決算書の「マイナス三角△」の意味とは?具体的な使い方など日本独特の会計事情
おそらく経理担当者を含め多くの方が、財務諸表や決算書に記載されている「マイナス三角」、つまり「△」マークを見たことがあるのではないでしょうか?経理を始めたばかりの方であれば、「△にはどんな意味があるのだろう?」と不思議に思われた方もいるかもしれません。
実はこの「△」マーク、日本独特の会計ルールのひとつで、欧米企業、つまり海外では全く通用しません。この記事では、「マイナス三角△」の意味や使われ方など、マイナス三角△について詳しく解説していきます。
目次
「マイナス三角」が記載されている決算書とは?
マイナス三角△が記載されている決算書とは何でしょうか?経理を始めたばかりの方であれば、伝票の起票や仕訳処理などが主な業務となるので、決算書を見たり作成する機会は少ないことでしょう。
決算書の正式名称は、「財務諸表」といい、会社の財務状態が記載されている計算書のことです。税法では「決算書」、証券取引法では「財務諸表」、会社法では「計算書類」と呼ばれています。つまり、決算書も財務諸表も同一のものを指して使われています。
作成した決算書は、株主や債権者、税務署、金融機関などの利害社関係者が、企業の経営状況を判断するために使われます。税法では、決算書を利害関係へ開示することが義務付けられているため、すべての企業には決算書の作成が義務付けられています。
決算書はいくつかの種類の書類で構成されていますが、その中でも「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」は「財務三表」と呼ばれる重要な書類として扱われています。
【貸借対照表(B/S:Balance Sheet)】
決算書のひとつである貸借対照表は、企業が事業をするうえで、どのくらい資本があり、どのくらいの資金を何に使用したかを把握できる計算書です。バランスシート(Balance Sheet)という名前の通り、調達したお金を計算書の右側の「貸方」、使ったお金左側の「借方」に記載することで、企業の財務状況や経営状況にバランスがとれているかどうかを判断します。
【損益計算書(Profit and Loss statement)】
損益計算書は、企業の定めた1年間の利益を把握できる計算書です。決算日などのある時点における「収益」から、その収益を得るために使った「費用」を差し引き、どのくらいの純粋な儲けを得ることができたかを把握することができます。5つの利益が具体的にまとめられています。
【キャッシュフロー計算書(C/F)】
キャッシュフロー計算書とは、会計期間中の企業のお金の収入と支出、つまりお金の流れを把握できる計算書です。期首と期末の現金を比較することで、どのようにお金が動いたかを知ることができます。
決算書など経理業務における「△」の意味とは?
決算書など経理や会計業務における「△」には、「マイナス」や「赤字」であることを意味しています。
【決算書の場合】
決算書で「△」という表記が記載されている場合は、「マイナス」を意味します。つまり、「赤字」であるということです。「△」という表記は、記号が上を向いているためプラスを連想させますが、プラスではなく、マイナスを意味しているので覚えておきましょう。
なお、企業によっては白色の「△」ではなく、黒色の「▲」で表記することもありますが、どちらもマイナス三角を意味しています。例えば、マイナス10,000円の場合は、「△10,000」と記載します。
【経理・会計業務の場合】
経理や会計業務の際にも、決算書のように「△」「▲」表記を使うことがあります。会計ソフトやExcelなどでも「△」「▲」を選択することが可能です。例えばExcelの場合は、「セルの書式設定」の「数値」から、「△」「▲」表示形式を選択し、設定することが可能です。
【株価の場合】
株価の場合は、決算書や経理・会計業務で使われる「△」の意味とは異なります。株価で「△」が使われる際には、「プラス」を意味しています。
このように「△」「▲」などの三角表記は、決算書を含めた経理・会計上では「マイナス」を意味します。ただし、株価では「プラス」の意味で使われていますので間違いないようにしましょう。また、「△」「▲」表記は、新聞やウェブサイトなどでも使われています。
ちなみに新聞の場合は、白色の上向きをした三角がプラス、黒色の下向きをした三角がマイナスを意味しています。ウェブサイトの場合は、赤色の上向きをした三角がプラス、青色の下向きをした三角がマイナスを意味しています。
マイナスを三角で表記するようになった理由とは?
冒頭で触れましたが、「△」「▲」をマイナス表記として表現するのは、日本独自の会計ルールです。現在では、日本の会計では「マイナスは△」で表記することは、常識となっています。しかし、外国人がこの「△」「▲」マークを見ると、日本では当たり前の習慣を不思議に感じているようです。
では、なぜこのような独特なルールができたのでしょうか?マイナスを三角で表記するようになったルーツを探ると、大正時代まで遡ります。大正時代、税務署が「数字の偽造防止」のために「△」表記で記載する指導をはじめたと言われています。
「-(マイナス)」という表記は、後から別の数字に書き換えられてしまう可能性が高いため、偽造防止のために「△」表記を用いるようになったようです。確かに「-」では偽造される可能性がありますが、「△」表記では偽装される可能性はありません。
また、数字と区別するため、「差分」や「変量」を表すギリシャ文字のデルタ(Δ)表記を由来としているという説や、「△」がいつの間にか派生して「マイナス」や「赤字」の意味をもつようになったのではないか、とも言われています。
欧米諸国では三角「△」ではなく、カッコ「()」
欧米企業の決算書や会計では、三角「△」ではなく、カッコ「()」で表記することが一般的です。例えば、マイナス10,000円の場合は、(10,000)と記載します。ですから、海外の決算書を読む機会がある際には、三角「△」ではなく、カッコ「()」がマイナスの意味であることを念頭に入れておきましょう。
マイナスを意味する表記にはどんな特徴がある?
ここまででマイナスを意味する表記には、「△」「▲」「()」が使われていることについてみてきました。
マイナス表記の特徴
【白三角「△」】
白三角は、決算書などで用いると、比較的見やすいため、一目でマイナスであることを把握することができます。しかし、すでに何度も述べているように、日本独自で使われている表記です。したがって、国外の関係者に見せた場合は、理解してもらえないでしょう。
【黒三角「▲」】
黒三角は、白三角よりも目立つ表記です。白三角△よりも、黒三角▲の方がマイナス額が大きいイメージを与えます。黒三角▲は、直感的にもネガティブなイメージを印象を受けます。株価では△と▲が並んで使われています。
【丸カッコ「()」】
「()」表記は、欧米企業で使用されるマイナス表記です。()表記は会計ソフトやExcelにおいても選択することができます。()表記に慣れている方であれば、すぐにマイナスと理解できますが、△表記に慣れている日本人にとっては()表記に慣れるまでは分かりにくいかもしれません。
【マイナス「-」】
「-」表記は、会計業務をしない一般の方でも理解できる記号です。そのため、会計業務を始めたばかりの方にとっても「-」表記で記載された書類は理解しやすいでしょう。しかし、漢数字の「一(いち)」とよく似ています。
そのため、併用して使用すると、「-(マイナス)」なのか、「一(いち)」なのか区別しにくいのが事実です。また、決算書では数字がたくさん並んでいるため見にくく、計算ミスが発生する原因にもなります。
マイナス三角に使われるさまざま色
近年はインターネットの普及により、ウェブサイトでニュースなどを閲覧している方が多いことでしょう。新聞などは基本的に白黒印刷なので、「△」と「▲」で表記することが一般的です。一方、ウェブ上ではさまざまな色を使えるのが特徴です。
三角表記を白色や黒色ではなく、赤色や青色、緑色などで表すこともあります。たとえば、株価を青色の上向き三角、赤色の上向き三角、緑色の下向き三角で表示しているサイトもあります。なぜ、三角表記にさまざま色を使用するのでしょうか?
それは本能的に想像される印象を残すことができるからです。例えば、「赤色」には、活発という元気なイメージもあれば、危機つまり赤字も連想させます。そのため、活発なイメージを活かして赤色三角をプラス表記で使用することもあれば、赤字イメージを活かしてマイナス表記として使用することもあります。
一方、「青色」や「緑色」は、安心感や沈静なイメージを与えるため、マイナス表記として使われる傾向にあります。このようにウェブ上では、各サイトによって、三角の色の持つ意味が異なることがあります。
マイナス三角「△」「▲」の具体的な使い方
マイナス三角を決算書の作成など会計業務で使用する際、白三角「△」と黒三角「▲」のどちらを使えばよいのだろう、と思われる方もいることでしょう。では、白三角「△」と黒三角「▲」、どちらを使えばよいのでしょうか?結論から述べるなら、どちらも使っても問題ありません。
なぜなら、明確な定義はないため、どちらを使用するかは任意となっています。ですから、各企業は、マイナス三角を示す表記は「△」と「▲」のどちらを利用するかは、社内で決めることができるでしょう。
日本経済団体連合会の決算書のひな型
「△」と「▲」どちらを使用したらよいのか悩んでいる方は、日本経済団体連合会の決算書のひな型を参考にしてみることができるかもしれません。日本経済団体連合会とは、通称「経団連」とも呼ばれており、日本の経済に直接関係する企業や団体が、経済を発展させるために働いている組織です。
この団体がひな型として公開している決算書には、マイナス表記として「△」が使用されています。もちろん、「▲」でも問題ありませんが、どの表記にしようと悩んでいるなら、ひとつの参考として考慮することができるでしょう。
請求書にマイナスの表記があった場合は?
ビジネスをする上での請求書のやりとりは、取引の基本とも言えます。その際、大量発注のために値引きが生じたときや、取引先に返金する必要が生じたときには、請求書にマイナス表記を記載しなければいけません。では、請求書にマイナス表記を記載する際、どのように行えばよいのでしょうか?
請求書でマイナス表記がでたときの項目とは?
請求書にマイナス表記を記載する必要が生じたとき、どのような項目を設定すればよいのでしょうか?結論から述べるなら、請求書のマイナス表記に関する項目に関しては、特に決まりはありません。ですから、取引先が請求書を確認したときに、マイナスになっていることが分かる表記を記載しているなら、特に問題はありません。
なぜマイナスになったのか、つまり、なぜ値引きされているのか、の理由が分かるように「○○のため値引き」「○○より値引き」などと表記するなら、取引先はマイナスの意味を容易に理解できるでしょう。
マイナス金額の表記の仕方とは?
請求書でマイナスが生じた場合は、決算書のように白三角「△」表記を使用することができます。「-」表記を使用すること可能ですが、漢数字の一良く似ているので、白三角「△」表記の方が一目でマイナスと理解することができるでしょう。「△」以外にも、取引先にマイナスであることが伝わるのであれば、黒三角「▲」表記を使用しても問題ありません。
マイナスが記載された請求書を作成する際に注意したいこと!
マイナスが記載された請求書を作成する際には、注意すべきことがあります。それはどのタイミングで値引きをしたか、という点です。消費税の税込みをした金額なのか、それとも消費税前の金額なのか、をはっきりさせておく必要があります。
消費税を含めて値引きをした場合は、税抜きの計算もする必要がありますし、金額に端数が生じる可能性があります。ですから、値引き金額の請求額の内訳に消費税を記載し、最後に税込の金額を表記するなら、会計処理も問題なくスムーズ進むでしょう。
Excelでマイナス三角△を表示する方法とは?
Excelでは数値の表示を統一させるために、プラスの数字にはプラス表記は付けずに、マイナスの数字のみにマイナス表記をつけることになっています。しかし、「+」や「△」「▲」表記などを記載したいときもあります。
では、どのようにExcelで表示することができるでのしょうか?表記を変更したい場合は、「表示形式」を変更させる必要があります。では、表示形式の変更方法についてみてきましょう。
ステップ1:セルの書式設定の画面で変更
まずセルの書式設定の画面を開きます。「△」表記をしたいセルを範囲選択し、右クリックをする、もしくはホームのタブにある数値をクリックすることで、セルの書式設定が画面を開けます。
ステップ2:表記の設定
次に、「分類」から「数値」を選択し、小数点以下の桁数は「桁区切り( , )を使用する」にチェック「レ」を入れます。その後、「負の数の表示形式」の欄から「▲1、234」を選択し「OK」をクリックします。列を選択し設定すれば、その列に入力した数字の先頭に「△」表記が記載されます。
ステップ3:赤色など色を付けてみる
Excelでは、白色三角「△」表記に、赤色などの色を付けることができます。まず△表記に色を付けたいセルの範囲を選択します。メニューの「条件付き書式」を選択し、「セルの強調表示ルール」の欄から「指定の値より小さい」を選択すると、左側のテキストボックスが表示されます。
「0(ゼロ)」を入力し、右側のプルダウンから使いたい色を選び、「OK」をクリックします。列を選択し設定すれば、その列に入力したすべてに選択した色が適用されます。
まとめ
日本の決算書では、「△」や「▲」などの三角表記が日本独自のルールで使われています。この表記が使われるようになった由来にはいくつかの説がありますが、現在での会計・経理業務では「△」表記は「マイナス」を意味して使うころが常識となっています。
残念ながら、海外では通用しない日本独自の常識ですが、会計・経理担当社であれば、覚えておきたい大切な知識のひとつです。海外では「()」表記がマイナスを意味することも同時に覚えておきましょう。
また、「△」表記には、白色や黒色、赤色、青色などもあります。株価などではまた別の意味を示すこともありますので、使い分けることができるようにしておきましょう。
税理士コンシェルジュは、2008年サービス開始より株式会社タックスコムが運営する税理士専門の紹介サイトです。会計の実務経験を活かし、これまで1000名以上の税理士と面談し、1万件以上の相談実績がある税理士選びの専門家です。
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