知っておきたい節税の基礎知識!手元にお金が「残る」節税についてわかりやすく解説!
事業を運営するにあたって、考えなくてはいけないことの1つが「税金対策」です。
ビジネスは先行きの見えないものであり、いつ不況や取引先の倒産等が起こるかわかりません。
そのため、なるべく手元にお金を残すための対策の一つとして、節税が必要となります。
この記事では、正しい節税方法を身に付けるために、基礎的な内容から紹介していきます。ぜひ最後までご覧いただき、ご自身の事業に役立ててください。
目次
そもそも節税とは?
節税とは、「所得を減らしたり控除などの制度を利用することで、納税額を減らすこと」を指します。
なお、違法行為である脱税とは違い、合法なものです。
節税の仕組み
税金は、基本的に「利益」をもとに算出されます。具体的には、下図のとおり、利益(売上などの収入から経費を差し引いたもの)に、税率をかけることで納税額を算出します。
この図からもわかるとおり、利益を減らすことで、結果的に支払うべき税金の額を減らすことができます。
なぜ節税が必要?
節税が必要な理由は、主に「キャッシュフローの改善」です。
中小企業や個人事業主は、大企業と比較すると資金に余裕がなく、不況の影響を大きく受けやすいといえます。そのため、節税等をおこないキャッシュを手元に残す必要があります。
手元にお金が残る節税と残らない節税がある
節税と一口で言っても、「手元にお金が残る節税」と「残らない節税」があります。
お金が残らない節税は、支出した金額以上に節税することはできません。
たとえば、取得価額10万円以上のものは固定資産となり、それぞれの償却率に応じた減価償却という会計上の処理が必要となります。
減価償却した分が経費となるので、節税にはなりますが、モノを購入し社外へ代金を支払っているため、お金は手元に残りません。
事業に必要な設備を整えることも大切なので、一概に「手元にお金が残らない節税」を否定するものではありせんが、キャッシュフローの観点からみると、お金が手元に残る節税も選択する必要があるでしょう。
お金が「残る」節税の仕組み
反対に、「手元にお金が残る節税」とは、どのようなものでしょうか。
それは、節税のためのキャッシュの流れが、経営者や役員、従業員など、会社の内部に向いているものです。
節税しながら実質的にキャッシュを貯め、役員や従業員に還元することができます。そのため、経営が不安定な事業者は、まずお金がたまる節税を採用するとよいでしょう。
具体的な方法は、これから解説していきます。
お金が「残る」節税の具体例
ここからは、お金が「残る」節税の具体例を紹介します。
いずれも、比較的簡単にできる節税ですので、ぜひ参考にしてください。
役員報酬を適切に設定する
役員に支払われる給料のことを「役員報酬」といいます。小規模な事業者においては、基本的に、株主総会で決議することで役員報酬の金額を決めることが多いでしょう。
役員報酬は原則損金不算入(経費にならない)ですが、定期同額給与という制度を利用すると、損金として処理することができます。
そのため、会社の経営状態を考慮して定期同額給与を使えば、節税しながら経営者個人としても給料をもらうことができるのです。
ただし、役員報酬額を決める際には、以下の2点に注意する必要があります。
以上の点に留意し、役員報酬の金額を決定するとよいでしょう。
中小企業倒産防止共済・小規模企業共済に加入する
中小企業倒産防止共済と小規模企業共済に加入するのは、お金が手元に残る節税方法の一つです。
中小企業倒産防止共済に加入すると、売掛金が回収不能になった場合、積立金の最大10倍(8,000万円まで)を貸し付けてくれます。年間の掛金額は、最大で240万円で、その全額を損金とすることができます。
小規模企業共済は、節税しながら、経営者・役員・個人事業主が、自分で退職金を積み立てることができます。年間の最大の掛金額は84万円です。
なお、小規模企業共済は個人の節税方法なので、掛金を法人の損金にはできません。直接会社の節税には利用できませんので注意が必要です。
しかし、個人の所得税を減らすことができるため、たとえば、役員報酬を上げることで会社の節税をおこない、増えてしまった個人の所得税は小規模企業共済を使い減税する、などの方法もよいでしょう。
いざというときの借入ができたり、退職金の積み立てができるため、簿外資産(会計帳簿外の実在資産)としても非常に有効です。
役員などの自宅を社宅扱いにする
法人を設立した場合などは、まず最初に役員社宅制度の利用をおすすめします。
役員社宅というのは、役員の家賃の最大50%を会社が負担できる制度です。給与とはみなされないため、所得税をはじめ、社会保険料なども計算されません。
たとえば、20万円の家賃のうち10万円を負担する代わりに、報酬を10万下げたとします。この場合、会社と個人にかかる税金や社会保険料は減るので、どちらにとっても有用な制度です。
ただし、役員社宅制度の利用には、注意すべき点が3つあります。
以上の点に留意し、この制度をうまく活用するとよいでしょう。
出張旅費日当を活用する
出張が多い仕事であれば、出張旅費手当を活用するとよいでしょう。
出張旅費日当は、出張にかかる経費(交通費、宿泊代など)を支給するものです。出張旅費日当で支給された分は、給与としてカウントされないため、各種税金や社会保険料がかかりません。
出張旅費日当においては、実際の出張にかかった経費の額ではなく、あらかじめ出張旅費規程で定めた額を経費とするため、実際より多い金額が損金や必要経費に算入されることもあるでしょう。
その際、差額を会社に返還する必要はありません。
しかし、あまりに高すぎると税務署から否認される可能性があるため、現実的な金額を設定する必要があります。
また、会社の社長は日当の対象となりますが、個人事業主は日当をもらうことができません(個人事業主が雇用する従業員は対象)ので注意が必要です。
その他の節税対策
その他の節税対策として、企業型DC(企業型確定拠出年金)の活用が挙げられます。
企業型DCは、従業員が自ら商品を選び、運用をおこなう私的年金の1つです。
掛金は会社と個人で折半することができ、払った金額は、会社は全額損金に算入し、個人も全額を所得控除できるという、法人と個人のどちらも節税に利用できる制度です。
従業員への福利厚生といった面があるので、人材採用でも効果的でしょう。
また、はぐくみ基金を活用する手もあります。
はぐくみ基金とは、確定給付型年金制度の1つで、給与の最大20%を掛金として支出でき、その分の税金と社会保険料を削減できる制度です。
役員と従業員、どちらも加入することができ、休職時にも積立金が受け取れるなど、近年話題になっている制度です。
ただし、iDeCoや企業型DCと併用する場合、上限額が変動するのでご注意ください。
節税のQ&A
最後に、節税に関するよくある疑問を、Q&A形式で回答します。
節税のデメリットはありますか?
節税のデメリットとして、融資が受けにくくなることが挙げられます。
節税をして納税額を減らす場合、通常、書類上は利益が減ることになります。しかし、銀行側からすると、利益が少ない会社への融資を敬遠する場合があるでしょう。
そのため、「過度な節税は銀行の印象を悪くする可能性がある」ことに留意する必要があります。
一人社長の家賃は経費にできますか?
一人社長の家賃は経費にできます。
先ほどの役員社宅でも解説したとおり、最大50%の家賃を会社負担で払えるので、個人事業主から法人成りした場合などは、早い段階で導入するとよいでしょう。
注意点も先ほどと同じで、以下の3つです。
豪華社宅の基準の1つとして、「床面積が240平方メートル以下であること」というものがあります。
イメージとしては、テニスのダブルスのコートが約260平方メートルなので、それより一回り小さいくらいでしょう。
まとめ
この記事では、節税には「手元にお金が残る節税」と「残らない節税」があることを解説しました。
キャッシュフローの観点からみると、お金が手元に残る節税も選択する必要があるでしょう。ただし、融資が受けにくくなるなどのデメリットもあるので、むやみに節税をおこなうことは推奨できません。
そのため、経営状態についてよく分析をおこない、ご自身の事業に適している節税方法を採用することをおすすめします。
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