ヘッジ会計とは?リスクを回避できるヘッジ取引・会計の仕組みを解説 | 税理士コンシェルジュ

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ヘッジ会計とは?リスクを回避できるヘッジ取引・会計の仕組みを解説

2021年9月20日
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「ヘッジ会計」とは、為替に関する会計処理のひとつです。つまり、「ヘッジ取引」をしたときに行われる処理のことです。本記事では、「ヘッジ取引」や「ヘッジ会計」の概要をはじめとした基礎知識をわかりやすく解説します。

ヘッジ取引とは?

ヘッジ(Hedge)取引とは、外貨建の資産や負債など(ヘッジ対象)にかかる為替変動リスクに備え、事前に為替予約(デリバティブ)を利用し、反対のポジションを組むことでリスクを回避するために行う取引のことです。

ヘッジ取引の「ヘッジ」には、「回避」という意味があります。つまり、まとめると次のようになります。

ヘッジ対象:リスクを回避させたい外貨建金銭債権債務
ヘッジ手段:リスクを回避するためのデリバティブ取引
ヘッジ取引:ヘッジ手段として取引すること

なお、ヘッジ取引には、「売りヘッジ」と「買いヘッジ」の2種類に大きく分類されています。(デリバティブについては後述します)

【売りヘッジ】
売りヘッジとは、現在保有している株式などの商品の値下がりリスク、つまり損失を回避するために、現時点での価格で将来の一定期日に商品を売る方法のことです。

【買いヘッジ】
買いヘッジとは、現在手元に資金がないなどの理由で株式などの商品を購入することができない場合、将来の現物価格上昇などの価格変動などのリスクに備え、現時点での価格で商品を買い建てることで収益機会の喪失リスクを回避す方法のことです。

デリバティブとは?

デリバティブ(derivative)とは、日本語に訳すと「派生的な」という意味があります。会計用語では、通貨、株式、債券、外国為替など原資産と呼ばれる金融商品から派生した取引「金融派生商品」と言われています。

将来起こるかもしれないリスクを想定し、資産運用のリスクを回避するための手段といえます。そのため、デリバティブ取引を行うことで、流動性の向上が期待できます。ただし、デリバティブは取引が複雑といわれています。そのため、専門的な知識が必要とされています。

なお、デリバティブ、つまり回避するための取引として使われている手段は以下の通りです。

【先物取引】
先物取引とは、ある資産を将来のある期日に、一定の価格で売買することを約束する取引のこと。商品産物などが挙げられる。

【オプション取引】
オプション取引とは、ある資産を将来のある期日に、一定の価格で購入する「買う権利」、あるいは「売却する権利」の取引のこと。株価オプション権利や金利オプションなどが挙げられる。

【スワップ取引】
スワップ取引とは、金利や通貨など将来発生するお金の流れ(キャッシュ・フロー)を異なる経済主体同士で一定期間交換する取引のこと。異なる通貨を交換する「通貨スワップ」、異なる種類の金利を交換する「金利スワップ」などが挙げられる。

【為替予約(為替先渡取引)】
為替予約とは、将来の一定日、もしくは一定期間に特定の為替相場で外国為替を売買することを定めた予約を行う取引のこと。先物取引ともいえる。

ヘッジ会計とは?

株式や債券、外国為替、預貯金など資産商品の運用には、為替変動や金利変動、価格変動などのリスクが伴います。そして、前述したように、これらのリスクを回避(ヘッジ)するためにデリバティブが必要となります。

「ヘッジ会計」とは、デリバティブ取引を処理する特殊な会計のことです。なお、ヘッジ会計には、「繰延ヘッジ」と「時価ヘッジ」の2種類の方法がありますが、日本の金融商品会計基準では原則、繰延ヘッジで会計処理することになっています。

繰延ヘッジ

繰延ヘッジとは、ヘッジ手段にかかる時価で評価・計上されるデリバティブの損益計上のタイミングを、ヘッジ対象である資産の損益が認識されるまで繰り延べる方法です。

前述したように、企業会計基準25項では、「デリバティブ取引により生じる正味の債権及び債務は、時価をもって貸借対照表価額とし、 評価差額は、原則として、当期の損益として処理する。」と定められています。

つまり、繰延ヘッジがヘッジ会計の原則的な処理方法として認められています。

引用:企業会計基準10号「金融商品に関する会計基準」25項

時価ヘッジ

時価ヘッジとは、ヘッジ対象の資産もしくは負債にかかる相場変動を損益に反映させるタイミングを、その損益とヘッジ手段にかかる損益とを同一の会計期間にする方法です。

企業会計基準32項では、時価ヘッジが適用できる例外ケースにとは、「ヘッジ対象である資産又は負債に係 る相場変動等を損益に反映させることにより、その損益とヘッジ手段に係る損益とを同 一の会計期間に認識する。」と定めています。

引用:企業会計基準10号「金融商品に関する会計基準」32項

ヘッジ会計が適用される2つの要件

ヘッジ会計処理を行うかどうかは、企業側の任意によって決めることができます。ただし、ヘッジ会計を適用する場合は、要件を満たす必要があります。日本の企業会計基準31項には、ヘッジ取引にヘッジ会計が適用される要件が以下のように定められています。

1、ヘッジ取引時において、ヘッジ取引が企業のリスク管理方針に従ったものであること が、次のいずれかによって客観的に認められること。

① 当該取引が企業のリスク管理方針に従ったものであることが、文書により確認で きること。

② 企業のリスク管理方針に関して明確な内部規定及び内部統制組織が存在し、当該 取引がこれに従って処理されることが期待されること。

2、ヘッジ取引時以降において、ヘッジ対象とヘッジ手段の損益が高い程度で相殺される 状態又はヘッジ対象のキャッシュ・フローが固定されその変動が回避される状態が引き 続き認められることによって、ヘッジ手段の効果が定期的に確認されていること。

引用:企業会計基準10号「金融商品に関する会計基準」31項

上記の条件から、ヘッジ会計を行うためには、ヘッジ会計を行う前と後の要件を満たす必要があることがわかります。なお、ヘッジ会計を行う前の要件は「事前テスト」、ヘッジ取引の後の要件は「事後テスト」と呼ばれています。では、上記で引用した要件を分かりやすく解説します。

事前テスト

事前テスト、つまりヘッジ取引前の要件とは、ヘッジ会計を行う目的や取引の詳細、手段(取引約定日、期間、割合など)、予測した有効性、会計の方法を文章化することです。

つまり、ヘッジ対象となる資産に生じるかもしれないリスクを想定し、どのような手段でリスクを回避しようとしているのか、などを文章にします。このようにヘッジ会計をする前に、ヘッジ会計を適用するための体制を文章にまとめることで、ヘッジ会計の適用が認められます。

事後テスト

ヘッジ取引をした後に行われる事後テストとは、継続的にリスクヘッジに高い有効性があるかどうかを確認することです。ヘッジ取引の値動きとヘッジ対象の値動きが相殺されているか、リスクが低下されているかを、決算日を含み、少なくとも6ヶ月に1回程度の頻度でチェックする必要があります。

有効性評価の方法とは、以下の通りです。
・リスク管理方針・管理方法と整合性が保たれているか?
・当初定めた有効性評価の方法が、ヘッジ期間を通じて一貫して適用されているか?
・有効評価方法を変更した場合は、ヘッジ会計を適用できるかどうか?
・同種のヘッジ関係の場合、同様の有効性評価法が適用されているか?

有効性の判定基準は、ヘッジ対象となる資産の時価変動額に対し、ヘッジ手段であるデリバティブに伴う時価の変動額、つまり変動比率が80〜125%であるかどうか、で判断されます。

なお、ヘッジ対象、手段の変動の累計は各年度ごとではなく、ヘッジ取引開始時から有効性判定時点までの累計で判断されます。

また、事前確認でヘッジ手段に高い有効性があると判断された場合、事後の検証で変動比率が80〜125%の範囲内に収まらなくても、その原因が一時的なもの(キャッシュフローの変動幅が小さい)であると認められた場合は、ヘッジ会計の適用を継続することができます。

一方、ヘッジ会計が有効に機能していないと判断された場合は、ヘッジ会計の適用が中止されます。その場合、ヘッジ手段の評価差額は、毎期の損益として計上します。つまり、繰延ヘッジ損益として繰り延べることは出来ません。

ただし、ヘッジ会計を中止するまでに計上していた繰延ヘッジ損益の残額に関しては、ヘッジ対象の損益が認識されるまで繰り延べることが可能です。

参照:商品先物取引の会計処理及びヘッジ会計の適用方法

まとめ

本記事では、ヘッジ会計について解説しました。為替変動や価格変動に伴う資産運用を回避するための手段としてデリバティブをする際に使われる会計方法が「ヘッジ会計」です。ヘッジ会計を適用させるかどうかは、企業の任意です。

ただし、適用させる場合には、適用要件を満たしていなければいけません。またヘッジ会計だけでなく、ヘッジ会計処理の対象となるデリバティブ取引も複雑なため、専門的な知識が必要とされています。よって、会計処理にあたっては、専門家である税理士に相談することもひとつの方法と言えるでしょう。

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