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退職金にも税金はかかる!「退職所得控除」で節税しよう!

2020年3月30日
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転職や定年退職などで退職金を受け取る場合、退職金には所得税が課せられます。特に定年退職の場合、退職金は老後の生活の糧となるため、所得税の軽減措置が設けられています。しかし、この制度を利用するためには、退職金を受け取る日の前日までに手続きをする必要があります。この記事では、退職金にかかる所得税の負担を軽減させるための方法について解説していきます。

退職金とは?

みなさんもご存知の通り、退職金とは、長年会社のために働いてきた従業員に対して、感謝の意味が含まれた奨励金として支払われるお金のことです。一般的に勤続年数が長ければ長いほど受取金額が大きくなる傾向にありますが、実は、法律上では退職金の制度は存在していません。

そのため、正規雇用だとしても、必ず退職金を受け取ることができるという保証はありません。また、退職金は、定年退職時に受け取ることができる報酬、というイメージが定着していますが、退職金を支給する基準や金額などは、各企業によって異なっています。

退職所得とは?

退職金は税法上では、退職時に特別に支払われる一時的な賃金として「退職所得」と呼ばれています。転職や定年退職などに受け取る退職金をはじめとし、解雇予告手当や勤めていた企業が倒産した際の定期賃金や退職金の未払いの一部などを、国の未払賃金立替払制度から受け取ったお金も退職所得と同じ扱いになります。

また、在籍中に受け取る賃金や賞与などは「給与所得」に分類されますが、定年退職後も同じ企業に再雇用されたり、役員に就任したりするときに受け取る退職金は「退職所得」として扱われます。このように他の所得と合算しないで計算するため、退職所得は「分離課税」といわれています。

退職所得の場合、「後払い」や「未払い」などがあるため、所得税を計算する際には一般的な給与所得とは異なる、独自の計算式を使って退職所得に課される所得税を算出します。ですから、どちらの所得に分類されるのかをしっかり理解しておくことは大切です。

退職金の「所得控除額」の計算方法

退職金の所得控除は、継続年数が20年以下、もしくは20年以上、のどちらに該当するかにより、計算式が異なってきます。

継続勤務年数20年以下の場合

20年以下の場合、退職所得控除額は「40万円×勤続年数」という算式で算出します。企業の多くは、退職給付金制度を勤続年数が3年からと定めているところが多いようですが、その場合は40万円×3年で120万円の控除額となります。しかし、稀に勤続年数が1年で退職金を支給する企業も存在しています。そのようなときは、控除額が80万円に満たないので、控除額は80万円となります。

継続勤務年数20年以上の場合

継続勤務年数が20年の場合は、40万円×20年なので、控除額は800万円になります。勤続年数が20年以上の場合は、「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」という算式で所得控除額を算出します。例えば、勤続年数が25年の場合、800万円+70万円×(25年−20年)となるので、控除額は1,150万円になります。

しかし、条件の境界線となる継続勤務年数20年と21年の場合、すでにみたように20年は控除額が800万円です。一方、21年の場合は、800万円+70万円×(20年−20年)という算式になるので、控除額は870万円になります。このように1年違うだけで、70万円の差がでます。

なお、勤続年数が20年1ヶ月の場合は、端数を切り上げることができるので、勤続年数21年として控除額を計算することができます。

退職所得控除の計算の例外ケース

退職所得控除額の上記の計算式が当てはまらない例外が2つあります。

ケース1:退職の原因が障害者になったという理由の場合
障害者になったため退職することになった場合、上記の計算式で算出された金額に100万円を加算した金額が退職所得控除額になります。

ケース2:退職金を前年以前に受けとったことが場合
退職金を前年以前、もしくは同じ年に複数の勤務先から受け取った場合は、計算方法が異なります。

退職金の所得税の計算方法

退職金の所得税は、他の所得と分離して計算する必要があります。上記の退職所得控除額をもとに、退職所得金額を算出していきます。退職所得金額は、「(源泉徴収される前の金額-退職所得控除額)×1/2=退職所得金額」という算式で求めます。なお、この計算式は、退職金の支払い前に「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出していることが条件となっています。(「退職所得の受給に関する申告書」については、後述します)

「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合は、退職所得金額に基づき、次のように所得税額が計算されます。

退職金額 所得税額
95万円以下 (退職所得金額×5%)×102.1%
195万円~330万円 (退職所得金額×10%−98,500円)×102.1%
330万円~695万円 (退職所得金額×20%−427,500円)×102.1%
695万円~900万円 (退職所得金額×23%−636,500円)×102.1%
900万円~1,800万円 (退職所得金額×33%−1,536,000円)×102.1%
1,800万円~4,000万円 (退職所得金額×40%−2,796,000円)×102.1%
4,000万円以上 (退職所得金額×45%−4,796,000円)×102.1%

「退職所得の受給に関する申告書」とは?

退職所得控除を受けるためには、「退職所得の受給に関する申告書」という書類を、退職金の支払者に退職金を受け取る前日までに提出する必要があります。この書類は、退職金の支払者が保管します。税務署から提出を求められない限り、税務署への届出は不要となっています。この書類を提出するなら、上記で確認した退職金の所得税額が適用されます。

一方、書類を提出しなかった場合は、20.42%が源泉徴収されるため、退職金の金額によっては所得税額に大きな差がでることもあります。しかし、提出を忘れてしまった場合は、退職者本人が確定申告をすることで退職金の所得税額の精算をすることができます。

退職金に課税される税金

事業所側が役員従業員などに退職金を支払った場合、源泉徴収した所得税と復興特別所得税は、翌月の10日までに納税することが義務付けられています。事業所側は、退職金の源泉徴収税額を、退職者本人が「退職所得の受給に関する申告書」の提出の有無に基づいて計算します。提出していない場合は、退職金に一律20.42%の所得税と復興特別所得税を源泉徴収します。

なお、死亡退職による退職の場合、退職金の課税となる相続税は源泉徴収は不要となります。

給与所得が少ないと税金が還付される可能性も!

「退職所得の受給に関する申告書」を提出していても、確定申告をすると税金が還付されることがあります。それは、給与所得が少ない場合です。所得税の課税対象となる給与所得額は、給与収入額に応じて変わりますが、「給与収入-給与所得控除-所得控除=給与所得控除額」という計算式で算出できます。

なお、次のようなケースに該当する場合、確定申告をすることで、退職金に課税された税金が戻ってくる可能性があります。

ケース1:副業などで赤字がある場合
一般的な給与所得者であっても、不動産所得や退職後に個人事業主やフリーランスになり事業所得で赤字がある場合、確定申告をすることで退職金に課税された税金が還付されることがあります。所得税の場合、赤字が出た所得と他の黒字の所得を相殺できる「損益通算」が適用されます。

配当所得、給与所得、雑所得などから不動産所得、もしくは事業所得の損失を差引いて控除しても赤字がある場合、退職所得から差引くことが可能となります。今まで勤めていた会社を退職して事業を始めた場合、軌道に乗るまでは利益を生み出すことは容易ではありません。このケースに該当するなら、税理士などの専門家に相談されることをおすすめします。

ケース2:転職先で年末調整をした際、前職の源泉徴収票を提出しなかった場合
同じ年に退職し、再就職して会社員などの給与所得者として働くケースはよくあります。この場合、前職で発行された源泉徴収票を転職先の企業に提出しなかった場合、確定申告をすることで税金が還付されることがあります。ただし、前職での給与が20万円以下の場合は、確定申告は不要です。

また、退職後から転職するまでの期間に、国民年金や国民健康保険料などを支払った場合は、「社会保険料控除」が適用されますので、翌年に確定申告を忘れずに行うようにしましょう。

まとめ

転職や定年などの際に支給される退職金は、「退職所得」として扱われるので所得税の対象となります。退職所得と通常の給与や賞与で支給される「給与所得」とは所得控除額の計算方法が異なります。ですから、退職金を受け取る側だけでなく、退職金を支払う事業所の担当者は、退職所得と給与所得には分類されるものをしっかり理解おくようにしましょう。

また、退職をする方は、退職金が支給される前日までに、「退職所得の受給に関する申告書」を退職金の支払先である勤務先に提出することを忘れないようにしましょう。また、該当者は、確定申告をして還付を受け取ることで節税しましょう。


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