税理士と公認会計士の違いとは?2つの資格それぞれのメリット・デメリット
事業者の会計業務に関わる仕事をする税理士と公認会計士ですが、それぞれ具体的に何をしているのか、あまり知られていません。
どちらの資格も難関試験を突破し、専門性の高い知識レベルを有し、士業として高いフィーを得られるというイメージがあるものの、最近では過当競争が指摘されている業界でもあります。
「身体がだるい」と感じたときに、病院のどの科に行けばよいのか判断がつかないことがあるように、経営において悩みや相談したいこと、アウトソーシングしたい仕事があるときに、どの専門家に依頼すればよいのかは、わかりにくいところがあります。
言葉のイメージも似ている「税理士」と「公認会計士」には、どのような違いあるいは共通点があるのでしょうか。この点を理解すれば、適切に仕事を依頼でき、満足のいく結果を得られるでしょう。
目次
税理士と公認会計士の、試験の違い
税理士と公認会計士は、国家試験に合格して与えられる、専門家として働くことを認められる資格です。まずは資格の得方の違いが、両士業の違いといえるでしょう。具体的には、以下のように試験の内容が異なります。
税理士と公認会計士の違い1、税理士試験
選択制の5科目合格をもって試験合格としています。必須である会計2科目に加えて、選択制の税法3科目に合格しなければなりません。一度合格した科目は永久的に有効です。
1科目ごとの試験レベルが高いため、毎年あるいは数年をかけて1科目にチャレンジする人も多く、その結果、最終的な試験合格に数年以上有することが多いのが特徴です。
例えば、働きながら受験勉強を続けたり、数科目合格の時点で会計事務所に勤め、現場を体験しながら税理士試験に取り組んでいる人もいます。
これはある種、税理士業界の特徴の一因となっているかもしれません。税理士には「別の仕事をしていたのだが一念発起して税理士になった」「現場に揉まれながら勉強をしてきたので、実務のイメージもかなり掴んでいる」という人が少なくありません。
税理士と公認会計士の違い2、公認会計士試験
マークシート式の短答式試験で、4科目の財務会計論を受験します。短答式試験に合格すると、5科目の会計学で構成される論文式試験に進むことができます。
論文式試験では、5科目の会計学を同時に学習しなければならないため、科目ごとのチャレンジができる税理士試験とは別の難しさがありますが、2年弱程度で合格に至る人が多いようです。
なお、公認会計士に登録(試験合格後、登録の要件は別途定められています)すると、税理士試験を受けなくても税理士登録ができますが、現実的にはすぐに税理士の実務にも携われるというわけにはいかないでしょう。
これは、「税務署上がり」「税務署OB」と呼ばれる税理士にも共通していえることですが、「資格がある」ということと、「顧客を満足させられるような仕事ができる」ということは、また別問題であるということです。
「税務もできる会計士」を求めるのであれば、税務においてもしっかりとした経験を積み、最新の情報をキャッチアップしている人に依頼をすることをお薦めします。
参考記事: 税務署上がり・税務署OBの税理士は税務調査で顔がきく?
税理士と公認会計士の業務の違い
実務にあたっては、基礎となる部分で重複する面はあるものの、その目的は大きく違い、士業としての業務も異なります。
税理士と公認会計士の業務の違い1、税理士の独占業務
税理士の業務については、税理士法により定められています。
参照:国税庁ホームページ 第2条《税理士業務》関係
「税務の代理」「税務書類の作成」「税務相談」を3本柱の独占業務としている他、税金を計算するために必要な付帯業務として、会計業務を行うこともあります。個人事業主や中小企業が顧客に多いという傾向があります。
税理士と公認会計士の業務の違い2、公認会計士の独占業務
公認会計士は、公認会計士法により業務が定められていて、「監査証明業務」を独占業務としています。
事業者が決算において作成した財務書類が適正であるかチェックし、監査報告書の発行や、意見書の作成をします。上場会社が顧客に多いという傾向があります。
税理士と公認会計士の違いから考える、メリットとデメリット
それぞれに違う部分と共通性があるので、仕事を依頼した場合のメリット・デメリットもあります。
税理士と公認会計士の違いから考える、税理士のメリット
独占的に税務について扱っているので税務についての代理・相談は税理士一択です。他の者が行えば税理士法違反となり、罰せられます。
税務申告に必要な、会計業務の知識も有しているため、税務の依頼と同時に会計業務のチェック・代行も委託できることが、税理士に仕事を依頼するメリットといえるでしょう。
税理士と公認会計士の違いから考える、税理士のデメリット
公認会計士や弁護士は、一定の研修を受けることによって税理士業務を行うことが認められていますが、税理士が公認会計士の業務を行うためには、あらためて公認会計士の試験に合格しなければなりません。
税務調査においても、税務署との交渉において、税務上の判断から意見を述べることはできますが、会計業務の適正性といった範囲の仕事は公認会計士に依頼する必要が生じるかもしれません。
税理士と公認会計士の違いから考える、公認会計士のメリット
一定以上の規模の事業者は、法律で公認会計士による監査を受ける義務が定められています。また、中小企業であっても、監査報告書があることは、融資の際等に信用性の向上をもたらします。会計業務のエキスパートであり、監査業務や企業価値の判断において力を発揮することとなります。
税理士と公認会計士の違いから考える、公認会計士のデメリット
原則的には「監査」が主な仕事であり、会計業務の代行等を行うことは少ないです。経営相談に関しても、税理士・公認会計士のどちらも行えますが、より実務に近いのは税理士の方といえるでしょう。
例えばM&Aに際しても、事業の価値の評価の過程では税務上の観点からチェックを入れる必要があり、税理士の助力を仰ぐことになるでしょう。
税理士と公認会計士の違いを理解して活用することがお薦め
税理士と公認会計士のどちらか一方を選ばなくてはいけない、というわけではないので「必要に応じて選んでいく」「ときには双方の力を借りる」という考えで問題ないでしょう。
また、昨今では「ワンストップサービス」を掲げて、顧客があれこれと悩むことのないように事務所側が、顧客を適切な専門家へとつなげるパイプ役となっている場合もあります。一般に「抱えている問題や要望を、どの専門家に相談すればよいのか」はわかりにくいので、こうしたサービスを提供している事務所に相談してみるというのも一考です。
事務所内に複数の専門家(例えば、税理士、会計士、弁護士、社労士等)が所属している場合もあれば、事務所には特定の士業しか所属していないが、他の事務所との連携を密にしている場合もあります。
また、企業の規模がさほど大きくない場合や、起業して間もない場合は「まずは税理士」としてもよいかもしれません。税理士は、中小規模の企業や、個人事業主を多く顧客に持っているので、悩みに応えるノウハウも多く持っていて頼りになるでしょう。
そして、会社の規模が大きくなってきたり、上場を検討するようになった段階で会計士に依頼することを検討してもよいかもしれません。そのときに、顧問税理士と関係が良好であれば、その旨を伝えれば良い会計士を紹介してもらえるかもしれません。
また、税理士紹介サービスを利用するのもよいでしょう。「税理士と会計士のどちらに仕事を依頼すればよいかわからない」「企業の規模としては税理士に依頼したいところだが、将来のことも見据えたい」等、企業の抱える事情は千差万別です。
この点を紹介サービスのカウンセリングを受けて明確にし、自社のニーズと必要としている専門家のイメージを掴んでいくことで、より満足度の高い選択をすることができるでしょう。
税理士と会計士は似て非なるものではありますが、いずれの士業とも専門知識と経験を備えています。彼らに仕事を依頼する側としては、それぞれの特徴を把握した上で仕事を依頼し、その力を活かしたいものです。
株式会社タックスコム:代表取締役
会計の実務経験を活かし、これまで1000名以上の税理士と面談を行い、相談実績は1万件を超える。2017年に執筆した書籍「税理士に顧問料を払う本当の理由」は、出版から半年にわたりAmazonカテゴリ「税理士」で1位を獲得。2021年に実施した日本コンシューマーリサーチの調査では、税理士紹介サービスで顧客満足No.1を獲得。
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