社会保険加入の条件とは?必要書類や手続き方法などの令和最新情報
2016年(平成28年)10月の法改正により、社会保険加入の条件が拡大し、ほぼすべての従業員が対象となっています。しかしその一方で社会保険適用外の事業所は、社会保険に加入できないこともあります。また、2020年(令和2年)4月からは、社会保険の電子申請が義務化されました。この記事では、社会保険加入の条件や手続き方法など、令和最新情報を解説していきます。
目次
社会保険の「強制適用事業所」とは?
社会保険とは、一定の条件を満たしている事業所とその従業員が加入できる公的保険のことで、健康保険や厚生年金、介護保険、雇用保険、労働者災害補償保険などが該当します。これらは国の社会保証制度の一環なので、条件に当てはまる事業所とその従業員は当人の意志に関わらず、社会保険の加入が義務付けられています。それを社会保険の「強制適用事業所」といいます。
対象となる「強制事業所」の条件
社会保険への加入が義務付けられている「強制適用事業所」の条件は、次のようなものです。
・事業主を含む従業員1名以上在籍している法人事業所
・従業員が常時5人以上在籍している、一部の業種を除く法定16業種の個人事業所
個人事業所を含め法人の場合、その多くが強制適用事業所に該当しますが、常時使用の従業員の数や業種によっては適用対象外になるケースもあります。なお、適用条件を満たしているにもかかわらず、社会保険の加入手続きをしない場合は、法律で罰せられますので注意してください。
対象となる「任意適用事業所」の条件
社会保険への加入は、強制が義務付けられている強制適用事業所のほかに、ある一定条件を満たしているなら任意で社会保険に加入できる「任意適用事業所」があります。任意適用事業所の条件は、次のようなものです。
・従業員が5人未満の個人事業所
・従業員が常時5人以上在籍している、一部の業種を除く法定16業種の個人事業所
上記の条件を満たしている場合は、従業員の半数以上が社会保険適用事業所になることを同意するなら、事業主が申請書を提出し、厚生労働省の認可を受けると、「任意適用事業所」として社会保険に加入することが可能となります。
社会保険適用対象者の加入条件
社会保険の適用事業所の従業員で常時使用されている70歳未満の方は、雇用形態、報酬額、国籍、税別、年金受給の有無に関わらず、すべての方が加入対象となっています。なお、常時使用されている従業員とは、適用事業所に常時勤務し、給与や賃金などを報酬で受け取っている人ことです。これには試用期間中で報酬が支払われている方も該当しています。つまり、次の条件を満たす方は、社会保険の強制加入対象者となります。
・適用事業所に常時使用されている従業員(健康保険は75歳未満・厚生年金保険は70歳未満まで)
・1週間あたりの所定労働時間と1ヶ月あたりの所定労働日数が、正社員の4分の3以上に該当する従業員
・次の①~⑤の要件をすべて満たす従業員
①所定労働時間が週20時間以上(残業時間は含めない)
②月給8万8,000円(年収106万円)以上(賞与・残業代・通勤手当は含めない)
③適用事業所への勤務期間が1年以上、もしくは勤務する見込みがある
④学生以外(ただし、夜間・通信。定時制の学生は対象)
⑤社会保険の対象となる従業員の規模が501人以上の事業所に勤務している(従業員が500人以下の事業所でも、労使で合意があれば社会保険の加入が可能)
なお、加入対象の従業員を未加入のまま放置していた場合、罰金が科せられることがありますので注意してください。
社会保険の加入に必要な書類と提出先
強制適用事業所の場合は会社設立から5日以内、任意適用事業所の場合は従業員から半数以上の同意を得た後に、必要書類を持参の上、日本年金機構で手続きをする必要があります。必要な書類は次のようなものです。
・「健康保険・厚生年金保険新規適用届」(任意適用事業所の場合は、「健康保険・厚生年金保険任意適用申請書」)
・「被保険者資格取得届」
・「被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)」
・「健康保険厚生年金保険 保険料口座振替納付(変更)申出届」
また、事業所の形態によっては、添付書類として次の書類が必要となります。
・法人事業所の場合
法人の「登記簿謄本」
・事業主が国や地方公共団体、法人の場合
法人番号指定通知書等」のコピー
・強制適用事業所の個人事業所
事業主世帯全員分の「住民票(原本)」と事業所の「賃貸契約書」のコピー
・任意適用事業所
「任意適用申請書」、従業員の「任意適用同意書」、事業主世帯全員の「住民票(原本)」、公租公課の領収書1年分
被保険者を追加する場合
適用事業所が新たに従業員を採用した場合は、採用した日から5日以内に必要書類を日本年金機構へ提出し、手続きする必要があります。通常は「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を提出しますが、短時間の従業員が被保険者になる場合は、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届(短時間労働者用)」の書類を提出します。
また、被保険者に被扶養者の増減があった場合は、その事実が発生してから5日以内に日本年金機構へ「健康保険被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)」を提出する必要があります。
社会保険の電子申請義務化とは?
2018年3月に法改正がされ、行政手続コスト削減のために大企業を対象に社会保険の電子申請を義務化することが発表されました。そして、2020年4月1日より施行されています。
では、電子申請を導入することで何が変わったのでしょうか?そもそも電子申請とは、インターネットを利用して、申請や届出などの行政手続きを行える仕組みのことです。従来は行政機関の窓口まで赴き、紙媒体で行っていた手続きをオンライン上で行うことになります。つまり、電子申請を導入することで、次のようなことが可能になりました。
・24時間好きなタイミングで申請や届出ができる。
・行政機関の窓口に行く手間がなくなる。
・申告書や届出などの手書き作成が不要になる。
・窓口に赴く時間や交通費などコストの削減になる。
・書類の紛失がなくなる。
・セキュリティの向上につながる。
電子申請義務化の対象者
電子申請義務化は、大法人が対象となります。大法人とは、資本金の額もしくは出資金の額が1億円を超える法人、相互会社、投資法人および特定目的会社にかかる適用事業所のことです。つまり、従業員の数や規模で決まるのではなく、資本金の額で電子申請義務化の対象者が決まります。
電子申請の手続き方法
社会保険の電子申請手続きには、政府が提供している「e-Gov(イーガブ)」のサイトから申請する方法と、外部連携の「API」ソフトを利用して申請する方法の2つ用意されています。では、それぞれの電子申請の方法について詳しくみていきましょう。
「e-Gov(イーガブ)」で申請する方法
e-Gov(イーガブ)とは、政府が提供しているポータルサイトです。このサイトでは、行政情報の総合的な検索や案内サービスの提供、さまざま行政手続きのオンライン申請と届出ができる窓口サービスなどが提供されています。行政手続きのオンライン申請と届出には、「通常申請」と「一括申請」の2つの方法があります。
通常申請とは、サイト上で申請書類を一項目ずつ入職し、添付書類をひとつづアップロードしていく方法です。一方、一括申請とは、申請に必要なデータや添付ファイルなどをひとつの圧縮ファイル(ZIP)にまとめてアップロードする方法です。前者は地道に入力していく必要があるので手間と時間がかかります。
そのため、義務化の対象となっている大企業の場合、多くの時間と手間がかかることでしょう。しかし、後者の方法であれば、複数の申請をひとつにまとめて行えます。ただし、ZIPファイルを作るためには、専用のソフトウェアが必要となります。
このようにe-Gov(イーガブ)サイトからの申請は、従来の書面での手続きよりも複雑なうえ手間もかかります。また、現在のところ、すべての行政手続きが行えるわけではありません。オンライン申請と届出ができる行政手続きと、できない行政手続きがありますので注意が必要です。
「API」ソフトを利用した申請方法
「API」ソフトとは、外部連携を利用したオンライン申請です。e-Gov(イーガブ)での電子申請方法よりも手続きしやすいと評判です。すでに使用している人事や給与のデータを使って必要添付書類を自動で作成する必要なく、ワンクリックでオンライン申請をすることができます。ただ、この方法で申請する場合は、APIに対応している市販のソフトウェアを購入する必要があります。
近年、民間企業が開発したさまざまなソフトが販売されています。無料お試しプランなどを上手に活用し、自社に合った方法で電子申請手続きをすることができるでしょう。
まとめ
社会保険の加入対象者は、適用条件が拡大されたり、電子申請義務化されたりなど、法改正が頻繁に行われています。今後も法改正が行われる可能性がありますので、最新の情報にいつも注意を払うようにしましょう。
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