育児制度とは?育児休暇について徹底解説!
人材が不足している近年、多くの企業では出産や育児による離職を防止するために様々な策が講じられています。そのひとつが「育児休暇」です。従業員から育児休暇の申請があった場合、人事担当者はどのような手続きや対応をすればよいのでしょうか?この記事では、育児制度について徹底開設していきます。
目次
育児休業制度とは?
育児休業制度とは、従業員が1歳に満たない子どもの養育のために所得できる休業のことです。この制度は1991年に、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)」で定められたひとつです。育児休業を取得することは義務ではありませんが、従業員が希望する場合は、休暇を与えなければいけません。
「育児休業」と「育児休暇」の違いとは?
一般的に「育休」と呼ばれている「育児休業」ですが、「育児休暇」という言葉が使われることもあります。両者には次のような違いがあります。
(育児休業)
育児休業とは、育児・介護休業法により基準が規定されています。国が定めている一定の条件を満たしていれば、育児休業を取得した従業員に対して「育児休業給付金」が支給されます。
(育児休暇)
育児休暇とは、企業が独自に規定を定めます。育児休業を取得できない労働者に対しても、独自のルールを設けることができます。
このように育児休業は法律で基準が定められているのに対し、育児休暇は各企業が独自に基準を定めているという違いがあります。そのため、育児休暇を導入しているなら、育児休業を取得できない従業員を対象に休暇制度を設けたり、従業員の希望や状況に合わせて独自で期間を延長したりなど、自社に合った規定を定めることができます。その結果、従業員にとっては働きやすい環境となり、人材の確保につながります。
「産休」と「育休」の違いとは?
妊娠・出産・育児期間中にとることができる育児休業には、「産前休業」「産後休業」「育児休業」の3種類あります。
(産前休業)
産前休業は、出産日以前の42日間(双子以上の場合は98日間)と期間が定められています。
(産後休業)
産後休業は、出産翌日から56日間と期間が定められています。ただし、出産日が予定からずれた場合の産後休業は、出産日の翌日からカウントが始まります。
(育児休業)
育児休業は産後休業から子どもが1歳になる誕生日の前日まで、と休業できる期間が定められています。しかし、やむを得ない事情がある場合は、最長子どもが2歳になるまで期間を延長することが可能です。
また、子どもが1歳になる前に保育園に入れることができた場合は、希望するなら育児休業期間を短縮し、仕事に復帰することが可能です。一方、子どもが1歳を超えても保育所に入所できない場合は、最長子どもが2歳になるまで休業期間を再延長することが可能となっています。
どんな理由であるにせよ、休業期間の延長の申請は、初めに申請した育休終了日の2週間前まで行うことが一般的となっています。
産前休業と産後休業(産休)は女性であれば、だれでも取得することができます。一方、育児休業は、取得できる条件がありますが、1歳未満の子どもを養育する労働者であれば、男性でも女性でも性別を問わず所得することができます。男性の育児休業は、基本的に1年間の取得できます。配偶者が専業主婦であったとしても育児休業を取得することが可能です。
育児休業期間中に給付金について
では、育児休業期間には、どのくらい給付金を受け取ることができるのでしょうか?給付金には「出産育児一時金」「出産手当金」「育児休業給付金」等があります。ひとつづつ詳しくみてみましょう。
(出産育児一時金)
出産育児一時金とは、健康保険の被保険者、もしくはその被扶養者が出産した際に支給される制度です。1児につき原則42万円支給されることになっています。
この給付金は、出産にかかる費用に出産育児一時金を充てられるように、健康保険から医療機関等に直接支払われる仕組みとなっており、「直接支払制度」と呼ばれています。一般的に出産する病院で手続きのサポートをしてくれるので、対象者が出産にかかるまとまった費用を事前に用意する必要はありません。
(出産手当金)
出産手当金とは、健康保険の被保険者が出産のために会社を休み、その期間中に給与の支払いを受けなかった場合、給付金が支給される制度のことです。支給額は、1日につき被保険者の標準報酬日額の3分の2に相当する額は、健康保険から手当として支給されます。
(育児休業給付金)
育児休業給付金とは、雇用保険の被保険者が育児期間中に、雇用保険から給付金を支給される制度のことです。育児休業を開始しときの給与額の50%の額が、手当として給付されます。やむを得ない理由で育児休業を延長する場合は、子どもを保育園に入れないことを証明する「入園不承諾通知書」等の証明書とともに、育休延長の申請手続きをする必要があります。
帝王切開の場合の給付金について
妊娠や出産は病気ではないので、普通分娩で出産した場合は、健康保険の適用対象外となります。そのため、一般的にかかると言われいる40~80万円の費用を全額自己負担することになります。しかし、先ほどみた「出産育児一時金」制度を利用するなら、自己負担額を抑えることができます。
一方、帝王切開で出産する場合は、手術や入院、検査、投薬、術後の処置等が必要なので、普通分娩よりも費用がかかりますが、保険適用となります。そのため、医療費の3割が自己負担額になります。また、帝王切開の場合でも、普通分娩同様、「出産育児一時金」制度を利用することができるので給付金を受けられます。
産休や育児休業中の健康保険料や住民税について
産休中や育休中は労働をしないで休業しているため、会社から給与を受け取ることはありません。では、毎月給与から控除されていた保険料や住民税はどうなるのでしょうか?
(社会保険料)
社会保険料は、会社側が年金事務所や健康保険組合等に「育児休業等取得者申請書」を提出し、申請手続きをすることで、健康保険や厚生年金などの社会保険に継続して加入している状態で、保険料が免除されます。
つまり、保険加入を継続しているので、健康保険証はそのまま利用することができます。また、厚生年金については、納付しているとみなされるので、将来の年金給付額が減額されるということもありません。
(住民税)
住民税は、前年の所得に対して計算されます。そのため、休業開始後も、継続して支払う必要があります。通常、毎月の給与から自動的に天引きされていますが、休業に入る前に、個人で納付する普通徴収へと切り替えられます。普通徴収に切り替わったら、個人で納付する必要があります。
育児休業の対象となる従業員の条件とは?
育児休業の対象となる従業員は、1歳未満の子どもを持つ男女の社員です。しかし、日雇い労働者は、育児休業の対象ではありません。また、雇用の期間が決まっている労働者の場合は、同一の雇用主に継続されて雇用されている期間が1年未満、もしくは休業終了後に引き続き雇用される見込みがない場合は、育児休業の対象外となります。
各種給付金を受け取れる条件とは?
前述の出産育児一時金、出産手当金、育児休業給付金などの給付金や、税金の免除を受けるためには、条件があります。規定されている一定の期間、保険に加入していなければいけません。では、どのくらいの期間、規定されている保険に加入している必要があるのでしょうか?
(雇用保険)
育児休業給付金を受給するためには、雇用保険に加入していることが条件となっています。しかも、育児休業を開始する前の2年間に、被保険者期間が12か月以上なければいけません。1ヵ月として認められるのは、11日以上勤務日がある月のみです。ですから、1ヵ月の勤務日が少ない方や、しばらく仕事から離れて入社1年目の方などは、条件にかなっているかどうかを確認することは大切です。
また、有期契約社員の場合は、育児休業開始時に同じ会社で1年以上継続して雇用されていることと、子どもが1歳6ヵ月になるまで雇用契約が終了しないこと、の条件を満たしていることが求められています。
(健康保険)
出産手当金や出産育児一時金は、産休開始時に、健康保険に加入していれば支給の対象となります。正社員はもちろん、有期雇用など雇用形態に規定はありません。出産育児一時金については、出産者本人が健康保険の被保険者でなくても、配偶者の扶養であれば支給の対象になります。
産休や育休中に退職した場合は?
では、産休や育休中に従業員が退職した場合は、どうなるのでしょうか?
(育児休業給付金)
育児休業給付金は、育休後の復帰を前提とした給付金です。そのため、退職したり、退職することを前提として休職したりする場合は、原則支給されません。しかし、育児休業給付金を受けている期間中に退職した場合は、退職日を含んだひとつ前の支給単位期間まで給付金を受けられます。
(出産手当金)
出産手当金は、退職日まで継続して1年以上健康保険に加入した期間があり、退職日が産前産後期間内で、退職日当日に仕事を休んでいる場合は、支給の対象になります。
(出産育児一時金)
出産育児一時金は、退職日まで継続して1年以上健康保険に加入した期間があり、資格喪失後(退職後)6ヵ月以内の出産であるなら支給の対象となります。
育児休業から復帰する際に必要な申請について
従業員が育児休業から会社へ復帰するとき、企業側は次のような手続きをしなければいけません。
(社会保険料免除終了の申請手続き)
企業側は従業員が育児休業に入る際、社会保険料を免除するために「育児休業等取得者申請書」を提出しています。その書類に記入した育児休業終了予定日よりも前に、従業員が育児休業を終えて職場復帰をした場合は、企業側が「育児休業等取得者終了届」を提出することが求められています。育児休業終了予定日の前日までに提出するよう、期限が定められています。
ただし、育児休業等取得者申請書に記載した予定日通りに育児休業を終えた場合は、終了届を提出する必要はありません。
(社会保険料の変更手続き)
育児休業から復帰した従業員の場合、子どもが小さいため休みがちになったり、勤務時間が短くなったりなど、休業前のように働くことが難しくなる傾向にあります。また、育児・介護休業法では、3歳未満の従業員に対しては、短時間勤務など臨機応変な対応をするよう定められています。
このようなケースの場合、勤務時間が短縮されることで給与も下がります。そのため、それに応じて社会保険料を変更しなければいけません。そのため、企業側には、復帰後の3ヶ月間に支払った給与の平均額を算出し、それを基として「育児休業終了時報酬月額変更届」という書類を作成し、年金事務所に申請手続きをすることが求められています。
雇用主は産休から育休復帰までの従業員のサポートを大切に!
産休や育休に入る従業員の多くは、「子どもが生まれてからも仕事に復帰できるか?」「上司や同僚などに迷惑がかかってしまうかも・・」など、多くの不安を抱えています。
実際、「仕事に復帰したい!」という気持ちはあっても、育休から復帰後、仕事と家庭の両立が難しくて退職してしまうケースも少なくありません。このようなケースを少しでも減らすためには、雇用主が対象となる従業員に育児休業制度について周知することはもちろん、個別面談等をしてメンタル面でサポートすることも大切です。
具体的には、出産予定日や産休、育休等の期間についての確認や、業務の引継ぎの確認、就業時間の希望等をしっかり話し合っておきましょう。また、育休復帰後でも働きやすい環境を整えるために、不安を感じていることなども聞いておくことができるかもしれません。
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