【所得税控除まとめ】14種類の所得税控除と19種類の税額控除をすべて解説!
所得税控除は、正規雇用の会社員だけでなく、アルバイトやパート、個人事業主、フリーランスなど働いている方すべてを対象としている制度です。所得税控除を正しく活用するなら、節税につながります。そのためには、控除項目の知識を身に着けることが欠かせません。今回は、所得税の控除についてすべて解説していきます。
目次
- 所得税の概要
- 所得税の控除の概要
- 14種類の所得控除
- 19種類の税額控除
- 配当控除
- 外国税額控除
- 政府等寄付金特別控除
- 認定NPO法人等寄附金特別控除
- 公益社団法人等寄附金特別控除
- (特定増改築等)住宅借入金等特別控除
- 住宅耐震改修特別控除
- 住宅特定改修特別税額控除
- 認定住宅新築等特別税額控除
- 試験研究を行った場合の所得税額の特別控除
- 高度省エネルギー増進設備等を取得した場合の所得税額の特別控除
- 中小事業者が機械等を取得した場合の所得税額の特別控除
- 特定の地域において雇用者の数が増加した場合の所得税額の特別控除
- 特定中小事業者が経営改善設備を取得した場合の所得税額の特別控除
- 雇用者給与等支給額が増加した場合の所得税額の特別控除
- 地方活力向上地域等において特定建物を取得した場合の所得税の特別控除
- 地域経済牽(けん)引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の所得税の特別控除
- 特定中小事業者が特定経営力向上設備等を取得した場合の所得税の特別控除
- 革新的情報産業活用設備を取得した場合の所得税額の特別控除
- その他の控除
- まとめ
所得税の概要
所得税とは、個人の1年間の所得に対して課せられる税金のことで、国税のひとつです。所得税は、1年間のすべての所得から所得控除を差引いた金額に、税率をかけて税額を算出します。つまり、所得控除を差引いた所得額が少なければ少ないほど、所得税の負担も軽減されます。
所得税の控除の概要
そもそも「控除」とは、お金を差引くことを意味しています。所得税などの税金類は、個々の事情に応じて負担できる能力が異なります。税法上では、国民一人ひとりから公平に課税するため、「所得税控除」という制度を設けています。この制度を導入することで、個々の収入からやむを得ない支出、つまり控除して税額を算出することが可能となります。
一般的に税務署などは、税金が足りない場合は必ず請求してきます。しかし、余分に徴収した税金については、その旨を教えてくれるどころか、自分で申告しなければ、徴収されたままです。このように余分に税金を納めることを防ぐためにも、どのような控除項目の種類があるかをしっかり理解しておくことはとても大切です。
所得税控除は、正社員だけでなく、アルバイトやパート、個人事業主、フリーランスなど働いている方すべてが利用できる制度で、各納税者の個人事情を加味することを目的としています。控除を活用するなら、節税へとつながります。では、所得税控除にはどのような種類があるのでしょうか?ひとつづつみていきましょう。
14種類の所得控除
所得税控除には、全部で14種類あります。所得税額はこれらの控除額を差引いた金額を基礎として税額が算出されます。ですから、各納税者は、節税のために、どの控除項目が活用できるかを判断しましょう。では、14種類の所得税控除を確認していきましょう。
雑損控除
対象者:震災や風水害等の自然災害、火災などの人為的被害、害虫などによる災害で被害を被った納税者本人や生計を同一にしている総所得金額が38万円以下の親族
控除額:まず「損害金額+災害等に関連したやむを得ない支出の金額-保険金などにより補填される金額=差引損失額」という算式で差引損失額を求めます。
その後、次の2つの計算式を当てはめて計算し、金額の大きい額が雑損控除額として適用されます。
・「差引損失額-総所得金額等×10%」
・「差引損失額のうち災害関連支出の金額-5万円」
なお、詐欺や恐喝による被害は、対象外になります。
医療費控除
対象者:納税者本人、もしくは生計を同一している親族の1月1日から12月31日までに支払った医療費の合計額が10万円を超えた人
控除額:「実際に支払った医療費の合計金額-保険金などで補てんされる金額-10万円」という計算式で、医療費控除額を算出します。なお、その年の総所得金額が200万円未満の人は、その総所得金額等の5%の金額が医療費控除額となります。
社会保険料控除
対象者:納税者本人、もしくは生計を同一している配偶者や親族などに負担すべき社会保険料を支払った人
控除額:原則全額控除
なお、社会保険控除の対象となる主な社会保険料には、健康保険料、国民年金、厚生年金保険料、船員保険料、国民健康保険料、国民健康保険税、介護保険料、労働保険料などが挙げられます。
小規模企業共済等掛金控除
対象者:小規模共済等掛金を支払った人
控除額:原則、その年に支払った全額が控除
なお、控除できる掛金には、次の3種類が該当します。
1、小規模企業共済法に基づいた、独立行政法人中小企業基盤整備機構と契約した共済契約の掛金
2、確定拠出年金法に基づく企業型年金加入者掛金、もしくは個人型年金加入者掛金
3、地方公共団体が実施している、心身障害者扶養共済制度の掛金
生命保険料控除
対象者:生命保険料を支払った人
控除額:生命保険、介護医療保険、個人年金保険は、各種最大4万円までが生命保険料控除が適用されます。控除額は最大12万円までです。
地震保険料控除
対象者:地震保険料を支払った人
控除額:最大5万円までが地震保険料控除として適用されます。
寄付金控除
対象者:国や地方公共団体などに寄付金やふるさと納税などの寄付をした人
控除額:寄付金控除額は、次のような計算式で算出します。
1、その年に支出した特定寄付金の合計金額
2、その年の総所得金額等の40%に相当する金額
その後、「上記の1・2のうち金額が低いもの-2,000円=寄付金控除額」という算式に当てはめて、控除額を算出します。
障害者控除
対象者:納税者本人や扶養親族などが所得税法で規定されている障害者に該当している人
控除額:障害者27万円、特別障害者40万円、同居特別障害者75万円
寡婦(寡夫)控除
対象者:配偶者と離婚や死別をした女性、もしくは男性で、その後婚姻をしておらず、配偶者の生死が明らかでない人
控除額:一般の寡婦27万円、特定の寡婦35万円、寡夫27万円
配偶者控除
対象者:所得税法で定められている配偶者(給与収入が103万円以下)がいる人
控除額:控除を受ける納税者本人の合計所得金額と控除対象の配偶者の年齢に応じて控除額が設定されている
なお、配偶者控除額は次のように分類されています。
・納税者本人の合計所得金額が900万円以下の場合
一般の控除対象配偶者:38万円
70歳以上の控除対象配偶者:48万円
・納税者本人の合計所得金額が900万円以上~950万円未満の場合
一般の控除対象配偶者:26万円
70歳以上の控除対象配偶者:32万円
・納税者本人の合計所得金額が950万円以上~1,000万円未満の場合
一般の控除対象配偶者:13万円
70歳以上の控除対象配偶者:16万円
配偶者特別控除
対象者:所得税法で定められている配偶者控除を受けることができなかった人(つまり、配偶者の給与収入額が103万円を超えた人)
控除額:控除を受ける納税者本人の合計所得金額と控除対象の配偶者の年齢に応じて控除額が設定されている、最大38万円
具体的には、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下で、配偶者の合計所得金額が38万円超え~123万円以下に適用される控除です。
扶養控除
対象者:納税者本人に所得税法で定められている扶養親族がいる人
控除額:控除額は扶養親族の年齢、同居の有無などに応じて異なる
一般の控除対象扶養親族は38万円、特定扶養親族は63万円、老人扶養親族の場合は同居老親以外の人は48万円、同居老親等は58万円が扶養控除額となっています。なお、特定扶養親族とは、控除対象親族の年齢が19歳以上~23歳未満の人、老人扶養親族とは年齢が70歳以上の人が該当します。
基礎控除
対象者:すべての人
控除額:38万円(令和2年度以降は48万円)
勤労学生控除
対象者:納税者本人が所得税法の勤労学生に該当している人
控除額:一律27万円
19種類の税額控除
「税額控除」とは、課税所得金額に税率をかけた後に差引く控除のことです。所得税額(総所得金額-所得控除-経費=総所得金額)の金額に応じた税率をかけて算出しました。税額控除は、この算出した所得税額から一定の金額を直接控除して計算します。税額控除は、全部で19種類存在しています。では、ひとつづつ確認していきましょう。
配当控除
利益や余剰金などの配当所得がある場合に適用される控除
外国税額控除
外国で発生した所得やその所得に対して外国で所得税が徴収された場合に適用される控除、外国税額控除を受けるためには、外国税額控除に関する明細書(国名や相手国での課税標準などの内訳などが記載)の提出が必要
政府等寄付金特別控除
政府や政治資金団体などに、一定の寄付金を支払ったときに適用される控除
認定NPO法人等寄附金特別控除
認定NPO法人団体に一定の寄付金を支払ったときに適用される控除、ただし、所得控除の適用を受けている場合は対象外
公益社団法人等寄附金特別控除
公益団体法人、もしくは学校法人等に一定の寄付金を支払ったときに適用される控除、ただし、所得控除の適用を受けている場合は対象外
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除
金融機関などの住宅ローンなどを利用して新築の住宅を取得したり、リフォーム工事などをしたときに適用される控除
住宅耐震改修特別控除
住宅耐震改修工事をしたときに適用される控除
ただし、1981年5月31日以前に建築された居住用の家屋であること、平成18年4月1日から平成33年(2021年)12月31日までの間に耐震改修工事をした家屋であることが対象条件
住宅特定改修特別税額控除
バリアフリー改修工事、省エネ改修工事、多世帯同居改修工事、耐久性向上改修工事などの一定の要件に該当する改修工事をしたときに適用される控除
認定住宅新築等特別税額控除
認定長期有料住宅に該当する家屋の住宅を取得したときに適用される控除
試験研究を行った場合の所得税額の特別控除
青色申告者が、試験研究を行ったときに適用される控除
高度省エネルギー増進設備等を取得した場合の所得税額の特別控除
青色申告者が、新たに高度省エネルギー増進設備等を取得し活用しているときに適用される控除
中小事業者が機械等を取得した場合の所得税額の特別控除
青色申告者である中小事業者が、新たに特定の機械などを取得し活用しているときに適用される控除
特定の地域において雇用者の数が増加した場合の所得税額の特別控除
前年度と本年度に離職者が出なかった青色申告者で、基準雇用者数と基準雇用者数割合が特定の条件を満たしているときに適用される控除
特定中小事業者が経営改善設備を取得した場合の所得税額の特別控除
一定の青色申告をしている中小企業者が、経営改善設備などを取得し活用しているときに適用される控除
雇用者給与等支給額が増加した場合の所得税額の特別控除
給与等を支給している青色申告者で、その給与などの支給額が一定以上増加したときに適用される控除
地方活力向上地域等において特定建物を取得した場合の所得税の特別控除
青色申告者が、都道府県知事から「地方活力向上地域特定業務施設設備計画」についての承認を受け、2年以内に建物などを建築して事業で活用したときに適用される控除
地域経済牽(けん)引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の所得税の特別控除
一定の条件を満たしている青色申告者が、特定地域経済牽引事業施設などを新設、もしくは増設したときに適用される控除
特定中小事業者が特定経営力向上設備等を取得した場合の所得税の特別控除
青色申告をしている一定の中小事業者が、特定経営力向上設備などを取得して事業で活用したときに適用される控除
革新的情報産業活用設備を取得した場合の所得税額の特別控除
青色申告をしている事業者が一定の条件を満たしており、革新的情報産業活用設備を取得して事業で活用したときに適用される控除
その他の控除
青色申告特別控除
確定申告には、「青色申告」と「白色申告」の2種類から選択することができます。青色申告をするなら、所得控除に加えて「青色申告特別控除」を受けることができます。青色申告特別控除を受けるためには、青色申告の承認を受け、複式簿記による確定申告を行うことが条件となっています。なお、控除額は最大65万円となっています。
「青色申告はお得だけど、複式簿記は難しそう・・」というイメージを持たれている方は少なくありませんが、青色申告特別控除以外にも、様々なメリットを得ることができるので、検討してみる価値はあると言えるでしょう。
給与所得控除
給与所得控除は、給与所得がある方であれば受けることができる控除です。給与所得の金額に応じて控除額は異なってきます。なお、控除額は最低65万円となっています。
まとめ
所得税に適用される控除には、数多くの種類が存在しています。これらの所得税控除は、会社員、個人事業主、フリーランス、アルバイト、パートなど働いているすべての人に直接関係のある制度です。この所得性控除を乗じに活用することは、節税へとつながります。
それに加え、確定申告を青色申告で行うなら青色申告特別控除が適用され、大きな節税効果を得ることができます。ただし、青色申告は複式簿記で記帳することが義務付けられています。これらの点で不安や疑問がある方は、まず専門家である税理士に相談することができるでしょう。
税理士コンシェルジュは、2008年サービス開始より株式会社タックスコムが運営する税理士専門の紹介サイトです。会計の実務経験を活かし、これまで1000名以上の税理士と面談し、1万件以上の相談実績がある税理士選びの専門家です。
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