株式会社設立時「株主名簿」作成は義務?!名簿の記載事項と作成方法
「株主名簿」とは、文字通り、各株主に関する基本情報が記載されている名簿のことで、すべての株式会社に作成義務があります。会社をひとりで設立した場合でも、自らが株主となり、株主名簿を作成しなければいけません。
この記事では、株主名簿の作成義務が発生するときや記載事項、作成方法などについて解説していきます。特に、株式会社設立を検討している方は必見です!
目次
株主名簿とは?
株主名簿とは、会社法で作成が義務づけられている、会社の各株主についての基本情報が記載されている書類のことです。
株主名簿の作成義務対象者
会社法第121条には、「株主の人数、株券発行の有無に関わらず、すべての株式会社で会社設立時に株主名簿を作成しなければならない」と規定されています。つまり、ひとりで会社を設立する場合でも、自らが株主となり、株主名簿を作成する必要があります。
株主名簿の作成義務が発生するとき
株主名簿は、会社設立後2ヶ月以内に「法人設立届出書」を税務署に提出する際、添付書類として一緒に提出する必要があります。また、株式の相続や譲渡などがあったときには、株主名簿の記載情報を更新する必要があります。
株主名簿を作成しないとペナルティの可能性も!
会社法第976条には、株主名簿の整備がなされていない場合は、代表取締役に対して、「100万円以下の過料」を科すと規定されています。ひとりで会社を設立した場合は特に面倒に感じるかもしれませんが、過料されないよう必ず作成するようにしましょう。
株主名簿の設置場所
会社法第125条には、「株主名簿を常に会社の本店所在地に置いておくこと」「株主や債権者から請求がある場合は、株主名簿の閲覧を認めること」と規定されています。つまり、株主名簿を作成した後は、誰かに請求されたらいつでも見せることができるよう、本店に置いておかなければいけません。
株主名簿と株主リストの違いとは?
「株主名簿」とよく似ている書類のひとつに、「株主リスト」があります。上記でみたとおり、株主名簿は株式会社設立時や設立後に設立届出書に添付して提出する書類です。一方、株主リストは、株主総会の決議や、株主全員の同意が必要となるときに、提出することが義務付けられています。このように株主名簿と株主リストは、それぞれ性質が異なるため、代用することはできません。
なお、法務省の公式サイトによると、
1、登記すべき事項につき株主総会の決議(種類株主総会の決議)を要する場合
2、登記すべき事項につき株主全員の同意(種類株主全員の同意)を要する場合
に株主リストが必要となる、と記載されています。
株主名簿の作成が義務づけられている理由
株主名簿の作成が義務付けられている最大の理由は、株式会社において株主が、会社に対し大きな権力を有しているからです。例えば、株主は、株主総会において役員選任の権利や議決権、剰余金の配当請求権などの権利を持っています。
株主の中でも、特に51%以上の株式を保有している株主の場合、独断で株主総会を開催したり、役員選任や解任を行える権利があります。このように株主は、会社にとって大きな影響を与えることができる存在なので、会社側は株主を把握しておく必要があります。このような理由から、株主名簿を作成し、各株主を特定することが重要とされています。
また別の理由として、株主に対する通知や催告をする際に株主名簿が活用されます。株主名簿に記載されている住所に通知や催告をするなら、会社法第126条に規定されているように、たとえ株主に到達しなくても、株主に到達したものをみなされます。
さらに、株主名簿を作成することで株主を把握できます。したがって、株主がな亡くなって違う株主に変わっていたり・・など、会社のトラブルを回避することにもつながります。
株主名簿に記載すべき事項
株主名簿は、法人設立届出書に添付する株主名簿と、会社に置いておく株主名簿とでは、記載すべき必要事項が若干異なっています。ですから、作成する際には、よく確認してから作成しましょう。
法人設立届出書に添付する株主名簿の記載事項
法人設立後、「法人設立届出書」に添付する株主名簿に記載すべき必要事項は、次のようになっています。
・株主の氏名と住所
株主が複数いる場合は、株主全員の氏名と住所を記載する必要があります。株主が法人の場合は、法人の名称と本社所在地を記載します。
・株主が有する株式数
それぞれの株主は有している株式の数を記載します。
・株主が有する株式の金額
それぞれの株主が有する株式の数に合わせて、その金額を記載します。
・役職名及び当該法人の役員もしくは他の株主当との関係
役職名を記載します。親族などに株主を分配する場合は、その関係を記載します。
会社に置いておく株主名簿の記載事項
会社に置いておく株主名簿の記載事項は、会社法第121条において、次の4つの事項が規定されています。
1、株主の氏名と住所
株主が複数いる場合は、株主全員の氏名と住所を記載する必要があります。株主が法人の場合は、法人の名称と本社所在地を記載します。
2、株主の有する株式の数
それぞれの株主は有している株式の数を記載します。普通株式の場合は、その旨を記載したうえで、所有している株式数を記載します。具体的な一例として、「普通株式○○株」などと記載します。
一方、普通株式を含む2種類以上の株式を発行している会社の場合は、その種類別に株式数を記載する必要があります。法律上で発行が認められている種類株式は、全部で9つの種類に分類されているので、種類別に記載します。
3、株主が株式を取得した日
株主が株式を取得するために代金を支払った日を記載します。会社設立時に株式名簿を作成する場合は、会社設立日を記載することができます。
4、株券の番号
株券を発行している場合は、会社法第214条に基づき、各株券の番号を記載します。なお、株券不発行会社の場合は、備考欄を設けて「株券不発行」と記載する必要があります。
株主名簿の様式とは?
株主名簿に関しては、法定様式は特に規定されていません。株主名簿に必要な記載事項が記載されていれば、どのような形式で作成しても問題ありません。株主名簿を作成するにあたり、文具店などで販売されている株主名簿用紙を利用することもできますし、インターネットで株主名簿のテンプレートを入手したものを活用したり、パソコンのwordやexcelなどを使ったりなどして作成することができるでしょう。
株主名簿の管理方法
上記でも簡単に触れましたが、作成した株主名簿は、会社の本店所在地で保管するよう会社法第125条で規定されています。株主名簿を本店所在地に保管するよう定められているのは、株主や債権者から株主名簿の閲覧やコピーの請求があったときに、すぐに対応できるようにするためです。また、株主名簿記載事項に記載されている会社の代表取締役が署名、押印した「株主名簿記載事項証明書」を交付することもできます。
株主名簿は、会社の本店所在地に加え、株主名簿管理人を別途に定めている「株主名簿管理人設置会社」の場合は、その管理人もしくは管理会社の営業所に保管することもできます。株主名簿管理人とは、株主名簿の作成や管理など、株主名簿に関する事務を代行する機関のことです。上場会社や上場企業を検討している会社の多くは、信託銀行や証券代行専門会社などの株主名簿管理人に、株主名簿の作成や管理などを依頼するのが一般的となっているようです。
株主名簿の記載事項を更新する場合
株主名簿は会社設立時に作成するものですが、記載事項に変更が生じた場合は、更新が必要となります。記載事項の更新が必要となるときは、「株主の住所が変更になったとき」「株式を相続もしくは譲渡したとき」などが挙げられます。
例えば、株式の相続もしくは譲渡をしたとき、会社法第133条には、株式譲渡人と株式取得者が共同で会社に請求した場合に、株式を取得した人の住所や氏名などを記載し、名義の書換を行う必要がある、と定められています。
ただし、株主名簿を変更する理由がない場合でも、事業年度末を過ぎたら1年に1回は名簿の内容を見直すよう推奨されています。つまり、定時株主総会に備えて、準備をしておくということです。そうすれば、突然の開示請求があった場合でも、最新の情報が記載されている株主名簿を開示することができます。
万が一、株主名簿の情報が更新されていない場合は、ペナルティが科せられるだけでなく、株主から信頼を失ったり、株価が下落したりなどに発展する可能性もあるので、更新も業務のひとつとして忘れずに行うようにしましょう。
株主名簿作成で困ったら・・専門家に相談を!
株式会社の設立を検討している場合は、たとえひとりだとしても、株主名簿を作成することが義務付けられています。それに加え、作成した株主名簿は、本店に保管し、必要なときには更新する義務もあります。
株主名簿は記載すべき必要事項をしっかり理解していれば、様式は任意なので、自力で作成することも可能ですが、作成する際に不安や困った点がある場合は、専門家である税理士に相談することをおすすめします。税理士コンシェルジュの税理士紹介サービス『全国税理士紹介相談所』では、あなたにピッタリの税理士を無料でご紹介しています。まずは相談を検討してみてください。
まとめ
・株主名簿は、すべての株式会社に作成義務がある。
・株主名簿は、常に会社の本店所在地、もしくは株主名簿管理人期間が保管する。
・株式名簿に記載する事項は、法人設立届出書に添付する株式名簿と、会社に整備しておく株式名簿とでは異なる。
・株式名簿の様式は特に決まっておらず、任意である。
・株式名簿を作成、もしくは変更が必要な場合に更新をしないとペナルティが発生する。
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