個人事業主が「法人成り」するために必要な手続きと8つのメリット | 税理士コンシェルジュ

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個人事業主が「法人成り」するために必要な手続きと8つのメリット

2020年5月27日
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個人事業主やフリーランスなどで事業を営んでいる方であれば、一度は「法人成り」、つまり会社設立を検討したことがあるのではないでしょうか?では、個人事業主が法人成り(法人化)する場合には、どのような手続きが必要となるのでしょうか?この記事では、法人成りを検討している方をのために、法人成りの手続き方法やメリットとデメリットについて詳しく解説していきます。

目次

法人成りとは?

法人成りとは、個人事業主やフリーランスなど事業を営んでいる方が、株式会社や合同会社などの法人を設立し、事業を法人へと変更することです。法人成りをすることで節税効果を得ることができたり、社会的な信頼度が高くなるため、資金調達をしやすくなるなどの多くのメリットを得ることができます。

そのため、個人事業主として開業した後、事業が拡大するなどのさまざまな理由から、法人成りを検討する方は少なくありません。では、法人と個人事業主ではどのような違いがあるのでしょうか?

法人と個人事業主の違いとは?

法人と個人事業主には、設立するための手続き、国や自治体に納める税金、社会的信用度などのさまざま違いがあります。税金面の違いを例にとってみましょう。個人事業主が納めるべき主な税金には、所得税、個人住民税、個人事業税(業種によってはかからないものもある)、消費税、固定資産税(償却資産税)などが挙げられます。

一方、法人が納める税金には、法人税、消費税、固定資産税(償却資産税)となっています。また、税率の違いや経費、控除などの違いもあります。トータル的に見ると法人の方が個人事業主よりもコストの負担率が高いため、事業度の本気度が高いとみなされる傾向にあります。

そのため、法人は社会的信用度を得やすく、社会的信用に伴う資金調達や採用、取引先の獲得など、事業を拡大する上では法人の方が有利な立場にあります。この他にも両者にはさまざまな違いがあるので、法人化する前にその違いについてしっかり理解しておくことは大切と言えるでしょう。

法人成りの8つのメリット

法人成りをするとさまざまなメリットを得ることができますが、大きく6つのメリットをみてみましょう。

メリット①役員報酬に「給与所得控除」を適用できる

法人では、役員報酬を支払った場合は、経費として計上することが可能です。これにより、法人の収益から役員報酬分が経費として差し引かれ、残された利益を対象に法人税が課税されるため節税につながります。それに加え、役員報酬自体に最低65万円、最大220万円の給与所得控除が適用されます。

この給与所得控除とは、給与所得者が自身の給与から仕事に必要なものを購入することを想定した、いわば給与所得者の経費のようなものです。このように役員報酬を支払うと、2度経費として計上することができます。一方、個人事業主の場合は、全体の収益から経費を差引いた金額に所得税が課せられていました。法人と個人事業主を比較するなら、法人の方が節税になると言えるでしょう。

メリット②退職金を「損金」として計上できる

個人事業主の場合、退職金を支払うときは経費として計上することはできません。しかし、法人の場合は、適正な額の範囲であれば退職金を損金として計上することが可能です。

メリット③消費税の納付が最大2年間免除される

消費税を納付すべきかどうかは、2年前の売上高を基準とします。したがって、法人成りをした年と翌年は、その2年前は事業がない、つまり売上がない状態なので、消費税は免除されます。ただし、ある一定の条件を満たしていなければいけません。消費税免税のための条件とは、次の3つです。

・新会社設立時の資本金が1,000万円未満であること
・第1期上半期課税売上高1,000万円以下で、人件費を1,000万円以下に抑えること
・個人事業主のときの売上高が5億円を超えていないこと

メリット④欠損金の繰越控除可能期間は最大9年

事業を営むうえで赤字が出た場合、翌年以降に繰越し、翌年以降の事業所得と相殺できますが、個人事業主と法人では、この繰越期限に違いがあります。個人事業主の場合は3年間、しかし、法人の場合は9年間、事業年度によっては10年間まで繰越すことができます。大きな赤字がでた場合は、3年では相殺できないこともあるので、期間は長ければ長いほどメリットと言えるでしょう。

メリット⑤社会的信用度が向上する

一般的に、個人事業主よりも法人の方が信用度が高い傾向にあります。なぜなら、法人はいくつもの手順を踏み、国に認められているからです。また、登記簿謄本をすることで、会社の所在地や資本金、役員などの重要事項をいつでも確認できることも挙げられます。一方、個人事業主の場合は、店舗の所在地などと登記する必要はありません。そのため、法人と比較すると信用度が低くなります。

事実、取引先によっては、法人としか取引をしないという企業も存在しています。また、法人成りをしたことで、個人事業主としては仕事を受けることができなかった企業から、信用度を得ることができ仕事を受注できるようになったというケースもあります。

さらに、金融機関からも信用度を得やすくなるため、個人事業主時代よりも融資が受けやすくなるというメリットも得られます。ですから、今後、事業を拡大することを検討している方や、金融機関から融資を受ける予定がある方などは、法人成りをすることを真剣に検討することができるでしょう。

メリット⑥有限責任になる

個人事業主は、個人なので無限責任を負います。無限責任とは、事業が失敗したとき、それにかかるすべての負債をすべて返済する義務があるということです。一方、法人成りをすると、有限責任になります。有限責任になると、倒産などしたときには、出資した金額の範囲内のみの責任が課せられます。個人事業主と比較すると、法人の方が負債の負担が減るため、もし失敗したとしても再出発しやすいと言えるでしょう。

しかし、ひとり社長として法人成りをし、個人で失敗するリスクは存在しています。ですから、法人成りをした後も個人で事業を続ける場合は、たとえ有限責任になるとしてもリスクがあることを念頭に置いておきましょう。

メリット⑦事業承継ができる

個人事業主の場合は、事業主が何かしらの理由で事業を続けることが難しくなってしまうと廃業となってしまいます。もちろん、事業主の子や弟子などがお店を継ぐことも可能ですが、そのような場合は改めて開業届を提出し、許可を取り直す必要があります。また、屋号が登録されている場合は、法務局で屋号の手続きをしなけれないけません。

つまり、許可などでは、事業主である個人が対象となっているので、誰も受け継ぐことはできず、新たな許可が必要となるのです。それに対して、法人の場合は、法人自体が対象となっているため、事業はもちろん、許可や屋号をそのまま継続して使うことができます。

メリット⑧決算月を任意で決めることができる

個人事業主は、原則、毎年3月15日までに確定申告をすることが定められています。そのため、年始めの忙しいときに確定申告をするための事務作業が必要となります。しかし、法人の場合は、決算月を自由に決めることができます。したがって、忙しくない時期を選び、決算の手続きをすることも可能です。

法人成りの4つのデメリット

デメリット①事務的な負担が多い

法人成りをすると、個人事業主で事業をしていたときよりも、会計や税務関係などの事務作業の手間やコストが多くかかります。法人税申告書など自力で会計処理をすることが難しくなったときは、税理士と契約することになります。そうなると、税理士に支払う報酬が負担となります。

しかし、税理士と契約することで、効果的な節税が行えるためプラスとなることもあります。また、税理士に事務手続きを依頼することで、本来やるべき仕事だけに集中して取り組むことができる、というメリットもあります。

デメリット②赤字でも法人住民税の均等割の支払いが義務付けられている

個人事業主の場合は、赤字のときは年間、数千円程度の個人住民税の均等割しかありません。しかし、法人の場合は、法人住民税の均等割りの支払義務があるので、地方自治体によって支払い金額は異なりますが、年間7万円程度の支払いをする必要があります。

デメリット③社会保険料の加入が義務付けられている

法人は、健康保険や厚生年金保険などの社会保険の加入が義務付けられています。そして、会社は社会保険料の半分を負担する必要があります。したがって、従業員の数が多ければ多くなるほど、保険料の支払いは大きな支出となります。

また、社長ひとりだとしても、個人事業主のときの国民健康保険と国民年金の保険料の合計金額より、社会保険料のほうが支出が大きくなりますが、その分、年金が増えるなどの保障も手厚くなります。さらに社会保険に加えて、従業員を雇うなら労働保険の加入も義務付けられています。

デメリット④交際費の損金算入に制限がある

個人事業主の場合は、事業に関連して支払ったものと認められれば、交際費をすべて必要経費として計上することができます。しかし、法人の場合は、事業に関連した支払いだとしても、損金に算入できる範囲に制限が設けられてます。

法人成りのベストタイミングとは?

ここまでで、個人事業主が法人成りをするメリットとデメリットについてみてきました。では、法人成りをする場合、ベストタイミングはいつなのでしょうか?ここでは4つのタイミングをご紹介します。その中から自社の方向性に合ったものを法人成りのタイミングの選択肢とすることができるでしょう。

タイミング①消費税対策で売上状況を判断基準にする

昨年、消費税が10%に引き上げられたことに伴い、消費者だけでなく事業者にとっても大きな負担となっています。先述したメリットのひとつに、消費税の納付が最大2年間免除されるというメリットがありました。これは原則、2年前の売上が1,000万円を超えているかどうかが判断基準となります。

個人事業で事業を始めた年は、その2年前は事業をしていないので売上は0円です。したがって、開業初年度は、消費税の納税義務はありません。開業2年目も、その2年前はまだ事業をしていないため、消費税の納税義務はありません。では、開業3年目についてはどうでしょうか?2年前には事業を始めています。そのため、開業初年度の売上が1,000万円を超えている場合は、3年目から消費税の納税義務が発生します。

しかし、これは個人事業主として事業を継続している場合です。このタイミングで法人成りをすれば、法人としての売上は0円なので、法人1年目も消費税の義務は発生しません。法人2年目も同じ理由で納税義務は発生しないで、法人3年目から納税義務が発生します。つまり、個人事業主として2年間事業を行い、その後、法人として2年事業を行うなら、合計4年間は消費税の納税義務が発生しないことがあります。

タイミング②社会保険への加入時期を判断基準にする

事業主が社会保険に加入したいタイミングで法人成りをするのもベストタイミングです。個人事業主の場合は、常時雇用する従業員が5人未満であれば、社会保険の加入は任意となっています。社会保険は、会社側と従業員側で折半で負担することになっているので、会社側は従業員が多いほど負担も大きくなります。

そのため、個人事業主の場合は、事業主と従業員が国民健康保険と国民年金を負担するケースが一般的となっています。しかし、国民年金よりも厚生年金の方が、手厚い保障が設けられています。そのため、事業が順調で軌道にのっており、この経営状況であれば自分やすべての従業員の社会保険を負担しながら、資金繰りを継続できると判断したときに、法人成りをすることがタイミングとなるかもしれません。

タイミング③利益状況を判断基準にする

法人成りをするタイミングは、所得が800万円を超えたときがベストタイミングとよく言われています。なぜなら、個人事業主として事業を行う上でかかる所得税額が800万円を超えてしまうと、法人税の方が下回るためお得になるからです。なお、所得税額は「課税所得金額×税率―控除額=所得税額」、法人税は「税引前当期純利益×税率=法人税額」という計算式で求めることができます。

そして、個人事業主と法人の税金支払い額を比較すると、次のようになります。

・課税対象金額が700万円の場合
所得税:98万円
法人税:105万円

・課税対象金額が800万円の場合
所得税:120万4,000円
法人税:120万円

・課税対象金額が900万円の場合
所得税:143万4,000円
法人税:143万2,000円

このように課税対象金額が800万円超えをすると、所得税よりも法人の方がお得になるため、利益の状況から法人成りタイミングをはかることができます。

タイミング④信用度や取引関係を判断基準にする

個人事業主よりも法人の方が、信用度が増す傾向にあります。そのため、インターネットなどを使って、全国の不特定多数の消費者を対象として商品やサービスなどを展開する事業の場合は、消費者からの信用度を得るために法人で事業を始める方がよいと言われています。また、公共事業の仕事へ参入することを検討しているなら、参入のタイミングで法人成りをすることもおすすめです。

例えば、大工としてひとりで個人事業主として事業を始め、少しづつ規模が大きくなり、やがて従業員を抱えるようなケースはよくあります。建設業の許可まで取得するなら、公共事業の請負の仕事が入ってくることも珍しくありません。ただ、法人でないと仕事を受注できないこともあります。このように必要不可欠な状況となり、法人成りをするタイミングがおとずれることもあります。

個人事業主から法人成りまでの基本的な流れ

個人事業主の開業と法人として開業することでは、登録手続きの有無の大きな違いがあります。では、個人事業主が法人成りをするまでには、どのような手順を踏む必要があるのでしょうか?基本的な流れをみてみましょう。

ステップ1:会社設立に必要な基本事項を決定する

まず始めに会社を設立するにあたり、必要な基本事項を決めていきます。それには会社の形態、社名(商号や屋号)、事業目的、事業所の住所、資本金、役員構成などの必要事項が挙げられます。

・会社形態
会社の形態はいくつか存在しており、主に使われているのは「株式会社」と「合同会社」です。合同会社は株式会社よりも設立費用はかかりませんが、知名度が低いというデメリットがあります。会社形態によって、それぞれメリットとデメリットがあるので、それらを理解した上で、会社形態を決めることができるでしょう。

・社名(商号や屋号)
個人事業主のときに使用していた屋号がある場合は、そのまま同じ屋号を継続して利用することもできます。また、法人成りをすることを機会に事業を拡大したいなどの理由から、全くことなる社名を付けることも可能です。

・事業目的
事業目的に関しては、個人事業主のときに行っていた事業の内容や、法人成りをすることで新たに始めたい事業内容などを記載することができます。

・事業所の住所
事業所の住所については、個人事業主のときに使用していた店舗やオフィスがある場合は、その住所を登記することができるでしょう。その際、店舗やオフィスの管理会社に、法人成りをすることで住所を登記した旨を伝えることを忘れないようにしましょう。

また、賃貸の自宅を個人事業主のオフィスとして使用していた場合は、注意が必要です。なぜなら、個人事業主であれば賃貸で借りている自宅でオフィスワークをしても特に問題ではありませんが、そのスペースを会社の本店として住所を登記することは契約違反になる可能性があります。ですから、賃貸借契約書を確認し、必ず管理会社に確認するようにしましょう。

・資本金
資本金の金額は、個人事業主を営んでいたときの最後の確定申告書をもとに決めていきます。年の途中で法人化する場合は、それまでの試算表をもとに決定します。法人成りをするときは、おそらく顧問税理士がいる方が多いことでしょう。資本金額に関しては、顧問税理士に相談して決めることができるでしょう。

・役員構成
個人事業主から法人成りをするときは、個人事業主ひとりで登記するケースがほとんどです。ですから、役員構成については特に検討する必要はないと言えるでしょう。

ステップ2:必要書類や定款などの準備と作成

基本事項が決定した後は、それを定款し、必要書類の作成に入ります。登記に必要な書類は、会社形態や役員構成によって変わってきますので、法務局の公式サイトで必要書類を確認されることをおすすめします。なお、個人事業主が法人成りする場合は、すでに事業を営んでいるため、会社設立のために思うように時間を取り分けることができない方も多くいることでしょう。

そのような場合は、会社設立の専門家とも言える司法書士や行政書士に会社設立を依頼することができるでしょう。ただし、行政書士は法務局で登記申請手続きをすることは法律上認められていないので、会社設立を最後までお願いしたい場合は、司法書士へ依頼されることをおすすめします。また、個人事業主のときの顧問税理士がいる場合は、専門家を紹介してもらうことができるでしょう。

ステップ3:公証人による定款認証の手続き

株式会社を設立する場合は、公証人による定款認証の手続きをする必要があります。定款認証には、紙で作成した定款と、PDFファイルで作成した電子定款の2種類の認証手続き方法があります。どちらの方法にせよ、公証役場まで定款をとりにいかなければいけません。

なお、この2つの方法で大きく違うのは、「印紙代」です。紙の定款の場合は、印紙4万円が必要ですが、電子定款の場合は印紙は不要です。ですから、電子定款の方は印紙4万円分安くなります。

ステップ4:法務局で登記申請をする

定款認証が済み、必要な書類の作成も完了した後は、法務局での登記申請です。法務局で登記申請を受け付けてもらった日付が、会社の設立日になります。書類不備などが見つかった場合は、受付ができないので会社設立日もずれ込んでしまうので注意が必要です。

法人化した後すぐにすべき手続きとは?

個人事業主が法人成りするためには、会社設立の登記以外にもさまざまな手続きをしなければいけません。

会社名義の銀行口座開設の手続き

法人化した後、すぐにすべき手続きのひとつに会社名義の銀行口座の開設手続きが挙げられます。法人成りした後は、個人事業主のときに使用していた銀行口座を会社名義の銀行口座へと切り替える手続きが必要となります。これからは売掛金の入金や回収、経費の支払いなどはすべて会社名義の口座で行うことになります。

そこで注意したいこととして、個人事業主のときの売上の回収をするときは、個人事業主として回収することです。しかし、すでに銀行口座の手続きが済んでしまった場合は、個人口座に振り込んでもらうなどの対応を取引先にしてもたうようにしましょう。

名義変更の手続き

会社名義の銀行口座を開設に加え、個人事業主を営んでいたときに契約したものの名義変更や借入金などの名義変更などを行う必要があります。名義変更が必要な代表的なものには銀行口座に加え、賃貸借契約書の名義変更、電話・電気・ガス・水道・リース契約の名義変更、借入金、お客様や取引先などへのあいさつなどが挙げられます。

特に個人事業主として事業を営んでいたときにお客様が使用していたクレジットカードの売上の入金先を個人事業主の口座に設定している場合は、会社名義の口座が開設され次第、会社名義の口座に入金できるよう変更手続きをする必要があります。もしすぐに変更手続きをしないなら、会社の売上を個人の口座で回収することになるため、会計上の処理が複雑になってしまいます。

また、電話料金や水道光熱費、家賃などをを自動引き落としで支払いをしている場合も、会社名義の口座から引き落とされるよう早めに変更手続きを行いましょう。これらは個人の口座から自動引き落としされても経費計上することは可能です。しかし、会計上では個人が会社の代わりに立替払いをした扱いになるため、会計処理が複雑になってしまうので注意しましょう。

財産の引継ぎ

法人成りするときには、事業にかかわるすべての資産や負債などの財産を、設立した法人に引き継ぐ必要があります。財産の引継ぎには、「売買契約」「現物物資」「賃貸」の3つ方法があります。

・売買契約
売買契約とは、個人事業主と法人との間で、資産などと特定して売買することです。手続きは比較的分かりやすいという利点がありますが、資金移動が発生するので注意が必要です。

・現金出資
現金出資とは、個人事業主から金銭以外の資産を現物で出資し、資本金として増やす方法です。

・賃貸
賃貸とは、個人事業主が所有している資産を法人に賃貸するという方法です。個人事業主と法人の間で賃貸借契約を結ぶ必要があります。

それぞれの方法は、手続きの複雑さや資産の種類によって税法上の取り扱い方法が異なりますので、税理士などの専門家に相談しながら、一番最適な方法で引継ぎをされることをおすすめします。

個人事業の廃業手続き

法人を設立し、資金の移行が済んだ後は、個人事業の廃業手続きに入ります。管轄地区の税務署へ、廃業手続きに必要な書類を提出します。提出すべき必要書類とは、次の書類です。

・個人事業の開業届出・廃業等届出書
・青色申告の取りやめ届出書(青色申告で確定申告をしていた場合のみ)
・事業廃止届出書(消費税を支払っていた場合のみ)
・給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書(従業員を雇用して給与を支払っていた場合のみ)

それと同時に、都道府県事務所へ「事業廃止等申告書」を提出する必要があります。

注意したいこととして、法人設立届出書の提出期限は設立から2ヵ月以内となっていますが、税務署へ提出する個人事業の廃業届出書の提出期限は廃業から1ヵ月以内となっています。個人事業の廃業届出書の提出期限の方が早くなっていますので注意してください。

また、個人事業主として青色申告の承認を受けていた場合は、税務署へ所得税の青色申告の取りやめ届出書」も提出する必要があります。そして、新たな会社で青色申告をしたい場合は、新しい会社として「青色申告の承認申請書」を提出する必要があります。

上記の必要書類に加え、「予定納税の減額申請書」を提出されることをおすすめします。個人事業主を営んでいたときの納税額によっては、法人成りをした後に所得税の予定納税の通知が届くことがあります。しかし、予定納税の減額申請書をあらかじめ提出しておくなら、通知が届くことを防ぐことができます。特に個人事業主を廃業した場合など翌年の所得税の確定申告が不必要場合は、この届出書を提出するなら、予定納税の納付が不要となります。

最後の確定申告と廃業後の事業税の支払いを忘れないこと

法人成りをするときは、個人事業を廃止するためにさまざま書類を提出しなければいけません。それに加えて、個人事業主として最後の確定申告をすることを忘れないようにしましょう。また、この個人事業主としての最後の確定申告では、法人への資金移行に伴う譲渡所得などを計上する必要があります。

さらに、廃業後1ヵ月以内に、事業性の申告をする必要もあります。この事業税は、確定申告が済んだ8月頃に支払いの通知が届き、支払いをすることになります。つまり、廃業後の支払いになるため、事業税を経費として計上することができないということです。しかし、廃業した年の所得税の確定申告は、特例として、事業税の見込み額を経費として計上することが可能です。該当する場合は、税務署や専門家である税理士に相談されることをおすすめします。

まとめ

個人事業主から法人成りをすると、さまざまメリットを得ることができます。法人化で得ることができるメリットと比較するなら、事務的負担が大きいことや社会保険への加入が義務となることはそれほど大きなデメリットとは言えないでしょう。

もちろん、個人で個人事業主から法人成りの手続きをすることも可能ですが、手続きの複雑さや節税面を考慮すると、税理士や司法書士、行政書士などの専門家に会社設立手続きを依頼するメリットもあります。法人成りを検討している方は、法人化することへのメリットやデメリットだけでなく、費用や手間なども同時に考慮されることをおすすめします。

分からないことや心配な点がある場合は、まずは専門家へ相談し、必要であれば依頼することを前向きに検討することができるでしょう。


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