【現金給付申請にも必要】源泉徴収票とは?
いわゆる正規雇用者の方も、パートタイマーやアルバイトの方も、年末になると雇用者から「源泉徴収票」を受け取ります。
しかし、年末になると受け取るあの小さい紙が、実際にはどういう意味を持つのかよくわからない、という方も少なくありません。
また、源泉徴収票を作成する側である雇用主にとっても、ただ機械的に年末に作業をしていると、思わぬミスが生じるかもしれません。
そこで、この記事では「源泉徴収票はどのようなもので、どのような役割を果たすのか」、「源泉徴収票は、どんなときに必要になるのか」について、基礎知識や注意点を解説していきます。
目次
源泉徴収票とは?
源泉徴収票とは、「1年間に給与所得がどのくらいあり、所得税・社会保険料・住民税などをどれだけ納めたか」が記載されている小さな紙のことです。
まず「源泉徴収」とはそもそも、どういう意味なのかを理解する必要があります。源泉徴収とは、給与や報酬などの支払いを行う事業所(雇用主)が、各従業員の給与・報酬・利子・配当などから所得税を差し引き、従業員に代わって納税する制度を「源泉徴収」といいます。「天引き」という言葉のほうが、馴染み深いかもしれません。
・源泉徴収される所得税のこと:源泉所得税
・給与や賞与などを差し引いた税額を記載した書類:源泉徴収票
源泉徴収票は、いつ必要になる?
源泉徴収の内訳が記されている源泉徴収票を見れば、雇用主が従業員にいくら支払っているのか、支払額に応じていくら所得税を納めているのかがわかります。したがって、源泉徴収票が必要な代表例としては、確定申告が挙げられます。
「サラリーマンに確定申告は必要ない」という考え方が一般的ですが、実際には給与が一定額以上である場合や、副業や株式売買等による収入がある場合は確定申告が必要です。ふるさと納税をした場合など、確定申告をしたほうが得である、という場合もあります。
また、退職者にも源泉徴収票が必要になります。転職先での年末調整や、年末に確定申告をするためです。従業員側としては遅滞のない発行を雇用主に求め、雇用主側としては適切に発行しなくてはなりません。
なお、源泉徴収票は、給与や賞与を支払う事業所が、2通作成することが義務付けられています。1通は給与や賞与を受け取る各従業員へ渡すため、もう1通は税務署へ提出するためです。
源泉徴収票の記載項目を理解し、内容を把握する
源泉徴収票には、様々な項目が設けられています。収入の種別・氏名・事業所の名称と住所などの基本的な情報からはじまり、次のような内容が記載されます。
①支払い金額
支払い金額とは、給与や賞与などすべてを含めた全収入額です。ここに記載されているのは収入のみの金額、つまり「年収」であり、社会保険料や各種税金が差し引かれる前の金額が記載されています。
②給与所得控除後の金額
給与所得は、収入金額に応じて給与所得控除があります。給与所得控除とは、会社員の必要経費として法律上認められている控除額のことです。控除額は次のように決められています。
収入金額 | 給与所得控除 |
162万5,000円以下 | 65万円 |
180万円以下 | 収入金額×40% |
180万円~360万円以下 | 収入金額×30%+18万円 |
360万円~660万円以下 | 収入金額×20%+54万円 |
660万円~1,000万円以下 | 収入金額×10%+120万円 |
1,000万円以上 | 220万円 |
③所得控除の額の合計と内訳
所得金額から、給与所得控除以外の控除の合計金額が記載されます。ここには毎月の給与で計算されて控除された金額と、年末調整で初めて控除される金額の2つが合計されています。
毎月の給与で計算され控除してきた金額には、健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・企業共済掛金などが含まれます。
一方、年末調整で初めて控除されるものには、基礎控除・扶養控除・配偶者控除・配偶者特別控除・寡婦(夫)控除・障害者控除・医療費控除・勤労学生控除・寄付金控除・生命保険料控除・地震保険料控除などが含まれます。
これらが合計された所得控除を差し引いた金額は、課税対象額になります。
④源泉徴収税額
事業所がすでに支払った所得税の合計金額が、源泉徴収税額として記載されています。
源泉徴収額の計算式は、
給与所得控除後の金額(支払い金額-給与所得控除)-所得控除の額の合計額=課税所得
となります。そして、
課税所得×税率=源泉徴収税額
という計算式で、源泉徴収税額が算出できます。
源泉徴収票が求められるとき
源泉徴収票は、従業員の雇用形態を問わず、どのように働き、どのくらい収入があったか、どのくらい税金や社会保険料を負担したかを証明することができる書類です。そのため、様々な場面で源泉徴収票の提出が求められます。
具体的には、次のような場面で源泉徴収票の提出が求められます。
①確定申告をするとき
源泉徴収票が最も必要になるケースは、確定申告をするときです。パートやアルバイト、在宅ワークをしている場合も確定申告が必要となり、その際の添付書類として源泉徴収票が求められます。
②住宅ローンを組むとき・住宅ローン控除を受けたいとき
住宅ローンの融資枠の審査は、年収が大きく左右してきます。そのため、源泉徴収票の提出を求められます。
③子どもを保育園に入れるとき
保育園の保育料は、夫婦の年収から決めることが基本となっています。そのため、入園するときをはじめとし、毎年源泉徴収票を提出することが義務付けられています。
さらに、入園後も親の就労状況の確認のために、毎年源泉徴収票(或いは在職証明書や給与支払証明書等)の提出が求められる場合もあります(自治体により対応が異なるので、確認が必要です)。
④新たに扶養家族を入れるとき
配偶者など新たに扶養家族にいれる際には、事業所から新たに扶養家族へ入れる人の源泉徴収票の提出が求められます。
⑤転職したとき
退職した年と同じ年に転職した場合、前職の会社の源泉徴収票の提出が求められます。雇用側は、従業員が退職した場合には、1ヶ月以内に退職日までの源泉徴収票を作成して元従業員に渡さなくてはいけない義務があります。もし退職した事業所から源泉徴収票を受け取っていない場合は、催促しなければいけません。
⑥賃貸マンションの保証人になるとき
賃貸マンションを借りる人の保証人となる場合、不動産会社にもよりますが、年収の記入や源泉徴収票を提出するように求められることもあります。
⑦失業給付金を受けたいとき
失業して失業給付金を受けたいとき、ハローワークに源泉徴収票を提出する必要があります。
源泉徴収票について注意したいこと
源泉徴収票は、給与所得額や税金などの支払いを証明してくれる大切な書類です。ですから、源泉徴収票を受け取ったら、金額が合っているかどうかを確かめることは重要です。
特に「支払金額」という項目は、毎月の給与や賞与など雇用主から支払われた1年間の合計金額が記載されています。この額は年収にほぼ等しい額ですので、源泉徴収票の金額が合っているかどうかを確認してみることができるでしょう。
また、転職した場合、源泉徴収票が退職後1ヵ月以内に発行されたものかどうかを確認しましょう。新たに転職する際には、新しい勤務先に源泉徴収票を提出する必要があります。
また、失業給付金を受ける場合はハローワークに提出する必要があります。いずれにせよ源泉徴収票は必要となりますので、元の勤務先から必ず受け取りましょう。
雇用主側としても、源泉徴収票作成の際に控除額などを間違えてしまうと、従業員に不利益をもたらしてしまいます。担当者は、最新の注意を払いながら作成する必要があります。
源泉徴収票を失くしてしまった場合
源泉徴収票はとても大切な書類ですので、大事に保管しておくことが必要です。しかし、どんなに気を付けていても失くしてしまうことがあるかもしれません。もし源泉徴収票を失くしてしまった場合は、雇用主に再発行を依頼しましょう。
なお、たとえ退職した会社であるとしても、事業所は源泉徴収票の発行を拒むことはできない、と所得税法で決められています。
したがって、「退職した会社に依頼するのは気が引ける」「退職者に対して源泉徴収票を再発行してくれるだろうか」などと気にすることなく、再発行の依頼をしましょう。
源泉徴収票は、大切に!
源泉徴収票は、個人情報のかたまりともいえる大切な書類です。作成する雇用主側も、受け取る従業員側も、慎重な取扱いをする必要があります。
2020年春から新型コロナウイルスに対する施策が目まぐるしく動いていますが、ここにおいても必要になる可能性があります。「国民への現金給付がされるか否か」という点に注目が集まっていますが、給付にあたって所得額等により制限が加えられる場合、所得額の変動を証明するために源泉徴収票の提示が求められると報道されています(2020年4月15日現在)。
また、近年、地震や台風等が多く発生していますが、このような天災による被害のために被った損害や、やむをえない支出に対しては所得税の軽減措置が設けられています。例えば、住宅や家財に関する損失や、被災した資産を再使用するためにかかった費用などが対象となりますが、こうした措置を適用するために、源泉徴収票が求められる場合もあります。
一方、ここ数年、投資用の不動産購入に関する事件も多く報道されています。ローンを組む際に行われる審査の際に、収入証明書類の改ざんが行われたケースもあります。例えば、実際の収入よりも大きな金額に改ざんして銀行へ提出することで多額の融資を組ませる、といった手法です。収入証明書類の最たるものが、源泉徴収票です。
通常の納税に加え、緊急事態の際にも提示が求められるのが、源泉徴収票です。また、重要ゆえに上記のような事件も発生するといえます。源泉徴収票の作成時は勿論、その管理や内容の把握について日ごろから留意する必要があるといえるでしょう。
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