住民税申告とは?確定申告との違いは何?住民税申告が必要な人とは?
みなさんは「住民税申告」をしたことがありますか?おそらく多くの方が、確定申告はしたことがあっても、住民税申告をしたことはないでしょう。なぜなら、住民税は原則、申告が必要ないからです。しかし、住民税の申告が必要な人もいます。今回は住民税のしくみや住民税申告、確定申告との違いなどについて解説していきます。
目次
住民税とは?
そもそも住民税は、どのような税金でしょうか?住民税は、住んでいる都道府県と市区町村に納める税金です。「道府県民税(都民税を含む」)と、「市町村民税(特別区民税を含む)」の2種類を合わせたものを「住民税」といいます。住民税は、都道府県や市区町村で行っている行政サービスの費用を住民にも負担してもらう、という趣旨のもと課税されています。
住民税の税額
住民税は、所得税同様、前年の1年間の所得金額をもとに税額が計算され、1月1日現在の住所地で課税されます。住民税は、所得金額をもとにして課税される「所得割」と、所得金額に関わらず個人が負担する「均等割」で構成されています。
所得割額は、「(前年の総所得金額等-所得控除額)×税率-税額控除額」という計算式で算出します。税率は、都府県税は一律4%、市区町村税は一律6%が設定されています。税額控除額については後述します。
一方、均等割額(東京23区の場合)は、「都民税額1,500円+特別区・市町村民税3,500円」という計算式で算出します。都道府県民税は1,500円、市区町村民税は3,500円となっています。
住民税の所得控除
所得控除とは、所得金額から差し引くことができるもので、税負担を軽減することができます。所得税と住民税は、所得控除の額が異なります。そのため、住民税だけの情報を確定申告する際、記入ミスをしてしまうと、住民税が多く計算されてしまう可能性があります。
ですから、確定申告書第二表にある住民税に関する事項の欄には、正しい情報を記載することは大切です。なお、現在、住民税の所得控除には、全部で14種類あります。令和2年度の住民税の所得控除額についてみていきましょう。
【雑損控除】
「雑損控除額=損失額(保険金などの補償額を除く)-総所得金額等×10%」、もしくは「雑損控除額=災害関連支出の金額-50,000円」のいずれかのうち、大きい金額が雑損控除額になる。
【医療費控除】
「医療費控除額=前年度中に支払った医療費-総所得金額等×5%」
【社会保険料控除】
前年度中に支払った額
【小規模企業共済など掛金控除】
前年度中に支払った額
【生命保険料控除】
・一般の生命保険料の場合:平成23年以前に加入したものは最高35,000円・平成24年以降に加入したものは最高28,000円
・介護医療保険料の場合:平成24年以降加入したものは最高28,000円
・個人年金保険料の場合:平成23年以前に加入したものは最高35,000円・平成24年以降に加入したものは最高28,000円
一般の生命保険料+介護医療保険料+個人年金保険料の限度額は、あわせて70,000円
【地震保険料控除】
地震保険は最高25,000円。経過措置として、平成18年末までに締結した長期損害保険契約等に係る支払保険料に関しては、従来の損害保険料控除が、最高10,000円適用される。なお、地震保険料控除と経過措置を併用する場合は、最高25,000円。
【障害者控除】
障害者控除とは、本人もしくは同一生計配偶者、扶養親族などが身体障害者手帳、療育手帳、愛の手帳、精神障害者保険福祉手帳などの交付を受けている人、もしくは障害者として市区町村から認定を受けている人が対象者。
なお、特別障害者とは、障害者の中でも身体障害者手帳1級・2級、愛の手帳1度・2度、精神障害者保険福祉手帳1級の重度障害者の人、もしくは特別障害者として市区町村から認定を受けている人が対象者。
住民税の所得控除は、本人・同一生計配偶者・扶養親族一人につき26万円。特別障害者の場合は一人につき30万円。同一生計配偶者もしくは不要親族が同居の特別障害者の場合は53万円。
なお、所得税の控除額は、本人・同一生計配偶者・扶養親族の場合は一人につき27万円。特別障害者の場合は一人につき40万円。
【寡婦(寡夫)控除】
寡婦(寡夫)とは、夫(妻)と死別もしくは離婚をした後婚姻せず、扶養親族や同一生計する総所得金額などが38万円以下の子どもがいる人、または夫(妻)と死別した後婚姻せず、合計所得金額が500万円以下の人が対象者。
特定寡婦(寡夫)とは、夫(妻)と死別もしくは離婚をした後婚姻せず、扶養親族の子どもがおり、合計所得金額が500万円以下の人が対象者。
納税者本人が寡婦もしくは寡夫の場合は26万円。特定寡婦もしくは寡夫の場合は30万円。
【勤労学生控除】
納税者本人が一定の学校の勤労学生で、勤労に基づく所得があり、その合計所得金額が65万円以下で、そのうち10万円以下は勤労に基づかない所得の場合、住所税控除額は26万円。
【配偶者控除】
合計所得金額が38万円以下の配偶者がいる場合は最高33万円。70歳以上の配偶者の場合は最高38万円。
【配偶者特別控除】
最高33万円。
【扶養控除】
扶養控除は、その年の12月31日現在の年齢が16歳以上の「一般扶養控除」、控除対象扶養親族のうち、その年の12月31日現在の年齢が19歳以上~23歳未満の「特定扶養控除」、老人扶養親族のうち、その年の12月31日現在の年齢が70歳以上の「老人扶養親族」の3種類に分類されている。
一般の扶養親族(16歳以上~19歳未満)の場合は33万円。特定扶養親族(19歳以上~23歳未満)の場合は45万円。一般の扶養親族(23歳以上~70歳未満)の場合は33万円。老人扶養親族(70歳以上)の場合は38万円。老人扶養親族のうち同居老親等(70歳以上)の場合は45万円。
【基礎控除】
33万円。
住民税の税額控除
住民税の税額控除とは、先述した住民税の所得割額を算出する際の計算式、つまり税額を算出した後に税額から差し引く額のことです。住民税の税額控除には、次のようなものがあります。
【配当控除】
総合課税となる一定の配当所得がある場合、その金額に一定の率をかけた金額が配当控除として控除されます。
【外国税額控除】
外国で得た所得で、その国の所得税や住民税に相当する税金を納税した場合、一定の方法により算出された金額を外国税額控除として控除されます。
【寄附金税額控除】
地方自治体や一定の団体などに2,000円を超える寄附金を支払った場合は、寄附金税額控除として住民税から控除されます。
【調整控除】
調整控除とは、平成19年度の税源移譲に伴って生じた所得税と住民税の人的控除額の差に基づく負担増を調整することです。人的控除とは、先述した障害者控除、寡婦(寡夫)控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除のことです。
これら人的控除の所得税と住民税における控除額の差を調整控除といいます。調整控除は、次のような計算式で求めます。
・住民税の合計課税所得金額が200万円以下の場合
「人的控除額の差の合計」、もしくは「個人住民税の合計課税所得金額」のいずれか少ない金額の5%(都民税2%・区市町村民税3%)が控除される。
・個人住民税の合計課税所得金額が200万円以上の場合
「人的控除額の差の合計額-(住民税の合計課税所得金額-200万円)」の5%(都民税2%・区市町村税3%)が控除される。ただし、控除額が2,500円未満の場合は、2,500円(都民税1,000円・市区町村税1,500円)が控除される。
【配当割額及び株式譲渡所得割額の控除】
配当割もしくは株式等譲渡所得割が特別徴収された所得を申告した場合は、所得割として課税されているため、特別徴収されている配当割額と株式等譲渡所得割額から控除されます。控除しきれなかった場合は、均等割に充当、もしくは還付されます。
【住宅借入金等特別税額控除(住宅ローン控除)】
所得税の住宅借入金等特別控除を受けている方の場合、一定の要件を満たしているなら、所得性における住宅借入金等特別控可能額で、所得税で控除しきれなかった額が、住民税所得割額から控除されます。
・対象者:平成21年~令和3年12月末までに入居し、所得税の住宅借入金等特別控除を受けており、所得税で控除しきれなかった住宅借入金等特別控除がある人
・対象年度:所得税において控除することができなかった住宅借入金等特別控除額が発生した翌年度の住民税から適用される。
・控除額:「前年の所得税の住宅ローン控除可能額のうち所得税において控除することができなかった金額」、もしくは「前年の所得税の課税総所得金額等の額に7%をかけた金額(上限13.65万円)」のうち、いずれか小さい額が控除額となる。
なお、各区市町村では、住宅ローン控除を受ける方が税務署などへ申告した情報を共有できるため、納税者本人が区市町村へ申告する必要はありません。
住民税申告と確定申告の違いとは?
確定申告とは、納税者が1月1日から12月31日までの1年間の「その年の所得」を申告し所得税を計算し、納税する手続きです。翌年の2月16日から3月15日までの間に申告・納付する必要があります。確定申告は、「国税」である所得税の申告・納税のため、国の税金を管轄している税務署に届け出る必要があります。
一方、住民税の申告は、1月1日から12月31日までの「前年の所得」に課税されます。また、国税ではなく、道府県民税・市区町村民税、つまり「地方税」です。そのため、居住している市区町村の役所に届け出を提出する必要があります。
このように、確定申告と住民税の申告は、税金の種類や課税対象期間、目的などが異なります。しかし、納税者の1月1日から12月31日までの所得をもとに課税される、という共通点があります。
そのため、確定申告を行った場合は、その人の所得の情報が税務署から市町村へ送られ、それをもとに市町村の役所が住民税の計算を行います。したがって、確定申告をすれば、原則、自動的に住民税が計算されるため、住民税申告をする必要はありません。
住民税の申告が必要な人とは?
前述したように、原則、住民税の申告は不要です。しかし、例外ケースもあります。それは確定申告や年末調整をしていない場合です。住民税の申告が必要なのは、確定申告や年末調整をしていないことに加え、次の条件に当てはまる人です。
・20万円以下の給与所得以外の所得があった人
・配偶者控除を受けるために給与所得を年間103万円以下に抑えているが、給与所得が年間98万円以上ある人
・課税や非課税証明が必要な人
・給与所得者で退職などで年末調整をしていない人
・年金受給者の確定申告不要制度を利用した公的年金受給者の方で、年金以外の所得を得た人
上記の条件に該当する人は、住民税の申告が必要となります。上記の条件の中で特に注意したいのは、配偶者控除を受けるために、給与所得を年間103万円以下に抑えている人です。よく見聞きする「103万円の壁」とは、給与所得が年間103万円から所得税がかかってくる、という意味で言われています。
しかし、住民税の場合は、103万円ではなく「98万円」からかかってきます。ですから、給与所得が年間98万円以上ある人は、住民税申告が必要となります。
国民健康保険などの手続きが必要な場合は住民税申告が必要になることも!?
前述した条件に該当する人以外に、国民健康保険などの手続きが必要となる場合に、住民税の申告が必要となるケースがあります。つまり、前年中に所得がなく住民税が発生しなかった場合でも、国民健康保険などの手続きが必要な場合は、住民税の申告が必要となるケースがあります。
具体的には、国民健康保険・国民年金・介護保険・後期高齢者医療保険の加入者や、就学援助等の受給対象者の方などが該当します。住民税の申告方法は、先述したように各区市町村の市役所で住民税申告書を提出することが手続きとなります。
住民税の申告が不必要な人とは?
上記の条件に該当せず、確定申告や年末調整をしている方であれば、住民税の申告をわざわざ行う必要はありません。つまり、まとめるなら、次のケースに該当する人は、住民税の申告は不要です。
・前年の所得が給与所得のみだっ人
・確定申告をした人
・前年の所得がなかった人
住民税の納付方法
住民税は、前年度の1年間の所得に対して課税されますが、住民税を納める時期と方法は、個人事業主やフリーランスと給与所得者では異なっています。納付方法には、個人事業主やフリーランスなどが対象の「普通徴収」と、給与所得者が対象の「特別徴収」の2通りの方法があります。
普通徴収
住民税の普通徴収とは、住民税の納税通知書を納税者に送付し、納付書を使って支払う方法です。普通徴収は、個人事業主やフリーランスなど、給与所得者以外の方が納める方法です。市区町村の役所は、税務署から送られてきた確定申告書をもとに、納税者の住民税額を計算します。
そして、毎年5月中に、区市区町村の役所は、納税通知書と納付書を郵送します。納税者は、通知を受けた税額を年4回(通常は6月・8月・10月・翌1月)に分けて支払いますが、4期分を一括納付することも可能です。銀行振り込みやコンビニなどで支払うことができます。
特別徴収
住民税の特別徴収とは、6月から翌年の5月までの1年間、12回に分けて毎月の給料から天引きされて支払う方法です。給与所得者の住民税額は、市区町村の役所で計算した住民税額を給与の支払者(会社など)に通知されます。
そして、事業主が納税者に代わって、まとめて住民税を納めてくれます。通常、企業(会社)に勤めている一般的な給与所得者や、前年中に公的年金を受けている方は、特別徴収で住民税を納めることになります。
所得税の確定申告により、特別徴収された住民税を納め過ぎた場合は、納めすぎとた税額が還付として戻ってきます。なお、新入社員と退職者の場合は、次の点に注意する必要があります。
【新入社員1年目は住民税が課せられない】
先述したように、住民税の納税者とは、都道府県内また市区町村に住所を持っていて、その年の1月1日現在に居住している都道府県や市区町村に納めます。前年度の1年間の所得に対して、翌年の1月1日の住所地で課税されるということです。
しかし、新入社員の場合、前年度の所得がないため、入社してから1年目は住民税は課せられません。したがって、入社後2年目から住民税を納付することになります。
【退職した場合、翌年にも住民税を納付するケースもある】
退職し、その後、転職活動や個人事業主として起業した場合は、前年度分の住民税を翌年納めなければならないケースもあります。すでに退職し、再就職をしておらず所得がないという状況だとしても、前年の所得に対する住民税を支払う義務があります。
ですから、退職した際には、翌年、住民税を納める義務があることを念頭におき、「納めるお金がない・・」という状態にならないよう手元に残しておくようにしましょう。
住民税申告の方法
住民税の申告は、「住民税申告書」を提出することで行います。
住民税申告に必要な書類
住民税申告には、「住民税申告書」のほかに、次の書類も一緒に提出する必要があります。
・収支内訳書(農業所得、事業所得(営業・不動産等)がある場合)
・源泉徴収票
・給与支払者の支払証明書
・各種控除証明書
・印鑑
住民税申告書に関しては、各自治体の市役所の窓口で直接入手する、もしくは各自治体のホームページからダウンロードしたものを利用することができます。
書類提出場所
提出場所は、通常、市区町村の市役所の市民税課や、市税事務所の市民税担当窓口などとなっています。しかし、各自治体によって異なるため、必ずご自身の居住地の自治体のホームページで確認してください。
住民税申告の期間
住民税申告の提出期間は、確定申告同様、毎年2月16日~3月15日までとなっています。
住民税で還付を受けられることもある!
所得税の還付はよく知られていますが、住民税の還付はあまりしられていません。しかし、上記でも少し触れましたが、住民税でも還付を受けられるケースが稀にあります。住民税は前年の所得から税額が決定します。そのため、前年の所得申告に訂正があったときに、還付もしくは追納が発生します。
では、どのようなとき所得申告の訂正があるでしょうか?よく生じるケースの具体的な例には、扶養控除の変更をしたときや、医療費控除の申告漏れなどが挙げられます。また、年の途中で退職した方で年末調整していない場合も、住民税の申告によって還付が受けられることがあります。
まとめ
会社員など給与所得者の場合は、毎月の給与から住民税が特別徴収されています。また、個人事業主やフリーランスなどは、確定申告をするため、基本的には住民税を申告する必要はありません。
ただし、確定申告や年末調整をしていない方や、所得税がなくても住民税がかかる場合、また住民税が発生していなくても国民健康などの手続きが必要な場合などは、住民税申告が必要になるケースもあります。住民税申告に該当する方は、決められた期間に忘れずに申告するようにしましょう。
税理士コンシェルジュは、2008年サービス開始より株式会社タックスコムが運営する税理士専門の紹介サイトです。会計の実務経験を活かし、これまで1000名以上の税理士と面談し、1万件以上の相談実績がある税理士選びの専門家です。
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