複式簿記の基礎知識ー単式簿記との違いやメリット・デメリット | 税理士コンシェルジュ

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複式簿記の基礎知識ー単式簿記との違いやメリット・デメリット

2021年4月7日
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複式簿記

個人事業主や起業しようと検討している方、会計事務所で働きたいと思っている方は、「複式簿記」の基礎知識や記帳方法については知っておくことは大切です。この記事では、複式簿記が未経験の方でも分かりやすように簡潔に解説していきます。

簿記とは?

複式簿記の基礎知識を理解する前に、まず簿記について知ることは大切です。簿記とは、「帳簿記入」や「帳簿記録」などの言葉を略した言葉で、その名前の通り、商売の取引を帳簿に記入や記録をすることです。

企業はもちろんのこと、個人事業主でも商売をする上で、融資を受ける際には銀行へ決算書を提出する必要がありますし、納税申告をする際には決算書を元に確定申告書を作成して税務署へ提出することが求められています。

この提出書類となる決算書とは、期末時点の財産や負債が記載してある「貸借対照表」や、期中の売上や費用、利益などが記載されている「損益計算書」の2つの書類が含まれます。これらの書類は、決算書を構成する「財務3表」とも呼ばれるほどとても重要な書類で、日々の経営活動が記録されている簿記をもとに作成されます。

簿記には決められたルールがあるので、どの会社や起業でも、共通のルールに従って簿記を作成しています。そんな簿記には、「単式簿記」と「複式簿記」の2種類が存在しています。両者の違いについては後述します。

「正規の簿記の原則」について

正規の簿記の原則とは、一定の要件に従って性格な会計帳簿を作成することです。その正規の簿記原則は、「企業会計原則」と呼ばれる会計指針の一般原則のひとつであり、複式簿記は正規簿記の原則を満たしている必要があります。

これは法律で定められているものではありませんんが、1949年以来、会計基準を構成するための基本原則として使われています。そのため、企業会計は、すべての取引を正規の簿記に従って帳簿を作成しなければいけません。正規の簿記では、次の3つの要件を満たす必要があります。

1、網羅性
網羅性とは、すべての取引の事実をもれなく記録することです。

2、秩序性
秩序性とは、会計記録が秩序立った一定のルールに基づいていることです。

3、検証可能性
検証可能性とは、事後に検証可能な資料(レシートや領収書などの取引の証拠となる書類)に基づいて記録することが求められています。

複式簿記の記帳方法について

上記でも少し触れましたが、複式簿記の記帳は2方面、つまり、借方と貸方からの取引を記録していきます。複式簿記を記帳するためには、貸借対照表の意味や勘定科目が分かれていることをしっかり理解しておく必要があります。

貸借対照表の基本

複式簿記では、「借方」を左側、「貸方」を右側に記帳をしていきます。借方には現金などの財産が増えたことを示す勘定科目、貸方には財産が減ったことを示す勘定科目を記録します。

貸借対照表は、「資産=負債+純資産(資産)」という計算式で成り立っていますので、常に借方と貸方は同じ金額になっていることが原則となっています。

簿記上の5つのグループ

簿記には、「資産」「負債」「純資産(資本)」「収益」「費用」の5つのグループで仕訳されています。仕訳とは、取引を借方と貸方のどちらかに振り分けて書くことで、これにはルールがあります。

借方 貸方
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
資本の減少 資本の増加
収益の消滅 収益の発生
費用の発生 費用の消滅

複式簿記の貸借対照表の記帳例

複式簿記は、毎日の財産移動を記帳することを「仕分け作業」、記帳した台帳は「仕訳帳」、日々の仕訳を勘定ごとに合計して一覧にしたものを「貸借対照表」と呼んでいます。

貸借対照表をみれば、資産がどのくらいあるか、負債がどのくらいあるか、資産から負債を差し引いた純資産がどのくらいあるか、などの財政状況などをすぐに把握することが可能です。

では、実際に仕訳をし、複式簿記で記帳した例をみてみましょう。

例1:貯金から200万円を出資して事業所を開業

借方 貸方
現金200万円 資本金200万円

例2:銀行から150万円を現金で借入

借方 貸方
現金150万円 借入金150万円

例3:事務所の電気料金10万円を現金で支払う

借方 貸方
電気料金10万円 現金10万円

例4:100万円の商品を仕入れ、現金で支払う

借方 貸方
商品100万円 現金100万円

例5:銀行から借入れていた150万円を現金で返済

借方 貸方
借入金150万円 現金150万円

このように複式簿記では、資産、負債、費用、収益、純資産が増減するたびに取引と定義し、その取引を借方と貸方として左右に仕訳をして記帳していきます。常に借方と貸方の金額は一致していることが、複式簿記の原則です。
参考記事:勘定科目とは?その必要性や注意点

「単式簿記」と「複式簿記の違いとは?

では、単式簿記と複式簿記には、どのような違いがあるのでしょうか?単式簿記とは、1取引につき1項目を使って1方面から帳簿に記録する方法のことです。簡易記帳とも呼ばれています。一方、複式簿記は、すでに詳しくみたように1取引について2方面(借方と貸方)からの取引を記録していきます。

では、ひとつの例から、両者の記入方法の違いについて比較してみましょう。

例えば、A社が9月1日に現金1,000円を保有、9月3日に1,000円の売上、9月5日に2,000円の売上、9月10日に3,000円の売上、があった場合、次のように記帳していきます。

1、単式簿記の場合

日付 売上
9/3 1,000円
9/5 2,000円
9/10 3,000円

単式簿記では、3つの取引内容が記録されます。ひとつの取引項目を把握することができるので、簡易的と言えます。

2、複式簿記の場合

日付 借方 貸方
9/3 現金1,000円 売上1,000円
9/5 現金2,000円 売上2,000円
9/10 現金3,000円 売上3,000円

複式簿記でも3つの取引内容が記録されますが、単式簿記と違い、現金がどのように流れたかを把握できます。

両者を比較すると、単式簿記は取引したお金の記録を1つの勘定科目だけで記録するので、初心者の方でも簡単に記帳することができます。家庭でつける家計簿のようなもの、と考えることができるでしょう。

そのため、特別な知識を必要とせず作成できる、というメリットがあります。しかし、お金の増減の理由を知ることはできません。つまり、財産の状態が分からない、というデメリットがあります。

複式簿記を記帳する3つのメリット

単式簿記の方が簡単ですが、複式簿記で記帳することには様々なメリットがあります。ここでは、3つのメリットをご紹介します。

メリット①会社の「残高」が把握できるので自社の状況を判断することができる

複式簿記で記帳するなら、残高を把握することができます。そのため、損益取引の確実性が高まることにもつながります。また、貸借対照表をみれば、期末時点での現預金や固定資産などの資産や、借入金などの負債も把握できるので、自社が現在どのような状況なのかを一目で判断することもできます。

メリット②確定申告で青色申告ができる

確定申告には、白色申告と青色申告の2通りから選ぶことができます。青色申告は控除を受けられるなど様々なメリットがあります。しかし、青色申告を選択する場合は、複式簿記で記帳することが条件となっています。つまり、複式簿記で記帳するなら、青色申告によるメリットを得ることができます。
参照:国税庁「青色申告特別控除」

メリット③企業の決算資料から財務状況を読みとることができる

複式簿記を通して、自社の決算書の作成をすることになります。それにより、自社の財務状況を読みとることができるようになります。つまり、ビジネスシーンにおいて他者の決算書も読み取ることできます。複式簿記の知識があれば、ビジネスシーンではもちろん、株式投資先を見極める判断にも役立つでしょう。

複式簿記を記帳する2つのデメリット

デメリット①記帳が難しい

複式簿記のデメリットは、単式簿記と比較すると難しいことが挙げられます。専門的な知識を必要とするため、特に簿記初心者の方にとっては、慣れるまで難しく感じるかもしれません。しかし、最近は会計ソフトやアプリが充実しているため、以前よりも容易に複式簿記での記帳がしやすくなっています。

デメリット②時間や手間がかかる

複式簿記は単式簿記と比べると、記帳に時間や手間がかかります。しかし、会計ソフトやアプリを利用するなら、時間や手間を軽減できるでしょう。

単式簿記のメリットとデメリット

メリット:初心者でも記帳できる

単式簿記のメリットと言えば、簿記初心者でも簡単に記帳できることです。前述したように、単式簿記は取引を1つの勘定科目のみで記帳するので家庭の家計簿感覚で記帳ができます。専門的な知識も不要です。

デメリット:財産の状態が分からない

単式簿記のデメリットは、お金の増減を把握できないことです。つまり、単式簿記だけでは、財産の状態を把握することはできません。

複式簿記の流れ「簿記一巡の手続き」

企業が複式簿記を作成する理由は、年度末に作成する決算書のためです。そのため、簿記には「簿記一巡の手続き」と呼ばれる簿記論、つまり仕組みがあります。簿記一巡の手続きとは、以下のような一連の流れのことです。

1、取引を把握する
2、取引について「仕訳帳」に仕訳として記帳する
3、仕訳帳から「総勘定元帳」に勘定科目ごとに転記する
4、総勘定元帳の各勘定科目の残高を試算表の一覧表に転記する
5、期末に決算処理を実施する
6、損益計算書と貸借対照表を作成する
7、決算書を作成する

このように事業年度末に正しい決算書を作成することが簿記の最終目的と言えます。

まとめ

複式簿記を理解し、慣れるまでは難しく感じるかもしれません。しかし、その分、単式簿記よりも得られるメリットがたくさんあります。記帳することに難しさを感じているなら、プロの税理士に相談したり、会計ソフトなどを利用することもひとつの方法です。

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