法人税率とは?法人であれば知っておくべき法人税の基礎知識
法人の経営者であれば、「法人税」を納める義務が課せられています。法人税は、利益に税率をかけるだけの単純なものではなく、税法独自の考え方に従って算出する必要があります。この記事では、正しく法人税を算出するために、法人税率や計算方法など法人税の基礎知識について詳しく解説していきます。
目次
法人税とは?
法人税を納めているのであれば、法人税に関する基礎的な知識を理解しておくことは大切です。法人税は、個人の所得に課税される所得税とは全く異なるものです。では、双方にはどのような違いがあるのでしょうか?
法人税の特徴とは?
そもそも法人とは、ひとつの人格と同様の権利や義務が求められているものを指します。さまざまな会社形態が存在していますが、その中でも「法人」に属する会社形態には、株式会社、合名会社、合同会社、社会福祉法人、NPO法人、一般社団法人などが代表的な法人として挙げられます。
これら法人には、事業によって儲けた利益に法人税が課せられます。なお、法人税は、法人の種類や規模によって課税額が異なってきます。利益を目的としていない社会福祉法人などに対しては、法人税は課税対象となります。
所得税の違いとは?
では、法人税と所得税にはどのような違いがあるのでしょうか?所得税は、個人の所得に対して課税される税金です。法人税とは、対象期間、課税方式、申告期限などの違いがあります。
・法人税
対象期間:事業期間
課税方式:一定税率
申告期限:事業年度終了翌日から2ヶ月以内
・所得税
対象期間:1月1日から12月31日までの1年間
課税方式:超過累進課税
申告期限:2月16日から3月15日(確定申告期間)
法人税と所得税には、上記のような主だった違いがあります。特に税金を算出する際には、課税方式が異なっているため計算方法が異なってきます。つまり、所得税は超過累進課税のため、所得が多くなればなるほどそれに比例して所得税も高くなります。一方、法人税は一定税率なので、所得の金額が税金の額に影響を与えることはありません。
法人税法とは?
法人の所得に課せられる法人税は、「法人税法」と呼ばれる法律でさまざまな規定が設けられています。つまり、法人の経営者は、法人税を納付するという義務を果たすために最低限の法人税法について理解しておくことはとても大切です。
法人税法には、課税所得を計算方法や納付方法などの規定が細かく定められていますが、法人税法をはじめとした法は、毎年のように改正されたり、臨時的措置がとられたりなど内容が変更しています。ですから、法人税を納める義務のある法人は、業務に影響のある税法に関しては常に最新の情報を押さえておく必要があると言えます。
法人税法で定められている3種類の法人税
法人税法では、法人税を3種類に分類しています。それは「各事業年度の所得に対する法人税」「各連結事業年度の所得に対する法人税」「退職年金等積立金に対する法人税」の3種類です。では、それぞれの法人税について詳しくみていきましょう。
・各事業年度の所得に対する法人税
法人税として一般的に知られているのは、「各事業年度の所得に対する法人税」です。毎年、決算期に税金を申告する形をとっており、期間内の事業活動で得た利益である所得額を基準に納める金額を算出します。各法人が定めた1年間の所得を計算したうえで、最終的な税額を求めます。
・各連結事業年度の所得に対する法人税
「各連結事業年度の所得への法人税」は、連結しているすべての親会社や子会社をひとつのグループとして考え、グループ企業全体に法人税を課税します。この方法で納税することにした場合は、各事業年度の所得の計上は不要となります。
なお、連結事業年度の所得を計上する場合は、子会社の所得もすべて計上したうえで、法人税を算出するようにと定められています。ちなみに、このケースのように、ひとつの会社を親会社とし、子会社と連結している法人のことを「連結事業」と呼んでいます。
・退職年金等積立金に対する法人税
退職年金に関する事業を行う信託会社や保険会社などの法人には、事業年度所得とは異なる「退職年金等積立金への法人税」と呼ばれる法人税が課税されます。法人が雇用する従業員の退職年金として支払った掛金は、信託会社や保険会社では払込みをした年度に計上されますが、実際に課税されるのは従業員が退職して年金を受け取るときです。
つまり、退職年金を支払う時期と課税される時期には、タイミングのズレが生じます。このようなタイミングのズレを基準とし法人税が適用されるため、「特別法人税」という名称でも呼ばれています。
法人税の課税対象となる法人と課税対象にならない法人
先述しましたが、法人税は法人格をもつすべての事業を対象としているわけではありません。法人税が課税される法人とは、事業で収益を得た法人のみです。したがって、公益法人や公共法人などは非課税対象となります。では、具体的にどのような会社形態が課税対象、課税対象外なのかをみていきましょう。
課税対象となる法人
法人税の課税対象となる法人は、事業を行うことで利益を得ている法人が該当します。それには普通法人と協同組合等があります。
・普通法人
代表的な普通法人には、株式会社、合資会社、有限会社、合名会社、相互会社、協業組合、医療法人、日本銀行、労働組合、管理組合などが挙げられます。すべての所得に対して法人税を課すことが義務付けられています。しかし、普通法人でも、期末資本金が1億円以下の中小法人等は軽減税率が適用されるため、法人税が軽減されることがあります。
・協同組合等
代表的な協同組合等には、労働者協同組合、農業共同組合、生活共同組合、漁業共同組合、信用金庫などが挙げられます。これらの法人には法人税が課せられますが、協同組合は普通法人よりも課税率が軽減されています。
課税対象にならない法人
法人税が非課税対象として扱われている法人には、公益法人、公共法人、人格のない社団の3つの法人に大きく分けられています。
・公益法人
代表的な公益法人等には、社団法人、財団法人、宗教法人、学校法人、社会福祉法人などが挙げられます。これらの団体は営利を目的とせず、公益に関する事業を行うことを目的としています。法人税は原則、非課税となっていますが、収益事業から利益が生じた場合は、課税対象となります。
・公共法人
代表的な公共法人には、地方公共団体、国立大学法人、国民金融公庫、住宅整備公団、日本年金機構、日本中央競馬会、日本道路公団、日本放送協会などが挙げられます。これらの団体は、社会のために公共事業を営んでいます。そのため、特定の人や法人に特別な利益を与えることはしないため、法人税が課税されないという税制優遇が適用されます。
・人格のない社団
代表的な人格のない社団には、実行委員会、PTA、研究会、マンションなどの管理組合、同窓会などが挙げられます。法律上では法人ではありませんが、税法上では法人として扱われています。法人税は非課税の対象ですが、公益法人同様、収益事業から所得が生じた場合は、課税対象となります。
法人税のしくみと計算方法
国税の一種である「法人税」は、会社が事業で得た利益、つまり所得金額に課せられる税金です。法人税は、「課税所得×法人税率=法人税」という計算式で算出します。計算式自体はシンプルなので簡単に税額を算出できそうに見えますが、内容が複雑なため、法人税のしくみをしっかり理解しておくことは大切です。
課税所得とは
課税所得とは、「利益」や「所得」と同じように見えますが、どちらも課税所得ではありません。では、利益、また所得とは何なのでしょうか?双方には、次のような違いがあります。
・利益
まず「利益」とは、会社が儲けた額のことです。利益は、月や年単位で経営状況を表す指標のひとつとなっています。事業を運営しているなら、日々、小さな額から大きな額まで取引を帳簿に記帳しているはずです。その帳簿に記帳した売上などの収益から仕入や経費などを差引いたものが会社の儲け、つまり利益となります。したがって、利益は「収益-費用=利益」という計算式で求めることができます。なお、残高試算表や決算書などでは、利益は「当期純利益」という勘定科目で計上されています。
・所得
続いて、法人税の計算式の「所得」についてみていきましょう。所得とは、税金を算出する際の基になる数値のことです。税法上では、税金を求める際の収益のことを「益金」、費用のことを「損金」と呼んでいます。所得は、益金から損金を差引いて求めることができます。したがって、所得は「益金-損金=所得」という計算式で求めます。
日々の帳簿付けから利益を求めることができますが、日々の帳簿付けで導かれた会計上の収益と費用は、税法上の益金と損益とは異なるものです。そのため、利益から税法上の益金と損益になるよう調整する必要があります。
法人税率とは?
所得の金額が算出できた後、「法人税率」を乗じ、法人税を求めます。法人税の税率は、会社の種類や資本金の規模、その年の所得総額によって異なってきます。つまり、法人税率は区分されているため、該当する税率で算出する必要があります。
では、具体的な法人税率の数値を確認してみましょう。
・普通法人
資本金1億円以下の法人で年800万円以下の部分:法人税率15%
資本金1億円以下の法人で年800万円超の部分:法人税率23.20%
それ以外:法人税率23.20%
・公益法人等
公益法人等に該当し、年800万円以下の部分:法人税率15%
公益法人等に該当し、年800万円超の部分:法人税率23.20%
・共同組合等
年800万円以下の部分:法人税率15%
年800万円超の部分:法人税率19%
・人格のない社団等
年800万円以下の部分:法人税率15%
年800万円超の部分:法人税率23.20%
益金とは?
ここまでで、法人税を計算する方法と法人税率についてみてきました。所得を求める際の「益金-損金=所得」の「益金」についてさらに詳しくみていきましょう。税法上の益金には、次のようなものが該当します。
益金の対象になるもの
・有償の商品販売やサービスなど
会計上の収益と益金は同じものを指しています。商品の販売やサービスの提供などで、現金などを受け取った場合は、税法上の益金に該当します。また、会計上の収益となる固定資産の売却益、預金利息の受取なども益金として扱います。
・無償の商品販売やサービスなど
金銭の受渡しが発生しない商品の販売やサービスの提供も、税法上の益金に該当します。無償での商品の販売やサービスの提供が帳簿に記載されていなくても、法人税を算定する際には、それらを所得に益金算入しなければいけません。
益金の対象にならないもの
一方、会計上では収益の対象となるものでも、税法上では益金の対象外となるものがあります。税法上で益金にならないものについては、法人税を算定する際には、それらを所得から益金不算入しなければいけません。税法上の益金にならないものには、次のようなものが挙げられます。
・受取配当金
株式で発生する配当金は、普通預金などに振り込まれます。そのため、会計上では、受取配当金として収益に計上することが一般的となっています。しかし、配当金を支払う企業の場合は、法人税などの税金を支払った後の利益から、配当金を支払っています。
そのため、配当金を受け取った側も税金を課してしまうと、受け取った側と支払った側での二重課税になってしまいます。したがって、税法上では、配当金を受け取った側は、受取配当金を益金に含めないルールになっています。
・税金の還付
どんな種類の税金も払い過ぎた場合は、還付として受け取ることができます。税金の還付金は、益金の対象外となります。ただし、事業税と固定資産税など損金になる税金の還付は、益金の対象となるので注意してください。
損金とは?
税法上の損金は、会計上の費用と同じものです。では、損金の対象になるものとならないものには、次のようなものがあります。
損金の対象になるもの
・原価
原価とは、仕入れや材料費など売上に直接関係するものが該当します。これらは売上に欠かすことができない支出のため、損金として扱われます。
・販売費や一般管理費などの費用
売上に直接関係する原価に加え、売上に間接的関係する販売費や一般管理費などの費用も損金に該当します。具体的には、人権費、地代家賃、通信費、水道光熱費などが挙げられます。これらも売上に欠かすことができない支出のため、損金として扱われます。
・損失
損失とは、固定資産を売却したときに発生した損や、商品を破棄したときの破棄損などのことです。これらは売上に貢献してはいませんが、事業をする上で発生した損失なので損金として扱われます。
損金の対象にならないもの
企業が計上できる費用には、事業に必要なものが原則認められていますが、税法上の規定を設けることで費用の額に大きな変動が生じないようにしています。損金の対象として認められていないものには、次のようなものがあります。
・役員報酬や役員賞与
役員報酬や役員賞与は、損金として認められていません。しかし、役員報酬や役員報酬だとしても、定期同額給与や事前確定給与は損金として扱うことができます。
・一定の金額を超えた寄附金
社会貢献のために必要とされている企業の寄附は、無制限に損金として認めると、租税回避として利用する企業が出てくることもあります。そのため、税法上では、寄附金に限度額を設定し、限度額を超えた分は損金の対象外として扱われます。
・限度額を超えた減価償却費
固定資産を購入した場合、減価償却費として計上し、耐年数に応じて損金として処理していくことになっています。税法上では、損金を算出する方法や損金の限度額を規定しており、限度額を超えた分の減価償却費については損金対象外となっています。
法人税にかかる税金の種類と法人税率
一般的に言われている「法人税」は、「法人税」「法人事業税」「法人住民税」の3種類で構成されています。上記でみてきたのは、法人税を構成している法人税の部分の計算方法です。ここでは、残る2種類の法人事業税と法人住民税の税率について詳しくみていきましょう。
法人事業税と概要と税率
法人事業税は、各都道府県に納税する税金です。「所得×法人事業税率=法人事業税」という計算式で求めることができます。法人事業税は、資本金1億円以下の中小法人と資本金1億円を超える法人の2つに区分されています。資本金1億円以下の中小法人の場合は、所得金額に課税標準の所得割のみが法人事業税として課せられます。一方、資本金1億円を超える法人の場合は、所得割だけでなく、外形標準課税と呼ばれる法人の外形に基づいた法人事業税が課せられます。なお、法人事業税の税率は、各都道府県ごとで設定しています。
法人住民税の概要と税率
法人住民税とは、地方税の一種です。法人を構えている市町村で、公共サービスを受けているため法人住民税として税金を納めます。法人住民税は、「法人税割+均等割=法人住民税」という計算式で求めることができます。法人税割は「法人税額×住民税率=法人税割」、均等割は各法人の資本金で一律に定められている額を当てはめて算出します。
法人税を節税するには?
法人税は課税方式を採用しているため、一定の金額を超えると税率が上がることになっています。ですから、法人税のしくみをしっかり理解しているなら、法人税を節税することは可能です。
節税ポイント①益金を減らす
益金に算入する金額を減らすなら、所得の軽減につながり、法人税の節税になります。先述したように益金は主に売上で占めていますが、売上を減らすのではなく、売上を計上するタイミングをずらすだけで、益金を減らせます。どのようにでしょうか?そもそも法人税の計算は、事業年度ごとに行われるものです。つまり、売上を翌年に計上することで、その年の課税所得を減らすことができます。
節税ポイント②損金を増やす
法人税の課税所得は、「益金-損金」で求めます。つまり、損金に算入する金額が増えるなら所得が減少するため、税額も減らすことができます。では、どのように損金を増やすことができるでしょうか?
・赤字を翌年へ繰り越す
法人税法では、赤字の事業年度と黒字の年度の所得を相殺することが認められています。しかし、それには青色申告の承認を受けていることが求められています。また、赤字を繰リ超しできる期間が設定されているので注意してください。
・生命保険料を損金に算入させる
生命保険料などに加入すると、全額もしくはその一部を損金として計上することができます。
・在庫整理をしてみる
商品や材料などの在庫を破棄した場合は、損金として計上することができます。税務署などに処分した証拠を証明できるよう、破棄したときには破棄証明書などの証拠を残しておくことは大切です。
・社員旅行にかかった費用を損金算入する
社員旅行や運動会などの慰安を目的とした活動にかかった費用は、損金として処理することが可能です。万が一税務署調査が入った場合に備えて、実施した年月日、参加者、費用、場所などの基本情報を記録として残しておくようにしましょう。
特別控除を利用してみる
特別控除を利用するなら、法人税の優遇措置が適用されることがあります。代表的な特別控除には、「雇用促進税制」や「中小企業投資促進税制」などが挙げられます。
・雇用促進税制
「地方活力向上地域特定業務施設整備計画」と呼ばれる雇用促進税制は、都道府県知事が実施している特別控除のひとつです。認定されれば、雇用者を増加させることで1人につき最大90万円の税額控除が適用されます。
・中小企業投資促進税制
中小企業投資促進税制は、機械などの設備投資にかかった費用を「特別償却」として計上できる制度です。また、一定の税額控除を受けることも可能です。
まとめ
法人税やその計算方法、税率などについてみてきました。法人税は所得税と違い、計算方法が少し複雑です。また、各都道府県によって税率が異なる種類の税もあります。ですから、経営者や経理担当者などは、法人税のしくみをしっかり理解しておくことは大切です。
もし法人税など税金のことで分からないことがある場合は、税の専門家である税理士に相談されることをおすすめします。経営面で大きな力となってくれることでしょう。
税理士コンシェルジュは、2008年サービス開始より株式会社タックスコムが運営する税理士専門の紹介サイトです。会計の実務経験を活かし、これまで1000名以上の税理士と面談し、1万件以上の相談実績がある税理士選びの専門家です。
サービス内容としては、税理士の口コミから無料相談・厳選した税理士の紹介まで提供しております。
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