、「厚生年金保険料=標準賞与額×保険料率」という算式で計算します。

厚生年金基金に加入している場合は、保険料率は基金ごとに定められている免除保険料率2.4~5.0を控除して計算します。なお、厚生年金保険料は、事業主と被保険者が半分ずつ負担する割合となっています。

介護保険料の計算方法

介護保険料も、賞与額から1,000円未満を切り捨てた標準賞与額に保険料をかけて算出します。つまり、「介護保険料=標準賞与額×保険料率」という算式で計算します。

保険料率は、健康保険料率とともに毎年改正されていますので注意してください。なお、介護保険料は、原則として、事業主と被保険者が半分ずつ負担する割合になっています。

賞与の雇用料の計算方法

雇用保険料は、健康保険料や厚生年金保険料、介護保険料などの社会保険料とは異なり、賞与額に保険料率をかけて算出します。つまり、「雇用保険料=賞与額×保険料」という算式で計算します。

雇用保険料率は、事業の種類によって異なってきます。また、事業主と被保険者でも異なります。なお、保険料率は毎年見直されていますので注意してください。

雇用保険の保険料率(令和3年4月1日から令和4年3月31日まで)は、以下のようになっています。(令和2年度からの変更はありません。)

事業内容 雇用保険料率
一般 労働者負担 事業主負担
6/1,000
3/1,000 失業等給付 雇用保険二事業
3/1,000 3/1,000
9/1,000
農林水産と清酒製造 労働者負担 事業主負担
7/1,000
4/1,000 失業等給付 雇用保険二事業
4/1,000 3/1,000
11/1,000
建設 労働者負担 事業主負担
8/1,000
4/1,000 失業等給付 雇用保険二事業
4/1,000 4/1,000
12/1,000

参照:令和3年度の雇用保険料率について〜令和2年度から変更ありません〜

賞与の源泉所得税の計算方法

賞与にかかる源泉徴収税額は、「賞与の源泉徴収税額=賞与から社会保険料を差し引いた金額×税率」という算式で計算します。税率は、「賞与に対する源泉徴収額の算出率の表」を使って確認します。

前月の給与から社会保険料を差し引いた金額と、扶養親族等の人数を確認し税率を求めます。「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」は、国税庁の公式サイトで参照することができます。

「標準賞与額」の例外について

健康保険と厚生年金では、標準賞与額にそれぞれ上限が設けられています。一定の上限を超える標準賞与額には、健康保険料と厚生年金保険料は対象外となります。ただし、健康保険と厚生年金保険のそれぞれの上限額の集計期間と上限額は異なっています。

健康保険の上限について

健康保険の標準賞与額は、年度の累計額573万円が上限となっています。集計期間は、毎年4月1日から翌年3月31日までです。標準賞与額の上限は、賞与の支払いを受ける個人単位で計算をしていきます。

例えば、6月に500万円、同じ年の12月に500万円の賞与がそれぞれ支払われた場合をみてみましょう。この場合、6月の賞与に400万円に対しては健康保険料がかかります。この時点で上限まであと73万円です。したがって、12月の賞与には500万円ではなく、73万円に対して健康保険料がかかります。

一方、同じ年の3月と4月に、それぞれ500万円の賞与が支払れる場合は、集計期間が年度をまたいでいますので、それぞれの500万円に社会保険料がかかります。このように、年度をまたぐかどうかの集計期間によって、同じ1年でも社会保険料が大きく異なってくることがあります。

厚生年金の上限について

厚生年金の標準賞与額は、1ヶ月あたり150万円が上限と定められています。前述の例のように、6月と12月にそれぞれ500万円の賞与が支払れた場合は、6月と12月それぞれの150万円に対して、厚生年金保険料がかかってきます。

退職者に賞与を支払うときの注意点

退職者に賞与を支払う場合は、健康保険と厚生年金の「被保険者資格喪失日が属する月」に支払われた賞与に対しては、健康保険料と厚生年金保険料はかかりません。

退職によって健康保険と厚生年金保険を被保険者資格を損失する場合の「被保険者資格喪失日」は、退職日の翌日になりますので、退職日が月末の場合は、翌月の1日が「被保険者資格喪失日」になります。

したがって、月末退職の場合は、退職月に賞与が支払われた場合は健康保険料と厚生年金保険料がかかってきます。一方、退職月の翌月に賞与が支払れた場合は、保険料はかかってきません。

育児休業中の社員に賞与を支払うときの注意点

育児休業中の従業員に対して賞与を支払う場合、育児休業の開始日が属する月から、育児休業の終了日の翌日が属する月の前月に支払われた賞与に対しては、健康保険と厚生年金の保険料は対象外となります。

原則として、育児休業中の賞与は健康保険と厚生年金はかかりませんが、育児休業の終了する日の翌日に属する月と同月に支給された賞与に関しては、例外として保険料の対象となりますので注意が必要です。

賞与を支払った後は「被保険者賞与支払届」の提出を!

事業所は、健康保険と厚生年金の被保険者へ賞与を支給した場合は、各従業員に支払った賞与の金額が個人ごとに記載されている「被保険者給与支払届」を提出する必要があります。

被保険者給与支払届は、協会けんぽへ加入している事業所は管轄の年金事務所、健康保険組合へ加入している事業所は管轄の年金事務所と健康保険組合へ、支給日より5日以内に提出することが求められています。

年金事務所と健康保険組合へ「被保険者給与支払届」を提出する際には、、賞与の総額や支給対象人数などを記載された「被保険者賞与支払届総括表」も一緒に提出します。なお、70歳以上の従業員に賞与を支払う場合は、「70歳以上被用者算定基礎・月額変更・賞与支払届」を別途に提出する必要があります。

「被保険者賞与支払届総括表」が廃止、新設「賞与不支給報告書」

令和3年4月1日以降提出分から、賞与支払届・算定基礎届の提出の際に添付していた総括表が廃止となりました。それに変わり、令和3年4月から「賞与不支給報告書」が新設されました。日本年金機構に登録している賞与支払予定月に、賞与を支給しなかった場合に「賞与不支給報告書」を提出します。

このような変更により、厚生年金保険の適用事務に係る事業主等の事務手続きの利便性向上が期待されています。

参照:日本年金機構「【事業者の皆様へ】令和3年4月からの賞与支払届等に係る統括表の廃止及び賞与不支給報告書の新設について

まとめ

賞与における社会保険料や雇用保険料、源泉所得税などの計算は、月々の給与とは計算方法が異なりますが、難しものではありません。賞与から徴収した税金類は、健康保険組合や協会けんぽ、日本年金機構(年金事務所)、労働局、税務署などと納付先が異なっていますし、書類の提出先も異なっています。それぞれ期日が決められていますので、しっかり守るようにしましょう。

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