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「就業規則変更届」とは?経営者が知っておくべき就業規則の変更方法 

2021年6月7日
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「就業規則」とは、労使間で定められている就業に関連する規則のことです。労働基準法では、一定の条件を満たしている企業は「就業規則の届」、就業規則が変更した場合は「就業規則変更届」の提出が義務付けられています。本記事では「就業規則変更届」と就業規則の変更方法について詳しくご紹介します。

就業規則とは?

就業規則とは、労働者と会社側で定められている規則、つまりルールのことです。また法的な書類でもあります。労働時間や賃金、待遇などに関して規定を定めることで、労使間のトラブルを防ぐ役割があります。

なお、就業規則には、必ず定めなければならない「絶対的必要記載事項」と、企業が任意で定める「相対的必要記載事項」があります。それぞれの記載内容は、以下の通りです。

就業規則の「絶対的必要記載事項」

・労働時間に関する事項(始業と終業の時間・休憩時間・休日・休暇など)
・賃金に関する事項(賃金・支払日・支払い方法・賃金の締め切りなど)
・退職に関する事項

就業規則の「相対的必要記載事項」

・退職手当に関する事項
・臨時手当や退職金を除く一時金に関する事項
・職業訓練に関する事項
・表彰は制裁に関する事項
・災害補償や業務外の疾病扶助に関する事項
・その他、転勤や出向など、その事業所の全労働者に適用される事項

就業規則の作成・届出の義務

労働基準法では、「常時10人以上の労働者を使用する使用者」は就業規則を作成し届出を提出することが義務付けています。「常時10人以上」とは、常時雇用している労働者の人数のことです。

つまり、月に何回出勤しているかどうかに関わらず、10人以上いれば作成義務が発生します。なお、派遣労働者は派遣元の労働者なので、常時10人以上には該当しません。

一方、労働者が常時10人未満の事業所の場合は、就業規則の作成・届出は義務づけられていません。しかし、労働者とのトラブル予防のために就業規則を作成する雇用主もいます。そうすることで労使間で生じるかもしれないトラブルを未然に防ぐことにつながります。

参考記事:【経営者必見】就業規則とは?作成時のルールや記載事項など就業規則の基礎知識

就業規則の変更が必要となる状況とは?

就業規則を定めても、会社を運営していく上で、変更の必要が生じることがあります。大きく2つのケースが挙げられます。

①労働に関連する法令の改正があったとき
②経営状況が悪化したとき
③その他

では、具体的な要因をみていきましょう。

①労働に関連する法令の改正があったとき

労働基準法など労働に関連する法令が改正された場合、それに合った就業規則へと改正しなければいけません。例えば、法令よりも労働者に不利な内容の就業規則の場合は無効になるため、法令の水準に合わせた就業規則へと改正する必要があります。

また、最低賃金法は、地域ごとに毎年改定が行われています。最低賃金が上がり、労働者に支払う賃金が最低賃金を下回る場合は、賃金規定の変更が必要です。

②経営状況が悪化したとき

経営状況の悪化により、現行を維持するのが難しくなることもあります。そのため、労働時間や休日、賃金体系の変更が必要となることがあります。また、手当の廃止、新設をするときも就業規則の変更が必要です。

③その他

近年は、在宅勤務を導入する企業が増えています。在宅勤務制度や変形労働時間制を新たに導入するときも就業規則の変更が必要となります。

また、創業以来、就業規則の見直しを一度もしていない場合や、現在の就業規則が合っていない場合なども就業規則の変更が必要です。

就業規則を変更するための5つのステップ

就業規則の変更が生じた場合は、以下の5つのステップで行います。

①就業規則の変更箇所の見直しと検討
②意見聴取と変更届に添付する意見書の作成
③「就業規則変更届」の作成
④労働基準監督署への届出
⑤社内への周知する

では、それぞれのステップをみていきましょう。

①就業規則の変更箇所の見直しと検討

就業規則の変更が生じた場合、まず総務部などの担当部署で変更案をまとめます。正社員だけでなく、パートやアルバイトなどの非正規労働者も雇用しているなら、非正規労働者も適用されるかどうか労働者の適用範囲を決めます。

その後、法律違反をしていないかどうかを確認し、問題がなければ、取締役会で承認を受けるなど経営陣の合意を得ます。例えば、一例として以下のような対応をします。

例①
変更箇所の見直し:退職金規定がないので新たに規定を新設したい
変更内容の検討:退職金規定の作成

例②
変更箇所の見直し:最低賃金法の改正により、最低賃金が引き上げられた
変更内容の検討:賃金規定の修正

例③
変更箇所の見直し:従来の規定に追加
変更内容の検討:在宅勤務規定・テレワーク規定の導入

②意見聴取と変更届に添付する意見書の作成

就業規則を変更する場合、労働基準監督署長へ「就業規則変更届」を提出します。その際、「意見書」を添付することが義務付けられています。

意見書とは、労働者の過半数を代表する人の意見を聴き、その内容を書面にまとめ、日付と代表者の著名、捺印をすることです。意見がない場合は、「特になし」と記載します。意見書には、決まった様式はありません。)

なお、労働者の代表者とは、部長や工場長など地位や権威を与えられている管理監督者以外の人で、労働者の過半数から支持されている必要があります。投票や挙手などの方法で選出することが条件となっています。

意見書には決まった様式はありませんが、以下のホームページを参考にできるでしょう。

参照:東京労働局「意見書」

③「就業規則変更届」の作成

「就業規則変更届」には、就業規則の変更点を記載します。「就業規則変更届」も「意見書」同様、決まった様式はありませんが、以下のホームページからダウンロードすることができます。

参照:東京労働局「就業規則変更届」
参照:厚生労働省・東京労働局「様式集」

④労働基準監督署への届出

「意見書」「就業規則変更届」「新しい就業規則」を作成したら、管轄地区の「労働基準監督署」へ提出します。提出書類はそれぞれ2部づつ用意し、1部は受理用、もう1部は受取印をもらい社内の保管用とします。

提出方法は、窓口をはじめとし、郵送、CD-ROM等の電子媒体、電子政府の総合窓口「e-Gov」での提出も受け付けています。郵送で提出する場合は、必要な金額の切手を貼付した返信用の封筒を同封します。

⑤社内への周知する

就業規則変更後、雇用主には、変更した就業規則を労働者に周知することが義務付けられています。周知方法については、労働基準法第106条で以下のように定められています。

・常時各作業場の見やすい場所に掲示する、または備え付けること。
・書面で労働者に交付すること。
・磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。

これらの方法を通し、全労働者に就業規則の変更内容を周知することで、変更後の就業規則の効力が発生します。

就業規則を変更する際の注意点

雇用主には、世の中に状況の変化に対応した経営判断が任されています。よって、必要であれば、就業規則を変更することができます。しかし、企業側が一方的に就業規則を不利益変更、つまり、労働者にとって不利益な内容へと終業規則を変更することは認められていません。

また、労働者にとって不利益にならないとしても、企業側が勝手に就業規則を変更することはできません。ですから、就業規則を変更する際には、以下の3つの点に注意しましょう。

①労働者に不利益な変更な規則内容へとなっていないか?
②直近の法改正に対応しているか?
③自社の実情と合致しているか?

では、それぞれ詳しくみていきましょう。

①労働者に不利益な変更な規則内容へとなっていないか?

企業側の一方的な判断で、労働者にとって不利益な方向に就業規則を変更する「不利益変更」は、労働基準法第9条で禁止されています。

不利益変更を行う場合は、労働者側と企業側の双方から見て、変更が必要で合理性がある内容のみ変更が認められています。

例えば、給与規定を変更する場合、労働者の給与が下がるなど不利益変更に該当するケースがあります。経営状況が悪化し、様々な対策を打ったにもかかわらず、状況が改善されない場合は、変更せざるを得ません。よって、就業規則の変更内容が労働者にとって不利益になるとしても、同意してもらえることでしょう。

②直近の法改正に対応しているか?

就業規則の内容を左右する法律は、毎年改正されています。よって、就業規則が最新の法改正に対応した内容になっているかを随時見直すことはとても大切です。

就業規則に関連する法律には、「労働基準法」「労働契約法」「パートタイム労働法」「男女雇用機会均等法」「高齢者雇用安定法」「労働安全衛生法」「育児介護休業法」「公益通報者保護法」などが挙げられます。

就業規則を変更するときはもちろん、定期的に就業規則を見直すことで、最新の法改正に対応した内容となるでしょう。

③自社の実情と合致しているか?

就業規則は、いわば会社のルールブックのようなものです。ですから、就業規則を作成するときはもちろん、変更する際にも自社の実情に合った内容にすることは大切です。つまり、他社の就業規則をそのまま真似ることはNGです。

就業規則を不利益変更する際の注意点

前述したように、やむをえず就業規則を不利益変更しなければならない状況が生じることがあります。その際、以下の点に注意しましょう。

①労使の合意が必要
②不利益変更が有効になる条件を満たしていること
③労働者に納得のいく説明をすること
④事業所ごとに変更手続きをすること

では、それぞれ詳しくみていきましょう。

①労使の合意が必要

労働契約法には、原則、雇用主が一方的に就業規則を変更することは認められていません。つまり、就業規則を変更する場合は、労使の合意が必要です。

②不利益変更が有効になる要件を満たしていること

就業規則を不利益変更する場合は、労働基準法9条但し書きと10条で定められている要件を満たしている必要があります。その要件とは、以下の通りです。

1、就業規則の変更に合理性があること
2、就業規則を周知すること

なお、変更に合理性があるとは、労働者の受ける不利益の程度、変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合などとの交渉の状況、その他の就業規則の変更にかかる事情などの要素が総合的に判断されます。

③労働者に納得のいく説明をすること

就業規則を不利益変更する場合、雇用主は労働者が納得できる説明をしなければいけません。変更前と変更後の就業規則、変更が必要になった理由を文書の形で説明することができるでしょう。労働者から意見がある場合は、その意見に耳を傾けましょう。

④事業所ごとに変更手続きをすること

就業規則を変更する際には、事業所ごとに変更手続きが必要となります。

就業規則の変更を受け入れてもらうには?

就業規則の不利益変更を行う場合は、労働者に合意してもらえない可能性もあります。では、労働者に就業規則の変更を受け入れてもらうために、雇用主は何ができるでしょうか?以下の2つの点を行うことで同意を得やすくなるかもしれません。

①1人でも多くの労働者に意見を聞き話し合う
②代替措置や移行期間を設ける

①1人でも多くの労働者に意見を聞き話し合う

前述しましたが、就業規則変更届を提出する際には、労働者の代表者の意見書を添付します。原則、過半数の代表者の意見が必要ですが、労働者一人ひとりに意見を求め、変更内容を伝えるなら、合意を得やすくなります。

つまり、全ての人と面談をし、よく話し合うということです。そして、同意書に記入してもらい、同意を得たことを残すことができるでしょう。

②代替措置や移行期間を設ける

特に不利益変更の場合、どうしてもマイナス影響だけが大きく懸念されます。そのため、労働者から合意をえるのが難しいこともあります。そこで代替措置や一定の期間をかけて移行する経過措置などの対策をすることができます。そうすることで、急激な変化を避けることができ、少しづつ新しい就業規則へと慣れていくことでしょう。

労働者に反対されたら?

就業規則の変更に合意してもらうための努力をしても、労働者から同意が得られないことがあるかもしれません。意見書に反対意見を記載されることもあるでしょう。

では、労働者からの反対があり、同意がもらえなかった場合は、就業規則を変更することは不可能なのでしょうか?たとえ意見書が反対意見だとしても、「就業規則変更届」に添付し、労働基準監督署へ提出ができます。

また、就業規則の不利益変更の場合は、前述した、労働基準法9条但し書きと10条で定められている要件を満たしているのであれば、就業規則の不利益変更は可能です。ただし、不利益変更で労働者から同意が得られない場合は、いくつかの観点から総合的に考慮されます。

まとめ

就業規則は、社内のルールを明確にし、労働上のトラブルを予防する役割を持つ法的な文書のひとつです。そのため、就業規則を変更する際には、「就業規則変更届」「意見書」「新しい就業規則」を作成し、労働基準監督署へ提出することが求められています。

そして、提出後、就業規則の変更を周知することで、初めて効力を持つことになります。このように就業規則の変更は、雇用主が一方的に変更できるものではなく、労働基準法で定められている手続きに沿って行う必要があります。


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