【個人事業主必見】個人事業主が経費にできるもの・できないもの
個人事業主は確定申告をするために、自分で経費を判断しなければいけません。しかし、経費の区別が付きにくく、その判断に迷ってしまうという方は少なくありません。確かに経費の取扱いは複雑ですが、健全な事業経営と節税対策のためにも、経費についての理解を深めておくことは大切です。今回は、個人事業主が経費にできるもの・できないものについて詳しく解説していきます。
目次
個人事業主の経費とは?
経費とは、個人事業主が事業を行う上で発生したコスト、つまり費用のことです。材料や商品の仕入れをはじめとし、事務所の家賃や水道光熱費も経費として計上することができます。また、仕事上で使うボールペンやコピー機のインクなどは消耗品費、取引先との打ち合わせに向かうため使った電車のやバスなどは交通費として経費に計上することができます。
このように経費とは、事業にかかるすべての費用なので、所得税を計算する際には、事業の収入から差引けます。ですから、経費として計上できるものを見落とさないことは、節税につながります。
プライベートと事業にかかった費用を分けて計上できる「家事按分」
自宅を仕事場として使用している場合、どうしても生活費と事業を行う上で発生する費用が混在してしまいます。例えば、家賃や光熱費はプライベートと仕事で使われています。また、自動車や電話をプライベートと仕事の両方で使っていることも当てはまります。しかし、これらは、売上のために必要な費用と考えることができるため、経費として計上することができます。
このように全体における経費のうち、プライベートと事業にかかった費用を分けて計上することを「家事按分(かじあんぶん)」と言います。家事按分するためには、按分比率が必要ですが、法的ルールはありません。そのため、個人事業主自身が基準を決めることができます。
ただし、税務署からその費用全体のうち何%が売上になるか、などの説明を求められることもありますので、しっかり答えられる明確な根拠を提示できるようにしておくことは大切です。では、具体的にどのような費用を家事按分できるか、5種類の項目をみてみましょう。
①家賃
住居と個人事業主の事務所など仕事場と一体化している場合、家賃の一部を経費として計上することができます。この場合、仕事で使用している事業使用割合と、プライベートで使用する割合を、床面積を用いて経費分としての家賃を算出します。そのため、仕事場とプライベートのスペースがしっかり分かれていないと按分しにくく、税務署に申告する際にも説明しにくくなります。
ですから、自宅で仕事をする際には仕事場とプライベートのスペースを分けることができるでしょう。このように賃貸の場合は、床面積から経費を計上することができますが、持ち家の場合は算出方法が異なります。持ち家の一部を仕事場としている場合は、固定資産税や減価償却費、住宅ローンの金利、火災保険料など住宅を保有することで発生する金額を合計し、事業使用割合をかけたものを経費として計上することができます。
ただし、住宅ローン元金の返済分を経費として計上することができません。また、住宅ローン控除を受けている場合、事業使用割合分は控除を受けることができませんので注意してください。なお、事業使用割合が50%以上占めている場合は、住宅ローン控除は対象外となります。ケースによっては、経費として計上するよりも住宅ローン控除を受けた方が得することもありますので、よく考えてから判断されることをおすすめします。
②ガスや水道費
事業に直接影響を与え、明確な説明をすることができるのであれば、ガスや水道費も経費として計上することが可能です。例えば、自宅を使って料理教室の講師などをしている場合は、ガスや水道代が事業上必要である、という明確な理由がはっきりしています。一方、Webライターなどパソコンを使う作業の多い仕事をしている場合は、ガスや水道代などが事業に欠かせないと説明することは難しいでしょう。
③電気料金
個人事業主で、自宅でパソコンを使用して仕事をしている場合、これにかかる電気料金を家事按分をすれば経費になります。家事按分は主に使用時間(作業時間)や作業日数など仕事をした時間やコンセントの数など目安とし、経費を算出します。家族と同居している場合は、予め仕事で使用するコンセントを決めておくなら、その割合で計算すればよいので計算が楽になるでしょう。どのような方法にせよ、事業で使用した理由をしっかり説明できる方法で計算するようにしましょう。
④通信費
個人事業主が使用しているインターネット接続料金、プロバイダーの契約料、スマートフォンの料金なども通信費として経費に計上できます。電話などはプライベートと仕事で別々に分けておくことが理想的ですが、通信費も電気料金同様、使用時間で家事按分することができます。
具体的には携帯電話であれば、通信履歴からプライベートと仕事の通話を割り出したり、インターネットであればプライベートと仕事での使用時間を比較して割合を出すなどして家事按分できるでしょう。また、切手代や郵送代などの郵便料金も通信費として経費に計上することができます。
⑤自動車関連費用
個人事業主が使用する自動車に関しても、プライベート用と業務用の2台を所有するのが理想的ですが、現実的には難しいものです。しかし、自家用車を仕事で使用しているのであれば、家事按分することができます。車を家事按分する場合は、自動車本体の購入代金、駐車場費用、ガソリン代、自動車税、車検代などを事業割合にかけて家事按分し、経費として計上することができます。
例えば、プライベートでの走行距離と業務での走行距離を計算して、ガソリン代の家事按分の割合を決定することができるでしょう。なお、自動車本体の購入代金に関しては、資産に計上して、減価償却として家事按分することが一般的となっています。
個人事業主が経費として計上できるもの
個人事業主の場合、事業に関わるもの、つまり、事業につながる出費であれば、基本的に経費として計上することができます。たとえ少額だとしても経費なり節税につながるので、しっかり経費として管理することは大切です。どのような出費が経費として認められているかは、確定申告書の「勘定科目」を参考にすることができるでしょう。なお、確定申告署の勘定科目には、次のような経費が記載されています。
・給料賃金
従業員に支払った給料や賞与
・外注工賃
外部の業者に仕事を発注しかかった費用
・減価償却費
パソコンやプリンター、自動車など高額な固定資産を取得し、それを一定期間にわたって計上する費用
・貸倒金
売掛金や未収入金、貸付金など取引先の経営悪化や倒産により回収不能となった金額(損失)
・地代家賃
事務所や店舗、駐車場代などの賃貸料
・利子割引料
借入れした運転資金や預金の金利手数料、手形の割引料など
・租税公課(そぜいこうか)
個人事業税や固定資産税、自動車税などの税金
・荷造運賃
宅急便や郵便物などの梱包材や送料など
・水道光熱費
電気料金、ガス料金、水道料金など
・旅費交通費
公共交通料金、タクシー料金、駐車場料金、宿泊料金など
・通信費
電話代、切手代、レターパック代、インターネット使用料、サーバー代など
・広告宣伝費
名刺、WEBや雑誌などの広告掲載料、チラシの印刷費用など
・接待交際費
取引先などの顧客との飲食、贈答品、お祝い金など
・損害保険料
従業員の生命保険・損害保険等の保険料支払い、火災保険、自動車保険など
・修繕費
建物や自動車などの事業の資産に対しての修繕費用
・消耗品費
文房具や生活用品、オフィス機器などの10万円以下の消耗品
・福利厚生費
従業員の通勤手当、慶弔見舞金、忘年会、慰安旅行など
・雑費
クリーニング代やゴミ処理費用など、上記のどの項目にも該当しない少額の費用
・専従者控除
青色事業専従者(家族など)に支払う給与
ここまでで経費として確定申告に挙げられている勘定科目についてみてきました。このように事業に関連した費用は、すべて経費として計上することができます。しかし、事業に関連していても経費として計上できるかグレーゾーンの費用もあります。
では、経費として計上できるどんな意外な費用が該当するのでしょうか?例えば、取引先と打ち合わせでカフェを利用する場合、飲食代を交際費として計上できることは多くの方がご存知のことでしょう。では、カフェやファミリレスなどを作業場として利用した場合は、飲食代を雑費として計上することをご存知でしたか?
また、個人事業主の方の中には、商売繁盛を願い、毎年神社で祈祷している方もおられることでしょう。実は、神社へ支払う祈祷料も経費として計上することが可能です。もちろん、個人的なお参りでかかった費用は経費として計上することはできません。
個人事業主が経費として計上できないもの
個人事業主が経費として計上できないものとは、事業に関係のないコストです。具体的な例として次のようなものを挙げることができます。
事業主のための私的な出費
事業にまったく関係のない個人事業主のためにかかった費用は、経費として計上することはできません。それには次のようなものが挙げられます。
・事業主自身の給料(従業員分は可能)
・事業主自身の健康診断費用(従業員分は可能)税金(所得税・住民税・相続税・贈与税・加算税・延滞税など
・事業主自身の国民年金と国民健康保険の保険証(経費として計上することはできませんが、「所得控除」の対象にはなります)
・事業主自身の生命保険料や損害保険料(経費として計上することはできませんが、「生命保険・地震保険料控除」の対象にはなります)
・事業主自身が個人的に参加したスポーツクラブの会費やゴルフコンペの参加費
・事業主自身が出張したときの実費以外の出張手当
事業と関係のない支払い
個人事業主は、事業とは関係のない支払いについては経費として計上することはできません。事業とは無関係の飲食代・贈答品(お中元やお歳暮など)・慶弔見舞金などが挙げられます。それとは反対に、事業と関係のある支払いであれば、飲食代だとしても経費として計上することが可能です。
生計を同一している家族や親族の出費
個人事業主の場合は原則、生計を一にする配偶者、両親、子供など家族や親族に対しての給料や報酬、家賃などの支払いは経費として認められていません。なぜなら、生計を同一するということは、同じ家計で生活しているという意味ですから、事業主自身の支払いとしてみなされるからです。しかし、青色事業専従者給与の届出書を提出した家族や親族で、一定の条件を満たしている場合は、給与を経費として計上することができます。
金融機関などからの借入金や住宅ローンの元金
個人事業主は、借入金の元金や住宅ローンの元金の支払いをしている場合、それらを経費として計上することはできません。ただし、借入金の支払利息や、業務として使用している部分に相当する住宅ローンの支払利息の部分は経費になります。
取得金額が10万円以上の固定資産
建物や自動車、機械など取得金額が10万円以上の事業用資産は、一度「固定資産」として計上してから、法定耐用年数に則って「減価償却費」として計上しなければいけません。したがって、すぐに経費として計上することができません。
交通違反などの罰金
業務中に起こした交通違反などの罰金や反則金などの支払いは、経費として計上することはできません。しかし、業務中に起こした駐車違反にかかるレッカー代や駐車料金などは経費として計上することが可能です。
まとめ
事業を行う上でかかった費用は、すべて経費として計上することができます。経費として計上するなら、節税へとつながります。特に自宅で仕事をしている個人事業主であれば、家事按分を活用することで経費の範囲を広げることで節税対策が行えます。もちろん、事業に関連した費用で常識の範囲内でも費用のみを経費として計上する必要があります。
もし経費にできるかどうか判断に迷ってしまった場合は、税務調査が入ったときに経費として明確に説明できかどうかを考えてみましょう。個人事業主にとって、経費の取扱いは容易なものではありませんが、正しく理解し、適切な処理をすることは節税対策だけでなく、健全な運営にもつながります。是非、経費にできるものと、できないものについてしっかり理解をしておきましょう。
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