経費とは?経営者であれば知っておくべき経費と税金の深い関係 | 税理士コンシェルジュ

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経費とは?経営者であれば知っておくべき経費と税金の深い関係

2020年7月31日
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多くの方が、「経費で落とす」「経費を使う」などの言葉をよく見聞きするのではないでしょうか?話の流れなどから、「会社が支払ってくれる」「お得」などのイメージを持たれていることでしょう。では、「経費で落とす」とは、どのような意味があるのでしょうか?この記事では、経営者であれば知っておくべき経費と税金の深い関係について解説していきます。

経費とは?

「経費で落とす」「経費を使う」などで使われている「経費」とは、事業で必ず発生する経費として処理をする、ということを意味しています。では、経費とは何なのでしょうか?

経費とは、個人事業主やフリーランス、法人など、事業を営んでいれば必ず発生するもので、利益を得るためにかかる費用のことです。では、「経費で落とす」にはどのようなものがあるかを考える前に、経費の基本を抑えておきましょう。

原則①経費とは事業に関係する費用

経費とは、原則、事業に関係したものが経費となります。つまり、事業に関係しないものは、経費にはなりません。個人事業主やフリーランスの方の場合は、自宅の一部を事業として使用している方も少なくありません。

そのため、事業にかかった費用と、生活にかかった費用を区分する「家事按分」と呼ばれるルールが存在しています。家事按分のルールに沿って、事業で発生した費用を経費として計上することができます。

原則②経費とは原則使用したものが経費になる

経費の2つ目の基本とは、経費は使用したものだけが経費になるという点です。例えば、仕入れをした商品がまだ売れておらず、在庫として残っている場合は、経費にはなりません。あくまでも販売した商品だけが経費となるのであり、残っている商品は棚卸しの際には資産として計上するルールとなっています。

経費で落とせるものとは?

「経費で落とす」という言葉には、「経費として計上する」という意味があります。つまり、お金が支払われる、出費があるということです。経費には、上記の2つの基本的な考え方がありますが、経費で落とせるものに対して、明確なルールは存在していません。

例えば、飲食店で取引先の方と会い、一緒に食事をし、仕事の話をしたとします。この場合は、仕事の話をしているため、経費として落とすことができるでしょう。しかし、1人で食事をしている場合は、経費にはなりません。このように一般的な常識の範囲内であれば、経費として落とすことができます。

では、経費で落とせる具体的な例をみていきましょう。

・旅費交通費
バス・電車・タクシー・飛行機など業務上必要な移動手段を利用した場合、旅費交通費として経費で落とせる

・出張費
出張の際にかかった往復の交通費、宿泊費、出張手当などを出張費として経費で落とせる

・研修費
業務上必要な研修を受けた場合、それにかかった費用を研修費として経費で落とせる

・接待交通費
業務上に関係する飲食などの接待をした場合、飲食費や交通費などを接待交通費として経費で落とせる

・福利厚生費
従業員やその親族などへの福利厚生にかかる費用を福利厚生費として経費で落とせる

次のものは経費で落とせる?10の事例

では、多くの方が悩みがちな実際的な事例をみていきましょう。

事例①スーツ・靴・カバン・・など

ビジネスをする際、スーツ、靴、カバン、腕時計などの一式を購入する方もいることでしょう。これらは事業に関わっている出費のひとつです。では、これらは経費として落とすことができるのでしょうか?

給与所得者の場合、これらの費用は「給与所得控除」と呼ばれる控除のひとつとして、自動的に個々の年収に応じて控除されています。ですから、法人を設立した経営者や給与所得者などは、会社の経費として落とすことはできません。

また、個人事業主だとしても、スーツ代などを経費として落とすことは難しくなっています。なぜなら、仕事用とプライベート用の区別がハッキリしていないからです。

つまり、仕事のためにしか使用しないものであれば経費になりますが、プライベートでも使える服になると経費では落としにくいということです。ですから、どうしても経費として落としたい場合は、家事按分することができるでしょう。

事例②旅費

前述したように、出張に関するものであれば「出張費」として経費で落とすことができます。ただし、仕事を目的としているものだけです。例えば、研修会や買い付けなどビジネスに直接貢献するものは、出張として認められます。後に税務署からの調査で証拠を求められることもありますので、現地での写真やパンフレットなどの資料を残しておくことをおすすめします。

では、出張ついでに観光をした場合は、経費として落とせるのでしょうか?そのようなときは、旅費とプライベート観光の費用を区別し、仕事に関するものだけを経費として落とすことができます。なお、単なる現地への視察の場合は、出張費にはなりません。

また、社員全員で出かける社員旅行の場合は、「福利厚生費」の一環として経費で落とすことができます。ただし、会社を設立したばかりで社員がまだいない場合は、旅費として経費で落とすことはできません。

事例③借入金の返済

資金調達のため銀行から借りたお金や、友人から借りたお金など借入金の返済は、経費として落とすことはできません。なぜなら、借入金は収益にならないうえ、直接の利益に関係していないからです。ただし、返済した利息に関しては経費として落とせます。利息を経費として計上する場合は、「利子割引料」という勘定科目で処理します。

事例④領収書がない交通費

電車やバスなどの交通機関は、領収書やレシートが発行されません。しかし、打ち合わせや取引先などに行く際、交通機関を利用して出かけることがあります。これらは直接売上に関わるものなので、領収書やレシートがないとしても経費のひとつです。

では、領収書やレシートのない交通費は、経費として落とせるのでしょうか?領収書やレシートのない出費を経費として落としたい場合は、「出金伝票」を発行して領収書やレシートの代わりとします。出金伝票のほかに、Excelで用紙を作成し、記録を残しておくことも可能です。最近は、クレジットカード機能の付いているICも明細でも経費として落とすことができます。

事例⑤タクシー代

タクシー代は、領収書をもらうことができます。ですから、事業に関係のあるものであれば、経費として落とすことができます。例えば、飲み過ぎてしまったため終電がなくなり、タクシーで帰宅した、というケースの場合、仕事上での飲み会の帰りであれば経費として認められることがあります。

しかし、プライベートの飲み会であれば、当たり前ですが経費として落とすことはできません。なお、タクシーの場合は領収書を発行してもらえますが、領収書の隅や裏などの余白に利用者の氏名と人数、目的などを記録しておきましょう。

事例⑥飲食代

取引先や社員との打ち合わせで使った飲食代は、経費として落とすことができますが、限度があります。1人当たりの金額が5,000円以下であれば、「会議費」として全額を経費として落とせます。また、1人当たりの金額が5,000円を超える場合は、「交際費」として経費で落とせます。

どちらに該当するにせよ、飲食店が発行する領収書が必要となります。領収書には宛名が記載されていますが、領収書の隅や裏などの余白に、参加した人の氏名と会社名を記載しておくようにしましょう。なお、社員との打ち合わせでの飲食代は、金額に限度はなく、会議費もしくは福利厚生費として全額を経費として計上することができます。

事例⑦取引先へのご祝儀やお香典

取引先が多くなればなるほど、結婚式やお葬式などに参加する機会も増えてきます。そのため、ご祝儀やお香典などの額も積み重ねることで、かなりの出費となります。

実は、ご祝儀やお香典なども、取引相手などビジネスに関係のある人であれば、経費として認められることがあります。もちろん、先方に領収書をもらうことはできません。

ですから、参加した証拠となる招待状や案内状などと一緒に、金額と日付をメモして保管しておきましょう。そうすることで税務調査が入ったとしても、証拠を提出することができます。なお、勘定科目は「接待交際費」として計上します。

事例⑧新聞、スポーツ新聞、漫画

仕事に直接関係する新聞や、仕事に関係する専門誌、事業に関する勉強や資格取得のための書籍などの費用は、経費として計上することができます。また、漫画家の方であれば、週刊漫画やコミック、また他の漫画家の作品を読む必要があるのであれば、それら漫画代も経費として落とせます。

漫画を描くためにある場所に出かけたり、食事に出かける必要があるのであれば、経費として認められるでしょう。しかし、スポーツしんや一般雑誌などは、経費として落とすことはできません。もし落としたい場合は、税務調査のために、仕事にどのように関係しているのか証拠となるものを用意しておく必要があるでしょう。

事例➈スポーツクラブの会費

個人事業主やフリーランスなど中には、以前は会社員として会社に勤めていた方もいることでしょう。企業によっては福利厚生が充実しているため、スポーツクラブなどを安く利用することができたかもしれません。そのため、「スポーツクラブの会費を福利厚生費として経費で落とせるのでは?」と思われている方もいるようです。

しかし、福利厚生とはあくまでも従業員のためのものであり、事業主のためのものではありません。つまり、事業主は対象外です。ですから、スポーツクラブの会費も事業に関係のない個人的な支出のため、福利厚生費として経費で落とすことはできません。

事例⑩税金類

法人の場合、法人税や法人住民税、法人事業税などは経費として落とすことはできません。また、個人事業主の場合は、所得税や住民税などを経費として落とすことはできません。なぜなら、両者ともそれらの税金は、国が定めている義務であるため、事業に関する支出ではないからです。

経費で落とすための条件とは?

前述したように、経費で落ちるか、落ちないかの判断基準は、「そのお金が事業に関係するための出費だったのか?」という点です。また、経費として落とすためには、経費として計上したことを示す証拠を残す必要があります。そのためには、証拠書類を保存しておかなければいけません。

つまり、「領収書」や「レシート」などの保管です。日付はもちろんのこと、宛名、金額など必要事項がしっかり記載されているかどうかを確認することを忘れないようにしましょう。また、経費として落とすことができる出費でも、領収書やレシートなどの証拠書類がない場合は、必ず「出金伝票」を発行し管理しておきましょう。

経費で落とすメリット

では、経費で落とすことには、どのようなメリットがあるのでしょうか?結論から述べるなら、経費で落とすなら節税につながります。なぜでしょうか?そもそもどんな事業も、利益が上がらなければ会社は儲かりませんし、経営が成り立ちません。

しかし、利益があるなら、税金を納めなければいけません。基本的に、利益が上がれば上がるほど、それに伴い納めべき税金の額も増えてきます。そこで、企業が事業から生み出した「収益」から「経費」を差引いた額が「利益」となるため、経費を大きくすれば、利益は減少します。つまり、経費を増やすことで利益が減少し、納める税金が減少するため、結果的に節税へとつながります。

経費で落とすデメリット

経費が増えると節税効果になるため、経費で落とすと良いイメージがあります。しかし、経費で落とす、ということは、出費があるということであり、支出があるという事実に変わりはありません。つまり、経費で落とすことが節税につながるとしても、経費の額が増えすぎると赤字になってしまう可能性があります。

また、経費があまりにも多いと、「脱税をしているのではないか?」と疑われてしまう危険性もあります。ですから、当たり前のことですが、経費として落とす場合は、一般的な常識の範囲内で、経費として正当なものだけを経費として落とすようにしましょう。

経費の範囲を超えるとペナルティが発生するかも?!

経費にならないものを経費として落としたり、プライベートの出費を経費として計上することは、不正申告にあたります。もし不自然な申告であるとみなされると、税務署から調査を受ける可能性があります。同業他社と比較して経費があまりにも大きかったり、内容が異なったりしていると税務調査の対象になりやすい傾向にあります。

この調査において、経費の範囲を超えたものが経費として落とされ、本来納めるべき税金が納められていない、と判断された場合はペナルティが発生します。ペナルティには、次のようなものがあります。

・過少申告加算税
過少申告加算税とは、本来納めるべき税額よりも、少ない額で申告したときに科せられるペナルティです。本来納めるべき税額のうち、未納分に対して10%の過少申告加算税がペナルティとして加算されます。

・無申告加算税
無申告加算税とは、納付すべき税額があったにもかかわらず、納税をしなかったときに科せられるペナルティです。本来納めるべき税額のうち、50万円までは15%、50万を超える部分は20%の無申告加算税がペナルティとして加算されます。

・不納付加算税
不納付加算税とは、源泉徴収額の徴収額を法定納付期限までに納付しなかったときに科せられるペナルティです。本来納めるべき税額のうち、未納分の額に対して10%の不納付加算税がペナルティとして加算されます。

・重加算税
重加算税とは、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税が生じるとき、偽装や隠ぺいなどを行ったときに科せられるペナルティです。過少申告加算税と不納付加算税が対象の場合は35%、無申告加算税が対象の場合は40%、重加算税がペナルティとして加算されます。

なお、ペナルティが発生すると、銀行などの金融機関から融資を受ける際に悪影響を及ぼす可能性があります。なぜなら、金融機関の融資担当者は、融資の判断基準として、決算報告書のチェックはもちろんのこと、法人税など各種税金の申告書や納税記録などもチェックしているからです。

もし税務署から申告書の修正申告があった事実が発覚すると、融資に影響を及ぼすことでしょう。ですから、経費が多くなると節税効果へとつながりますが、経営者であれば不自然な申告をすることは避け、万が一の税務調査に備えて、経費として計上したものの証拠となる書類を大切に保管しておくようにしましょう。

ペナルティを受けないために実際的な対策

本来経費ではない費用を経費として落としてしまえば、最悪の場合は上記のようなペナルティが発生します。では、ペナルティが発生しないために、どのように対策を打つことができるでしょうか?ここでは3つの実際的な対策をご紹介しましょう。

対策①税務署に相談してみる

個人事業主やフリーランスなどの経営者は、毎年、必ず確定申告をしなければいけません。確定申告シーズンはもちろんのこと、税務書では確定申告や税金に関する相談をいつでも受け付けています。どこまでを経費として落とせるか分からない点があるなら、税務署に相談してみましょう。

なお、相談は窓口や電話で行うことができますが、予約が必要なこともあります。事前に管轄地区の税務署へ問い合わせをされることをおすすめします。

対策②税理士に相談してみる

税務署への相談は無料というメリットがありますが、いつも混み合っているというデメリットもあります。そのため、事業をしている経営者にとっては、相談日を合わせることは難しいかもしれません。そんな場合は、有料ではありますが、税理士への相談がおすすめです。

税理士は税の専門家ですので、法律と専門的な知識に基づいて相談に応じてくれます。希望する場合は、追加料金が発生しますが、確定申告を依頼することも可能です。

対策③経理ソフトを利用してみる

自分で問題を解決したい場合は、経理ソフトを利用してみることができるでしょう。経理ソフトの多くは、勘定科目を予測して教え、処理をしてくれたり、不明な点はチャットで教えてくれるサービスを展開しているものもあります。そのため、ちょっとした疑問であれば、すぐに解決することができるというメリットがあります。

まとめ

「経費で落とす」ことは税金対策になりますが、何も考えずにすべてを経費として落とすことは不自然申告につながります。経費で落とすためには、「事業に関わる費用かどうか」という点が判断基準となります。経費として落とす場合は、それを示す証拠となる領収書やレシート、出金伝票などをしっかり保存しておきましょう。


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