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「税理士を訴えてやる!」その前に考えるべき3つのポイント

2022年1月4日
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「顧問契約を結んでいた税理士のミスが見つかり、会社に損害が生じる」というトラブルは決してないとはいえません。いいかげんな税理士の場合、そのリスクはより上がるでしょうが、たとえ真面目で有能な税理士でも、人間である以上ミスが発生する可能性をゼロにはできません。

そうはいっても、受けた損害が大きい場合や、明らかな怠慢によるミスに対して、ただ黙っている訳にはいかない場合もあります。まずはミスを訂正し、業務のやり直しを請求することになります。そして、損害の大きさ次第では、賠償請求をしたり、顧問税理士を変えることを検討する場合もあるでしょう。

しかし、いずれにせよ「訴えてやる!」等と冗談で言うことはあっても、実際に裁判となると金銭的にも時間的にも多大な負担となります。これは「訴える側」も「訴えられる側」も同様です。税理士を訴えるということは、あくまで最終手段です。避けるに越したことはありません。

したがって、ここでは「税理士を訴えたい!」という考えが頭をよぎったときに、まずは考えていただきたいポイントについて挙げていきます。

税理士を訴えるか否かは、ミスの内容を検証して考える

まず、税理士の業務にミスが見つかった場合、その内容をよく検証しましょう。ミスの内容によって、賠償請求をするか否かが変わってくるためです。

例えば、税理士のミスの結果明らかになった本来納付すべき税負担については、損害賠償の対象にはなりません。一方、ミスが原因で加算税や延滞税が発生した場合、その負担は損害賠償の対象になります。

ミスとしてよくあるのが、税務申告のミスです。例えば、控除対象だったのに失念していたため余計に税負担が生じてしまった、届出の失念のために要件を満たしていたにもかかわらず免税措置が受けられなかった、といった事例があります。

他にも、法律の解釈・適用のミスや情報のキャッチアップができていなかったことによるミスや、税務処理に関する情報提供や説明を怠ったこと等により依頼者に損害が発生した場合には、税理士の責任が問題となることもあります。

損害を負った以上、「訴えてやる!」という気持ちになるのも無理はありません。しかし、裁判には多大な労力がかかります。また、裁判まで進んだ場合、今後もその税理士と付き合っていくのは難しくなるかもしれません。

その場合、税理士変更となり、さらに負担が増します。税理士変更を行うことは引き継ぎの手間、税理士探しの労力、ミスマッチのリスク等、企業内だけで対応しようとすると、かなり大変です。

税理士を訴える前に行うべき3つのポイント

税理士のミスと被った損害を把握してもなお、「よし!税理士を訴えるぞ」と行動を起こすのは早計です。

裁判に多大な労力をかけることは、事業の運営にも大きな影響を与えます。まず、以下の3つのポイントについて検討することをお薦めします。

税理士を訴える前に行うべきこと1、顧問契約内容を確認する

例えば、日々の記帳にミスがあったとします。この場合、記帳代行を依頼していたのか、自社の入力のチェックのみを依頼していたのか等、契約の内容を確認する必要があります。

「どこまでが税理士の仕事として契約されていたのか」が、ミスが発生した場合に税理士が負う責任の重さの判断に繋がります。契約外のことまで責任は負えない、ということにもなります。

また、税理士は自身の務めを果たそうと「このままでは違反になってしまいますよ」「これも記憶しておいたほうがよいですよ」等とアドバイスをしていたにも関わらず、顧客側が耳を貸さなかった結果として損害が生じた場合、これを税理士の責任とするのは難しいでしょう。つまり、すべて税理士の責任になるとは限りません。

多くの税理士は損害賠償保険に加入しているので、明らかに自らに否があると認めれば、冷静に賠償に応じることが多いです。前向きな話合いをするためにも、こちらとしても契約内容を把握しておくことが大切です。ミスが発生したときに限らず、日頃から契約内容を意識しておきましょう。

税理士を訴える前に行うべきこと2、税理士会に相談する

当事者間で話合いがつかない場合には、調停機関として税理士会が頼りになります。税理士会は各地方に設けられているので、仕事を依頼している税理士が所属している税理士会に問合せをしてみるとよいでしょう。

参照:東京税理士会ホームページ 紛議調停制度

税理士会内の紛議調停委員会に申し立て、調停が行われることとなると、税理士会から税理士へ調停の場への出席が求められます。税理士は必ず調停の場に出席しなければならないので、否が応でも問題解決へ前進することとなります。

調停を利用するメリットは、損害が生じたそもそもの原因や、賠償される範囲が明確になり、裁判を起こさずに問題の解決を期待できることです。ただし、調停の場を設けてもなお、双方の意見が食い違い、調停が不成立となる場合もあります。

税理士を訴える前に行うべきこと3、弁護士に相談する

また、税理士会に申し立てても、調停を受け付けてもらえないこともあります。そうした場合には、弁護士に相談し、法律に基いて問題の解決を図るという選択肢もあります。税理士を相手とした損害賠償を得意としている弁護士事務所もあるので、そうした事務所に依頼するとよりスムーズに進めることができるでしょう。

なお、「弁護士に相談=裁判」ではありません。弁護士という第三者のもとで話合いの場を設けるのが一般的です。それでも決着がつかなければ、いよいよ訴訟を起こして裁判で争うことになるでしょう。

税理士を訴え、税理士変更となった場合~選び方における2つの基準

損害賠償を受けたとしても、顧問税理士との感情的なしこりは残るでしょう。特に、損害が生じた背景が「思い返せば、いつも対応が適当だった」「『全部任せておけ』と言って、詳しく説明してくれなかった」といった、その税理士固有のものであると感じる場合はなおさらです。

こうしたトラブルを機に、顧問税理士の変更に踏み切る例は少なくありあせん。もしも「顧問税理士を変更する」と決断した場合、まずは以下の2つのポイントを判断基準にしてみましょう。

税理士を訴え、変更を検討する場合1、契約書・見積書の確認

昔は、顧問契約書もなしに顧問料を取る税理士もいました。損害賠償まで検討するような重大なミスに見舞われた人は、「契約書さえあれば…」「きちんと書面を交わしておけばよかった…」と契約の不備を嘆く場合もあります。

現在ではしっかりとした契約書を作成することは必須です。もしも税理士を変更する場合、この点についてしっかりと対応している税理士を選ぶのは最低条件です。

契約書の文言も、税理士の専門用語ばかりで書かれたものではなく、依頼者にも理解できるようなものになっていれば理想的です。理解できていない契約を結ぶことは危険です。わからないことがあれば、何でも契約前に確認するようにしましょう。

なお、契約書にある税理士が履行するべき業務について「どの業務に、料金がいくらかかるのか」を明確化した見積書を提示できることは、その税理士が優秀であるという判断基準の1つです。契約後も、きっちりと仕事をしてくれることが期待できます。

加えて、業界の事情に詳しかったり、事業規模が同程度の顧客を多く持っていたりといった自社との共通点が多ければ、よりプラスの判断材料になります。

税理士を訴え、変更を検討する場合2、コミュニケーション能力の確認

「契約書を交わしたあとは、担当者任せで淡々と業務をこなすだけ」という税理士と契約することは、トラブルの種を育てるようなものです。

契約前の面談時から、税理士の人物像をよく観察し、相性がよいと感じられるコミュニケーションが取れることは非常に重要です。

過当競争といわれる税理士業界では「税理士も、サービス業の一種である」という考え方が浸透しつつあります。昔のように、「先生」と呼ばれることにあぐらをかいて、顧客に横柄な態度をとる税理士は減ってきてはいます。しかし、一部にはまだ残っているので、付き合っていくのに耐えられないような「上から目線」な税理士は割けたほうが無難でしょう。

また、相手に求めるコミュニケーション能力は、人それぞれです。どんな税理士を求めているのかを明確にしておくと、より自社に合った税理士を見つけることに繋がるでしょう。

例えば「フランクな姿勢で、顧客の疑問に答えてくれる税理士のほうが気軽に付き合えてよい」と考えるのか、「専門家として、どっしりと構えている税理士のほうが安心できる」と考えるのかでも、随分と求める人物像は変わってきます。

なるべくなら税理士を訴える状況は避けたい

不幸にもトラブルが生じたら、大きな不満や憤りを抱えることになるのは当然です。それでも、税理士を訴える事態にまで発展させることは避けたいものです。その前にできることは少なくありません。

トラブルの程度にもよりますが、多くの場合は話合いで解決することも可能です。また、訴えることなく損害賠償請求をすることもできます。すでに起きてしまったトラブルに、できるだけ少ない労力で解決するということは、前向きな経営判断の1つといえるでしょう。

どうしても納得がいかない場合は税理士を訴えることも考えなくてはいけませんが、その場合、あわせて税理士の変更も視野に入れておいたほうがよいでしょう。税理士を訴えた後も、同じ税理士と良好な関係を続けていくのは難しいことがほとんどです。

その場合、知人に新しい税理士を紹介してもらうよりも、税理士紹介サービスを利用して、税理士を紹介してもらうのも一考です。知人に税理士を変更するに至った背景を説明するのも気が進まないものですし、知人にとっての「よい税理士」が、自社にとっても同様とは限りません。また、ウェブで検索しても税理士の評判は出回っておらず、自力で探すのは難しいでしょう。

税理士紹介サービスであれば第三者的な立場から事の顛末を理解し、より適切な税理士を紹介することが可能です。

参考記事:よい税理士の評判ほど出回らない!?


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