外形標準法人税とは?法人なら知っておくべき法人事業税の課税制度 | 税理士コンシェルジュ

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外形標準法人税とは?法人なら知っておくべき法人事業税の課税制度

2020年5月5日
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企業は法人税をはじめとし、法人事業税、法人住民税、消費税、所得税、印紙税などさまざま種類の税金を納めることが義務付けられています。その中のひとつである法人事業税の課税制度を「外形標準課税」といいます。今回は、法人なら知っておくべき外形標準課税について詳しく解説していきます。

外形標準課税が導入された経緯と概要

外形標準課税とは、資本金1億円以上の法人を対象とした法人事業税の課税制度のことです。そのため、ほとんどの企業は対象外のため、あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、法人であるならしっかり理解しておきたい制度のひとつです。

わたしたちが地方自治体からさまざま種類の公共・行政サービスを受けているのと同じように、企業も地方自治体から公共・行政サービスを受けています。企業の場合、事業法人税は企業が儲けた利益である所得に対して課税標準として税金が課せられていました。そのため、どんな大企業であったとしても、赤字であれば事業税の支払いが免除されていたことが問題となっていました。

企業が赤字だとしても、存続している限り、地方自治体から公共・行政サービスを受けていることに変わりはないからです。そこで、この公共サービスの負担を公平にするためには、企業の儲けだけでなく、規模に合わせて負担することも公平なのではないか、という考えが見直されました。そして、平成16年(2004年)4月より、法人事業税に企業規模を勘案した課税制度「外形標準課税制度」が導入されました。

これにより、黒字の企業も赤字の企業も費用を公平に負担することが可能となりました。とはいっても、そのすべてが企業の規模に応じて課税されるというわけではありません。その点を理解するためには、法人税がどのように構成されているのか、その仕組みを知ることが大切です。

3つで構成されている法人事業税

法人税等とは、法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税などを総称した法人が支払う義務のある税金の通称です。法人税等は、会社が儲けた利益、つまり所得に課せられ税金で、利益の20~30%ほど課せられます。

法人税の中のひとつ法人事業税は、利益以外の要素、つまり企業も規模に応じて対しても税金が課せられます。法人事業税は、大きく「所得割」「付加価値割」「資本割」の3つで構成されています。そのうち、外形標準課税とは、主に資本金や従業員数や従業員の給与、事業所の面積などの「事業活動規模」をもととし、計算される「付加価値割」と「資本割」の部分に該当します。

一方、「所得割」に関しては、企業の規模ではなく、企業が得た儲けである所得に課せられる税金のことです。では、それぞれについてさらに詳しくみてみましょう。

①法人事業税の所得割

法人事業税の所得割は、企業が得た所得に対して税率をかけ算出します。外形標準課税法人の所得割の税率は超過税率を適用した場合は、0.88%となります。ただし、所得の金額が400万円未満の場合は0.395%、400万円超~800万円未満の場合は0.635%となっています。ちなみに、外形標準課税法人ではない普通法人の税率は超過税率を適用した場合、7.18%となっています。ただし、所得の金額が400万円未満の場合は3.65%、400万円超~800万円未満の場合は5.465%となっています。

なお、東京都23区に会社がある場合、令和2年4月1日以降に開始する事業年度につきましては、資本金の額に0.525%の法人事業税が課せられます。したがって、資本金1億の会社の場合は、たとえ赤字だとしても「1億円×0.525%=525,000円」、つまり、最低525,000円の法人事業税を負担することが義務となります。

②法人事業税の付加価値割

資本金1億円を超え、外形標準課税が適用される会社は、従業員に支払う給与、利息の支払額、賃借料の支払額などに応じて税金が課せられます。法人事業税の付加価値割は、「報酬給与額+純支払利子額+純支払賃貸量±単年度損益-雇用安定控除=付加価値額」という計算式で算定します。

・報酬給与額(給料)
報酬給与額とは、従業員に支払う給与、賞与、手当、企業年金、退職金等の合計額のことです。ただし、給与を支払うほど税金の負担を多くすると、給与の抑制や雇用の削減を行うことも考えられるため、利息や賃借料よりも税金の負担は少なくなっています。

また、雇用を安定させるための措置として、報酬給与額が収益配分類の70%以上を占める場合は、軽減措置が適用されます。これが適用されることで、雇用や給与水準が高い企業は、税負担が軽減されるようになっています。

・純支払利子(利息)
純支払利子とは、支払利子から受取利子を差し引いた金額のことです。支払った利息が多ければ多いほど、それに比例して税金の負担も大きくなります。なお、マイナスの場合はゼロになります。支払利子には借入金利息、社債利息、手形割引料など、受取利子には貸付金利息、社債利子、預貯金利息などが挙げられます。

・純支払賃借料(賃借料)
準支払賃借料とは、支払賃借料から受取賃借料を差し引いた額のことです。会社が支払った家賃や、極駐車場などの賃料が多ければ多いほど、それに比例して税金の負担も大きくなります。なお、マイナスの場合はゼロになります。支払賃借料には土地や事務所などの賃借料など、受取賃借料には受取るべき家賃などが該当します。

・単年度損益
単年度利益とは、年度の利益や損失のことです。なお、過去の累積赤字を控除する前の利益となります。

・雇用安定控除
雇用安定控除とは、報酬給与額の収益配分額が、純支払利子・純支払賃借料・単年度損益の合計の70%を超える場合、その超えた部分の金額のことです。

③法人事業税の資本割

資本割の課税標準は、「資本金等の額」として税率をかけて算出します。資本割の税率は、0.525%です。また、「資本金等の額」には、法人税法に規定する資本金等の額に無償増減資がある場合の加減算をした金額と、資本金もしくは資本準備金の合算額、もしくは出資金の金額を比較し、大きい金額になるものが該当します。

ただし、子会社株式(50%超)を所有する会社が一定要件を満たす場合は、別途に定められていることがあります。また、資本金の額が1,000億円を超える企業の場合は、一部減額制度を適用することができます。

外形標準課税の対象法人とは?

外形標準課税の対象となっている法人は、所得に課税される法人で、事業年度終了の日に資本金の額、もしくは出資金の額が1億円を超える法人となっています。ただし、公共法人等、特別法人、人格のない社団等、みなし課税法人、投資法人、特定目的会社、一般社団法人及び一般財団法人などは該当しません。

資本金が1億円超えることによるデメリット

資本金が1億を超えると、外形標準課税の対象になることに加え、中小法人や中小企業などには該当しなくなります。したがって、支払う税金も多くなります。例えば、大企業に該当すると、次のようなメリットを受けられなくなります。

・軽減税率の特例が受けられない
中小法人の場合は、軽減税率の特例が適用されるため、法人税に課せられる利率は、800万円までの利益に対して15%と定められています。(800万円を超えた部分の利率は23.2%)一方、大企業の場合軽減税率の特例が適用外となるため、利益に対して23.2%課せられます。中小法人と大企業を比較すると、「800万円×(税率 23.2%-15%)= 656,000円」、つまり、年間最大65万円の差額があります。

・交際費を税務上の経費として計上できない
中小法人の場合、年間800万円までの交際費が税務上の経費として認められています。一方、大企業の場合は、交際費は1人あたり5,000円以下の少額でない限り、税務上の経費として認められません。

・繰越欠損金の制限がある
法人税などは、1年間に儲けた利益に対して課せられる税金です。そのため、原則、今年赤字だったとしても、翌年黒字になれば多くの税金が課せられるというルールが存在しています。しかし、青色申告をしている法人であれば、赤字を繰越、翌年以降の黒字と相殺することが可能です。つまり、資本金1億円以下の中小法人で、青色申告をするなら、赤字を翌年以降の黒字へと全額相殺できのです。

しかし、資本金1億円以上ある企業の場合、相殺できる金額は利益の50%までという制限が定められています。そのため、黒字になっても過年度からの赤字が繰り越されるため、ある程度の税金が発生することになります。

・中小企業等の特例は受けられない
資本金1億円を超える企業は、中小企業等を対象としてている特例を受けることはできません。中小企業等を対象としている特例はいくつもありますが、その中のひとつに30万円未満の資産の即時原価償却が挙げられます。

なお、中小法人と中小企業は、必ずしも同じではありません。中小法人とは、資本金1億円以下の法人の中でも、資本金5億円以上の大法人の100%子会社でない等の要件を満たしている法人のことです。中小企業とは、資本金1億円以下の法人の中でも、常時使用する従業員数が1,000人以下の法人のことです。

まとめ

法人事業税の中でも、資本金1億円以上の大企業を対象とした「外形標準課税」について詳しくみてきました。外形標準課税は、会社の所得の金額に関係なく、事業活動規模に対して課せられる地方公共・行政サービスの対価と言える位置付けになっています。

なお、法人事業税の申告納付義務のある法人は、地方法人特別税の納付も義務付けられています。ですから、経理担当者は、法人事業税についてしっかり理解しておくことはとても大切です。もし分からないことや疑問点がある場合は、税金の専門家とも言える税理士に相談されることをおすすめします。


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