標準報酬月額とは何?概要から計算式まで分かりやすく解説!
社会保険料には、厚生年金保険料や健康保険料などがあります。これらの保険料の金額を決める際に基準となるのが、「標準報酬月額」です。この標準報酬月額とは何のことなのでしょうか?今回は、標準報酬月額の基礎知識から、標準報酬月額の計算方法まで分かりやすく解説していきます。
目次
標準報酬月額とは?
標準報酬月額とは、社会保険料を決定するために設定されている区分ごとの金額のことです。被保険者の報酬によって決定されます。標準報酬月額を算出するためには、「報酬月額」まず計算しなければなりません。つまり、標準報酬月額を理解するためには、まず報酬月額について知る必要があります。では、報酬月額についてみてみましょう。
報酬月額について
報酬月額とは、事業者側が従業員に支払う1ヵ月の基本給に加え、役付き手当、通勤手当、残業手当、住宅手当、家族手当などの各種手当も合算した金額のことです。つまり、労働の対価として事業者側から支給されている現金のことです。その他、現物支給を含んだ金額も報酬月額に該当します。
ただし、報酬月額に含まれないものもあります。それには、結婚祝い、出産祝い金、お見舞金、出張旅費、年3回までの賞与など、臨時的に支給されたものは、報酬月額の対象外となります。
社会保険について
報酬月額をもとに算出される標準報酬月額は、社会保険料を決定することが主な用途です。では、社会保険料とは何でしょうか?一般的に社会保険料とは、健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険の5種類の総称のことです。ただし、この5種類の中で、雇用保険と労災保険は、労働保険とも言われています。
標準報酬月額は、健康保険、厚生年金保険などの社会保険料を算出します。つまり、「標準報酬月額×保険料率=保険料」という計算式で社会保険料を決定します。
標準報酬月額の仕組み
労働の対価として支払われる報酬は、毎月、一定の金額が設定されているわけではありません。時給制の場合は勤務時間、月給の場合は手当などによって、毎月の報酬額は変動します。そのため、毎月の報酬額の変動を社会保険料に反映させることは多くの手間と時間を必要とします。そこで、標準報酬月額を決定するのです。
標準報酬月額は、4月、5月、6月の特定された月の報酬額の平均額を算出し、それを「標準報酬月額表」という等級表に当てはめたものが「標準報酬月額」になります。決定された金額は、その年の9月から翌年の8月までの1年間使われます。なお、実際に支給されている報酬額と、標準報酬月額は必ずしも一致するわけではありません。
標準報酬月額表とは?
標準報酬月額表は、報酬月額を等級表としたものです。健康保険の場合は、第1等級(5万8千円)からはじまり、第50等級(139万円)まで等級が区分されています。厚生年金保険の場合は、第1等級(8万8千円)から31等級(62万円)までの等級となっています。
標準報酬月額の算定の基礎となる報酬について
上記でも少し触れましたが、標準報酬月額を算定するための基礎となる報酬には、基本給をはじめとし、各種手当など労働の対価となるものがすべて該当します。ただし、基本給や通勤手当など金額が変動しない固定的給与と、残業手当や休日手当など勤務状態によって発生し、金額が変動する非固定的給与は、等級が変更することによる随時改定になる可能性があるので、区分しておく必要があります。
また、通勤手当は、課税、非課税を問わず、すべて報酬に該当します。さらに通貨ではなく、現物で支給される食事代、社宅寮などの費用なども報酬に含まれます。その際、都道府県で定められている金額で換算し、標準報酬月額の計算をします。なお、本人から3分の2以上徴収している食費や社宅寮などの費用の場合は、報酬の対象外となります。
金銭と現物で支給されるもので、報酬の対象となるものと対象とならないものをまとめると、次のようになります。
(金銭で支給されるもの)
・報酬に該当するもの
基本給、能率給、奨励給、役付手当、職階手当、特別勤務手当、物価手当、日直手当、宿直手当、家族手当、扶養手当、求職手当、通勤手当、住宅手当、別居手当、早出残業手当、継続支給する見舞金、年4回以上の賞与など
・報酬に該当しないもの
大入袋、見舞金、退職手当、解雇予告手当、出張旅費、交際費、傷病手当金、労災保険の休業補償給付、年3回以下の賞与など
(現物で支給されるもの)
・報酬に該当するもの
通勤定期券、回数券、食事、職権、社宅、寮、勤務服以外の被服、自社製品など
・報酬に該当しないもの
整復、作業着、見舞品、食事など
標準報酬月額の決定をする時期
標準報酬月額は、主に5つのタイミングで決定されます。それは、「資格取得時決定」「定時決定」「随時決定」「産前産後休業終了時改定」「育児休業等終了時改定」の5つです。では、ひとつづつ確認してみましょう。
資格取得時決定(入社時)
資格取得時決定とは、事業者側が新たに従業員を雇い始めたときに決定します。就業規則や労働契約などの内容をもとにした報酬額の見積額を「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」と呼ばれる書類に記入し提出する必要があります。その際、標準報酬月額を決めます。
定時決定(7月1日)
先述したように、4月、5月、6月の特定された月の報酬額の平均額から算出されることを定時決定といいます。決定された金額は、その年の9月1日以降から翌年8月までの1年間適用されます。
業務によっては、季節により報酬額の差が大きいこともあります。4月から6月までの3ヶ月間の標準報酬月額と、前年の7月から当年の6月までの年間平均額を比較し、2等級以上の差が生じる場合は、年間平均で標準報酬月額を決定することができます。その際には、被保険者の同意を得て申し立てる必要があります。
また、注意したい点として、標準報酬月額を算出する際には、報酬支払基礎日数が17日未満になっている月は除いて計算してください。
定時決定は、「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額算定基礎届」を日本年金機構の各都道府県の事務センター、もしくは管轄地区の年金事務所へ7月10日までに提出し、決定されます。厚生年金基金や企業年金基金、健康保険組合などに加入している場合は、それらにも決められている様式で届出を提供する必要があります。
なお、算定基礎届は、7月1日時点で社会保険に加入したすべての人が提出しなければいけません。しかし、6月1日以降に資格を取得した方や、7月から月額変更をする方などは、算定基礎届の提出は不要となります。
随時改定
随時改定とは、昇給や減給などで賃金が大幅に増減したことで、標準報酬等級が2等級以上変動した場合に標準報酬月額が改定されることです。ただし、報酬月額を算定する連続する3ヶ月間は、すべての月が報酬支払基礎日数が17日以上、短時間労働者で被保険者の場合は11日以上あることが条件となっています。
産前産後休業終了時改定
産前産後休業が終了し、休業終了後3ヶ月の報酬から算出した報酬月額が、休業前と比較して1等級以上差がある場合は、標準報酬月額を改定することができます。改定するには、「健康保険・厚生年金保険産前産後休業終了報酬月額変更届」の提出が必要です。随時改定同様、基礎日数が17日未満の月を除いて算出します。
育児休業等終了時改定
育児休業等が終了し、休業終了後3ヶ月の報酬から算出した報酬月額が、休業前と比較して1等級以上差がある場合は、標準報酬月額を改定することができます。改定するには、産前産後休業終了時改定同様、「健康保険・厚生年金保険産前産後休業終了報酬月額変更届」の提出が必要です。また、基礎日数が17日未満の月を除いて算出する必要があります。
標準報酬月額の見方と確認方法
標準報酬月額の味方や確認方法をしっかり理解していれば、社会保険料の計算も効率よく行うことができるようになります。ではここで、報酬月額が265,000円と仮定して、標準報酬月額を確認していきましょう。標準報酬月額は、保険料額表で等級を調べる必要があります。
報酬月額が265,000円の場合、標準報酬月額表では250,000~270,000円の間になります。したがって、表によると標準報酬月額は、260,000円になります。標準報酬月額が260,000円の場合は、健康保険は20等級、厚生年金保険は16等級に該当します。
なお、保険料額表は、「協会けんぽ」の公式ホームページで確認することができます。
非正規雇用の標準報酬月額の計算方法
パートなどの非正規雇用だとしても、社会保険の被保険者になることがあります。その場合、1日もしくは1週間の所定労働時間、1ヶ月の所定労働日数のどちらかが正社員の4分の3以上でなければいけません。
では、パートやアルバイトなどの時間給の労働者の場合、どのように標準報酬月額を算定するのでしょうか?まず年間労働日数をもとに年収を計算します。その後、12ヶ月で割り、1ヶ月の平均賃金を算出します。
例えば、時給1,000円、所定労働時間8時間、年間労働日数が257日の場合は、「(1,000×8×257)÷12=171,333」という計算式になります。したがって、1ヶ月の平均賃金は171,000円が、標準報酬月額になります。
退職後の社会保険料の計算方法
健康保険制度では、事業者に雇われている人が被保険者の対象となります。しかし、例外として会社を退職した後も、最長2年間、個人で健康保険に加入することができる「任意継続被保険者制度」という制度があります。一定の要件を満たしているなら、この制度を利用することができます。そのためには、任意継続被保険者制度に関する届出と保険料の納付を個人で行う必要があります。
退職時の任意継続被保険者制度による保険料は、「退職時の標準報酬月額×保険料率=保険料」という計算式で、保険料を算出します。ただし、退職時の標準報酬月額が30万円以上だった場合は30万円となっています。
まとめ
標準報酬月額は、保険料を算出するための基礎となります。また、標準報酬月額で保険料が決定されるため、従業員が将来受け取る年金額にも影響する大切な計算です。ですから、標準報酬月額を算出するときは、対象となる報酬なのか、それとも対象外の報酬なのかをしっかり確認することが求められています。
また、年に1回、標準報酬月額を見直す定時決定もありますので各従業員の給与額も把握しておくようにしましょう。特に、業務の性質上、季節的に報酬が変動する場合は、適切な額を決定できるよう注意しましょう。
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