預かり金はどんな勘定科目?経理に役立つ基礎知識 | 税理士コンシェルジュ

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預かり金はどんな勘定科目?経理に役立つ基礎知識

2020年3月31日
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預り金

「預かり金」は、数多くある会計の勘定科目のひとつです。特に給与計算や年末調整などのときに登場する勘定科目で、本人に返金されることもあれば、第三者に支払われることもあります。企業の経理担当者であれば、預かり金の基礎知識について知っておくことは大切です。今回は、預かり金はどのような勘定科目なのかについて徹底解説していきます。

預かり金とは?

預かり金とは、その名前の通り、他者から預かっているお金のことです。英語では「デポジット(Deposits received)」と言われています。企業の経理で預かり金の勘定科目として扱われるものには、毎月、従業員の給与から税金などを徴収したお金が該当します。

なぜなら、各従業員の給与から天引きした源泉徴収税は、本来会社側が従業員に支払うべき給与の一部を預かり、会社側が本人に代わって税務署に納税するからです。したがって、会社は、預り金という勘定科目を使って処理しています。

源泉所得税以外にも預り金として扱われているものには、給与から源泉徴収した住民税、給与から源泉徴収した社会保険料、給与から源泉徴収した雇用保険などが挙げられます。これらのお金は従業員のために会社側が預かっているもので、会社が必ず支払うべきお金です。

その他にもひとつの例として、新しく入居する際、貸借人が不動産の大家さんへ支払う敷金などが、預り金に該当します。この預かり金は、賃貸契約を解約するときに、必要な費用を差引いた金額を貸借人へと返金する必要があります。

つまり、預り金には、①近いうちに必ず支払いをする必要のあるお金と、②一定の要件に基づいてお金を預かり、いつかその預かったお金を返金する必要のあるお金、の2種類に大きく分類することができます。企業など給与の支払いを行う際に必ず発生するのは、①の近いうちに必ず支払いをする必要のある預り金です。

源泉所得税と所得税の違い

源泉所得税とは、所得税や法人税とは異なる税金です。特に「源泉所得税」と「所得税」は、名前もよく似ていますが、どのような違いがあるのでしょうか?その違いとは、自分の税金か、それとも他人の税金か、という違いです。つまり、所得税は自分の税金、源泉所得税は他の人の税金のことです。

先述したように企業の会計担当者は、各従業員の毎月の給与や賞与などから源泉徴収しています。従業員から一時的に預かったお金は、企業側が納付義務者となって、後に税務署などに支払いをします。このように源泉徴収することで、税金の徴収をスムーズに行うことが可能となります。そして、徴収した税金は所得税ですが、「源泉所得税」と呼ばれています。ちなみに、源泉所得税は、支払う給与の10.21%を天引きすることが原則となっています。

一方、個人事業主やフリーランスの場合、給与が給付されたり、支払うことはありません。そのため、源泉所得税を天引きすることは不要ですが、原則として個人で所得税を支払う必要があります。なお、ひとりで法人を事業している場合、支払先が個人であるなら源泉所得税を天引きする必要があります。

貸借対照表における預り金とは?

預り金は、あとで必ず支払いや返済の義務があるので、決算書類のひとつである貸借対照表では負債として扱われます。そして、負債の中でも「流動負債」として計上されます。したがって、預り金として扱われるものには、決算日の翌日から1年以内に返済期日が必ず来るものとなっています。なお、返済期日が1年以上になる場合は、固定負債の「長期預り金」や「預かり保証金」という勘定科目で計上されます。

勘定科目・預り金の範囲とは?

預り金の範囲は、次のようなものがあります。

・社会保険料預り金
社会保険料預り金とは、従業員や役員などが負担する社会保険料の預り金のことです。

・税金預り金
税金預り金とは、従業員や役員などの支払った給与や、税理士などに支払った報酬などから源泉徴収した所得税や住民税などの税金のために支払われる預り金のことです。

・預り保証金
預り保証金とは、取引によって生じる営業保証金や入札保証金などのことです。

・役員従業員預り金
役員従業員預り金とは、役員や従業員などの社内預金や身元保証金などで預かったお金のことです。

預り金の仕訳とは?

おそらく多くの企業では、給与の仕訳をする際に、預り金を勘定科目として最も多く使用されることでしょう。では、預り金は、どのように仕訳をすればよいのでしょうか?

ケース1:給与を支払った際、お金を一時的に預かったときの仕訳

お金を一時的に預かったときの例からみてみましょう。一例として、従業員に給料を200,000円支払うと仮定します。その給与から源泉所得税を5,000円、住民税を10,000円、雇用保険料を1,000円源泉徴収した場合、次のように計上します。

借方 貸方
給与手当 200,000円 現金預金184,000円
預り金(源泉所得税)5,000円
預り金(住民税)10,000円
預り金(雇用保険料)1,000円

このように、従業員からお金を預かると、「預り金」という負債が増えることになるので、貸方に「預り金」という勘定科目で計上することになります。

ケース2:従業員から預かったお金を税務署に納税したときの仕訳

続いて、ケース1の従業員の給与から天引きして預かっていた源泉所得税、住民税、雇用保険料などを税務署などに現金で納めたときの仕訳は、次のようになります。

借方 貸方
預り金(源泉所得税)5,000円
預り金(住民税)10,000円
預り金(雇用保険料)1,000円
現金 16,000円

給与から天引きして預かっていた源泉所得税などは、税務署などに支払うことで、預かったお金を支払う義務を果たしたことになります。したがって、預り金という負債が減少したことになるので、借方に預り金と計上します。

ケース3:取引先から事前に取引代金の一部を預かったときの仕訳

預り金は、毎月支払われる給与関連の仕訳以外でも、業種によっては預り金の勘定科目を使用することがあります。では、具体的な例をみていきましょう。例えば、取引先から発生する予定のある取引の代金の一部として、事前に5万円お金を預かった場合は、次のように仕訳ることができます。

借方 貸方
現金預金 50,000円 預り金 50,000円

ケース4:預り金の一部を取引先に納品したときの仕訳

では、ケース3で事前に預かっていた5万円の一部である3万円分の商品と、取引先に納品した場合は、次のように仕訳ることができます。

貸方 貸方
預り金 30,000円 現金預金 30,000円

ケース5:取引先との取引が完了し、預り金を返金するときの仕訳

では、ケース3から取引をしている相手との取引が完了し、預かっていたお金を返金する場合、どのように仕訳をすればよいのでしょうか?

貸方 貸方
預り金 20,000円 現金預金 20,000円

ケース3~5の1例は、給与関連以外で預り金を使用する際の仕訳例です。業種によっては、給与関連以外にも預り金をして計上する場面がありますが、どの場合に預り金として計上すればよいのか判断に悩むときは、一定の条件のもと返金する必要があるかどうか、をもとに判断することができるでしょう。

預り金の性質

会社側の観点からみると、預り金とは別のところへ、いつか支払う必要があるお金です。したがって、未払金と同じような性質をしているため、基本的には「負債」の項目となっています。預り金は、毎月の給与支払いの度に発生する勘定項目です。その後、税務署などへ支払いも行われるので、残高がよく変動する勘定科目とも言えるでしょう。ですから、経理担当者は、預り金の残高が正しく計上されるよう注意してください。

預り金がマイナスになった場合の処理方法とは?

毎年、年末になると行われる年末調整では、毎月従業員の給与から源泉徴収していた源泉所得税の合計と、実際に税務署へ納税すべき確定した所得税の金額の差額を精算します。例えば、給与から天引きして預かった源泉所得税の合計額が12万円だと仮定します。しかし、年末に確定した1年間の給与の合計額から所得税を計算したら、所得税が10万円でした。

この場合、2万円多く徴収したことになりますので、2万円還付金として戻すことになります。実際の年末調整で還付金として従業員に戻る金額は、住宅ローン控除や生命保険料控除などの各種控除なども関わってきます。また、中途入社の場合は、前職の給与額なども左右されるので、年末に1年分の給与合計額が確定しない限り、納めるべき所得税の金額は確定しません。

このように従業員にお金を還付金として戻した場合、預かり金がマイナスになるケースがあります。では、年末調整で従業員へお金を返金することになったときは、どのように仕訳をすればよいのでしょうか?従業員に10,000円を返金すると仮定した場合、次のように仕訳ることができます。

貸方 貸方
給与手当 200,000円 現金預金194,000円
預り金(源泉所得税)5,000円
預り金(住民税)10,000円
預り金(雇用保険料)1,000円
預り金(源泉所得税)10,000円

給与から天引きして預かっていた源泉所得税は、すてに税務署へ納付している状況です。したがって、年末調整で従業員に徴収しすぎた所得税を還付する場合は、預り金をマイナスにするのではなく、税務署が従業員に返金すべきお金を、事業所側が代わりに払い戻しをすることになります。

ですから、上記のように預り金として仕訳をすることもできますが、仕訳を正確に反映する場合は、従業員へ還付する10,000円は「立替金」という勘定科目で計上することが適切です。したがって、次のように仕訳ることができます。

貸方 貸方
給与手当 200,000円 現金預金194,000円
預り金(源泉所得税)5,000円
預り金(住民税)10,000円
預り金(雇用保険料)1,000円
立替金(税務署)10,000円

このように「立替金」として計上することで、預り金がマイナスになることなく、分かりやすい管理となります。なお、この立替金は、立替分を税務署から還付してもらう、もしくは後日支払う源泉所得税から相殺してもらう、のいずれかの方法で解消することができます。

ただし、税務署に還付してもらう場合は、還付請求書に賃金台帳などの書類と一緒に提出しなければいけません。書類の作成には手間と時間がかかるだけでなく、還付金を受け取るまでに時間がかかるというデメリットがあります。従業員へ還付する金額がよほど大きい額でないのであれば、後者の後日支払う源泉所得税から相殺してもらう解消方法が容易と言えるでしょう。

預り金の納付時期はいつ?

毎月の給与から源泉徴収されている預り金の内訳は、所得税や住民税、雇用保険料、社会保険料などの「公租公課」です。これらは納付時期が規定されています。企業の経理担当者は、従業員に代わって、決められた納付期限までに支払いをする必要があります。従業員からの預り金の納付時期は、次のようになっています。

・所得税
所得税は、給与を支払った月の翌月10日までに納める必要があります。例えば、4月25日に支払った給与から天引きした源泉所得税は、翌月の5月10日までが納付期限となります。

・住民税
住民税も所得税同様、給与を支払った月の翌月10日までに納める必要があります。

なお、所得税と住民税の場合、常時給与を支払う従業員の数が10人未満の場合は、納付の「特例制度」を利用することができます。これは、税務署や各自治体に申請するなら、毎月の納付ではなく、年間2回の納付へと切り替えることができる制度のことです。なお、年間2回の特例制度の場合、納付期限は次のようになっています。

・所得税
1月~6月までの給与で源泉徴収したした分は7月10日まで、7月~12月までの給与で源泉徴収した分は翌年1月20日までとなっています。あくまでも従業員の人数が10人未満で、申請をした場合のみに、半年分まとめて納付することが可能となります。

・住民税
6月~11月までの給与で源泉徴収した分は12月10日まで、12月~5月までの給与で源泉徴収した分は6月10日までとなっています。所得税同様、従業員の人数が10人未満で、申請をした場合のみに、半年分まとめて納付することが可能となります。

半期納付の手続きをすれば、毎月、納税するために税務署などへ出かける事務的な手間や時間を軽減することができるので、業務の効率化アップにもつながります。ただし、先述したように、税務署や自治体に前もって申請する必要があります。住民税については、各従業員が住んでいる各自治体へ申請しなければいけません。

・健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料
健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料は、前月分を毎月の月末までに納めることになっています。例えば、9月分の社会保険料は、10月末までに納付するということです。社会保険料は、所得税や住民税のような特別な制度は設けられていません。

・雇用保険料
雇用保険料の納付時期は、毎年7月10日となっています。ただし、納付額が一定額を超えている場合は、3回に分割して年払いすることも可能です。その場合は、7月10日、10月31日、1月31日と納付期限が設けられています。また、自動引き落としでの納付方法も用意されています。この納付方法は、約2ヶ月間、納付時期が先延ばしされています。

すべての税金で共通している点は、納期期限が土日祝日に該当した場合、その翌日まで期日が後ろ倒しされます。つまり、もし4月10日が日曜日の場合は、4月11日までが納期限になります。

納期限に納付が間に合わなかった場合の対処方法とは?

各従業員の給与から天引きして預かっているお金は、事業所側に納付義務があります。従業員の立場からみると、給与から源泉徴収された時点で、納付の義務を果たしていると言っても過言ではありません。つまり、事業所側の経理担当者が、法定で定められている期限までの納付することが求められています。

では、万が一、定められている納付期限までに納付することができなかった場合はどうなるのでしょうか?どの種類の税金だとしても、決められた納期までに納税しなかった場合は、ペナルティが課せられます。

源泉所得税の納付遅れのペナルティ

源泉所得税の納期は特に厳しく、大きなペナルティが待ち受けています。源泉所得税の納期限に間に合わなかった場合は、「不納付加算税」と呼ばれる税金が加算されます。これはたった1日でも納付が遅れるなら加算されるペナルティです。税務署によっては、年1回だけの遅れで1ヶ月以内に納付すれば、税務署の裁量で不問にしてもらえるケースもあるようですが、すべての税務署がしてくれるという保証はありません。

なお、不納付加算税は、納税額の10%が基本的に加算されますが、税務署から通知が来る前に、自主的に源泉所得税を納付すれば5%まで軽減されます。(不納付加算税が5,000円未満の場合は、不納付加算税は対象外となります)

また、不納付加算税に加えて、延滞税・延滞金も発生します。遅れて納めた税金に、法廷申告期限の翌日から税金を納めた日、つまり、延滞した期間に応じて延滞税と延滞金が計算されます。遅れた期間が2ヶ月以内の場合は年2.7%、2ヶ月以上の場合は年9.0%の割合のもと、日割り計算されます。

その他の税金の納付遅れのペナルティ

住民税や社会保険料なども決められた納期までに納めなければ、ペナルティが課せられます。源泉所得税ほど厳しくありませんが、延滞税・延滞金が発生します。なお、源泉所得税と同じように、延滞税・延滞金が日割りで加算されていきます。

口座が差し押さえられることも!

各従業員の毎月の給与から納税のために預かっていたお金を納税ではなく、他の支払いに使ってしまった結果、納付するお金がなくなってしまったというケースもあります。お金がないので納付期限までに納めることができません。そのため、納付期限を過ぎると、税務署などから督促状が郵送されてきます。

しかし、その催促を無視していると、使用している銀行口座などが差し押さえられてしまい、残高を使用することができなくなってしまうことがあります。それでも催促を無視し続けるなら、裁判へと発展することも可能性もあります。ですから、万が一、催促が届くような状況になっているとしても、無視してはいけません。

可能であれば、催促状が届く前に、税務署や年金事務所、各地域の自治体などに連絡されることをおすすめします。

預り金と仮受金の違いとは?

すでにみてきたように、預り金は従業員や役員、取引先などから一時的に預かっているお金のことです。本人に返還、もしくは本人の代わりとして第三者に支払う場合は、「預り金」として計上し、会計処理をします。この預かり金のように、一時的な受け入れ額を計上する勘定科目のひとつに「仮受金」と呼ばれるものがあります。

仮受金は、具体的にどのような性質を持っているのでしょうか?仮受金は預かり金とは違い、入金の理由が不明なものを計上する際に使用する勘定科目です。つまり、預り金は返還や支払いの予定があるものに対し、仮受金は返還の予定がないもの、という点が、双方の違いとなっています。

預り金と立替金の違いとは?

立替金とは、従業員、役員、取引先などが、本来支払うべきお金を、会社側が一時的に立て替えて支払うお金のことです。後日、従業員や役員、取引先などから必ず現金を受け取る権利があります。このように預り金と立替金は性質が異なるため、預り金は貸借対照表では「流動負債」に区分されますが、立替金は貸借対照表の「流動資産」の区分に計上されます。

会計をサポートするツール

企業を運営するにあたり、会計業務は欠かすことができない業務のひとつです。会計担当者の中には、毎日の業務に悪戦苦闘している方もいるかもしれません。特に中小企業や個人事業主、フリーランスなどの場合、簿記に詳しい人が周りにいないと、すべて自分で解決しなければいけません。

そこでおすすめなのが、会計業務をサポートするツールを上手に活用することです。最近はパソコンにインストールする会計ソフトも充実していますし、クラウド型の会計サービスも進化しています。特にクラウド型の会計サービスの場合、会計に関する知識がなくても、だれでも使えることで知られています。このようなツールを活用してみるのはどうでしょうか?

また別の方法は、信頼できる専門家の税理士に相談してみることです。税理士は会計のプロですので、様々な質問や悩みの心強い味方となってくれることでしょう。もちろん、会社の規模や業務スタイルなども関係してくるので、すべてのツールを利用することは難しい会社もあるかもしれません。それでも、自分の会社に最適なツールを利用するなら、業務の効率化につながり、結果として会社の利益にもつながることでしょう。

まとめ

今回は、預り金についてみてきました。預かり金は、一時的に預かるお金なので、簿記では流動負債として考えます。企業の経理担当者の場合、預り金を主に使う場面は、毎月の従業員の給与のときです。給与から天引きした所得税や社会保険料などは、会社が本人の代理として税務署などに納付するため、一時的に預かるお金として考えます。お金がどのように流れるのかを考えるなら、仕訳もしやすくなるでしょう。

また、預り金は、仮受金や立替金などと勘違いされやすい性質をしていますので注意しましょう。そして、従業員から預かったお金は、納期限までに必ず納付することを必ず行うことは基本です。でも、万が一、納期限までに間に合わなかった場合は、税務署などに連絡し、速やかに納付するようにしましょう。


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