試算表とは?試算表の種類や見方、作成方法を分かりやすく解説
試算表とは、決算書類の確定作業の前に作成する集計の一覧表です。各取引の仕訳をしている仕訳帳から、すべて記帳されている総勘定元帳へ転記が正確にされているかどうかを確かめることを主な目的としています。この記事では、試算表の種類や見方、作成方法など経理担当者であれば知っておくべき試算表の基礎的な知識について分かりやすく解説していきます。
目次
試算表とは?
試算表とは、決算書類を作成する前に作る一覧集計表です。複式簿記で仕訳され転記された「総勘定元帳」を参考に、勘定科目ごとに分類して集計した一覧表で構成されています。
試算表を作成する目的
試算表を作成することで、今までの仕訳や転記のミス、転記漏れなどを発見することをができます。もし仕訳帳か総勘定元帳のいずれかにミスがあれば、試算表の集計数値は合わなくなります。決算書を作成する前であれば、間違いに早く気づき、訂正することができるため、決算書類を作成する前に試算表を作成します。
試算表は経営の指標になる
試算表は、勘定科目の集計結果を一覧とした決算書類を作成する前のデータなので、試算表から会社の資産や利益を読み取ることができます。決算書は年に1度のみ作成するものです。それに対し試算表は、月に1度のペースで作成されます。つまり、毎月作成する試算表を確認するなら、現在の経営状態をタイムリーに把握できる、ということです。
また、数値が悪い勘定科目がある場合は、早めに対策を打てるというメリットが得られるため、経営の指標として活用することができます。
資金調達にも欠かせない!
資産表は、銀行などの金融機関から融資を受ける際に提出を求められることがあります。なぜなら、毎月作成される試算表は、年に1度作成される決算書よりも、直近の経営状態を把握できる資料となるからです。つまり、資金を貸し付ける金融機関にとっては、融資を受けたい会社の状況を把握するために、試算表は欠かすことができない資料となります。
また、融資を受けたい企業にとっても、直近数ヶ月分の試算表を時系列で見ることにより、悪い勘定科目を見つけることができます。経営状態に課題があればその原因を分析し、経営状態を立て直すことにもつながったり、融資を受ける際にどのような経営プランがあるかを説明したりすることも可能となります。
試算表の3つの種類と作成方法
試算表には、「合計試算表」「残高試算表」「合計残高試算表」の3種類あります。試算表を作成する際、次のルールを念頭に入れておきましょう。それは、以下の2つです。
・残高を記載するときは、借方と貸方のいずれか一方のみに記入する
・合計を記載するときは、借方と貸方それぞれを個別に計算し、両方に記入する
合計試算表
合計試算表とは、総勘定元帳の各勘定科目の「借方の合計」と「貸方の合計」を記入した試算表のことです。仕訳ごとに貸借は一致しているため、総勘定元帳の転記が正確にされていれば、合計試算表の左側の「借方合計」と右側の「貸方合計」、それぞれの「合計」「取引」「繰越」の欄は、必ず一致するはずです。
合計が一致しない場合は、転記ミスや転記漏れが必ずあるはずです。しっかり確認しましょう。合計試算表は、借方合計と貸方合計の確認でき、転記ミスや転記漏れなど発見するのに適していますが、借方合計と貸方合計の全部が記載されているため残高をすぐに確認できないという特徴があります。
残高試算表
残高試算表は、合計試算表とは違い、借方残高と貸方残高の残高がいくらあるかを一目で把握することができます。一般的な残高試算表は、勘定科目を挟んで、左側に「借方残高」、右側に「貸方残高」を記載していきます。勘定科目の借方と貸方の合計の差額残高だけが表示されているため、総勘定元帳の借方合計と貸方合計が一致することはありません。
そのため、転記ミスや転記漏れがあっても気づきにくいというデメリットがあります。残高試算表は、貸借対照表と損益計算書を作成するベースとして使われます。なお、借方合計と貸方合計は、必ず一致します。
合計残高試算表
合計残高試算表は、その名前の通り、合計試算表と残高試算表を一緒にした試算表です。一般的な合計残高試算表は、勘定科目を挟んで右側に借方・左側に貸方となります。左右の内側の合計欄には、「期首残高」「期中仕訳」「決算整理仕訳」の合計を残高欄に記入します。そして、左右の外側の残高欄には、合計欄の借方と貸方の差額を記載します。
合計残高試算表は、合計試算表と残高試算表を組み合わせることで、それぞれのデメリットを補い、合計と残高の両方の総額を把握することができます。一番便利な試算表ですが、作成するのに手間がかかることと、2つの表を1つにまとめているため、表が大きくなってしまうという難点があります。
試算表のチェックポイント!
では続いて、試算表の見るべきポイントについてみていきましょう。試算表で確認すべきポイントは、次の3つです。
・貸借の合計金額に記入・転記ミスはないか?合計金額は一致しているか?
・総勘定元帳の各勘定科目の取引内容、正確に記載されているか?
・資金繰りは順調か?
会計帳簿を正確に作成することができれば、わざわざ試算表を作成する必要はありません。しかし、個人事業主や企業間での取引は、金額や量、頻度が多いため、どんなに注意していても人的ミスが発生します。そこで試算表を作成し、人的ミスを見つけ、正確な決算書を作成するために欠かすことができません。
決算の時期に試算表を作成し、誤差がなく、合計金額が一致していれば、会計期間中の記載は正確にされていたということです。また、決算期以外でも定期的に試算表を作成するなら、事前に経営状態を把握でき、改善すべき課題を見つけることが可能となります。したがって、健全な経営状態へとつながります。
残高試算表のチェックポイント!
残高試算表は、3つの試算表の中でも最も見やすいのが特徴的です。そのため、決算時の精算表を作成するときには、たいてい残高試算表が使われています。ここでは、3つの試算表の中でも最も活用頻度の高い「残高試算表」のチェックポイントについてみていきましょう。
残高科目と損益科目を見分ける「売上」に注目
残高試算表を見る際、まず「残高科目」と「損益科目」をチェックします。では、どのように見ていけばよいのでしょうか?まず中央に記載されている勘定科目の欄を上から順に目で追っていきましょう。すると、真ん中付近に、ポイントとなる「売上」という項目がでてきます。
この売上を含む下の部分は「損益科目」、売上を含まない上の項目は「残高科目」といいます。これらをそれぞれ分けて見ていくことがポイントとなりますので、しっかり押さえておきましょう。
「残高科目」から読み取れること
まず残高試算表の一番上から、真中付近にある「売上」の上までの部分である「残高科目」についてみていきましょう。残高科目とは、会社にどのくらいの財産があるかを把握できる指標です。残高科目の左側(借方残高)の数字は会社の「資産」、残高科目の右側(貸方残高)の数字は会社の「負債」を意味します。
つまり、借方残高=会社の資産、貸方残高=会社の負債、ということです。借方残高になる会社の資産には、現金残高、預金残高、売掛金残高などが記載されます。一方、貸方残高になる会社の負債には、借入残高、買掛金残高などが記載されます。
借方残高と貸方残高を比較し、借方残高合計より貸方残高合計の方が上回っている場合は、会社の負債が資産を上回っている危険な状態となっています。すぐにキャッシュフロー改善策を打つ必要があります。
「損益科目」から読み取れること
では続いて、売り上げを含む下の部分「損益科目」についてみていきましょう。損益科目からは、試算表の期間中に会社がどのくらい利益を得ることができたかを読み取れます。損益科目の右側(貸方残高)の数字は会社の「収益」、損益科目の左側(借方残高)の数字は会社の「費用」を意味します。
つまり、借方残高=会社の収益、貸方残高=会社の費用、ということです。借方残高になる会社の収益には、売上、受取手数料、受取利息などが記載されます。一方、貸方残高になる会社の費用には、仕入れにかかった代金、支払手数料などが該当します。
損益科目も残高科目と同じように、貸方残高合計よりも借方残高合計が上回っている場合は、会社の収益が費用を上回っている赤字状態であることが分かります。経営状態が赤字であっても、手元にキャッシュがあれば倒産することはありません。また、創業期の場合は、キャッシュフローを重視することで倒産を免れることが可能です。
試算表を作成する時期は?
試算表は、必ず作成しなければならないものではありません。1ヶ月に1度、定期的に作成することが理想的ですが、会社によって作成時期はさまざまです。試算表を作成すれば、仕訳、転記、計算などの間違いに早期発見につながるので、きちんと時期を決めて作成しましょう。
会社によっては決算前に1度しか試算表を作成しないところもあります。それとは反対に、月ごとや週ごとに試算表を作成する会社もあります。いずれにせよ、試算表を作成する主な目的は、総勘定元帳の間違いを発見することです。また、試算表から会社の経営状況を把握したり、お金の動きを確認したりすることもできます。
ですから、取引の多さや頻度にもよりますが、こまめに試算表を作成するようにしましょう。毎月の月次試算表をまとめるなら、数ヶ月間を比較し、月々の売上高や利益の変化を把握できる、などのメリットも得られるでしょう。
試算表の作成は会計ソフトがおススメ!
試算表や決算書は、Excelやアナログでも作成することができます。実際、一昔前まではそれしか作成方法がありませんでした。しかし、膨大な時間と手間がかかります。そのため、近年では、作業を効率的に行うために「会計ソフト」の活用が一般的となっています。
会計ソフトには多くの種類が存在していますが、多くの会計ソフトは、試算表や決算書類を自動で作成してくれます。また、会計ソフトによっては、グラフを作成したり、財務状況を分析してくれたりなど、役立つ機能が搭載されています。まだ会計ソフトを利用していないのであれば、この機会に会計ソフトの導入を検討してみるのはどうでしょうか?
まとめ
「合計試算表」「残高試算表」「合計残高試算表」の3つの試算表についてみてきました。試算表は、「総勘定元帳」を参考にしながら、勘定科目ごとに分類して集計した一覧表です。試算表を作成することで、今までの仕訳や転記のミス、転記漏れなどを、決算書類を作成する前に発見することをができます。
定期的に試算表を作成することは、間違いに早く気づき訂正できるだけでなく、経営状態を把握することにも役立つというメリットがあるため、月に1度のペースで作成するのが理想的と言われています。是非、定期的に試算表を作成し、そこから自社の経営状態を把握し、健全な運営を目指しましょう。
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