酒税法改正で「第3のビール」は値上げされた?酒税法の概要や改正内容についてわかりやすく解説!
2023年10月の酒税法改正により、ビール系飲料の価格に変動が生じました。特に注目すべきは、手頃な価格で親しまれていた「第3のビール」の増税です。
この酒税法改正は、一般の消費者だけでなく、ビール系飲料を扱う飲食店経営者にも大きな影響を与えることが予想されます。そのため、改正が具体的にどのような変化をもたらし、経営にどのような影響を与えるかについて理解しておくことが重要です。
この記事では、改正の要点だけでなく、飲食店や消費者に及ぼす影響についても詳しく解説します。改正による消費者の行動変化についてもわかりやすく解説しますので、ぜひ経営戦略にお役立てください。
目次
酒税法改正で「第3のビール」は値上げされた?
ビール系飲料にはビール、発泡酒、新ジャンルと呼ばれる第3のビールがありますが、その中でも安価だった第3のビールは、酒税法改正によって増税されました。
「第3のビール」は350ml缶で9.19円増税
改正により「第3のビール」は350mI缶あたり9.19円増税となり、大手ビールメーカーは価格の改定をおこないました。
ビールや発泡酒についても同様の変動があったのか、その推移をみていきましょう。
ビール、発泡酒、第3のビールの税率の推移
酒税法改正による価格の改定は、段階的に実施されることになっており、2020年に1度目がおこなわれました。つまり、今回は2回目の改定です。
ビール、発泡酒、第3のビールのこれまでの税率の推移は、以下のとおりです。
出典:財務省「酒税に関する資料」
図の「新ジャンル」がいわゆる第3のビールと呼ばれるビールです。2020年10月の37.8円から46.99円に税率が上がっていることがわかります。
一方で、発泡酒の税率は据え置きで、ビールの税率は70円から63.35円に引き下げられました。
ビールと第3のビールの税率にはもともと49円の差がありましたが、今回の改正で約16円まで縮まっており、消費者やビール市場に大きな影響を与えることが予想されます。
酒税法改正の概要
2017年におこなわれた酒税法改正は、ビールなどのお酒の価格を段階的に見直し、税負担の公平性を計るために実施されています。ここでは、酒税法の概要や改正の詳細について、わかりやすく説明します。
酒税法とは?
酒税法とは、お酒の製造・販売の免許に関することや、申告・納税・徴収のルールや手続きについて定めた法律です。
ここで対象となる「お酒」とは、アルコールが1%以上の飲料を指します。つまり1%未満のノンアルコールビールは酒税法の影響を受けません。
酒税法改正の背景と目的
酒税法改正の背景には、類似のお酒に対して異なる税率が設定されているため、商品の開発や販売に影響を与えているという問題がありました。
新ジャンルのビールテイストのお酒が登場したことで、それぞれのお酒の税率が複雑化してしまったのです。
そのため、類似のお酒に対する税負担の不公正さを解消することが、この法改正の目的とされています。
3種類のビール区分
ビールは酒税法の中で「発泡性酒類」に該当し、以下のとおり3種類に区分されます。
酒類 | 定義 |
ビール | ・麦芽、ホップ及び水と麦、米、果実、コリアンダーなどの特定の副原料のみを原料として発酵したもの ・麦芽の使用割合が50%以上 |
発泡酒 | ・麦芽の使用割合が50%未満 ・ビールの製造に認められない原料を使用したもの |
第3のビール(新ジャンル) | ・麦芽を使用せず、大豆、エンドウ、とうもろこしを原料として発酵したもの ・発泡酒にスピリッツを加えたもの |
2020年から3段階に分けて実施
酒税法は2017年に改正され、3段階に分けて実施されています。一度に変更をおこなうと、消費者や製造者、飲食業界等への影響が大きくなるため、十分な準備期間が設けられました。
1段階目は2020年、2段階目が今回の2023年の実施となっています。最終の3段階目は2026年10月を予定しています。
2026年にビール系の価格は統一
先述したとおり、酒税法改正は3段階に分けて実施され、最終段階の2026年10月にビール系の税率は統一されます。
出典:国税庁「発泡性酒類の段階的な税率変更に係る品目及び税率適用区分の表示方法の手引き」
酒税法改正の影響
ビールを取り扱う飲食店や一般消費者は、酒税法改正によってどのような影響を受けるのでしょうか。
飲食店への影響
ビールを取り扱う飲食店は、酒税法に規定される酒税の支払いをする必要はありません。酒税の支払いをする義務があるのは製造業者であり、仕入れ業者等は支払い義務がないからです。
影響があると考えられるのが、手持ち品課税の申告と業務用ビールの価格についてです。順番に解説します。
手持品課税(戻税)の申告が必要
飲食店経営者が影響を受けるのは「手持品課税」です。
酒税法改正が改正される2023年10月1日より前に仕入れた酒類は、工場から出荷された時点では旧税率で計算され、製造業者が申告・納付しています。
その後、酒税法が改正された2023年10月1日時点で、旧税率で仕入れた酒類が店舗の在庫にある場合、その在庫の酒類に対し、新しい税率との差額を調整する目的で、手持品課税が課されます。
この納税義務は、在庫を抱えている飲食店にあるのです。
増税された第3のビールに対しては課税され、減税された酒類に対しては戻税がおこなわれます。したがって、この差額を納付するか、あるいは、還付を受けることができます。
ただし、課税されるのは対象となるビールの在庫を1800リットル抱えている飲食店のみ対象となるため、大規模な飲食店以外は該当しないでしょう。
なお、ビールや清酒など、値下げになる酒類の在庫を多く抱えており、戻税の対象になる場合は、在庫が1800リットルない飲食店でも還付を受けることができます。
今回の改正においては申告期限が過ぎていますが、最終段階である2026年実施の際に対応できるよう、覚えておくと役立つでしょう。
出典:国税庁「酒類の手持品課税(戻税)の申告等の手引」
業務用ビールは値下げされない?
ビールが値下げされたことにより、ビール需要が上がることが期待されます。しかし、飲食店で取り扱う業務用の樽や瓶ビールに関しては、値下げされず、据え置きや、反対に値上げになるケースもあったようです。
これは、業務用ビールにかかる酒類容器の回収や運送などのコストが上昇したためで、それに対して減税の影響を考慮しても、総合的なコストが上昇したとされています。
したがって、減税により仕入れコストが下がる期待があったものの、単純な値下げには至らなかったようです。
消費者への影響
消費者が酒税法改正に対してどのような意思決定をし、行動をするのかを理解することは重要です。2026年の最終段階の改正に向けて、準備や戦略を練ることができるでしょう。
ビール需要が上がる
今後、ビールの需要が上がることが予想されます。
第3のビールは、手ごろな価格で家計にやさしいビールテイストの商品として人気を集めてきました。価格に不安を感じてビールを我慢していた消費者も多いでしょう。そのため、酒税法改正により値下げされたビールに需要が集まるのは自然な流れと考えられます。
実際に、改正後は、大手ビールメーカーによるビールの売上げは上昇し、第3のビールは減少しているようです。
チューハイの需要が上がる?
今後は、チューハイの需要も高まることが考えられます。ビールとチューハイとの価格を比べると、チューハイは圧倒的に安価だからです。
酒税法改正はビールだけでなく、チューハイも対象です。下図のように、チューハイの税率は28円であり、値下げされたビール63.35円と比べると、その差が大きいことがわかります。
2026年には35円に値上げされますが、それでも、統合されたビールの54.25円と比べて20円近く安くなります。
より安価なプライベートブランドビールが人気に?
大手コンビニやスーパー等では、プライベートブランドビールを新たに発売している傾向があります。
原材料などを変更し、より安価なビールを提供することで、安さを求めるビールファンの支持を得ているようです。
このように、増税の影響はあらゆる商品に広がっています。
まとめ
この記事では、2023年10月の酒税法改正による飲食店や消費者に及ぼす影響に焦点をあて、重要なポイントを解説しました。
今回の改正で特に注目すべきは「第3のビール」の増税であり、これにより手ごろな価格で親しまれていた新ジャンルのビールが値上がりしました。一方、改正によりビールの値下げが期待されることから、需要が大きく変動する可能性があります。
酒税法改正を正しく理解し、消費者の行動や心理の変化を把握することで、より時代に適した経営戦略を立てることができるでしょう。
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