住民税特別徴収とは?普通徴収の違いや納付方法など解説
地方税のひとつである住民税には、徴収方法が2通りあります。それは「特別徴収」と「普通徴収」です。では、これらにはどのような違いやメリットとデメリットがあるのでしょうか?今回は、双方の違いをはじめとし、納付方法まで詳しく解説していきます。
目次
住民税の概要
税金にはさまざま種類がありますが、その中でも国に納める「国税」と地方自治体に納める「地方税」の2つに大きく分類されています。そして、住民税は地方税のひとつで、個人に対して課せられるものと「個人住民税」といいます。個人住民税には「個人都道府県民税」と「個人区市町村民税」が含まれています。
どちらの税金も、毎年1月1日に住民票が置かれている区市町村が課税と徴収をする、という仕組みになっています。税額は、前年度の所得に応じで決まります。
住民税の「特別徴収」と「普通徴収」の違いとは?
住民税の徴収(納付)方法には、「特別徴収」と「普通徴収」の2つの方法があります。まず住民税の普通徴収とは、区市町村から送付される納税通知書に基づき、6月・8月・10月・1月の年4期に分けて、住民自ら個人で納付する方法のことです。普通徴収は、主に個人事業主やフリーランスの方などを対象としています。
一方、住民税の特別徴収とは、事業主(給与支払者)が従業員に支払う給与から個人住民税を徴収し、納税者の代わりに住民税を納付してくれる方法のことです。つまり、従業員は、1年分の給与を12回に分けて住民税を納税していることになります。
このように普通徴収と特別徴収の違いを一言でまとめるなら、誰が、いつ納税するか、ということが違うだけです。したがって、住民税額が大きく変わるということではありません。
メリットとデメリット
では、普通徴収と特別徴収には、それぞれどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?
普通徴収のメリットとデメリット
普通徴収のメリットには、「前納報奨金制度」が適用された場合は、住民税額の1%が減税されるという点を挙げることができます。前納報奨金税度とは、1年分の住民税を第1期で全額納税することにより、1%だけ税額が差し引かれるという制度です。この制度を活用するなら、わずかですが節税につながります。
しかし、残念ながら、この制度は現在、ほとんどの市区町村にて廃止されているようです。また、たとえこの制度を利用することができたとしても、一度に全額を支払う必要があるため、一時的な負担が大きくなるというデメリットがあります。
なお、最近は、クレジットカードによる支払いを受けつけている自治体が増えています。利用しているクレジットカードにもよりますが、クレジットカード支払いにすることでポイントを貯めることができます。ポイントを無駄なく貯めたい方にとっては、クレジットカード支払いは大きなメリットになります。
ただ、普通徴収は納付期限までに納付しなければいけません。もし納付期限を過ぎてしまうと、滞納とみなされてしまい、督促されます。それでも完納しない場合は、財産の差し押さえや裁判などに発展することもあります。
特別徴収のメリットとデメリット
では、特別徴収に関してはどうでしょうか?特別徴収のメリットは、毎月給与から天引きされているので、住民税の納付を忘れてしまうということはないため滞納の心配はありません。これは各自治体にとっても、確実に正確な住民税を徴収できるというメリットになります。また、4期に分けて納税する普通徴収と違い、毎月(12回)徴収されるため、負担をあまり感じることなく納めることができます。
しかし、事業者側の経理担当者にとっては事務作業が増えるため、業務の負担となります。
義務付けられている特別徴収
給与支払者は特別徴収義務者として、すべての従業員の個人住民税を特別徴収することが地方税法で義務付けられています。平成26年、全国地方税務協議会が、個人住民税特別徴収を推進する宣言をしたため、現在では義務となっています。仮に特別徴収義務を拒否した場合は、地方税法に基づき、滞納処分などのペナルティが課せられる可能性もあるので注意が必要です。
住民税特別徴収の納付までの手順
事業者側の経理担当者にとっては、住民税の特別徴収は事務の負担となります。住民税は、上記でもみたように、前年の1月から12月までの個人の所得に対して課せられます。そして、特別徴収は、算出された税金を6月から翌年の5月にかけて毎月納付します。では、住民税特別徴収が徴収されるまでの流れをみていきましょう。
ステップ1:給与支払報告書を提出
各従業員の前年1月から12月までの1年分の給与支払い額を、給与支払報告書にまとめます。その後、作成した書類を市区町村の窓口に提出します。この給与支払報告書が、住民税算定の基準となります。
ステップ2:特別徴収税額の通知が届く
各市区町村で計算をし、住民税の額が決定された旨の通知が会社宛に届きます。毎年5月頃、従業員一人ひとりの住民税額が決定します。
ステップ3:住民税の徴収
通知された各従業員の住民税の月額を給与に反映させます。毎年5月に通知された分を翌月の6月の給与から徴収していきます。
ステップ4:給与の支払い
給与支払額から住民税やそのほかの税金などを徴収し、残りの額を給与として従業員に支払います。
ステップ5:税金の納付
給与から徴収した住民税額は、給与支払いの翌月10日までに納税します。納付書をもって市区町村の窓口や銀行など金融機関で納付、もしくはインターネットバンキングやATMなどを利用して納付します。
普通徴収から特別徴収への切替申請の手続き方法
今まで普通徴収を選択していた給与所得者が、特別徴収へと切り替える場合は、申請手続きが必要です。これには年の途中で勤務先が変わった場合や、今まで働いていなかった人が再就職した場合などが該当します。納付期限が過ぎていない未納の個人住民税があるなら、事業所側が「特別徴収への切替申請書」を提出し手続きをすることで、特別徴収へと切り替えることができます。
特別徴収から普通徴収への切り替え申請手続き方法
今まで住民税を特別徴収していた事業所や従業員でも、特別徴収から普通徴収へと徴収方法を切り替えることが可能です。事業所の場合は、総従業員数が2名以下である、もしくは常時2名以下の家事使用人だけに給与を支払っているなどの事情は該当するなら、徴収方法を切り替えることができます。
従業員の場合は、他の会社で特別徴収をしている人、5月31日までに退職する予定のある人、給与が毎月支払われていない人、給与が少なく特別徴収ができない人などが該当します。
これらの事情がある場合は、「個人住民税の普通徴収の切替理由書」と「給与支払報告書」の書類を、1月31日までに市区町村の窓口に提出することで、普通徴収へと切り替えることができます。
まとめ
各自治体は、地方税を確実に徴収するため、特別徴収によって住民税を徴収することを望んでいます。事実、特別な理由がない限り、事業者側には特別徴収義務者として住民税を徴収することが義務付けられています。
事業者の経理担当者にとっては、事務作業が増えるため負担となることでしょう。特に住民税の場合、前年度の所得に課せられます。そのため、退職者がいる場合は切替の手続きをする必要もあります。ですから、住民税の手続きの流れをしっかり理解しておくようにしましょう。
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