経営者必見!「経営セーフティ共済」の改正ポイントについてわかりやすく解説!
取引先の突然の倒産から会社を守るための「経営セーフティ共済」が、2024年10月から改正されます。
改悪だという声もあがっている今回の改正ですが、どのような点が変わるのでしょうか?
この記事では、経営セーフティ共済の変更点や改正によるデメリット、注意点などをわかりやすく解説します。
目次
経営セーフティ共済とは?
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)は、中小企業基盤整備機構(通称:中小機構)が運営している共済制度の一つで、取引先の突然の倒産に備えるためのものです。
改正ポイントを正しく理解するために、まずは、現行の経営セーフティ共済について簡単に解説します。
使える人は?
経営セーフティ共済を利用できるのは、以下の方です。
- 個人事業主
- 中小企業
いくらまで使える?
経営セーフティ共済は「最大800万円」まで掛けられます。
解約時には掛け金が戻ってきますが、加入期間によって掛金の総額の返戻率が異なるため、解約のタイミングによっては、全額戻ってこない点に注意が必要です。
- 加入から40か月以上:10割
- 12か月以上、40か月未満:8割以上
- 12か月未満:0割
また、掛金の総額では必要金額に満たない場合は、以下のいずれか少ない方の金額を借り入れできます。
- 回収困難となった売掛金債権等の額
- 納付された掛金の総額の10倍
メリットとデメリットは?
経営セーフティ共済のメリットとデメリットは、以下のとおりです。
メリットとデメリットについて、それぞれ解説します。
メリット
経営セーフティ共済は、解約理由にかかわらず自由に解約でき、加入期間によって返戻率は異なりますが掛金が戻ってきます。
また、納める掛金は損金に算入できます。掛金は月払い・年払いの好きな方を選択できるので、1年間の収支の概算がわかったタイミングで年払いで納めるなど、納税額の調整に利用可能です。
なお、取引先の倒産により資金繰りが厳しくなった際は、担保や保証人が不要なうえ、無金利で借り入れができます。また、取引先の倒産以外の場合でも年利0.9%(2024年4月時点)で借りられるので、速やかに資金調達ができます。
このように、いざというときに使えるお金を、節税しながら用意できる点がメリットです。
デメリット
経営セーフティ共済のおもなデメリットは、掛金の上限が800万円までしかなく、解約返戻金を受け取る際に税金を納めなくてはならない点です。
経営セーフティ共済の掛金は上限が800万円です。そのため、倒産した取引先によっては、800万円では売掛金を補填できず、貸付を必要とするケースもでてくるでしょう。
担保・保証人不要で借り入れできる経営セーフティ共済ですが、貸付を受けると、解約時の返戻金が目減りします。借り入れる際には、納付した掛金の総額から貸付額の1/10に相当する金額が取り崩され、掛金の権利が消滅してしまう点に注意が必要です。
なお、納付した掛金に利息はつきません。
経営セーフティ共済は、節税や資金を増やすためのものではありません。取引先の倒産に備えるためのものだと理解したうえで利用するとよいでしょう。
小規模企業共済となにが違う?
小規模企業共済も経営セーフティ共済と同じく、中小機構が運営している共済制度です。
どちらも掛金を損金に計上できる点や低金利で無担保・無保証で借り入れができる点は共通していますが、共済の目的が違います。
小規模企業共済 | 取引先の倒産などによる売掛金の損失補填 |
経営セーフティ共済 | 経営者の老後に備えるための退職金 |
経営セーフティ共済で節税できる?
経営セーフティ共済は節税になると聞くことがありますが、本当に節税になるのでしょうか。
ここでは、節税の仕組みやその効果について解説します。
解約すると節税になる理由
経営セーフティ共済は、解約時に戻ってくるお金を納税額をおさえながら蓄えられる点が、節税になるといわれることがあります。
しかし、経営セーフティ共済は、解約時の返戻金は収益として処理するため税金がかかってしまいます。つまり、納税が免除されているのではなく、納税タイミングを先延ばしにしているだけです。
そのため、節税というより、資金繰りのために納税額を調整するのに適した制度といえるでしょう。
解約のタイミングは?
経営セーフティ共済の掛金は、掛けている期間が40ヵ月に満たないタイミングで解約すると全額戻ってこないため、解約は加入から40ヵ月以上経ってから解約するとよいでしょう。
また、先ほどから解説しているように、解約時に受け取る解約返戻金は、「収益」として一括で処理をしなくてはならないため、税金がかかる点に注意が必要です。
経営セーフティ共済の節税効果は?
これまで、経営セーフティ共済は「節税」というより「資金調達」に効果的な制度であると解説してきましたが、本当に節税効果は見込めないのでしょうか。
ここでは、実際にシミュレーションしながら、節税効果を検証します。
下図は、毎年200万円の黒字がある会社が、6年目に100万円の設備投資をする場合、「経営セーフティ共済に未加入」である場合と「加入し年20万を掛けている」場合の課税所得を比較しています。
図のように、掛金を納めている期間は課税対象の金額が減るため節税になります。
しかし、6年目に設備投資をおこなうために共済を解約し受け取った返戻金は、売上として利益に計上しなくてはならないため、トータルの課税対象額は同額です。
そのため、経営セーフティ共済は、節税というより資金繰りの調整に役立てるとよいでしょう。
2024年10月からどう変わる?
経営セーフティ共済は、2024年10月に制度改正がおこなわれます。ここでは、制度の改正ポイントやデメリットなどについて解説します。
改正の背景
経営セーフティ共済の改正は、SNSや書籍などで「節税」を勧める情報が広がり、本来の目的とは異なる利用者が増加したためにおこなわれます。
冒頭で解説したとおり、経営セーフティ共済は、取引先が倒産した際に自社が連鎖倒産しないよう備えるためのものです。
しかし、加入者の約3割が、解約返戻金が全額戻ってくる加入後3~4年に解約し、解約後すぐに再加入していることが直近の調べで明らかになっています。
加入後3~4年での脱退・再加入は、積立額が大きく変動するため連鎖倒産への備えが不十分となりうるため、本来の目的に沿った利用を促進するため改正がおこなわれることになりました。
どこが変わる?
2024年10月の改正では、以下の点が変わります。
契約解除後の再契約は、従来と変わらず自由におこなえます。しかし、再加入後、契約解除から2年経っていないと、掛金を損金には計上できません。
改正のイメージは、以下のとおりです。
出典:中小企業庁「中小企業倒産防止共済制度の不適切な利用への対応について」
改正後のデメリット
改正後は、解約後の2年間、再加入し掛金を納めても損金に計上できないため、納税額をおさえることができなくなります。
改正前はいざというときに備えて節税しながら資金を蓄えることが可能でしたが、改正後は解約から2年間は節税できません。
そのため、再加入のタイミングによっては、節税しながら資金を蓄えられなくなる、つまり納税額が増えてしまう点がデメリットです。
改正後の節税ポイント
改正後は、解約してからの2年間は、納めた掛け金を損金に計上できないため、節税だけを考え、2年経過するまでは再加入しない方がよいと考える方もいるでしょう。
しかしその場合、取引先が倒産した際の資金調達が難しくなってしまいます。
経営セーフティ共済は、掛金があまり貯まっていなくても、無担保・無保証で掛金の10倍まで借り入れができるため、赤字となりそうな年でも解約せずに取引先の倒産に備えておくとよいでしょう。
まとめ
この記事では、経営セーフティ共済の2024年10月からの改正ポイントについて解説しました。
経営セーフティ共済は、取引先の倒産による連鎖倒産を防ぐための共済で、次のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
- 解約時に掛金が戻ってくる(加入期間により返戻率が異なる)
- 掛け金を経費にできる
- 無担保・無保証で最大で掛金の10倍まで借り入れができる
デメリット
- 800万円までしか掛けられない
- 解約返戻金には税金がかかる
- 貸付を受けると掛金から1/10が取り崩されてしまう
- 掛金には利息が付かない
経営セーフティ共済は、解約時に受け取る返戻金には税金がかかるため、トータルでみると節税効果はそれほど見込めませんが、資金繰りの調整や取引先の倒産への備えには役立ちます。
ポイントを正しく理解し、うまく活用しましょう。
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