押さえておきたい家賃按分の基礎知識!割合の計算や計上の仕方を分かりやすく解説!
オフィス兼自宅の家賃を、「可能であれば経費にしたい」とお考えではありませんか。家賃を経費にすると、節税の可能性が広がります。
ただし、法人が家賃を経費にする際は、個人の所得税を含めてトータルの納税額をシミュレーションすることが必要です。むずかしい税制をすべて知る必要はありませんが、やはり基本的な知識があると安心でしょう。
この記事では、家賃を経費にするための基礎知識についてまとめました。法人と個人事業主では取り扱いが異なりますので、個別に解説をしていきます。それぞれの立場で、家賃を経費にするときの参考にしてください。
目次
毎月の家賃は経費にできるの?
毎月の家賃は、法人・個人事業主ともに経費にすることが可能です。しかし、両者はその取り扱いの方法が異なります。
個人事業主には家事按分という方法がありますが、法人では家事按分という考え方はなく、それぞれのケースに応じた適正な家賃を経費として計上します。
ここでは、家賃を経費に算入するうえでの基本的な考え方について、それぞれ解説をします。
経費の基本的な考え方とは?
経費とは、売上を得るために必要な費用のことです。そのため、プライベートで支出したものは経費にならないというのが基本的な考え方です。
法人・個人ともに、経費の分類は大きく分けて2つあります。
まず1つ目は、売上を得るため直接的に必要な「売上原価」などに該当する支出です。たとえば、物販で売り上げたときの仕入れ代金などが該当します。
2つ目は、「販売費」や「一般管理費」などです。物販の例で説明をすると、購入者に商品を配送するための荷造運賃や、サイト運営に欠かせない通信費などの費用がこちらに分類されます。
家賃は、この2つ目の「販売費」や「一般管理費」に分類される費用です
法人と個人事業主では取り扱いが異なる
法人の場合は、会社が社宅として使用することで、その費用を経費として計上できます。
また、役員等が契約している賃貸住宅を部分的に事業用として使用した場合は、一定の条件下で「地代家賃」として経費計上することが可能です。
一方、個人事業主の場合は、「家事按分」により、家賃の一部を経費にすることができます。
この場合、仕事とプライベートで使用する「床面積の広さ」や「時間」の割合に応じて計算することが必要です。
個人事業主は、家賃だけでなく、他の経費もこの考え方で計算することがあります。この方法を押さえておくことで、決算時に慌てることなくスムーズに対応できるでしょう。
家賃には経費にできる部分とできない部分がある
個人事業主の場合、家賃のうち事業で使用した分だけが経費として認められるため、住居として使用した部分の金額は経費とはなりません。
按分(あんぶん)の割合とは?
按分の割合は、自宅の面積に占める仕事部屋の割合などに基づいて計算をします。
専用の仕事部屋がない場合は、仕事時間に応じた割合を使用することも可能です。
具体的な計算方法については、個人事業主の「支払家賃」のセクションで詳しく説明していますので、参考にしてください。
法人の家賃計上の考え方
前述のとおり、法人の場合はそれぞれのケースに応じた適正な家賃を経費として計上します。
ここでは、物件の種類や契約状況をふまえたうえで、法人が家賃を経費計上する方法について、ケース別に詳しく解説します。
法人契約で不動産業者等から賃貸物件を借りた場合
ここでは、法人が不動産業者等と賃貸借契約を締結した場合について解説します。
事務所として借りる
事務所として借りた場合、毎月の家賃は「支払家賃」として経費計上ができます。また、仲介手数料や当月分の日割り家賃も経費に含めることが可能です。
なお、権利等は繰延資産として計上したのち、原則5年で償却(費用化)できます。これは権利金を支出した期以降も、その効果を及ぼすと考えられるからです。
社宅として借りる
法人が社宅用に居住用の賃貸借契約を契約する場合、その物件を役員などに貸し出して「借上げ住宅」とし、家賃の一部を会社が負担することで経費として計上することができます。
ただし、居住する役員などから賃借料相当額を徴収することを忘れずにおこないましょう。もし無償で貸し出してしまうと、給与と見なされて課税される可能性があるため、注意が必要です。
なお、一般的な社宅の賃借料相当額は、以下の3つの合計額となります。
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役員等が契約している賃貸物件を事業で使用する場合
役員等が不動産業者等から借りている物件を、部分的に事業で使用するケースもあるでしょう。
その場合、役員等と法人との間で転貸(てんたい)契約を締結したのち、法人が役員等に対して適正な家賃を支払うことで経費とすることが可能です。
注意が必要なのは、役員等が家賃として受け取る収入があるという点です。
基本的には、受け取った家賃は不動産収入となりますが、同時に、不動産の所有者に家賃を支払っているため、収入と支出が相殺されて、所得は発生しません。
しかし、役員側がインボイス事業者となっていない場合、会社が支払った家賃は仕入税額控除ができない点に留意しておきましょう。
なお、転貸契約はかならず元の貸主(不動産業者等)の承認を得てからおこなう必要がありますので注意が必要です。
役員等が所有する物件を事業で使用する場合
役員等が所有する自宅等を仕事で使用する場合は、役員等と法人が転貸契約を締結し、法人が適正な家賃を支払うことで、経費として処理することが可能です。
なお、役員等が受け取った家賃は不動産収入となりますので、経費などを計上したのちに所得が発生した場合は、確定申告をおこなう必要があります。
また、先のケースと同様に、役員側がインボイス事業者でない場合、会社は支払った家賃を仕入税額控除することができませんので留意しましょう。
個人事業主の家賃計上の考え方
ここでは、個人事業主の支払家賃に関して、「面積」と「時間」の按分方法について解説します。
面積で按分割合を計算
まず、住宅全体の面積と仕事で使用する場所の面積を、賃貸借契約書で確認します。
たとえば、住宅全体の面積が50㎡で、仕事に使用する部屋が10㎡であれば、20%を事業用として経費計上することができます。
このとき、家賃が300,000円とすると、20%を乗じることで60,000円を経費とすることが可能です。
仕訳例は以下のとおりです。
借 方 | 貸 方 | 摘 要 |
---|---|---|
地代家賃 60,000 | 普通預金 300,000 | 家賃 事業分 |
事業主貸 240,000 | 家賃 私用分 |
時間で按分割合を計算
次に、時間での按分方法を考えてみましょう。
たとえば、1日あたりの稼働時間が8時間で、月間の稼働日数が20日だとします。
【按分割合の計算】
・総使用時間:
24時間 × 30日 = 720時間
・勤務時間:
8時間/日 × 20日 = 160時間
・勤務時間 ÷ 総使用時間:
160 ÷ 720 ≈ 0.22…
この按分割合を家賃(300,000円)に乗じると、66,666円となります。
なお、面積と時間の按分計算は、明確で合理的な根拠に基づいておこなわれることが重要です。
まとめ
この記事では、家賃を経費に計上する際の基礎知識について解説しました。
法人と個人事業主では経費計上する際の取り扱いが異なります。法人は事務所や社宅として借りたり、役員の自宅を間借りすることで経費として計上できます。
一方、個人事業主が自宅の一部を事業用として使用する場合には、面積や時間をもとに按分の計算が必要です。
以上が家賃を経費計上する際の基本的な考え方となります。家賃の計上に関して理解を深めることができれば、節税に役立つことでしょう。
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