ICカードを用いた交通費精算、チャージ代だけの記帳は危険?
現在、多くの方々がスイカ(Suica®)やパスモ(PASMO®)等のICカードを利用しています。ICカードには、利用履歴を確認できる機能があるので、ビジネスシーンでも活用している人も多いでしょう。
ICカードの利用履歴確認は、カードの種類によっても異なりますが50~100件程度の利用履歴をさかのぼり、印字することができます。交通費の精算に関する負担は軽くなったといえる一方、ICカード利用ならではの注意点もあるので経理処理の際に気に留めておくことが大切です。
目次
交通費の精算作業の流れ
交通費の精算作業は、各事業所によってルールが設けられています。そのため若干の違いはありますが、基本的な流れは次のようになっています。
ステップ1:交通費精算の書類作成
交通費精算を行う本人が、交通費精算の書類を作成します。その際、交通機関を利用したことを証明する利用履歴や領収書なども一緒に添付します。
ステップ2:責任者の承認を得る
作成した書類は、担当部署の責任者などにその内容を確認してもらい、承認を得ます。
ステップ3:経理担当者に交通費精算を依頼する
承認を得ることができたら、書類を経理担当者へ提出します。
ステップ4:交通費の振込み
後日、交通費が指定した口座へ振り込まれます。振込の有無や金額などを確認し、交通費の精算は完了となります。
このように交通費を精算するためには、交通機関を利用したことを証明する履歴や領収書などが必要となります。利用履歴を確認する方法は以下のとおりです。
交通費精算に必須! 利用履歴の確認
ICカードの利用履歴は、会社に交通費を請求したり、交通費の精算をする際に必要となります。また、個人で確定申告をする際に必要となることがあります。
ICカードの利用履歴により認できる項目は、「利用日」「利用益」「利用バス会社」「利用種別」「SF残額」等で、これらの内容について印刷することができます。
方法その①駅の窓口
ICカードの利用履歴は、駅の窓口で確認できます。窓口で駅員さんに「利用履歴を確認したい」旨を伝えれば、利用履歴を印字してもらえます。
方法その②券売機
より簡単な方法としては、券売機の利用があります。まず券売機で「チャージ・残高履歴」を選択してカードを挿入します。その後、チャージ・残高履歴の画面で、左下に表示されている「履歴表示」を選択し、その後「履歴印字」を選択します。
鉄道や駅、販売機によって、利用履歴の確認・印字できる数は異なるという点に注意が必要です。例えば100件分の履歴が欲しいのに、最寄りの券売機では印字されないといった場合もあるので、事前に確認することをお薦めします。
方法その③スマートフォンのアプリ
ICカードの利用履歴は、iPhoneやandroidなどのスマートフォンのアプリを利用して確認することも可能です。端末会社や、機種にもよりますが、アプリのみで利用可能な場合と、アプリとカードリーダーが必要な場合があります。
ICカードリーダーは、Amazonや楽天等の大手ネットショップや家電量販店、コンビニなどで購入することができます。購入後は、アプリのインストール・Bluetoothでの接続により、カードリーダーにかざして読み込ませるだけで、利用履歴を確認できます。利用する前に事前準備が必要ですが、2回目以降からは簡単に利用履歴や残高を確認することができます。
アプリだけで利用可能な場合、アプリを開くとカードをかざすように指示をされ、そのまま指示に従うだけで利用履歴が表示されます。表示された利用履歴を保存できる機能もついているので便利です。
また、スマートフォンの種類に限らず、各種アプリを利用するという方法もあります。大抵のアプリには、利用履歴の項目が細かく設定されています。
具体的には、カードID、レコードID、端末種、処理、日付、会社、路線、駅、支払額、残高等を確認できます。ただし、アプリの種類によってはバスの乗車記録に関しては非対応となっていますので注意してください。
もちろん、スマートフォンではなくパソコンを用いての履歴表示・印刷も可能です。自宅にプリンターがなくても、コンビニでプリントすることもできます。
交通費精算にあたり、ICカードの領収書と利用明細を忘れずに
交通費の精算は、利用履歴に加えて、領収書でも証明することができます。チャージをしたり、カードで切符を購入したりするなら、券売機で領収書を受領することを忘れないようにしましょう。
もしも領収書を紛失してしまった場合は、再発行してもらうのは難しいでしょう。そのような場合は、利用履歴を確認し、プリントしたものを提出することで代替させるのが一般的です。また、後述の理由から、チャージのみを示す領収書のみでは管理上不足しています。利用履歴の確認も、定期的に行いましょう。
ICカードの履歴で交通費精算をするメリットとは?
ICカードの履歴を交通費精算に利用するメリットの1つに、利用した経路を思い出し、調べる必要がない、ということが挙げられます。特に乗り換えが多かった場合や、出張先などで利用した場合、わざわざ過去を思い出し、利用経路を調べ直すことは時間と手間のかかる作業となります。
支払った金額まで思い出すことは難しいですし、利用するたびに金額をメモすることも面倒です。しかし、履歴の確認と印字ができれば、利用経路の区間や金額を間違いなく確認することができます。また、事業所にとっては、従業員が不正な交通費を請求することの防止にもなります。
ICカードの履歴で交通費を精算するデメリットとは?
では、ICカードの履歴印字による交通費の精算には、どのようなデメリットがあるのでしょうか? まずICカードの履歴の印字には、印字できる件数に限度がある、という点が挙げられます。
ICカードの利用履歴は、概ね100件までの印字が可能ですが、交通会社や駅によってはもっと少ない件数の場合もあります。また利用履歴が消える前に、印字をする必要があります。
交通費精算システムや、クラウド会計の導入で効率化
交通費の精算作業は、経理担当者にとっては多くの時間と手間がかかる作業です。ICカードの履歴を印字することも交通費精算に役立つ方法の1つですが、さらに業務の効率化を目指したい場合は、交通費精算システムやクラウド会計の導入がおすすめです。
①ICカード読み取り機能が搭載で手書きや手入力が不要!
これらのシステムには、ICカードをカードリーダーや専用アプリにかざすだけで、運賃や経路を自動的に読み込んでくれる機能が搭載されています。そのため、印字した履歴を申請書に転記する、という作業を省くことができます。
また、ICカードが定期券の場合は、定期区間の運賃を控除したり、利用履歴の経路や金額を変更することができないようになっているので、不正申請の防止にもなります。
②運賃を計算する機能が搭載で計算不要!
交通費精算システムの多くは、乗換案内ソフトが内臓されています。そのため、利用した経路を検索すれば、システムが運賃を算出し、申請画面と連携してくれます。そのため、経理担当者が運賃を計算する作業の手間を省けます。
また、クラウド会計であれば、時間や場所にとらわれず、スマートフォンやタブレット、パソコン等から交通費の申請や承認が行えます。
つまり、外出先や隙間時間等に申請や承認ができるため、時間を有効活用することができ、結果として業務の効率化へとつながります。申請の漏れ・欠けの予防にもつながるでしょう。
ICカードの交通費精算、近年の注意点
交通費精算は、経理担当者の作業の1つですが、時間や手間がかかる作業として知られています。しかし、ICカード利用履歴を確認・印字することができるようになったことで随分と負担が軽減された事業所も多いのではないでしょうか。
ただし、ICカードの利用による交通費の精算には注意すべき点もあります。
電車に乗る際に、ICカードを利用することが当たり前になりすぎていて、毎回券売機で切符を買っているという方は少ないのではないでしょうか。時間に追われるビジネスシーンでは、さらにICカードの利用が常態化していると考えられます。
そこで、時間のあるときにICカードにチャージしておく、という利用方法が一般的です。このチャージの経理処理は、どのようにしたらよいのでしょうか。
上記に、交通費の精算のために領収書が必要と挙げましたが、これはそのICカードのチャージがきちんと交通費に利用されているということの証明のためです。そして、チャージの領収書のみでは不足しています。
ICカードは、乗車券を購入する以外にも多くのシーンで使用することができます。つまり、業務外のものに使用されている可能性もありますし、業務内だったとしてもそれが交通費ではない可能性もあります。
また、期末等にICカードに残高がある場合があります。その場合の処理も別途必要になるので、注意が必要です。こうしたICカードの利用ならではの混乱を避けるために、利用明細が有効になるのです。したがって、チャージの際の領収書のみならず、利用履歴も資料として残しておく必要があります。
例えば、税務調査の際に、チャージ分のみが記載された帳簿を調査官が目にした際に「何に使用したのか」を問われる可能性があります。これにきちんと回答できるように準備を整えておかなければ、「このICカードは、私的利用もされているのではないか」と勘ぐられてしまう可能性もあります。
従業員の視点からすれば、会社のお金で交通費を払うことも、文房具を買うことも似たようなことに感じるかもしれませんが、それらをすべてICカードで行った場合、社内ルールや管理システムがきちんとしていない場合、混乱が生じる可能性があります。
ICカードの利用について明確な社内ルールを設けていれば、経理処理も混乱を避け、効率化を図ることができるでしょう。しかし、ICカードの利用について、社内の理解があまり進んでいないようであれば交通費の精算だけに使うICカードを定めておいた方が、管理は簡単になるかもしれません。
また、ICカードの適切な利用は、社内の運用透明化にも役立つことでしょう。
例えば、社員AさんはICカードをきちんと交通費だけに利用しているのに、社員Bさんは会社からあまり使用内容をチェックされないのをよいことにICカードを交通費だけではなく、個人のちょっとした買い物等にも用いていたとなれば、これは大変なことです。
きちんとルールを守ってICカードを利用していたAさんからすれば、不公平感を持つことは間違いありませんし、そもそも会社としてのリスク管理上の大きな問題となります。
こうしたことを避けるためにも、チャージしたときにだけの計上で終えて、その後の使用内容について放置していたり、チャージ代だけを示す領収書のみでの管理していたりすることには危険が伴うといえるでしょう。明細をきちんと取得し、従業員の使用ルールを明確にし、定期的に使用内容についてもチェックするようにしましょう。
また、最近では、モバイルSuica やモバイルPASMOのように、スマートフォンにICカード機能を入れて使用している人も多くいます。こうした動きを踏まえ、従業員にモバイルSuica等を用いさせ、費用金額や移動情報を自動で取り込み、精算業務を不要にするサービスも生まれ始めています。
例えば、マネーフォワードでは連携サービスの追加により、モバイルSuicaの使用内容を反映させることができます。現在の残高や、使用内容、どこからどこまでの利用にいくら用いられたのか等が、一目で確認することができます。こうしたサービスは、経理実務の負担をかなり軽く済むと言えるでしょう。
参考記事:「mf(マネーフォワード)クラウド経費」が選ばれている理由と6つのメリット
キャッシュレス化は今後も一層加速するでしょう。これに伴い、ICカードへの対応は企業としてもより求められることは避けられません。
例えば、最近では地方のバス事業者等でもICカードの導入を進めています。これに伴い、ICカードと現金を共に用いなければならなかった遠方への出張の精算等が、より簡便になるといえるでしょう。
ICカードの利用には、管理上のメリットは大きくある一方、不正利用や、管理の煩雑さを招く可能性もあります。従業員にとっても、会社にとっても快適な利用と、利用に際しての社内ルールを設けることで、より効率化を図った活用が求められます。
交通費の精算は、一見地味なようではありますが、日々発生しており、積み重なれば軽視できない負担となります。会社にとってよりよいサービスを利用したり、自社にあった管理方法について、税理士に相談してみるとよいでしょう。
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