連結決算とは?何を連結する?連結決算の基本を分かりやすく解説!
「連結決算」と聞くと難しいイメージを持たれる方も多いことでしょう。連結決算とは、親会社をはじめとし、国内外の子会社や関連会社をすべて含めた企業グループで連結して決算を行うことです。今回は、連結決算の対象となる子会社や連結決算の手続き方法など、連結決算の基本について分かりやすく解説していきます。
目次
連結決算とは?
「連結決算」とは、親会社や子会社が別々に決算するのではなく、親会社をはじめとし、国内外の子会社や関連会社などを含めた企業グループを単一の企業とみなし、財政状態や経営成績を連結して決算を行うことです。
連結決算の対象となる親会社や、国内外の子会社、関連会社などをまとめて「連結グループ」、また連結グループで作成される財務諸表を「連結財務諸表」といいます。
連結決算が導入するまで
連結決算のしくみが導入されたのは、1975年まで遡ります。この年に、「連結財務諸表原則」が公表されました。ただこの当時は、連結決算よりも個別決算の方が重要視されていたため、連結決算は補足程度としかみなされていませんでした。
しかし時代は変わり2000年になると、有価証券報告書による記載順序が、連結決算財務表の方が個別の財務諸表よりも重要視されるようになりました。つまり、個別決算よりも、連結決算の方が有利になったのです。そして現在では、すべての上場企業は、決算を発表する際には、連結決算をすることが義務付けられています。
なお、日本で個別決算が重視されていた頃、国際会計基準もしくは米国会計基準では、すでに連結財務諸表を個別財務諸表よりも重要とみなしていました。つまり、日本は2000年の改定により、ようやく世界と同じ基準に立つことができたのです。
連結決算が必要な理由とは?
会社法や金融商品取引法などでは、企業は株主にとって不利益となる情報を操作することを固く禁じており、基本的な情報開示や投資家などを保護するための法令を定めています。ですから、連結決算をすることで、正確な情報を株主などの投資家たちに開示し、適切な判断が下せる環境を整えることは基本です。
でも、連結決算ではなく、単独決算でも正確な情報を把握できるはずです。なぜ連結決算という形式を導入しているのでしょうか?
理由①正確な情報を開示するため
事業を拡大することで企業の多角化が進むと、子会社や関連会社などを使って効率的、効果的な経営を行うことが企業の成長戦略となります。大手企業の中には、何百社や何千社という子会社を国内や国外に持ち、企業活動を行っているところもあります。そのような状況で、親会社だけの単独決算の情報だけを開示するとしたらどうでしょうか?
株主にとっては、企業間の関係性は不明のままで、企業グループとしての実態を把握することはできません。そのため、情報としての有用性はかなり低く、誤った情報を伝えるリスクがあるため、連結グループを合算した連結決算が求められています。
理由②不正防止のため
連結決算が必要な別の理由は、不正防止のためです。個別決済が重要視されていた頃は、子会社を利用し、不正な会計処理をした粉飾決算がよく見られていました。親会社の負債を子会社に押し付け、情報を開示する親会社の単独決算をよく見せる、などはよく見られていた典型的な例と言われています。しかし、連結決算をするなら、このような不正を防止にもつながります。
親会社・子会社・関連会社の判断基準とは?
一般的に親会社とは、他の企業の財務及び営業、もしくは事業の方針を決定できる企業のことをいいます。それに対して子会社とは、親会社からみる他の企業のことです。他の企業の株式を50%以上保有していると、その企業の支配していると判断され、親会社と子会社の関係になります。
しかし、株式保有率が50%未満だとしても、親会社と子会社の関係が成立することもあります。特に上場企業の場合は、株式の保有率が30%前後だとしても、支配権を持っていると判断される傾向にあります。
連結決算の対象となる子会社・関連会社とは?
連結決算の対象となるグループは、原則、国内外を問わず、すべての子会社や関連会社が対象となっています。しかし、連結グループ全体への影響力の低い、つまりあまり重要性がない子会社や関連会社に関しては、連結決算の対象から外してもよいとみなされています。
では、重要性が低い子会社や関連会社であると判断する基準とは何でしょうか?実は、具体的な数値は設けられていません。重要性は、経営戦略上での位置付けなどの「質的」面と、資産・売上・利益・利益余剰金などの「量的」面の2つの側面を基準として判断します。
つまり、自社の実績に応じて、総合的に判断されるということです。
なお、会計検査を受けている会社の場合は、2つの側面から判定することに加え、監査法人等と協議をし、対象に含めるかどうかを決める必要があります。
連結決算の手順とは?
連結財務諸表は、ただ単にグループ会社すべての財務諸表を合算するだけではありません。連結決算のおおまかな手順についてみていきましょう。
ステップ①親会社が、子会社や関連会社から連結財務諸表の作成に必要な会計情報を収集
まず親会社は、子会社や関連会社などから連結財務諸表を作成するために必要な会計情報を収集します。
【連結範囲判定時に収集する必要な情報】
・連結範囲判定に必要な情報
株式異動明細、融資増減、出向者情報、取引依存度など
・連結財務諸表作成に必要な情報
支配取得日、持分比率、決算通貨、決算月など
・注記情報作成に必要な情報
所在地区分など
【連結パッケージから収集する必要な情報】
・連結財務諸表作成に必要な情報
個別財務諸表、関係会社取引明細書、キャッシュフロー関連、未実現損益計算
・注記情報作成に必要な情報
増減説明書、有価証券時価情報、リース関連データ、担保注記関連データなど
ステップ②それぞれの会社ごとに個別で作成された財務諸表を合算
個別に作成した財務諸表をすべて合算します。在外子会社の財務表に関しては、合算する前に、外貨から円貨へと換算をしておきます。また、決算期ズレの調整が必要な場合は、合算する前に、調整処理をしておきます。
【外貨→円貨へ用いる為替レート】
資産と負債:決算時レート
純資産(親会社による株式取得時における純資産に関する項目):株式取得時レート
純資産(親会社による株式取得後における純資産に関する項目):発生時レート
純資産(貸借対照表が異なる為替レートを用いることによる貸借の不一致):為替換算調整勘定で集計
収益と費用(親会社との取引で生じた収益と費用):親会社が用いる換算レート
収益と費用(親会社との取引で生じた収益と費用以外):期中平均レート
ステップ③企業グループ内の会社間で行われた取引の消去等、連結調整作業
続いて、親会社の投資額と子会社の資本の消去、グループ間の債権や債務、取引高などの消去など、連結調整の作業を行います。
【開始仕訳】
連結決算をするためには、まず開始仕訳が必要です。開始仕訳とは、連結決算をするにあたり、過去に行った連結修正仕訳をを引き継ぐ作業のことです。期首の利益剰余金を前期末の利益剰余金に一致させることを目的とした仕訳です。
開始仕訳には、①前年度以前の子会社の支配獲得時に行った投資と資本の消去、②前年度以前に行った剰余金に影響を及ぼす連結調整仕訳、の2つがあります。
【親会社の投資額と子会社の資本の消去】
それぞれの貸借対照表に計上された、親会社の子会社に対する投資と、それに対応する子会社の株主資本は、企業グループ内部での取引に該当します。したがって、連結決算では、相殺消去しなければいけません。
【債権・債務の消去】
個別会計に関して、各会社の貸借対照表に計上されている企業グループ内部での債権と債務を相殺消去する必要があります。
【取引高の消去】
親会社が子会社や関連会社に商品などを販売する場合、個別損益計算書では、親会社は「売上高」、子会社は「売上原価」と計上しているはずです。これらは内部取引ですので、連結決算をする際には相殺消去する必要があります。
【当期純利益と剰余金処分の処理】
連結決算では、親会社と子会社の損益計算書が合算されます。つまり、親会社と子会社のすべての収益と費用が合算されるということです。そのため、少数株主が存在している場合は、子会社の当期純利益を少数の株主に配分しなければいけません。
なお、少数株主が存在する子会社が、利益や損失を計上した場合は、マイナス分に関しては支配株主である親会社が全額負担し、少数株主には負担させません。また、配当金の処理も必要となります。
子会社の余剰金の配当は、親会社との持合割合に応じる部分は内部取引とみなされますので相殺消去します。そして、少数株主に属する分に関しては、「少数株主損益」もしくは「少数株主持分」として会計処理します。
ステップ④連結財務諸表の作成
親会社と子会社、関連会社の財務諸表をすべて合算し、調整仕訳で加減算をした後は、連結財務諸表の作成に入ります。作成する連結財務諸表とは、「連結貸借対照表」「連結損益計算書」「連結キャッシュフロー計算書」「連結株主資本等変動計算書」です。
まとめ
連結決算の基礎知識についてみてきました。連結決算とは、親会社、子会社及び関連会社が個別に決算するのではなく、「連結グループ」として単一の企業とみなして決算を行うことです。連結決算を行うことで、正確な情報を開示することができたり、粉飾決算などの不正防止などのメリットを得ることができます。
連結決算は、①親会社が子会社や関連会社の会計情報の収集をすることからはじまり、②個々の収集した財務諸表の合算、③グループ間での取引の連結調整作業、④連結財務諸表の作成、と行うことがたくさんあります。連結決算を行うときは、事前にしっかり準備をしてから取り組みましょう。
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