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【完全版】就業規則を変更するには?変更手続きの流れと5つの注意点

2020年8月21日
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就業規則変更手続きは、その方法を間違えてしまうと従業員との間にトラブルが発生しやすいことで知られています。最悪の場合は、裁判にまで発展することもあるため、法律に従って、正しい方法で変更手続きを行うことがとても重要です。

この記事では、就業規則の変更手続きの流れや方法、注意すべきことなどについて分かりやすく解説していきます。

就業規則とは?

就業規則とは、従業員が働くうえでの労働賃金や労働時間、労働条件などについて事業所ごとに定めた規則のことです。職場のルールブックとも言えるでしょう。労働基準法第89条には、「労働者を常時10人以上雇用している事業所は、就業規則の作成と届出書を提出しなければならない」と定められています。

常時10人以上の労働者とは、正社員だけでなく、パートやアルバイトなど雇用形態を問わず、直接雇用する労働者すべてが該当します。(派遣労働者は、派遣元企業が雇用しているため対象外)

なお、労働者が10名未満の場合は、就業規則を設けなくても法律違反にはなりません。しかし、トラブルを未然に防ぐためには、作成義務はありませんが、作成しておくと安心でしょう。

就業規則が必要な理由

就業規則を作成することには、いくつかの理由があります。

・社内ルールを設けることで、労働者が安心して働きやすい環境を整えることにつながる。
・労働者の一定の秩序を維持できる。
・企業と労働者との間にトラブルが生じた場合、適切に対応することができる。

就業規則に必ず記載すべき事項

就業規則の内容には、必ず記載すべきいくつかの事項が決まっています。そして、必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」と、会社の任意で記載する「相対的記載事項」に大きく分類されています。

【絶対的記載事項】
・勤務形態に関する事項
・労働時間に関する事項
・休日や休暇に関する事項
・労働賃金に関する事項
・退職に関する事項

【相対的記載事項】
・退職金に関する事項
・臨時の賃金や最低賃金に関する事項
・食費や作業用品など労働者の負担に関する事項
・安全や衛生に関する事項
・職業訓練に関する事項
・災害補償や業務以外の傷病手当に関する事項
・表彰に関する事項
・転勤や配置転換、出向などに関する事項

就業規則を変更する主なケース

では、どのようなときに就業規則の変更が必要となるのでしょうか?具体的な例をみていきましょう。

ケース①法令が改正されたとき
労働基準法などの労働関連の法令が改正されたとき、法令よりも従業員に不利な内容の就業規則に関しては、その部分が無効になります。したがって、法改正に対応するため就業規則の変更が生じます。

ケース②固定残業代制度を導入するとき
近年、「固定残業代制度(みなし残業代)」を導入する会社が増えています。多くの場合、残業代トラブルを経験し、その対応として固定残業代制度を新設するケースが多いようです。新たに導入した際には、就業規則を変更する必要があります。

ケース③事項内容を増やしたり減らしたりなど変更するとき
新しい手当を新設したり、従来の手当を廃止したりなど、事項内容を変更する際には、就業規則の変更が必要です。

ケース④賃金体系を変更するとき
賃金体系を変更する際にも、就業規則の変更が必要です。

ケース⑤始業時刻や終業時刻などを変更するとき
始業時刻や終業時刻、公休日などを変更する場合、就業規則の変更が必要となります。

ケース⑥在宅勤務制度を導入するとき
在宅勤務制度や在宅ワークなどの新しい勤務形式を導入する場合、就業規則の変更が必要となります。

ケース⑦現行の就業規則と会社の実態がずれているとき
就業規則で定めた会社のルールと会社の実態がずれている場合、適切な内容の就業規則へと変更する必要があります。

ここで挙げた就業規則が必要となるケースは一例です。このように就業規則の変更が必要となるケースは多々あります。では、就業規則の変更手続きの流れについてみていきましょう。

就業規則の変更の流れ

就業規則の変更は、次のような流れで行います。

ステップ①変更案の検討・作成

就業規則の変更する際には、変更案を作成する必要があります。変更内容を洗い出し、変更する内容を検討しましょう。そのためにはまず総務部などの担当部署で変更案をまとめます。

その後、法務担当者などによる確認が行われます。法律に抵触する部分がなければ、取締役会で承認を受けることができます。経営陣の合意を得た後、変更案を作成します。

ステップ②労働者の代表者からの意見聴取と意見書の作成

変更内容を検討・作成した後は、意見書の作成です。まず労働者の過半数の代表者の意見を聴取し、書面にまとめた意見書を添付することが義務付けられています。

【労働者の過半数の代表者とは?】
労働者の代表者とは、労働基準法第41条で「監督または管理の立場でない人」と規定されています。つまり、管理監督者でない人が、労働者の代表者にならなければいけません。なお、管理監督者とは、部長や工場長など社内で地位と権限を与えられており、業務内容や管理、業務を遂行する人のことです。

【労働者の過半数の代表者の選出方法】
労働者の代表を選出するために、まず従業員に対して「変更した就業規則に対して意見を出してくれる代表者を選出する」旨を伝え、投票や選挙などにより選出します。そして、選出する代表者は労働者の過半数から指示されていることが重要です。その後、意見書を作成します。

ステップ③就業規則変更届などの作成と提出

続いて、就業規則変更に必要な書類の作成と提出です。就業規則変更には、①就業規則変更届、②意見書、③変更後の就業規則、の3種類の書類の作成が必要です。就業規則変更届と意見書には、決まった様式はありません。

提出する際には、各書類それぞれ2部ずつ用意します。その理由は、労働基準監督署で保管する用と事業所で保管する用のために受理印をもらうためです。では、それぞれの書類についてみていきましょう。

・就業規則変更届
就業規則の変更には、「就業規則変更届」が必要です。決まった様式はありませんが、労働局のホームページからダウンロードしたものを使用することもできます。

・労働者代表の意見書
就業規則の変更には、ステップ②の労働者の代表者の「意見書」が必要です。就業規則変更届同様、様式に決まりはありませんが、労働局のホームページからダウンロードしたものを使用することができます。意見書の目的は、労働者の過半数の代表者から意見聴取したことを証明するための書類です。

特に意見がない場合でも意見書に「特になし」と記載します。また、労働組合に加入している場合は労働組合の名称、加入していない場合は代表者の選出方法について記載する必要があります。なお、この意見書は労働者の代表者が作成しなければいけません。

・変更後の就業規則
就業規則の変更には、「変更後の就業規則(もしくは新旧対照表)」の提出も必要となります。変更になった箇所を提示することを目的としています。

ステップ④変更した就業規則の周知

就業規則を変更した後、労働契約法第10条では「変更後の就業規則を労働者に周知させること」と定められています。つまり、従業員に周知しなければいけません。周知には、各事業所内の見やすい場所に就業規則の変更を知らせたり、従業員に書面を交付したり、メールを送信したりなどすることです。

また、近年は就業規則のデータを電子保存し、社内のパソコンで閲覧できるようにする事業所も増えています。全従業員へ周知することで、はじめて変更後の就業規則の効力が発生します。ですから、周知の義務は、とても重要な手続きのひとつと言えるでしょう。

就業規則を変更する際の注意点

では、実際に就業規則を変更する際、注意すべきいくつかの点をみていきましょう。

注意点①不利益変更は禁止されている

労働基準法第9条では、就業規則の不利益変更は禁止されています。しかし、法令に抵触しなければ、就業規則の変更が労働者にとって不利になる内容へと変更されることもあります。ですから、不利益変更を行う場合は、企業はもちろん、労働者から見ても「必要」で「合理的」な内容でなければ変更が認められません。

では、労働者にとって不利となるどんな具体的な変更があるでしょうか?例えば、企業が労働者の賃金水準を引き下げたり、休暇を削減することなどは、労働者にとって不利な内容と言えるでしょう。しかし、企業が倒産寸前で、さまざまな対策を打ったのに状況が改善されない場合は、不利益変更であっても「必要」で「合理的」な内容なので認められます。

ただし、不利益変更の場合は、労働組合や労働者代表などと意見を交換し、変更の理由や内容についてしっかり話し合うことがとても重要です。

注意点②不利益変更の場合は、労働者代表の意見書だけの対応はNG!

不利益変更の場合は、労働者代表の意見書だけでは対応することはできません。なぜなら、労働者代表が合意したとしても、反対意見を持つ労働者がいないと断言することができないからです。

したがって、すべての従業員に説明をし、すべての従業員に合意してもらうことが求められています。なお、労働者に不利になる就業規則の変更で、従業員すべてから合意が得られない場合は、裁判になる可能性もあります。

注意点③就業規則変更の「合理的」と「非合理的」の判断基準

では、就業規則変更が「合理的」もしくは「非合理的」であるかどうかは、どのように判断すればよいのでしょうか?労働契約法第10条には、就業規則変更の合理性の基準は、次の5つの観点から検討するべき、と定めています。

それは「労働者が受ける不利益の程度」「労働条件の変更の必要性」「変更後の就業規則の内容の相当性」「労働組合等との交渉の状況」「その他の就業規則の変更に係る事情」の5つの観点です。これらを照らし合わせて合理的である場合は、変更後の就業規則が認められます。

注意点④些細なことでも勝手に変更することはNG!

就業規則の変更は、届出を提出したり、周知したりなどの手続きがあるため容易なことではありません。そのため、「変更内容はあまり変わらないから勝手に変更してしまおう・・」とか「ちょっとくらい変更しても、影響は出ないだろう・・」などと考える方がいるかもしれません。

しかし、就業規則の変更は、どんなに些細な変更だとしても、勝手に変更することは許されていません。前述したように、就業規則の変更は、周知することで法的効力が発生するものです。もし勝手に変更をしてトラブルが生じた場合は、法的効力を持たないため問題はさらに大きなものとなってしまいます。

ですから、どんなに些細なことだとしても、変更する際には必ず手続きを行いましょう。

注意点⑤複数の事業所がある場合は事業所ごとの手続きが必要

事業所を複数構えている企業の場合、各事業所ごとに就業規則変更手続きをする必要があります。例えば、本店と支店がある場合は、それぞれが就業規則を作成して、労働基準監督署へ提出しなければいけません。

ただし、本店と支店の就業規則の内容が全く同じ場合は、本店が本店の管轄地区の労働基準監督署へまとめて提出することが認められています。このように就業規則の届出はまとめて提出することができますが、意見書の作成と周知は、事業所ごとに行わなければいけません。

就業規則変更届の提出期限は?

就業規則変更届には、明確な提出期限は設けられていません。しかし、就業規則変更した場合は、延滞なく、管轄地区の労働基準監督署へ届出を提出するよう定められています。具体的な提出期限はありませんが、常識的な範囲の期間内に届出を提出するようにしましょう。

まとめ

就業規則を変更する場合は、法律に従って、正しい方法で変更手続きをしなければいけません。それは①変更案の作成、②意見聴取と意見書の作成、③就業規則変更届など書類作成と提出、④変更後の就業規則の周知です。どんな些細な変更だとしても、4つのステップを踏まなければいけません。

また、変更内容も労働者にとって不利益な規則へと変更する場合は、合理的である必要があります。就業規則を変更する際には、労働者とトラブルが発生しないよう、また変更後も労働者と共にスムーズに仕事ができるよう、双方でしっかり話し合い、きちんとした手順を踏んで就業規則を変更するようにしましょう。


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