社会保険130万円の壁とは!経営者が押さえておきたいポイントについてわかりやすく解説! | 税理士コンシェルジュ

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社会保険130万円の壁とは!経営者が押さえておきたいポイントについてわかりやすく解説!

2024年1月25日
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「独立行政法人 労働政策研究・研修機構」における2019年の調査(※1)によると、従業員の不足状況について「大いに不足」「やや不足」と回答した企業は、全体の「6割以上」となっています。

また、同調査では、非正社員の不足状況について「大いに不足」「やや不足」と回答した企業が3割を超える結果となるなど、パート従業員の人手不足についても軽視できない状況です。

このような状況のなか、パート従業員にもっと働いて欲しいと考える経営者は少なくないでしょう。しかし「扶養からはずれると困る」という理由で、断られることも多いかもしれません。

「社会保険130万円の壁」は、多くの経営者が直面している問題です。

この記事では、パート従業員が気にする「年収の壁」から、働き損にならない働き方までわかりやすく解説します。

さらに、2023年10月からはじまった「一時的に130万円の壁が緩和される新ルール」についても紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

※1 独立行政法人 労働政策研究・研修機構「人手不足等をめぐる現状と働き方等に関する調査(企業調査・労働者調査)

社会保険130万円の壁とは?


年収が130万円以上になると、家族の社会保険の扶養に入れません。自分で社会保険料を払わないといけないので、社会保険料分だけ手取り収入が減ります。

このため、パートやアルバイトの従業員にとって年収130万円は1つのハードルとなっています。これが「社会保険130万円の壁」です。

とはいえ、年収の壁は130万円だけではありません。まずは、主な年収の壁を確認しましょう。

「年収の壁」とは

「年収の壁」とは、年収が一定の金額を超えると、税金や社会保険料の負担が増えるボーダーラインのことです。

主な年収の壁は、次のとおりです。

年収の壁 壁の種類 壁を超えるとどうなるのか
100万円 住民税 住民税がかかりはじめる
103万円 所得税 所得税がかかりはじめる
106万円 社会保険 一定規模以上の会社では、社会保険へ加入が必要
このため、社会保険料がかかる可能性がある
130万円 社会保険 家族の扶養からはずれるため、自分で社会保険に加入が必要
このため、社会保険料を負担しなければいけない
150万円 所得税 配偶者特別控除が満額の38万円でなくなる
配偶者の税金が段階的に増える

なかでも、社会保険料は大きな負担となるため、多くのパートやアルバイトの従業員が130万円を意識します。

年収130万円以上は手取りが減る?

年収130万円以上になると家族の扶養からはずれるため、社会保険料がかかることから手取り収入が減ります。

たとえば、パート従業員の年収が130万円になると、手取り年収が30万円以上も下がる可能性があります。

【例】

年収 135万円
(月収) (112,500円)
年齢 45歳
住まい 東京都大田区
勤務先 東京都

年収が130万円以上なので、自分で「国民年金・国民健康保険」かパート先の「厚生年金・健康保険」に加入します。

「国民年金・国民健康保険」の社会保険料:年間318,168円

なお、国民健康保険料はお住いの自治体によって異なります。

「厚生年金・健康保険」の社会保険料(標準報酬月額110,000):年間198,792円

なお、厚生年金保険料、健康保険料は会社の所在地によって異なります。

上記のように、年収130万円の壁を超えると社会保険料が約20〜30万円もかかり、手取り収入が大きく減ります。

手取りを減らさないための「就業調整」が問題となっている

年末になると、就業時間を調整するパートやアルバイト従業員が多く見受けられます。それは、年収130万円以上になると働き損になりかねないからです。

このため「社会保険130万円の壁」による就業調整は、人手不足を加速する1つの原因となっており、この問題に対応するため2023年10月から新しいルールが設けられました。

社会保険130万円の壁はなくなる?


結論からいうと、いまのところ社会保険130万円の壁はなくなりません。では、新しいルールとはどのようなものでしょうか。

社会保険130万円の壁は「一時的に」緩和される

パート従業員の年収が一時的に130万円以上になったとしても、会社がそのことを証明すると、扶養にとどまることが可能となりました。

これを「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」といいます。

「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」とは


出典:厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ

「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」は、パートやアルバイトの従業員の収入が一時的に上がったとしても、引き続き扶養に入り続けることができる仕組みです。

繁忙期以外でも、ほかの従業員が辞めたり、急に大口の仕事が入ってきたりしたことで一時的に労働時間が増えたときにも適用されます。

ただし、新しいルールには次のような注意点もあるので注意しましょう。

  • 連続2回までしか適用できない
  • 年間収入が引き続き増える見込みであれば適用できない

措置の背景

この新しいルールは、「年収の壁」問題を解決するために創設されました。

具体的には、「社会全体で働き手を確保すること」や「働き手が希望どおりに働ける環境づくり」を目的としています。

これらを実現するための特別な施策が、「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」です。

いつからいつまで実施される?

「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」は、2023年10月20日以降の被扶養者の認定及び収入確認に適用されます。

終了時期は未定ですが、この措置はあくまでも当面の措置であり、制度の見直しが予定されています。

具体的には、2024年の年金制度改正で今後の対応について検討される予定です。

また、このルールは連続2回までしか使えません。

このため、年に1度、被扶養者の確認をおこなう会社であれば「2年目までが限度」です。

対象者の範囲

「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」の対象者は、つぎの条件を満たす方です。

【対象となる人】

  • パート・アルバイトで働いている
  • 一時的な収入変動(例:人手不足による労働時間延長等)により、年間収入が130万円以上になる
  • 事業主が一時的な収入変動であることを証明できる

なお、フリーランスや自営業者は対象外です。

事業主の証明が必要

「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」により被扶養者の確認をうけるためには、事業主の証明が必要です。

証明書には、会社名や所在地のほか、次のような記載をします。

【証明書のおもな記載事項】

  • 雇用契約などにより本来想定される年間収入:見込み年収
  • 人手不足による労働時間延長等が行われた期間:一時的に収入が増えた期間
  • 上記期間における当事業所での労働による収入額(実績額):一時的に増えた収入

なお、証明書は「被扶養者の収入確認に当たっての「一時的な収入変動」に係る事業主の証明書 」において入手が可能です。

結局、どれぐらい働くのが良いの?


では、会社としてパートやアルバイトの従業員にどのように働いてもらうのが最適なのでしょうか。

原則として「一時的な収入変動」に上限はない

まず、「一次的な収入変動」には、決まった上限はありません。上限を作ると、その上限が新しい年収の壁になってしまうためです。

このため、どのくらい働くのが良いといった明確なラインはありません。

ただし、扶養されているパートやアルバイト従業員の年収が、扶養している家族の年収よりも高くなるとき等は扶養からはずれるので注意が必要です。

手取りを減らさないための働き方は?

ここでは、手取りを減らさないための具体策を紹介します。パートやアルバイト従業員とよく話し合いをおこない、働き方を検討しましょう。

【手取りを減らさない働き方】

1.年収を一定の水準に抑える:「年収の壁」を意識して、年収を一定の水準(たとえば130万円未満)に抑えることで、社会保険料の負担を回避することができます。

2.労働時間を増やす:労働時間を増やすことで、社会保険料による手取りの減少以上に収入を増やす方法です。

たとえば、これまで年収130万円で働いていた方であれば、国民年金・国民健康保険で約170万円、厚生年金・健康保険で約150万円以上へ年収を増やすと社会保険に加入しても手取りを減らさずにすみます。

3.「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」の利用:年収130万円を意識しているパートやアルバイト従業員であれば、「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」を検討しましょう。

一時的な人手不足であれば、事業主が証明することで、扶養に入ったまま働き続けることが可能です。

「社会保険130万円の壁」に関するよくある質問

収入には「交通費」も含まれますか?

社会保険上の扶養からはずれる年収130万円の基準には、交通費が含まれます。つまり、年収130万円以上かどうかは、基本給、各種手当、ボーナス、交通費などすべての収入で判断されます。

なお、年収の壁によって交通費を含めるものと含めないものがあるので、注意しましょう。

年収の壁 壁の種類 交通費を含めるかどうか
130万円 社会保険の扶養判定 含める
106万円 社会保険の加入基準 含めない
103万円 所得税の対象 含めない

「106万円の壁」における月収の目安(8万8,000円)には、各種手当やボーナス、交通費は含まれません。

また、所得税の対象となる「年収103万円の壁」にも、原則として交通費は含まれませんので押さえておきましょう。

「学生」は対象になりますか?

学生も「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」の対象になります。

なお、学生であっても、年間のアルバイト収入が130万円以上になると、社会保険の扶養からはずれるため、自分で社会保険に加入し社会保険料を支払わなければいけません。

年収の壁による違いは、下表のとおりです。

年収の壁 壁の種類 学生が対象になるか
130万円 社会保険の扶養判定 対象
(事業主の証明による
被扶養者の認定の円滑化)
 ― 対象
106万円 社会保険の加入基準 対象外

なお「106万円の壁」による社会保険の加入に関しては、学生は基本的に対象外です。

まとめ


この記事では、経営者が直面する「社会保険130万円の壁」の問題点と、新たに導入されたルールについて詳しく解説しています。

2023年10月から導入された新ルールでは、一時的に130万円の壁が緩和されるため、パート従業員の年収が130万円以上になっても、事業主の証明により扶養にとどまることが可能となりました。

従業員の手取り収入を減らさないためには、従業員とのコミュニケーションを重視し、新ルールの活用などを通じて最適な働き方を模索することが重要です。

そのため、経営者には「社会保険130万円の壁」を乗り越えるための知識と戦略を身につけることが求められるでしょう。

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