【税制改正】賃上げ促進税制が変わる!経営者に向けてわかりやすく解説!
優秀な人材を確保したいけれど、どのように「賃上げ促進税制」を活用すれば良いのかわからない…。
このような悩みを、お持ちではありませんか。
賃上げ促進税制は条件が複雑で理解しにくい制度ですが、ポイントを押さえれば経営に役立ちます。
この記事では
- 2024年賃上げ促進税制の変更点や概要
- 賃上げ促進税制で中小企業がおさえるべきポイント
- 賃上げ促進税制を最大限活用する方法
などについて、わかりやすく解説します。
賃上げ促進税制を最大限活用したい経営者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
賃上げ促進税制とは
賃上げ促進税制は、企業の賃上げや雇用拡大、さらには人材育成を目的として創設された制度です。
給料や教育訓練に関わる費用が増加した場合、その増加額の一部を法人税から控除することができます。
つまり、企業としては給料増加などに伴う支出を、法人税の税額控除という形で補うことができるため、結果として、賃上げや人材育成がしやすくなります。
このように、賃上げ促進税制には多くのメリットがある一方で、控除を受けるためには一定の条件を満たす必要があります。そのため、しっかりと制度のポイントを理解することが大切です。
なお、一度上げた賃金を下げるのは容易ではなく、さらには、この制度がいつまで続くかは不明であるため、長期的には経営を圧迫する可能性があることは留意しておいたほうが良いでしょう。
2024年からどう変わる?賃上げ促進税制の変更点
2013年4月にスタートした「所得拡大促進税制」は、2022年に「賃上げ促進税制」に名称が変更されています。ここでは、2024年賃上げ促進税制の概要と改正点を見ていきましょう。
2024年賃上げ促進税制の概要
今回改正された賃上げ促進税制は、2024年4月1日から2027年3月31日までに開始する事業年度が対象です。
中小企業に対する改正点は次項で細かく説明しますが、今回の主な改正点は以下の5点です。
改正前と比較すると、中小企業は賃上げ実施年に赤字になったとしても最大5年間減税が繰り越せるなど、メリットが大きくなっています。
また、措置期間が「3年間」と、比較的長期であるのもポイントです。
さらに、教育支援や子育て支援をすることで控除を上乗せできるなど、本気で人材確保や人材育成を考えている企業にとっては、利用価値の高い制度といえるでしょう。
【中小企業向け】賃上げ促進税制2024年からの改正点
改正による、中小企業向けの変更点は以下のとおりです。
改正前 | 2024年改正後 | ||||
基本控除率 | 給料等の増加割合1.5%以上 | 15% | |||
給料等の増加割合2.5%以上 | 30% | ||||
上乗せ控除 | 教育訓練費 | 教育訓練費用増加割合10%以上 | 10%上乗せ | 教育訓練費費用増加割合5%以上 ※ |
10%上乗せ |
子育て・女性支援 | なし | くるみん以上 もしくは えるぼし二段階目以上 |
5%上乗せ | ||
最大控除額 | 40% | 45% | |||
その他 | 控除繰り越し負荷 | 5年繰り越し可能 |
※ ただし教育訓練費が雇用者給与等支給額の0.05%以上の条件あり
基本的な控除率は改正前と変わらないものの、教育訓練や子育て・女性支援を積極的におこなうことで、さらに控除額を上乗せすることができます。
なお、税額控除額の上限は法人税額等の「20%」です。
上乗せ控除などの適用を受けることで最大45%が控除となりますが、上限を超えた場合、中小企業においてはその超えた部分が繰り越しになる点をおさえておきましょう。
2024年賃上げ促進税制改正|中小企業がおさえるべきポイント3つ
2024年の税制改正で中小企業がおさえておきたいポイントは、主に以下の「3つ」です。
それぞれについて、詳しく説明します。
赤字でも最大5年間減税を繰り越し可能
今回の税制改正で、中小企業にとって最大のポイントとなるのが、赤字でも最大5年間控除を繰り越せることです。
出典:厚生労働省「賃上げ促進税制について」
「繰り越し税額控除をする事業年度について、雇用者給与等支給額※1が前年度より増加している」という条件はありますが、赤字であった場合でも、上記のように控除額を繰り越すことができます。
これにより、赤字企業も、将来への投資として人材投資などがおこないやすくなるでしょう。
※1雇用者給与等支給額・・・国内雇用者に支払った給料などの総額(役員等は含まれない)
子育て両立支援・女性活躍支援で上乗せ措置
今回の改正により、子育て支援および女性活躍支援で、控除額を上乗せすることができるようになりました。
以下のいずれかの認定を受けることで、5%控除がプラスされます。
- くるみん認定
- プラチナくるみん認定
- えるぼし(2段階目以上)認定
- プラチナえるぼし認定
くるみんとは、「子育てサポート企業」として厚生労働大臣が定める基準をクリアした企業に与えられる認定です。
一方、えるぼしとは、「女性活躍推進法に基づいた女性活躍の推進をおこなっている企業」に厚生労働大臣が与える認定になります。
これらは改正前にはなかった制度であるため、控除額を大きくするためにも積極的に認定を受けたいものです。
また、新たに設立された中堅企業枠は、以下のいずれかの認定を受けることで、同じく5%の控除額の上乗せ措置があります。
- プラチナくるみん認定
- えるぼし(3段階目以上)認定
- プラチナえるぼし認定
最大45%の税額控除
2024年の税制改正で、中小企業は最大45%、中堅企業は最大35%※2の税額控除を受けられるようになりました。
中小企業の場合、改正前は最大40%の控除だったことを考えると、賃上げへのインセンティブがかなり上がったといえます。
一方、中堅企業においては、継続雇用者の給与等支給額の増加割合が3%の場合に控除率は10%となり、改正前の15%と比べると目減りしています。
しかし、増加割合を4%以上にしたり、教育支援や子育て・女性支援をおこなったりすることで「最大35%」の控除を受けることが可能です。
これは、改正前の最大控除額30%より大きい控除額であるため、人材確保や人材育成を積極的に検討している企業にとって、今回の改正は追い風となるでしょう。
※2 中小企業とは、青色申告書を提出する中小企業者(資本金1億円以下の法人や農業協同組合等など)もしくは従業員数1,000人以下の個人事業主のことを指します。また、中堅企業とは従業員数2,000人以下の企業(その法人及びその法人との間にその法人による支配関係がある法人の従業員数の合計が1万人を超えるものを除く。)を指します。詳細は、「令和6年度(2024年度)中小企業関係 税制改正について」をご覧ください。
2024年賃上げ促進税制を最大限活用するには
賃上げ促進税制は、費用面での負担を軽減しながら人材確保や人材育成をおこなえる優れた制度です。しかし、賃上げ促進税制を最大限活用するには、いくつかおさえるべきポイントがあります。
ここでは、2024年賃上げ促進税制の恩恵を最大化させるためのポイントを見ていきましょう。
女性活躍・子育て支援でインセンティブ
前述のとおり、既定のくるみん認定やえるぼし認定をクリアすることで「5%」控除の上乗せが可能です。
また、くるみん認定やえるぼし認定をクリアすることで、これらのマークを商品や求人広告に付けることができるため、企業のイメージアップも期待できます。
これは、企業のブランド価値や売上に貢献する可能性もありますし、優秀な人材の確保という点で大いに役立つでしょう。
教育訓練費で控除率上乗せ
教育訓練費用を「前年度比で5%以上」増やすことで、控除額を最大10%上乗せすることができます。
優秀な人材の育成は、控除額を最大化させる条件である「黒字化」を図るためにも大切です。適切な投資をおこない、優秀な人材の確保や控除率アップに繋げていきましょう。
なお、改正により、教育訓練費が「雇用者給与等支給額の0.05%以上」という条件が加わったので注意が必要です。
「黒字」で税負担軽減を最大化
賃上げ促進税制で税負担軽減を最大化させるためには、黒字であることが必須条件です。
また、給与に対する助成金は、税額控除と両立ができません。たとえば、雇用安定助成金などは税控除の判定には影響ないものの、税額控除の計算上は控除することになります。
そのため、トータルで考えたときに、どの助成金などを利用していくのが有利となるかを見極める必要があります。
まとめ
2024年に改正された賃上げ促進税制は、中小企業に有利となる改正です。費用面での負担を軽減しつつ、優秀な人材確保・人材育成をするために大いに活用したいものです。
一方で、制度を理解しないと控除が少なくなったり、控除が受けられなくなったりする可能性がありますので、本記事で解説したポイントを踏まえて上手に活用していきましょう。
なお、この記事は令和5年12月22日に閣議決定された「令和6年度税制改正の大綱」に基づき作成しています。通常、税制改正は3月に国会の承認を経て4月1日に施行されるため、詳細については変更となる可能性がある点にご留意ください。
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