顧問税理士の契約解除の進め方、違約金と円満に断るための手順
顧問税理士の契約解除は、気まずさの問題である前に、条文と書面にもとづく事務です。委任という契約の性質、書面に置かれた条項、税務官公署へ出す届出の三つが分かれば、進め方は具体的な手順に落ちます。
ここでは、切り出す時期、違約金と精算の考え方、資料の引き継ぎで受け取るもの、起きやすいトラブルとその避け方を、条文と公表資料をもとに並べます。年商の規模が大きい会社ほど、確かめる項目は増えます。

顧問税理士の契約解除は、民法が定める委任の任意解除権を土台に進む

解約は、気持ちの整理から入ると動けなくなります。まず前提としておさえておくべきは、この関係がどの法律の上に成り立っているのかという事実です。
税理士の仕事は、税務代理、税務書類の作成、税務相談の三つと法律に定められています。自社はその事務を他人に委ねており、法律上は委任契約の一種として扱われます。
民法は、法律行為でない事務の委託についても委任の規定を準用すると定めています。記帳の代行や相談を含む顧問の取り決めが、この枠に入ります。
そこに置かれているのが任意解除権です。委任は各当事者がいつでも解除をすることができる、と条文にあり、顧問税理士の契約解除もこの規定の上で動きます。
いつでも、という語には理由の要否も含まれます。納得のいく理由を示せなければ終えられない、という決まりは条文のどこにもありません。
解除の効力は将来に向かってのみ生じます。すでに終わった申告や記帳がさかのぼって無効になることはなく、支払い済みの報酬が当然に戻るわけでもありません。
実際、長い付き合いの事務所が多く、漠然とした不満を抱えたままでも踏み切れない経営者が多いものです。踏み切れなさの一部は、この土台を知らないところから来ています。
顧問税理士の契約解除に踏み切れない理由を並べると、多くは三つに収まります。相手への気兼ね、資料の受け渡しの手間、そして終わらせること自体ができるのかという疑いです。
三つ目は条文で解けます。残る二つは段取りの問題であり、順番さえ決めれば処理できる作業に変わります。
年商5,000万円を超える規模になると、月次で動く資料も申告の種類も増えます。付き合いが長いほど、切り替えの重さは段取りの設計で決まります。
土台を確かめたうえで、条項、時期、金額、資料の順に見ていきます。この手順であれば、感情の話に戻らずに進められます。
顧問税理士の契約解除は、法律の上では珍しい出来事ではありません。委任の終了は、契約の型としてあらかじめ想定された動きです。
気をつけたいのは順番です。書面を開く前に相手へ切り出してしまうと、条項を読む機会そのものが失われ、あとから条件を確かめ直す手間が残ります。
委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
委任契約という枠組みが、報酬の精算と損害の賠償の範囲を決めている
この関係を終えるときに最初に問題となるのは、お金の後始末です。委任契約を終えるときの争いは、最終月の報酬と、前払いした分の扱いに集まります。
民法は、委任が履行の中途で終了したときは、すでにした履行の割合に応じて報酬を請求することができる、と定めています。
月額の顧問料は、その月に受けた役務の量に応じて按分するのが素直な読み方です。決算の報酬を年間で分割して払っていたなら、決算の作業がどこまで進んだかが基準になります。
具体例で見ます。顧問税理士の契約解除を9月末に設定し、月額5万円、決算の報酬25万円を12回に分けて払う取り決めだったとします。
4月に始まる事業年度なら、決算の作業はまだ始まっていません。分割で払った6か月分は、役務の提供がない前払いとして扱われる余地が残ります。
反対に、決算と申告を終えた直後に終えるなら、その報酬は提供済みの役務に対応します。返還を求める根拠は乏しくなります。
委任契約の解除には、損害の賠償についての条文もあります。相手方に不利な時期に解除したとき、または報酬を得ること以外の利益をも目的とする委任を解除したときは、相手方の損害を賠償しなければなりません。
顧問税理士の契約解除でも、やむを得ない事由があったときはこの限りでない、と同じ条に書かれています。無条件の賠償義務ではありません。
不利な時期とは、申告期限の直前や調査の途中のように、引き受けた事務を終えられない時期を指します。年末の繁忙期に解約を一方的に進める形は、ここに触れる可能性があります。
賠償の対象は、現実に生じた損害です。残る期間に得られたはずの顧問料の全額が、そのまま損害として認められるわけではありません。
この違いを押さえておくと、顧問税理士の契約解除で次に扱う違約金の条項が読みやすくなります。金額をめぐるトラブルの多くは、条文が置いている原則と、書面で上乗せされた取り決めを混ぜたところから始まります。
委任契約の性質を先に確かめておけば、解約に伴う金額の話を感情から切り離せます。精算は事務であり、勝ち負けではありません。
違約金と呼ばれているものは、書面のどの条項に置かれているかで性質が分かれる

解約の実務で問われる違約金という語は、実際には三つの異なる取り決めをまとめて指しています。分けて読まないと、払う必要のないものまで払うことになります。
一つ目は、委任契約に置かれた最低の期間の条項の残存分です。一年は解けないと書かれた取り決めにもとづき、残る月数の報酬を求める形です。
実例として、一度結ぶと一年は解けない縛りが置かれている例や、そもそも書面を交わさない例には注意が必要です。
二つ目の違約金は、予告の期間に足りない分の報酬相当額です。三か月前までに申し出ると決めておき、一か月前の申し出なら二か月分を求める形になります。
三つ目が、顧問税理士の契約解除に備えて委任契約へ付けられた損害賠償額の予定です。生じた損害の立証を省くため、あらかじめ金額を決めておく取り決めを指します。
日本税理士会連合会は、賠償責任の条項を置く場合の留意点を公表しています。上限を設けるときは、理由と上限額について十分な説明を行い、内容を協議したうえで結ぶことが望まれる、という趣旨です。
裏を返せば、説明のないまま置かれた違約金の条項が、そのまま通るとは限らないということです。条項があることと、その額が妥当であることは別に判断されます。
顧問税理士の契約解除を決めたら、自社の書面を開き、金額が書かれた行に印を付けてください。手順としては、その金額が何の対価として設定されているのかを余白に書き出します。
対価を説明できない金額を曖昧にしたまま進めると、後からトラブルの種になります。話し合いの対象にできる余地は残っています。残存期間の報酬として明記されているなら、払う前提で日程を組むほうが早く終わります。
数字で見ておきます。月額5万円で、残り7か月を残して終えるなら残存分は35万円、予告の不足が二か月なら10万円です。
この25万円の差は、申し出る時期をひと月ずらすだけで動くことがあります。顧問税理士の契約解除では、違約金の条項を読む作業と時期を決める作業が一体になります。
書面が見当たらない会社もあります。交わしていないなら解約の金額の取り決めも存在せず、原則である割合に応じた精算に戻ります。
| 条項の型 | 計算の基礎 | 試算(月額5万円・自社での例示) |
|---|---|---|
| 最低の期間の残存分 | 残り7か月×月額 | 35万円 |
| 予告の期間の不足分 | 不足2か月×月額 | 10万円 |
| 損害賠償額の予定 | 書面で定めた額 | 上限の定めがあればその額まで |
| 書面が無い場合 | 割合に応じた精算 | 当月分の按分のみ |
手順は、書面の確認から通知、資料の受け取りまでを一本の流れに並べる
現在の契約を終える作業は、手順を先に決めておくと途中で迷いません。全体は九つの段取りに分かれ、上から順に進めれば戻る場面がほとんど出ません。
一つ目は、いま交わしている書面と直近三か月ぶんの請求書を机に出すことです。金額と期間の取り決めは、この二つで確かめられます。
二つ目は、解約を申し出る期限と、その効果を読むことです。予告の期間、自動更新の有無、中途で終える場合の精算の三点を抜き書きします。
三つ目は、次の担い手を決めることです。顧問税理士の契約解除で空白の期間を作らないためであり、引き継ぎの範囲を詰める相談先にもなります。
四つ目は、受け取る資料の一覧を作ることです。次の担い手に、何があれば初年度を回せるかを聞いて作ると、抜けが出ません。
五つ目が申し出です。書面で出し、届いた日付を双方で共有します。ここまでの四つを終えてから出すのが安全です。
六つ目は最終月の報酬の精算、七つ目が資料とデータの引き継ぎです。八つ目に、税務代理の委任が終わった旨を税務官公署へ伝えます。
九つ目が電子申告の名義と暗証番号の整理です。ここまで済めば、事務としての解除は完了します。
顧問税理士の契約解除にかかる期間の目安も置いておきます。書面の確認に一週間、次の担い手の選定に一か月から二か月、資料の受け渡しに一か月というのが標準的な組み方です。
この目安を足すと、書面の確認から引き継ぎの完了まで二か月から三か月です。顧問税理士の契約解除をこの幅より短く見積もると、途中で月次の処理が止まります。
順序を入れ替えるとトラブルが起きます。次の担い手を決める前に解約を申し出ると、月次の処理が止まり、こちらの手間が増えます。
失敗の型はもう一つあります。口頭で伝えたあと書面を出さずに放置し、予告の起算がいつなのか双方で食い違う形です。
手順を紙に落とす利点は、社内で共有できることです。経理の担当者と経営者が同じ表を見て動けば、確かめ直す往復が減ります。
下に顧問税理士の契約解除の手順を九つの段取りで並べます。自社の暦に日付を入れてから動き出してください。
- いま交わしている書面と直近の請求書を出し、金額と期間の取り決めを読む
- 終わりを申し出る期限、自動更新の有無、違約金と精算の定めを抜き書きする
- 次の担い手を決め、初年度に必要な資料を聞き取る
- 受け取る資料の一覧を作り、原本と写しの別を書き添える
- 解除の意思表示を書面で出し、届いた日付を双方で控える
- 最終月までの報酬を按分し、請求と支払いを確定させる
- 引き継ぎの一覧に沿って帳簿、申告書の控え、会計データを受け取り、消し込みを入れる
- 税務代理の委任が終わった旨を所轄の税務署へ届け出る
- 電子申告の識別番号と暗証番号を自社の管理に戻す
解約の申し出は口頭で終わらせず、届いた日付が残る形にする

解約を伝える場面は、多くの経営者にとって気の重い場面です。ここを電話一本で済ませてしまうと、後から解約日の認識が曖昧になってしまいます。
民法は、意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる、と定めています。効力の起点は、送った日ではなく届いた日です。
委任契約の予告の期間が三か月と決めてあるなら、届いた日から三か月です。月末に電話で伝え、書面を翌月半ばに出したなら、翌月半ばが起点になります。
顧問税理士の契約解除を伝える文面は短くします。何月の申告をもって終えたいという一文と、精算と資料の受け渡しについて相談したいという一文で足ります。
理由は一つに絞ります。社内で経理の体制を組み直すことにした、という書き方であれば、事実として通り、角も立ちません。
不満を並べ立てる必要はありません。書面は感情を伝える場ではなく、日付と範囲を確定させるための道具です。
手順としての送り方は三つあります。持参して受領印をもらう、書留で送る、本文をメールで送って受領の返信をもらう、のいずれかです。
トラブルになりそうな気配があるなら、顧問税理士の契約解除の申し出は内容証明の形を選びます。文面と差し出した日付が郵便局に記録として残ります。
電子メールでも意思表示として有効です。到達を示すために、受け取った旨の返信を必ずもらってください。返信がなければ、電話で確かめたうえでその日時を記録します。
社内では、解約を申し出た日、届いた日、返答があった日の三つを一枚の書面にまとめておきます。後で精算の話になったときに、この一枚が基準になります。
相手が受け取りを避ける形になった場合の備えも条文にあります。正当な理由なく到達を妨げたときは、通常到達すべきであった時に到達したものとみなされる仕組みです。
解約を伝えたあとの数週間も、平常どおりの依頼を続けて構いません。顧問税理士の契約解除は、資料の引き渡しが終わるまで日々の処理を止めるものではありません。
判断の基準は一つです。あとで予告の期間を数えるとき、届いた日を双方が同じ日付で言えるかどうかで、送り方を選んでください。
顧問税理士の契約解除を切り出す時期は、申告と納付の区切りから逆算して決める

解約をいつ切り出すかで、双方の負担は大きく変わります。暦の側から決めると、作業量が最も小さくなる位置が見つかります。
最も軽いのは、決算と申告を終えた直後です。ひと事業年度ぶんの記録がそこで閉じるため、渡す範囲を年度で区切れます。
3月に決算を迎える法人なら、申告を終えた6月から7月です。期の途中で終えると、月ごとの資料をそろえ直す作業が上乗せされます。
顧問税理士の契約解除では納付の暦も見ます。源泉徴収した所得税を半期ごとにまとめて納める特例を使っているなら、その納付を済ませた直後が切れ目になります。
消費税の中間の申告がある会社は、その回数だけ切れ目が増えます。年3回や年11回の会社では、納付の直後に合わせるほうが手戻りが出ません。
年末調整を委ねているなら、その作業を終えた1月以降に置きます。年をまたぐ形で引き渡すと、源泉徴収票の作成主体が曖昧になります。
顧問税理士の契約解除を避けたい時期もはっきりしています。調査の事前通知が届いている時期と、融資の審査が進んでいる時期です。
調査は、それまでの経緯を知っている担い手が対応するほうが早く終わります。審査も、直前の数字を作った側が説明したほうが往復が減ります。
補助金や助成金の申請が進行中の場合も同じです。提出済みの数字を作った側が替わると、確かめ直す手間が発生し、期限をめぐるトラブルにもつながります。
具体的なスケジュールの立て方を逆算の手順で整理します。顧問税理士の契約解除は、次の決算月の3か月前に候補の選定を始め、2か月前までに申し出て、1か月前までに引き継ぎを終える形です。
委任契約の予告の期間が三か月と定めてあるなら、この逆算をさらにひと月前倒しします。条項を読む作業と暦を決める作業は、必ず同時に行ってください。
解約を急ぐ理由が、一時てきな感情によるものであれば、一度冷静になり、適切なスケジュールを再検討してください。暦から決めた日程のほうが、結果として損が小さくなります。
避けたい形も書いておきます。決算の申告が終わる直前に伝えると、その年度だけ二つの事務所が関わることになり、資料をそろえ直す手間が増えます。
手順の終盤に残るのが、税務代理権限証書と電子申告の名義の整理である
手順の中で最も見落とされやすいのが、税務官公署に対する届出です。解約は、書面のやりとりと報酬の精算だけで終わるものではありません。
税理士法は、税務代理をする場合には、その権限を有することを証する書面を税務官公署に提出しなければならない、と定めています。これが税務代理権限証書です。
この書面が出ている間、税務署からの連絡は代理人に向かいます。何も手当てをしないと、終えたはずの事務所に通知が届き続ける状態が起きます。
国税庁は、税務代理権限証書に記載した税務代理の委任が終了した旨の通知書という手続きを案内しています。顧問税理士の契約解除では、税理士側が税務署長へ出す形が基本です。
業務を依頼していた経営者側から伝えることもできます。個人の場合は、委任者の住所と氏名、委任が終了した税理士や税理士法人の氏名、名称、所在地、委任が終了した旨、その他参考事項を任意の様式に書いて出す形です。
会社の場合は原則として異動届出書を使います。異動事項等の欄に委任が終了した旨を、異動前の欄に終了した相手の氏名、名称、所在地を書きます。
あわせて、電子申告に関する権限や管理についても整理しておきましょう。利用者を識別する番号と暗証番号を事務所が管理していた会社は、この機会に自社の管理へ戻してください。
顧問税理士の契約解除で番号を知らないまま乗り換えると、次の担い手が新しく取り直すことになります。過去に送信した申告のデータを参照できなくなる場面も出ます。
電子的な通知を代理で受け取る設定にしていた会社は、その設定も外します。更正の通知や納付すべき税額の通知が、旧の代理人に届くことを避けるためです。
この三つは、顧問税理士の契約解除を申し出た当日ではなく、最終の申告を終えた後に行います。手順を早めると、進行中の申告の代理権が切れてしまいます。
届出は郵送でも電子でも出せます。控えを一部残し、引き継ぎの一覧に受領の記録として綴じておいてください。
手順の終盤は地味な作業の連続ですが、ここを飛ばすと後から連絡の行き違いというトラブルが起きます。事務としての区切りは、この届出で付きます。
引き継ぎで受け取る帳簿と申告書の控えは、先に一覧にして数える

引き継ぎは、点数を数える作業です。解約で最も手が動くのがこの場面であり、何をいくつ受け取るのかを先に決めておけば当日に迷いません。
国税庁の規定では、法人は帳簿を備え付けて取引を記録し、その帳簿と、取引に関して作成または受領した書類を、確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければなりません。
青色の申告書を出した事業年度で欠損金額が生じた事業年度などは、10年間になります。保存の主体は会社であって、事務所ではありません。
国税庁は帳簿の例として、総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳を挙げています。顧問税理士の契約解除では、この一覧がそのまま受け取りの対象です。
書類の例としては、棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書が挙げられています。ここに並ぶものは、手元に揃っている必要があります。
引き継ぎの実務では、直近3期分の決算書と申告書の控えを紙で受け取り、それ以前は電子の写しで足ります。届出の控えは全期間ぶんを求めてください。
会計のソフトが事務所の名義になっていると、蓄積したデータを自社の手元へ移せない場合があります。ソフトの契約名義がどちらにあるのかを早い段階で調べておかないと、トラブルの原因になります。
顧問税理士の契約解除では、データを汎用の形式に書き出したものと、ソフトの独自の形式のバックアップの両方でもらうのが安全です。次の担い手が別のソフトを使う場合に効きます。
一覧には、原本と写しの別を必ず書き添えます。原本を預けていたものは原本で返してもらい、事務所が作った内部の資料は対象から外します。
引き継ぎの手順は一度で終わらせず、二回に分ける例が多いです。一回目で紙とデータを受け取り、二回目で不足分を埋める形にすると抜けが減ります。
引き継ぎの当日は、消し込みができる一覧を印刷して持参します。その場で確かめ、足りないものはその場で日付を決めます。
下の一覧は、年商5,000万円規模の会社が顧問税理士の契約解除で標準的に受け取るものです。業種によって加わるものがあるため、次の担い手に一度見てもらってください。
- 総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳などの帳簿(保存期間の残っている年分)
- 直近3期ぶんの決算書と申告書の控え(紙の原本もしくは署名済みの写し)
- 固定資産台帳と、償却の計算の明細
- 会計データ(汎用の形式に書き出したものと、ソフト独自のバックアップ)
- 税務署や自治体へ提出した届出の控え(全期間ぶん)
- 給与の支払いに関する帳簿と、年末調整の関係書類
- 預けていた領収書、請求書、契約の書面などの原本
トラブルの多くは、資料の返還と最終月の報酬という二つの点に集まる
解約に伴うトラブルが起きる場所は、実はかなり限られています。資料が返ってこないという話と、最後の請求額が合わないという話の二つです。
引き継ぎの話から整理します。自社が預けた原本は自社のものであり、返してもらうのが筋です。ここに争う余地はほとんどありません。
一方で、事務側が自らの業務のために作った書類は、返還の対象になりません。税理士法は、税理士業務に関して帳簿を作成し、委嘱者別に、かつ、一件ごとに内容とてん末を記載しなければならないと定めています。
この帳簿は閉鎖後5年間の保存が義務づけられ、事務所の側に残ります。顧問税理士の契約解除ですべての紙が戻るわけではない、と考えてください。
トラブルの境目が分かりにくいのは、試算表や内訳の資料です。会社の資料をもとに作られたものは渡してもらえることが多く、判断の過程を記した控えは残ります。
報酬の話に移ります。もめる形は一つで、最終月をどちらが持つかという点です。書面に月の途中で終える場合の定めがなければ、委任契約の原則である割合に応じた精算に戻ります。
失敗の型として多いのは、精算を先送りにしたまま資料だけ受け取ってしまう手順です。渡し終えた後は、金額の話に応じてもらいにくくなります。
顧問税理士の契約解除の順序としては、金額を確定させてから受け渡しの日程を組みます。請求書を先にもらい、違約金を含む内訳を確かめ、支払いと受け渡しを同じ週に置く形が滑らかです。
それでも折り合わないときの窓口があります。税理士法は、税理士会の会則に、会員の業務に関する紛議の調停に関する規定を置くことを求めています。
日本税理士会連合会の資料によれば、この調停は裁判外の紛争解決の手続の一種で、各税理士会に紛議調停委員会が置かれています。報酬の問題や処理の責任の問題を、裁判によらず解く道です。
調停は和解を斡旋する仕組みで、白黒を付けるものではありません。顧問税理士の契約解除に逃げ場はないと思い込まずに済むだけで、交渉の焦りが減ります。
トラブルの大半は、日付と金額を紙に落とすだけで避けられます。争点になる二つを先に潰しておくことが、最も安上がりな備えです。
解約したあとに嫌がらせをされるのではないかという不安は、事実で確かめられる

解約の相談で必ず出てくる心配があります。終えたあとに税務署へ何かを伝えられるのではないか、という不安です。
こうした不安の背景には、決算の内容や過去の申告に懸念があり、それが外部に漏れることを無意識に恐れてしまうという心理が働いているケースが一定数あります。
やましさのない会社の経営者であっても、同様の不安を感じてしまうことは珍しくありません。心配の総量と、実際の危険の大きさは一致していません。
顧問税理士の契約解除に関わる法律の側も見ておきます。税理士法は、正当な理由なく業務で知り得た秘密を他に洩らすことも、自分のために用いることも禁じています。
この義務は、資格を失った後にも及びます。関係が終わったから話してよい、という構造にはなっていません。
違反には仕組みが用意されています。国税庁は、税理士に対する懲戒処分等を公表しており、処分の内容と対象者が確認できる形になっています。
つまり、適正に報酬を払い、表へ出せない処理を抱えていないのであれば、顧問税理士の契約解除で恐れる理由はほとんど残りません。これは実務上の実態と条文の内容に照らしても裏付けられる点です。
不安が消えない場合は、原因を分けてください。処理そのものに不安があるなら、それは解約の問題ではなく、過去の申告の内容の問題です。
その場合の手順は逆になります。先に次の担い手へ過去3期ぶんを見てもらい、必要なら修正の申告を検討したうえで、顧問税理士の契約解除の話を進めます。
もう一つ多い心配が、悪い評判を業界内で流されるのではないか、というものです。実際には、事務所どうしが個別の会社についてトラブルの情報を交わす動機はほとんどありません。
次の担い手から前の事務所へ連絡が入る場面もあります。それは引き継ぎのための連絡であり、評価を伝え合う場ではありません。
解約は、法律が予定している普通の出来事です。不安を一つずつ言葉にしていくと、残るのは事務の段取りだけになります。
切り分けの基準を置いておきます。不安の対象が相手の振る舞いなら段取りの問題、過去の申告の中身なら会計処理の問題であり、後者は解約とは別に手当てします。
税理士は、正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、又は窃用してはならない。税理士でなくなつた後においても、また同様とする。
引き継ぎを終えた三か月後に、選び直しが働いたかどうかを数で確かめる

引き継ぎが済んだところで終わりにせず、三か月後に点検の日を置いてください。選び直しの判断が正しかったかどうかは、そこで初めて具体的な実績として数字に表れます。
確かめるのは三つです。月次の資料が締めてから何日で返ってくるか、質問への返答が何日で来るか、こちらから聞かなくても指摘が出てくるか。
期待の置き方も先に決めておきます。売上の拡大を税理士に求めるべきではない、という点は明確に確認しておく必要があります。
売上が上がるきっかけを作ることはあるが、拡大そのものは経営者の責任であり役割だからです。ここを取り違えると、次の相手との間でも同じトラブルが起きます。
顧問税理士の契約解除のあと最初の決算で見る箇所も決めておきます。例えば、期末時点の通帳の残高と決算書の預金の残高が違わないか、内訳の不明な仮受金と仮払金が多く残っていないか、といった点は必ず確認すべきです。
社長への短期の貸付金が残っていないかも、同じ観点にあたります。指摘が出てくるかどうかで、処理の丁寧さが測れます。
この見方は、前の事務所を裁くために使うものではありません。次の相手の初回の決算で、同じ箇所がどう扱われるかを見るための物差しです。
もう一つの数字が費用です。顧問税理士の契約解除の前後で月額と決算の報酬を合計し、受けている役務の量と並べます。顧問料が下がった一方で役務も減ったなら、依頼先を変えたメリットがあったとは言えません。
税理士を五つの層に分けると、その層によって料金の水準も応じてくれる範囲も大きく変わります。自社がどの層と組んだのかを知ると、次の判断が早くなります。層ごとの違いは税理士のレベルを5段階で整理した記事にあります。
引き継ぎから三か月の点検で、三つのうち二つが満たされていれば、顧問税理士の契約解除は機能しています。二つに届かないなら、選ぶ段階で受けた説明と、実際の動き方がずれていたことになります。
その場合も、やることは同じです。事実を並べ、期限を切って伝え、変化がなければもう一度候補を比べる。この手順は何度でも使えます。
点検する時期も決めておきます。年商の桁が変わったとき、新しい事業を始めたとき、代が替わるときが節目になります。解約を経た会社ほど、この習慣が効きます。
はっきり言ってしまえば、売上の拡大は税理士に求めるべきではないということになります。
税理士コンシェルジュ事務局からのコメント
顧問税理士の契約解除でつまずく会社は、決まって金額と日付を紙に落とす前に話を切り出しています。1,600名との面談を重ねてきたなかでも、条項と暦を先に確かめた会社ほど、静かに、そして短い期間で終えていました。顧問税理士の契約解除は、書面と直近の請求書を机に出し、終わりを申し出る期限がどこに書かれているかを探すところから始まります。