【独立前におさえておきたい】個人事業主の必須知識 | 税理士コンシェルジュ

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【独立前におさえておきたい】個人事業主の必須知識

2020年7月21日
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個人事業主
会社を辞めて独立や起業を考える際、「個人事業主」と「法人」のどちらかををまず決めなければいけません。法人、つまり会社を設立することを選ばない場合は、個人事業主として事業を運営していくことになります。しかし、そもそも個人事業主とはどのようなものなのでしょうか?

この記事では、個人事業主について知っておきたい基礎知識について、解説していきます。

個人事業主とは?

個人事業主とは、法人を設立しないで個人で事業を運営している人のことです。例えば、自営業やフリーランスといった形態は、代表的な個人事業主の一種に挙げられます。簡単にいえば、個人事業主はその名のとおり「個人で事業を行っている人」ということです。

ここで、「個人」と「事業」の言葉をそれぞれ考えると、個人事業主がどのようなことなのかを理解しやすくなります。

まず個人事業主の「個人」とは、法的にみれば「法人」と対義する言葉です。法人には人格があるものとみなされており、一般的な会社は法人に分類されています。これに対して、個々の人を個人として考えています。

「事業」とは、独立していて、反復、継続していることを指します。例えば、たまに不要なものを売ったり、たまに株式を売買することは反復や継続しているとはいえません。

一方、毎日もしくは決められた曜日に取引先から仕入れをし販売することは、仕事を反復していることになるので事業といえます。毎日でも週に何日かでも、継続的に事業を行うことが個人事業主に該当するのです。

また、会社のような組織から給与をもらうのではなく、事業を起こした本人が個人で収入を得ることになるのも、個人事業主の特徴です。

個人事業主と法人の違いとは?

では、個人事業主と法人には、どのような違いがあるのでしょうか? 様々な手続や社会的信用度、税金の違いを比較してみましょう。

様々な手続や社会的信用度

個人事業主 法人
開業手続 税務署等への届出のみなので0円 登記が必要。定款の作成等多くの手続が求められている
設立費用 特になし 20~25万円前後の費用が必要
事業の追加や変更 制約なし、自由にできる 定款を変更する必要がある
事業の廃止 届出を提出するだけで、いつでも辞められる 解散登記や清算手続等、廃業のための様々な手続と時間、数万円の費用がかかる
税金の負担 利益が少ないときは有利だが、利益が大きいときは不利 利益が少ないときは不利だが、利益が大きいときは有利
赤字の繰り越し 3年(青色申告の場合) 9年
経費 あまり節税できない 節税できる項目が多い
会計処理 比較的容易 複雑(税理士が必要になることが多い)
社会的信用度 低い 高い

一般的には、個人事業よりも会社という組織で成り立っている法人のほうが、多くの法的な手続を要求されるため、管理が行き届いていると判断されます。そのため、法人のほうが社会的信用度が高い傾向にあります。

税金の違い

個人事業主でも法人でも、事業を運営すると、所得税、法人税、事業税等の様々な税金を納めることが義務づけられています。これらの税金の額は、1年間に得た所得の金額によって変わりますが、個人事業主と法人では、年間の所得にかけられる税率が異なっています。

個人事業主と法人の税金を比較してみると、住民税は個人事業主の方が負担が大く、事業税は個人事業主のほうが負担が大きいことがわかります。特に法人の場合、赤字だとしても最低70,000円の住民税が課税されるため、利益が低いときは不利になります。

また、個人事業主は所得税を納める必要がありますが、法人は所得税のかわりに法人税を納める必要があります。

なお、各種税率は、細かい変動がありますので、国税庁のホームページ等での最新情報の確認をお薦めします。

参考:国税庁ホームページ 事業主と税金

個人事業を始める前にすべきこととは?

個人事業主でも法人でも、独立して起業する際には、新しい事業に直接関わること以外にも必要な手続等があります。これらについて、予め把握しておくとよいでしょう。

・退職届を出すこと
個人事業を始めるために、現在勤めている会社を辞める場合もあるでしょう。その場合、いきなり辞めることはできません。民法では、労働契約の解約は2週間前までに退職の意志を表示するように規定されています。

実際には、1か月前程度を目安に退職意思を伝えることが一般的と言われています。なぜなら、余裕をもって伝えることで、会社側もその穴埋めをするために人材を補充し、業務の引継ぎ等の準備が必要となるからです。

各会社には就業規則が設けられていますので、会社のルールを確認し、円満退社ができるようにしましょう。

・会社への備品を返却し、必要な書類を受け取ること
各会社によって異なりますが、仕事用に支給されているパソコンやモバイル端末、制服、身分証明書、名刺等の会社から支給されている備品は、辞める際にすべて返却します。

また、会社から雇用保険の受給手続で必要となる「雇用保険被保険者証」や、確定申告で提出しなければいけない「源泉徴収票」等の書類を受け取る必要があります。年金手帳を預けている場合、退職日までに返却してもらうことも忘れないようにしましょう。

・クレジットカードや住宅ローン等を契約しておくこと
独立するにあたって会社を辞めると、クレジットカードや住宅ローンの審査に通りにくくなります。絶対に審査に通らない、というわけではありませんが、会社員だった頃と比較すると難しくなるのが一般的です。必要な場合、クレジットカードや住宅ローンの契約を済ませておきましょう。

・何を事業として始めたいかよく考えること
独立を考えているなら、何を「事業」としたいかを具体化させることはとても重要です。国税庁が事業として例示している仕事には、小売業や卸売業等をはじめとし、請負、運送、修繕、クリーニング、理容、美容、医師、弁護士、税理士、公認会計士等、幅広い分野の業種があります。

とはいえ、起業してしばらくは事業が軌道に乗るか見通しが立たないのも事実です。事業として継続できるかどうかわからないときは、まずは「雑所得」で確定申告をし、継続する見込みがついたらその時点で「事業所得」として確定申告することになるでしょう。

・情報を収集すること
今までしていた会社時代の仕事と全く異なる業界でゼロから始める場合、まずは情報収集しなければいけません。その事業を始めるために資格が必要か、保健所や税務署等へどのような届出が必要かといった、現実的な情報を収集しましょう。

今はインターネットを使って簡単に調べることができるので、会社を辞める前から情報を収集しておくことができるかもしれません。また、お店等を持ちたい場合は、物件探しも並行して行う必要があります。

一方、独立しても今までと同じ仕事をする場合は、すでに情報を持っているはずです。しかし、会社という組織から独立するので、自分で顧客を獲得しなければいけません。そのためには、独立を考えている時点から、積極的に人脈をつくることができるでしょう。

・開業資金を確保すること
開業するにあたり資本金の規定はありませんが、開業資金を準備することは大切です。業種によって必要となる資金額は異なりますが、3~6か月ほどの経費や生活にかかる支出を賄える程度の資金を準備しておくとよい、と一般には言われています。

資金を調達する方法はいろいろありますが、基本は自己資金です。したがって、まずは開業資金を確保することを目標とすることができるでしょう。また、自己資金で賄うことが難しいなら、親族や友人等から借り入れすることができるかもしれません。

また、外部から資金を調達する場合は、日本政策金融公庫の新創業融資制度を利用したり、都道府県や市町村等の自治体が窓口となっている融資を利用することができるでしょう。ただし、外部からの資金調達は、申込みから融資までに時間がかかります。余裕を持ったスケジュールにしておくことをお薦めします。

参考:日本政策金融公庫ホームページ 新創業融資制度

個人事業主になった後にすべきこととは?

個人事業主になったら、本業だけでなく、事務や経理、納税等すべて自分で行わなければいけません。では、個人事業主になった後にすべきことをみてみましょう。

・社会保険の手続
会社を退職して個人事業主になる場合、会社の健康保険から国民健康保険へ、また、厚生年金から国民年金へと切り替える手続をしなければいけません。退職した日から14日以内に手続きをしなくてはいけないので、忘れないようにしましょう。

国民年金保険料は年度により一律で定められていますが、国民健康保険料は収入や世帯人数によって変わってきます。

なお、個人事業主の場合は、常時雇用する従業員が5人未満であれば、健康保険や厚生年金への加入は任意です。加入しない場合、個人事業主と各従業員は各自で国民年金保険や国民健康保険料を納付する必要があります。

ただし、国民健康保険や国民年金よりも、健康保険や厚生年金保険のほうが保障が充実しています。そのため、後者を採用するならば雇用の増加や従業員の定着につながりますが、事業主は従業員すべての健康保険や厚生年金保険料を半分負担することが義務となります。

・各種届出の提出
「開業届」
個人事業主として起業を始める場合、「開業届書」を管轄地区の税務署に提出しなければいけません。用紙は税務署の窓口、もしくは国税庁のホームページからダウンロードすることができます。

開業届書には、所轄の税務署名、書類の提出日、納税地、氏名、電話番号、生年月日、マイナンバー、職業、屋号、開業した場所の住所、所得の種類、開業日、具体的な事業内容等の項目を記入します。

納税地は原則、住民票のある住所地にある税務署になります。なお、事業所の所在地を納税地にすることも可能ですが、その場合は「所得税・消費税の納税地の移動に関する届書」という書類を提出する必要があります。

開業届書は、記入済みのものを控えとして1部コピーし、税務署に提出する際に印を押してもらいます。そして、大切に保管しておきましょう。

「青色申告承認申請書」
個人事業主になる場合、確定申告を青色申告か白色申告の2種類から選択しなければいけません。青色申告をする場合は、「青色申告承認申請書」という書類を、開業後2か月以内に税務署へ提出することが求められています。

青色申告は、65万円の特別控除が受けられたり、損失を3年間繰り越しできる等のメリットがあります。複式簿記の帳簿を作成する必要があり、簿記の知識がないと複雑に感じるかもしれませんが、会計ソフトなどを上手に活用すれば、比較的容易に帳簿作成をすることができるでしょう。

「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」
従業員を雇用して初めて給与を支払う際には、「給与支払い事務所等の開設届出書」と呼ばれる書類を従業員を雇用してから1か月以内に税務署へ提出する必要があります。

個人事業主の場合は、開発業届書に従業員に関する記入欄があるため、この届書を提出することは義務づけられてはいませんが、提出を求められることもあるので税務署や税理士に確認することをおすすめします。

「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」
各従業員の給料かた源泉徴収した所得税は、翌月の10日までに管轄地区の税務署へ納税する必要があります。しかし、個人事業主等個人ですべての業務をしなければならない場合、この事務処理は大きな負担となります。

そのため、給与を支給している従業員が9人以下の事業所の場合は、特例として半年ごとにまとめて納付する方法が国によって認められています。1月~6月までの所得税は7月10日まで、7月~12月までの所得税は翌年の1月20日までにまとめて納税できます。

条件に該当し、この特例を受けたい場合は、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署へ提出する必要があります。特に提出期限は設けられていませんが、提出した月の翌月以降に支払う給料から適用されます。

・事務的な手続
事務的な作業として、会社のロゴの作成や名刺の作成、電話番号の取得等、様々な事務的な手続きもしなければいけません。

業種にもよりますが、個人事業主として独立したら、自社のホームぺージやSNS等を開設し、積極的にアピールしていくことも大切です。

個人事業主の置かれた環境

現在、個人事業主の方の置かれた環境は複雑です。数年前から続いている大型台風等の災害や、新型コロナウイルスの感染拡大等により、どの事業も多かれ少なかれ影響を受けていることは間違いないでしょう。大きなダメージを受けている会社や店舗がよく報道されています。

一方、少数派かもしれませんがピンチをチャンスに変えている業種もあります。これまで注目されていなかった事業が、突如脚光を浴びるということもあるようです。また、これを機に、新たな事業展開を検討している人もいるでしょう。

いずれにせよ、自分だけの力ではどうにもならない状況も経営には起こり得ます。しかし、例えば給付金や助成金は多岐にわたって設けられていますし、積極的に情報を収集したり、税理士等のプロの力を借りることで、事業を継続していくことが可能な場合もあります。

個人事業主の置かれた環境は、決してやさしいものではないというのが現状ですが、それでも、できることはあるかもしれません。また、起業前に、予め生じる可能性のあるリスクを想定し、対応策について練っておくことも大切です。

これまで国は、起業家支援を様々な形で行ってきましたが、起業してからの資金繰り等に苦労している人も少なくありません。起業する前から、備えておくべきことには備え、どのような方策が選択できるのかを把握しておくことをお薦めします。

インターネットで調べたり、公的機関や知人に相談してみてもよいですし、起業支援を行っている税理士等もいます。自分自身で調べることはもちろん、他の人からのアドバイスも活かし、より多角的に検討しておくとよいでしょう。

まとめ

個人事業主は、開業届出書を提出すれば誰でも簡単になることができますが、起業することには責任や義務も伴います。ですから、安易な気持ちから起業するのではなく、前もってしっかりプランを立てて準備をし、行動へと移すようにしましょう。

また、雇用側になると、様々な手続や書類作成、資金調達、節税対策、納税等、初めて行う作業がたくさん生じます。会計ソフトの上手な活用や、各種専門家に相談・依頼すると、効率よく業務を進められるでしょう。

とくに税金のプロである税理士は心強い味方になってくれます。税理士には、様々なタイプがいますが、自分に合った税理士を見つけられると力強いです。税務会計はプロにまかせると、個人事業主としていっそう本業に力を入れられるでしょう


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