税理士が偉そうだと感じたときの対処法、変更を判断する基準
税理士が偉そうだと感じたことのある経営者は、決して少なくありません。原因の多くは人柄そのものではなく、税務という領域の情報が片側へ偏っている構造にあります。その不満がどこから生まれているのかを、言葉の印象と仕事の中身に切り分けるところから始めます。
主観的な印象を客観的な事実に整理する手順と、要望を先方へ伝えるときの対処法を、順を追って示します。そのうえで、契約解除まで視野に入れて続けるか変えるかを決める判断基準を、税理士法の条文と決算書の確認箇所から組み立てます。

税理士が偉そうだと感じる場面の多くは、物言いではなく情報量の差から生まれる
顧問先の経営者から寄せられる声で多いのは、質問をしても「決まりですから」の一言で終わる、という応対です。理由の説明が省かれたまま結論だけが返ると、受け取る側には見下されたという印象だけが残ります。
税理士が偉そうだと感じた瞬間を紙に書き出してもらうと、不満の内容はおおむね三つのパターンに集約します。返答が短く理由がないこと、専門用語のまま話が進むこと、自社の事業の中身を覚えてもらえていないことです。
例えば年商5,000万円規模の建設業で、期中に外注費の処理を尋ねたところ「前年と同じで結構です」とだけ返ってきた例があります。前年と契約条件が変わっていれば答えは変わるはずで、経営者が覚えた違和感は的を射たものでした。
反対の例もあります。指摘そのものは厳しくても、根拠となる条文と、直さなかったときに起きることまで示していれば、受け止め方は変わります。厳しさと横柄さは同じものではありません。
押さえておきたいのは、税理士が偉そうに見える状態の多くが、悪意ではなく情報量の差から生じている点です。相手は毎日その領域にいて、経営者が税務に触れるのは年に数回しかありません。
差があること自体は避けられません。問題は、その差を埋める作業が顧問契約の中に含まれているのか、含まれているのに実行されていないのかという点にあります。
対処法を考える前にここを分けておかないと、次の事務所を選ぶときにも同じ物差ししか使えません。偉そうという印象はきっかけとしては妥当ですが、最終的な判断基準としては不十分である、という認識が出発点になります。
この時点で変更を決める必要はありません。判断基準は、不満の中身を分けたあとで組み立てたほうが精度が上がります。
不満の中身を、接し方・説明の量・成果の三つに分けて書き出す

不満を扱える形にする最初の作業は、分類です。接し方の問題、説明の量の問題、成果の問題という三つの欄を作り、思い当たる出来事をそれぞれへ書き込みます。
接し方の問題は、口調や返信の速度、面談での視線の置き方など、相手の振る舞いに関するものです。ここに集まる不満は契約書の条項では裁けない代わりに、伝えれば改善する余地が最も大きい領域でもあります。
説明の量の問題は、処理の根拠を示さない、選択肢を並べない、期限を先に告げないといった中身です。税務の判断には幅があり、幅があること自体を伝えてもらえないと、経営者は決定に参加できません。
成果の問題は、期限の失念、消費税の届出の出し忘れ、決算前の打ち合わせが一度もないといった実害を伴うものです。三つのうちで最も重く、記録さえ残っていれば後から検証できます。
書き出しの粒度は、日付と相手の氏名と、そのとき交わした具体的な言葉までそろえます。「3月12日の面談で、課税事業者になる時期を尋ねたが回答が保留のまま次の面談まで音沙汰なし」という水準です。
三つの欄へ並べ替えると、多くの経営者は成果の欄が空であることに気づきます。実害は出ていないが接し方が合わない、という状態は珍しくなく、そこで取るべき対処法も変わってきます。
反対に成果の欄が埋まる場合、扱いは変わります。接し方の改善を求める話し合いよりも、事実関係の確定と資料の保全を先に置いたほうが、後で選べる道が広がります。
この分け方は、感情を抑え込むためのものではありません。腹立たしさは残したまま、交渉と判断に使える材料だけを取り出すための作業です。
税理士が偉そうだという印象は、この三つのどれから来ているのかが分かるだけで、扱いやすさが変わります。
接し方の欄だけが埋まっているのに契約を切ると、次の事務所でも同じ不満を抱えることになります。税理士が偉そうだという一言でまとめる前に、欄の埋まり方を見てください。
税務代理と税務相談の違いを知ると、依頼できる範囲がはっきりする
要望を伝える前に確かめておきたいのが、そもそも何を依頼できる契約なのかという範囲です。依頼できる業務は税理士法第2条に定めがあり、税務代理、税務書類の作成、税務相談の三つが本体とされています。
税務代理は、申告や申請、税務調査の場での主張や陳述を、依頼者に代わって行うことを指します。税務書類の作成は申告書等を作ることであり、税務相談は課税標準等の計算に関する相談に応じることです。
同じ条文の第2項には、これらに付随して財務書類の作成や会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務を行える旨が置かれています。記帳代行は本体ではなく付随の位置づけである、という点は覚えておく価値があります。
ここを知らないまま「銀行への説明にも同席してほしい」「補助金の申請書も見てほしい」と求め、断られて横柄だと受け取ってしまう例が実際にあります。断りの理由が伝わらないと、接し方の問題に見えてしまいます。
依頼できる範囲を外れた要望であれば、追加の報酬で引き受けてもらえるのか、他の専門家を紹介してもらえるのかという話に切り替わります。範囲の確認は、対処法そのものを変える作業でもあります。
反対に、税務相談の範囲にある問いへ答えないのであれば、それは接し方ではなく履行の問題です。「決まりですから」で終わる応答が繰り返されるなら、契約書の業務範囲の条項を開いて突き合わせます。
年間の顧問報酬に何が含まれているかを、書面で一覧にしてもらうよう頼むのが早道です。含まれる業務、含まれない業務、追加報酬の目安という三つの列があれば、以後の行き違いは大きく減ります。
税理士が偉そうだと感じた出来事のうち、範囲外の依頼を断られた場面が混じっていないかも、この段階で確かめておきます。
依頼できる範囲を先に確かめておけば、断られた場面を不満として数えるべきかどうかも判定できます。対処法を組み立てる土台は、この確認に基づいて組み立てます。
税理士が偉そうだという記憶の一部は、この行き違いから生まれています。範囲の外と内を分ければ、残る不満はぐっと絞られます。
税理士法第1条の使命は、独立した公正な立場を求めている
この国家資格が何のために設けられているかは、税理士法の冒頭に書かれています。条文を読んでおくと、厳しい指摘が使命の履行なのか、単なる横柄さなのかを見分ける手がかりになります。
読みどころは「独立した公正な立場」という語です。依頼者の要望をそのまま通す立場ではないことが、使命の段階で明示されています。
この一文があるため、経費として認められない支出を戻すよう求められた事務所が、はっきり断るのは正しい仕事です。断り方が乱暴であれば直してもらう対象になりますが、断ったこと自体は責められません。
実際、粉飾に近い処理を止めた場面が「税理士が偉そう」という記憶へ変わっている例は少なくありません。止めた側の言葉が足りなかった可能性と、止めたこと自体の正しさは、切り離して評価します。
同時に、条文は「納税義務者の信頼にこたえ」とも定めています。信頼にこたえる先は依頼した経営者であり、税務署ではありません。説明を尽くさない姿勢は、この部分から見て不足だと言えます。
言い換えると、使命の規定は両側から読めます。依頼者の言いなりにならないことと、依頼者の信頼にこたえることが、同じ一文の中に並んでいます。
不満として書き出した出来事を、この二つの基準に照らして確認します。言いなりにならなかっただけなら受け入れる、信頼にこたえていないなら改善を求める、という整理ができます。
条文は年に一度読み返せば十分です。e-Gov法令検索で全文が公開されており、改正の履歴も同じ画面で確認できます。条文そのものは次のとおりです。
税理士が偉そうだと受け取った発言が、使命規定に沿った拒否だったのかどうかは、この二つの物差しで判定できます。不満の記録に条文名を添えておくと、後の話し合いも早く進みます。
税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。
助言義務は第41条の3が定める、感じの良し悪しとは別の水準である
法が課す義務は使命だけではありません。国税庁は、税理士が遵守すべき主な税理士法上の義務等として16項目を挙げています。使命、税務代理の権限の明示、税理士証票の提示、秘密を守る義務などが並びます。
その一覧に助言義務があります。第41条の3という条文で、委嘱者が不正に賦課や徴収を免れている事実、不正に還付を受けている事実、課税標準等の計算の基礎となるべき事実を隠ぺいし仮装している事実を知った場合に、直ちにその是正を助言することを義務づけた定めです。
読んで分かるとおり、この義務は「不正を見つけたら直すよう助言せよ」という定めです。節税の提案をしなければならない、という意味の条文ではありません。
ここを取り違えると、提案が出てこないことを法令違反だと考えてしまいます。提案の量は契約と力量の話であって、法が最低限として求めている水準とは別の階層にあります。
法の水準を超える働きを示す仕組みとしては、第33条の2の書面添付があります。申告書の作成に関して計算し、整理し、相談に応じた事項を記載した書面を添付できる、という制度です。
添付は義務ではなく「できる」と書かれた任意の制度です。使っている事務所と使っていない事務所があり、使っているなら、どの項目を審査したかが書面へ残ります。
顧問先として確かめる価値があるのは、この書面を出しているかどうかと、出していないならその理由です。理由を答えられる事務所は、自分の業務の範囲を把握しています。
税理士が偉そうだと感じるかどうかと、この水準を満たしているかどうかは、まったく別の軸です。物腰が柔らかくても書面添付を知らない場合があり、物言いが硬くても毎期添付している場合があります。
二つの軸を混ぜないために、面談の記録には言い方と中身を別の行で残します。後から読み返したとき、どちらへの不満だったのかを取り違えずに済みます。助言義務の条文は次のとおりです。
税理士が偉そうだという感覚は、軸を分ける作業の入口には使えても、判定そのものには使えません。
税理士は、税理士業務を行うに当たつて、委嘱者が不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れている事実、不正に国税若しくは地方税の還付を受けている事実又は国税若しくは地方税の課税標準等の計算の基礎となるべき事実の全部若しくは一部を隠ぺいし、若しくは仮装している事実があることを知つたときは、直ちに、その是正をするよう助言しなければならない。
信用失墜行為の禁止は第37条にあるが、懲戒の類型に接し方は挙がらない

有資格者の振る舞いを直接に縛る条文もあります。第37条の信用失墜行為の禁止で、条文は一文だけです。文面だけを見れば、横柄な物言いも品位を害する行為に該当するようにも見えます。
だが実務で問題になるのは、告示で類型化された行為に当たるかどうかです。国税庁が公表している一般の懲戒の対象行為は、自己脱税、多額かつ反職業倫理的な自己申告漏れ、調査妨害、業務停止中の税理士への名義貸し、業務け怠、税理士会の会費の滞納、その他反職業倫理的行為などです。
この一覧に「顧問先への接し方」という項目はありません。委嘱された業務を正当な理由なく怠った場合が業務け怠として挙がっている程度で、口調そのものは対象になっていません。
懲戒処分の種類も定めがあり、税理士業務の禁止、2年以内の税理士業務の停止、戒告の三つです。いずれも財務大臣が行う行政処分であり、国税審議会の議決を経ることとされています。
ここから導かれる結論は単純です。感じの悪さは、制度上の仕組みでは解決されません。救済されないからこそ、続けるか変えるかは自社の判断基準で決めるほかありません。
反対に、期限を落とした、届出を出し忘れたといった事実が積み上がっている場合は、話の性質が変わります。実害の記録は、交渉の場でも次の依頼先を探す場面でも材料になります。
制度が扱う領域と扱わない領域の境目を知っておくと、期待の置き場所を間違えずに済みます。税理士が偉そうだという感覚は、この境目の外側にあると理解しておきます。
信用失墜行為の禁止を定める条文は、次の一文です。
税理士が偉そうだという不満は、この一覧のどこにも当てはまりません。だからこそ、判断基準を自社で持つ必要があります。
不満の記録を読み返すときは、制度が扱う領域の話なのか、扱わない領域の話なのかを先に決めます。対処法の宛先が変わるためです。
税理士は、税理士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。
税理士が偉そうに見える背景には、資格を選んだ人の適性の偏りがある
接し方の問題を、個人の性格へ還元しないほうが解像度は上がります。当社代表が2017年に著した書籍の第三章は、この資格を選ぶ人の傾向へ踏み込んでいます。
そこでは、コミュニケーションや提案が得意な有資格者もいるものの、そもそもこの資格を取る人は提案が苦手である、と述べられています。理由として挙げられているのは、変化が苦手であるからこそ安定した資格を活かす仕事へ就こうとしている、という点です。
人と会うことが好きな営業畑の人へ、細かい計算や管理が苦手な理由を尋ねているようなものだ、という例えが適しています。企画や戦略を練るのが好きなら、最初から別の仕事を選んでいる、という指摘です。
この見方に立つと、提案が出てこない事務所を責めても届かない理由が分かります。求めているものが、先方の得意分野の外側にある可能性があるからです。
税理士が偉そうに見える言動の一部も、同じ構造から説明できます。答えを一つに絞って短く返すのは、幅のある話を組み立てるより負荷が小さく、資格職として身につけた進め方でもあります。
敵は個々の担当者ではなく、経営者の期待と事務所の得意分野がかみ合っていない状態そのものです。かみ合っていないなら、期待の中身を伝え直すか、かみ合う相手を探すかの二択になります。
背景を理解しておくと、話し合いの入り方も変わります。人格の是正を求めるのではなく、必要な情報の形を具体的に指定するほうが、相手にとっても実行しやすい要求になります。
税理士が偉そうだという印象を持ったまま話を始めると、先方も身構えます。構造の話として切り出すことが、対処法の効き目を左右します。
この背景を知らないまま不満を伝えると、相手の人格を否定する話に聞こえてしまい、対処法としては空振りに終わります。
対処法は伝え方の設計から始まる、要望は口頭ではなく書面で残す

要望を伝える段階になったら、その伝え方を具体的に整理します。口頭で「もう少し丁寧に説明してほしい」と頼む形は、相手が何を変えればよいのか分からないため、改善にはつながりません。
対処法の核心は、抽象的な感想を伝えるのではなく、実行可能な単位まで要望を具体化することです。三件に絞るのは、相手が受け止められる量を超えないためです。十件並べると全体が人格批判に見え、防御に回らせてしまいます。
求める状態を動詞で書く工程が、最も効きます。「丁寧に」は評価語であり実行できませんが、「条文名をメールで示す」は実行できます。動詞へ変換できない要望は、まだ言語化が足りていない合図です。
送り先は担当者だけでなく、事務所の代表にも同送します。担当者の裁量では決められない要望があり、代表が知らないまま不満が積み上がっている例が多いためです。
送ったあとは、二回の月次面談を観察の期間へ充てます。変わらない場合に備えて、その二回の記録も同じ形式で残しておきます。
この進め方には副次的な効果もあります。要望が文章になった時点で、自社が本当に困っているのが接し方なのか成果なのかが、書いた側にも見えてきます。
税理士が偉そうだという感覚だけを伝えても、相手は謝るか黙るかしかできません。実行できる形へ落とすことが、関係を続ける可能性を残す唯一の道筋です。
以下は、対処法として実際に使える順序です。面談の記録が手元にある状態で読んでください。
税理士が偉そうだという表現を要望書へ書かないことも大切です。事実と求める状態だけを並べれば、相手は防御ではなく実行で応えられます。
対処法として送った文面は、そのまま次の材料になります。二回の面談で行動が変わらなかったという事実は、感情ではなく記録として残ります。
- 面談の記録から、直してほしい出来事を三件だけ選ぶ(多く並べると論点が散る)
- それぞれについて、事実(日付とやり取り)と、自社が困った内容を1行で書く
- 求める状態を動詞で書く(例:処理の根拠となる条文名を口頭ではなくメールで示す)
- 実行の期限と頻度を添える(例:月次の報告時に毎回、決算の2か月前までに一度)
- 書面またはメールで送り、次の面談の冒頭で受け取ったかどうかを確認する
決算書の四か所を確かめると、印象に頼らず仕事の質を測れる

接し方の改善を求めても変わらない場合、続いて確かめるのは仕事の質です。ここは印象を離れて、手元の書類だけで測れます。客観的な質を測る際は、決算書の確認から始めるのが効果的です。
特に重点的に見るべきなのは四か所です。残高のズレ、内訳の不明確な仮受金と仮払金、実態と離れた売掛金と買掛金、加えて社長への短期貸付金です。
期末時点の通帳残高と、決算書の普通預金の残高が違わないかを見ます。例えば、期末の通帳残高が300万円で決算書の普通預金残高は320万円などと間違えている場合、本来ここがずれるのは実務上ありえません。
内訳の分からない仮受金と仮払金が多く残っている場合も注意します。売掛金の入金が仮受金に含まれていたり、経費になるものが仮払金に含まれている可能性が高く、未完成のまま決算を締めていると考えられます。
売掛金は、未回収と分かっているものを長年残していると、金融機関からの評価が下がります。融資を受けられなくなったり、融資枠が小さくなるという実害が生じる恐れがあります。
社長への短期貸付金が残ったままだと、そもそも借入はできません。貸付金を残しているリスクを説明してくれない、指摘もしてもらえないという状態は問題があると考えられる、というのが同書の見方です。
四か所はいずれも、経営者が自分で開いて確かめられます。物腰が穏やかでもここが崩れている事務所があり、物言いが硬くてもここが整っている事務所があります。
不満の中身が成果の欄に集まっているなら、この確認は先に済ませておく価値があります。判断の基準となるポイントを整理すると、次のようになります。
税理士が偉そうだという印象と、決算書の状態は必ずしも一致しません。対処法を尽くしたあとで、この四か所を開いてください。
税理士が偉そうだと感じたことのない事務所でも、四か所のどこかが崩れていれば、判断基準の一つ目に該当します。
今付き合いのある税理士が、レベル1・レベル2の変更を検討した方がよい税理士なのかどうかを見分ける方法を紹介してまいります。分かりやすいのは決算書を見て判断する方法です。
| 確かめる箇所 | 突き合わせる資料 | ずれているときに疑うこと |
|---|---|---|
| 普通預金の残高 | 期末時点の通帳残高 | 他の科目にもずれが残っている |
| 仮受金・仮払金 | 内訳の一覧 | 未完成のまま決算を締めている |
| 売掛金・買掛金 | 得意先元帳・仕入先元帳 | 長期の未回収が放置されている |
| 社長への短期貸付金 | 役員報酬と出金の記録 | 借入の審査で不利になる |
判断基準を五つの問いに落とし込み、印象ではなく事実で決める
ここまでの材料がそろったら、続けるか変えるかを決めます。点数表を作る必要はありません。五つの問いに、印象ではなく事実で答えられるかどうかで足ります。
判断基準の一つ目に実害を挙げているのは、ここが唯一、後戻りできない領域だからです。加算税や青色申告の承認の取消しは、関係の良し悪しでは取り返せません。
二つ目と三つ目は、税務相談の履行を測っています。決算が終わってから数字を知らされるだけの状態は、税務代理は成立していても、相談に応じたとは言いにくい状態です。
四つ目は契約の透明性を見ています。一覧を出せない事務所は、業務範囲を自分でも把握していない可能性があり、追加の要望を出しても行き違いが続きます。
五つ目は改善の余地を測る問いです。伝え方を設計して送ったにもかかわらず二回とも変わらないなら、対処法の問題ではないと結論できます。
一つ目に該当があり、かつ五つ目が変わらないなら、契約解除を含めた変更の検討へ入る段階です。一つ目に該当がなく五つ目だけが残るなら、担当者の交代を求める道もあります。
担当者の交代は見落とされがちな選択肢です。事務所を変えずに担当だけを替えれば、引き継ぎの負荷はほとんど生じません。
この判断基準は、他社と比べるためのものではありません。自社が顧問料に対して何を受け取っているかを、事実で言えるようにするための道具です。問いは次の五つです。
判断基準を先に決めておくと、税理士が偉そうだと感じた日の記憶に左右されずに済みます。
五つの問いに事実で答えられないなら、まだ材料が足りていません。不満の記録と決算書の確認、対処法の実行を先に済ませます。
税理士が偉そうだという感覚は、五つの問いのどれにも直接は現れません。現れないからこそ、感覚を脇に置いたまま結論を出せます。
- 直近12か月で、期限の遅れや届出の漏れが一度でもあったか
- 決算の2か月以上前に、着地の見込みを示す打ち合わせが行われたか
- 処理の根拠を尋ねたとき、条文名または通達名まで返ってきたか
- 顧問報酬に含まれる業務の一覧を、書面で受け取っているか
- 要望を書面で伝えたあと、2回の月次面談で行動が変わったか
顧問契約の更新月から逆算して、続けるか変えるかの結論を出す

結論を出す時期は、顧問契約の更新月から逆算して決めます。多くの契約は自動更新で、契約解除の申し出に一定の予告期間が置かれています。契約書の該当条項を先に開いておきます。
予告期間の長さと、その起点が申し出の日なのか更新月なのかは、契約書ごとに異なります。条項の文言をそのまま読み取り、いつまでに伝えれば間に合うのかを日付で押さえておきます。契約解除の申し出の書き方や引き継ぎの段取りは別の論点であり、ここでは時期の逆算に絞ります。
決算期末の3か月前は、避けたほうがよい時期です。期中の資料を最も多く抱えている時期であり、判断を急ぐと材料の受け渡しに無理が出ます。
書籍の第四章は、レベル2に当たる事務所と付き合っている経営者について、漠然とした不満を抱えていても、長い付き合いの事務所が多く、変更に踏み切れない人が多いと述べています。しかし、会社の将来を考えれば、どこかで決断を下すべき時期が必ず来ます。
事業承継や世代交代の時期に見直すのも良い、という指摘もあります。区切りの時期を使えば、先方にとっても受け止めやすい話になります。
反対に、変えれば売上が伸びると考えるのは避けます。実のところ、税理士を変えても売上が直接上がるわけではありません。期待の向け方を誤ると次の事務所へも同じ不満を持つことになります。
税理士が偉そうだという感覚から出発した検討でも、最後に残る問いは同じです。顧問料に見合う情報と判断材料を受け取れているか、という一点に集約されます。
ここまでの判断基準に照らして答えが出たなら、次の一歩は情報を集めることです。
変更に踏み出すかどうかを決める前に、実際に何が起きるのかを知っておくと迷いが減ります。制度の面と実務の面から整理した税理士の変更について事実を並べた記事を読んだうえで、更新月の3か月前までに継続か変更かの結論を出すようにしてください。
顧問契約を続ける選択も、判断基準に照らして選んだのであれば後悔は残りません。不満が残るのは、決めないまま時間だけが過ぎる場合です。
税理士が偉そうだと感じた日から数えて、三か月あれば結論は出せます。
税理士コンシェルジュ事務局からのコメント
顧問契約を結んだ事務所への違和感は、多くの場合その人柄ではなく、期待と得意分野のずれから生まれています。税理士が偉そうだと感じた出来事を、接し方・説明の量・成果の三つへ書き分けるだけでも、次に取るべき行動は変わります。判断に迷う段階でご相談いただければ、事実の整理から一緒に進めます。