雇用保険の基礎知識 | 加入条件・手続きの方法について | 税理士コンシェルジュ

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雇用保険の基礎知識 | 加入条件・手続きの方法について

2021年4月26日
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一定の条件を満たすと、加入が義務付けられている「雇用保険」。個人事業主を含む雇用主は、新たに労働者を雇用したとき、すみやかに雇用保険の加入手続きをしなければいけません。

この記事では、雇用保険の加入条件や手続きの方法など、雇用保険に関する基礎知識を解説します。

社会保険とは?

そもそも社会保険とは何でしょうか?社会保険とは、怪我や病気、労働災害、老齢、死亡などのリスクに備えるための制度のことです。社会保険には、以下の5つが該当します。

・健康保険
・介護保険
・厚生年金
・労災保険
・雇用保険

つまり、社会保険とは5つの保険の総称(広義)です。中でも、健康保険、介護保険、厚生年金は狭義の意味で「社会保険」、労災保険と雇用保険は「労働保険」と呼んでいます。

では、雇用保険の位置付けを踏まえた上で、雇用保険について詳しくみていきましょう。

雇用保険とは?

雇用保険とは、出産や育児、介護、失業などで収入が減ったとき、労働者の生活を支えるための制度です。安定した生活が得られる「所得保障」と、雇用の安定を約束する「再就職支援」を受けることができます。

厚生労働省の施策紹介によると、雇用保険は一定の給付金を支給することに加え、失業の予防、雇用状態の是正、雇用機会の増大、労働者の能力の開発や向上、労働者の福祉の増進を図ることなどを目的としています。よって、一定の労働条件の下で働いている労働者は、加入することが義務づけられています。

雇用保険の3つの加入条件

以下の3つの条件を全て満たしている場合は、雇用保険に加入する義務があります。

条件①31日以上の雇用見込みがある。
条件②1週間の所定労働時間(契約上の労働時間)が、20時間以上である。
条件③雇用保険法第6条の適用除外に該当する。

では、それぞれの条件を詳しくみていきましょう。

条件①31日以上の雇用見込みがある

31日以上雇用が継続することが明確であれば、パートやアルバイトなど雇用形態を問わず、雇用保険に加入しなければいけません。また、雇用契約期間が31日未満だとしても、以下の条件に該当する場合は、31日以上の雇用見込みがあると判断されます。

・期間が定まっていない状態での雇用
・雇用契約に更新規定があり、31日未満での契約終了が記載されていない。
・雇用契約に更新規定はないが、31日以上雇用されたことがある。

条件②1週間の所定労働時間が、20時間以上である

パートやアルバイトなど雇用形態を問わず、1週間の所定労働時間が20時間以上の雇用契約の場合は、加入義務が発生します。なお、20時間以上働いた週があったとしても、常時20時間未満の雇用契約の場合は、加入対象外となります。

条件③雇用保険法第6条の適用除外に該当する。

雇用保険法第6条の適用除外に該当する人とは、以下の条件に該当する人です。

・国、都道府県、市区町村の公務員、及びこれらに準ずる事業に属する人。

・季節的事業に雇用される人で、4ヶ月以内の期間を予定して雇用される、もしくは週所定労働時間が20時間以上30時間未満の人。
1年のうち4ヵ月以上の雇用契約を結んでおり、週の所定労働時間が30時間以上の人は、雇用保険の「短期雇用特例被保険者」に該当します。よって、給付金を受け取ることができます。

・日雇労働者で、日雇労働保険者にならない人。
日雇労働保険者とは、1日単位で仕事に従事する人や雇用期間が30日未満の人で、雇用保険適用事業所に雇用されている労働者のことです。

・学生。
ただし例外として、卒業前に内定先に就職し、卒業後も継続して勤務する予定の学生、通信教育、定時制の学生は加入対象となる。

・船員保険の被保険者。
・保険会社の外務員、及び商事会社の外交員、営業部員。
・旅館や飲食店など娯楽事業に雇用される人で、事業主と雇用関係にない人。

雇用保険の給付金の種類

雇用保険と聞くと、失業時や退職時に給付されるもの、と思われている方は少なくありません。そのため、雇用保険は「失業保険」としてよく知られています。もちろん、失業時にもらえる給付金ですが、雇用保険で支給される給付金には多くの種類があります。大きく5つに分類されています。

・求職者給付:定年や解雇などで失業したとき、安定した生活を保証し、再就職のサポートを目的とする。
・就職促進給付:再就職の支援や再就職後に長く勤務できることを目的する。
・教育訓練給付:スキルアップや資格取得のために受けた教育、講座費用など労働者に給付する。
・雇用継続給付:高齢者の就業促進、介護や育児で休業するときの手当。

では、それぞれを詳しくみていきましょう。

求職者給付

【基本手当】
いわゆる「失業手当」のことです。離職前の給与の5〜8割(上限・下限有り)が支給されます。給付期間は、離職時の年齢と離職理由により異なります。

【技能習得手当】
ハローワークからの指示で公共職業訓練を受講する場合は、技能所得手当が受けられます。つまり、受講手当と通所手当が支給されます。

【寄宿手当】
公共職業訓練を受けるために、家族と別居し、寄宿する必要がある場合は、寄宿手当が支給されます。

【傷病手当】
傷病手当とは、怪我や病気で働けなくなったときに支給される手当です。

【高齢者給付金】
高齢者給付金とは、65歳以上の被保険者が受け取れる失業保険のことです。

【特例一時金】
【日雇労働求職者給付金】
日雇労働者が失業したときに支給される失業保険のことです。

就職促進給付

【再就職手当】
再就職手当とは、基本手当の受給資格者が、再就職を果たし、一定要件を満たした場合に支払われる給付金のことです。

【就業促進手当】
就業促進手当とは、再就職手当の受給者が6ヶ月以上、離職前の給与よりも低い給与で雇用されているときに支払われる手当のことです。

【移転費】
【求職活動支援費】
求職活動支援とは、ハローワークの紹介で、遠方の企業を見学や面接をした際にかかる交通費や宿泊費などの手当のことです。

教育訓練給付

【一般教育訓練給付金】
国が指定する教育訓練講座を受講し修了したときに、かかった費用の一部(20%相当額)が支給されます。なお、気教育訓練講座には、看護師、保育士、調理師、美容師などがあります。

【専門教育訓練給付金】
専門教育訓練給付金は、①厚生労働大臣の定める講座を修了する、②雇用保険被保険者期間が3年以上である、③複数回の支給を受ける場合は、次回の受給までに3年以上の期間が空いている、の3つの条件を満たしていなければいけません。

かかった費用の一部(50%相当額・上額1年につき40万円までを3年間)が支給されます。なお、講座終了から1年以内に指定の資格を取得すると、さらに20%相当額が支給されます。

雇用継続給付

【高年齢雇用継続給付金】
雇用保険に加入していた期間が5年以上ある60〜65歳未満の被保険者で、60歳時の賃金と比較し、その後の賃金が75%に満たないときに支給される給付金です。

【介護休業給付金】
家族の介護のために休業したときに支給される給付金です。

【育児休業給付金】
1歳、もしくは1歳2ヶ月未満の子供を養育するために休業した時に支給される手当です。

雇用保険加入時に必要な書類

雇用保険に新規に加入する事業所は、雇用保険に加入するための「適用事業所」の設置手続きをしなければいけません。必要な書類は、以下の通りです。

・雇用保険適用事業所設置届
・雇用保険被保険者資格取得届
・労働保険関係成立届の控え(労働基準監督署に提出した控え)
・保険関係成立届

では、それぞれの書類と提出場所について解説していきます。

雇用保険適用事業所設置届

提出先:ハローワーク
提出期限:労働者を雇用した翌日から10日以内

労働者を一人でも雇用したら提出する義務が発生します。雇用保険適用事業所設置届に記入すべき項目は、以下の通りです。

【記入すべき項目】
・法人番号
・事業所の名称
・雇用保険の適用事業所となった年月日
・労働保険番号
・事業の概要
・その年度の1日の平均労働者数
・賃金締切日

雇用保険被保険者資格取得届

提出先:ハローワーク
提出期限:雇用日、もしくは雇用保険の加入条件を満たした翌月の10日まで

雇用保険被保険者資格取得届は、雇用保険の対象となる労働者を雇用するたびに提出義務が発生します。この書類を提出した時点で、「雇用保険被保険者証」と「雇用保険資格取得等確認通知書」が交付されます。

労働保険関係成立届の控え

提出先:ハローワーク
提出期限:保険関係が設立した日の翌日から起算して10日以内

雇用保険適用事業所設置届を提出するときに一緒に提出しましょう。その際、以下の書類を提示します。
・事業所の謄本
・被保険者証
・出勤簿
・賃金台帳
・労働者名簿

保険関係成立届

提出先:労働基準監督署
提出期限:保険関係が設立した日の翌日から起算して10日以内

会社の概要、会社名、住所、雇用保険への加入日、雇用者数などを記載します。
なお、提出時には、「法人登記謄本(原本)」または交付後3ヶ月以内の「登記事項証明書」を添付する必要があります。(個人事業主の場合は、「登記事項証明書」ではなく「住民票」になります。)

厚生労働省「労働保険の成立手続き」

雇用保険の手続きが発生する3つのタイミング

雇用保険は、以下のタイミングで手続きが発生します。

・雇用時
・退職時
・異動時

では、それぞれのタイミングでの手続き方法を確認しましょう。

雇用時「資格取得手続き」

雇用保険加入条件を満たす労働者を雇用した場合、雇用した月の翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」を事業所を管轄する地区のハローワークに提出します。

前述しましたが、「雇用保険被保険者資格取得届」を提出すると、被保険者に「雇用保険被保険者証」と「雇用保険資格取得等確認通知書」が交付されます。なお、事業主がこの手続きを怠った場合は、後述しますが、罰則が課せられます。

「雇用保険被保険者資格取得届」は、ハローワークの窓口、もしくは下記のサイトからダウンロードすることができます。

ハローワークインターネットサービス「雇用保険被保険者資格取得届」

退職時「資格喪失手続き」

労働者が何かしらの理由で離職する時には、「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」を事業所を管轄する地区のハローワークに提出します。提出期限は、離職した翌々日から10日以内となっています。

異動時「異動手続き」

雇用保険は、事業所単位で登録されています。よって、他の事業所に転勤させる場合は、「雇用保険被保険者転勤届」を転勤先となる事業所を管轄する地区のハローワークに提出する必要があります。提出期限が、事実のあった日の翌日から10日以内です。

各種書類の提出方法

ハローワークでは、各種書類は「窓口」「郵送」「オンライン」の3種類の提出方法を用意しています。

窓口で提出する場合

一般的な提出方法は、事業所の管轄地区のハローワークの窓口への提出です。雇用保険の手続きをしている窓口で手続きを行えます。書類を提出し、受理されれば、その場で交付された書類を受け取ることができます。

郵送で提出する場合

事業所の管轄地区のハローワーク宛に郵送で提出することもできます。ただし、マイナンバーを記載しているため、一般郵便での郵送は認められていません。簡易書留や特定記録などで郵送してください。

なお、受理後に交付される書類は、後日郵送となります。希望する種類の郵便の旨の記載と、必要な料金の切手を貼付した返信用封筒を一緒に同封するのを忘れないようにしましょう。

オンラインで提出する場合

オンラインでの申請も可能です。電子政府の総合窓口「e-Gov」を利用しての申請となります。申請画面から手続きをし、後日、審査終了後に電子公文書のダウンロード先が明記されたメールが届きます。それにしたがってダウンロードし、交付された書類を被保険者本人に渡しましょう。

なお、電子申請には様々なメリットがありますが、事前の準備が必要です。オンライン申請を検討している方は、事前準備を前もってされることをおすすめします。

雇用保険加入義務を怠った場合の罰則

雇用保険は、労働者の生活の安定と再就職の促進を図ることを目的とした制度です。そのため、雇用保険法83条1号では、加入資格を満たす労働者を雇用保険に加入させなかった事業主には、懲役6ヶ月、もしくは罰金30万円の罰則が科されると定められています。

しかし、すぐに罰則が適用されるわけではありません。やむを得なく手続きが遅れてしまうこともあります。通常、労働局などに申告がなされ、調査が行われます。労働局から指導や勧告が行われても、それを無視続けるようであれば、罰則が適用されます。

雇用保健加入は電子申請がおすすめ!

2020年4月1日より、大企業など特定の法人は、雇用保険などの電子申請が義務化されました。中小企業や個人事業主などは、従来通り、書面による申請が認められていますが、今後、電子申請に対応しなければならないことが予想されます。

よって、今から事前準備をされることを検討できるかもしれません。では、電子申請には、どのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは2つのメリットをご紹介します。

メリット①24時間都合の良いときに申請できる。
電子申請は、24時間いつでも申請することが可能です。また、インターネット環境が整っていれば、家や会社など場所を選ばず手続きできるのもメリットです。交通費やそれにかかる移動時間、手間も省けるので作業の効率化にも繋がります。

メリット②セキュリティの向上を期待できる。
書類は紛失する可能性がありますが、電子申請であれば紛失のリスクがありません。よって、セキュリティの向上を期待できるでしょう。

他にも多くのメリットがありますが、電子申請の導入には、コストがかかること、事前準備が必要です。また、電子機器に慣れていない方にとっては、電子申請は負担となることでしょう。

そのため、デメリットと感じる方もいるかもしれません。まだ電子申請が義務化されていない今、まずは労務管理システムの導入から始めてみるのはどうでしょうか?作業を電子化することでの効率化を実感できることでしょう。

まとめ

雇用保険は、一定の条件を満たしていれば加入義務が発生します。労働者にとってはメリットの多い制度です。税理士コンシェルジュの税理士紹介サービス税理士紹介公式サイト-顧客満足NO.1【税理士コンシェルジュ】では、無料で税理士をご紹介しています。雇用保険加入など人事労務に関することでお困りのことがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。


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