厚生年金の加入条件とは?加入対象者や加入義務、メリット、手続きまで徹底網羅! | 税理士コンシェルジュ

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厚生年金の加入条件とは?加入対象者や加入義務、メリット、手続きまで徹底網羅!

2020年9月14日
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厚生年金保険は、一定条件を満たしている事業者や労働者に加入が義務付けられています。2016年(平成28年)10月から、厚生年金保険の対象範囲が拡大されたため、加入義務が適用される企業や労働者が増えています。

この記事では、厚生年金保険の加入条件や加入対象範囲、加入義務、加入手続きなど厚生年金保険について徹底網羅していきます。

厚生年金保険とは?

厚生年金とは、社会保険のひとつで、国が定めた公的年金制度のことです。原則、会社に勤めている従業員や公務員などを対象としており、国民年金(基礎年金)に上乗せする形で保障されるため、合わせて加入します。

パートやアルバイトなどの雇用形態だとしても、一定の条件を満たしているなら厚生年金保険に加入することができます。後述しますが、厚生年金は事業所単位で加入するものであり、その条件は国の法令で決められています。また、厚生年金保険料は、事業所と従業員が折半で分担します。

厚生年金の加入条件とは?

厚生年金保険の加入条件は、事業所と労働者にそれぞれ加入条件が設けられています。条件を満たしている事業所と労働者には、厚生年金の加入が義務となります。

事業所の加入条件

一定の条件を満たしている事業所は、「強制適用事業所」と呼ばれており、厚生年金保険に加入することが義務付けられています。したがって、加入対象事業所であるにも関わらず、加入義務を怠った場合は、ペナルティが発生します。

一方、強制適用事業所に該当しない事業所でも、従業員の半数以上が加入に同意した場合は、「任意適用事業所」として厚生年金保険に加入することができます。

【強制適用事業所】
強制事業所に該当する場合は、厚生年金保険に加入することが義務となります。一定の条件とは、次のも2つです。

①法人事務所
事業所の中でも、商業・法人登記をしている事業所は、従業員の人数に関係なく、厚生年金保険に加入しなければいけません。つまり、経営者のみで従業員を雇用していない場合でも、法人事業所であるなら厚生年金に加入する義務が発生します。

②常時5人以上の従業員がいる個人事業所
個人事業所だとしても、5人以上の従業員を常時雇用している場合は、一部業種を除き、厚生年金保険に加入しなければいけません。

なお、農業や漁業などの農林水産業、弁護士などの法務業、クリーニング業やビル清掃業などのサービス業の一部、宗教業などの個人事業所の場合は、従業員の数が5人以上だとしても強制適用事業所として扱われません。

【任意適用事業所】
強制適用事業所の加入条件を満たしていない事業所でも、従業員の半数以上が加入に同意した場合は、任意適用事業所として厚生年金保険に加入することができます。ただし、事業所単位で加入申請をするため、同意しなかった従業員も加入対象者となります。

つまり、従業員すべてに厚生年金保険の加入義務が発生します。なお、任意事業所として加入申請する場合は、事業所を管轄する年金事務所の窓口、郵送、電子のいずれかで申請手続きをする必要があります。

労働者の加入条件

では続いて、従業員の観点からみた被保険者の加入条件について確認していきましょう。

【加入義務のある人】
厚生年金に加入している事業所で雇用されている従業員の中でも、一定の条件が当てはまる方は厚生年金の加入義務が発生します。その条件とは、国籍や性別、年金受給の有無を問わず、①70歳未満、②常時雇用されている、すべての従業員が対象となります。

ただし、70歳以上であったとしても、加入期間の関係で年金が支給されていない場合は、不足分を補うことを目的とした厚生年金の加入が認められています。

【加入条件に該当しない人】
強制適用事業所で働いているとしても、次の条件に当てはまる方は、厚生年金の加入義務はありません。

・臨時目的の日雇い労働者。
・雇用契約が2ヶ月以内の労働者。
・季節的事業(4ヶ月以内)、もしくは臨時事業所(6ヶ月以内)で雇用される労働者。
・事業所の所在地が一定していない事業所の労働者。

【パートやアルバイトの場合】
パートやアルバイト、また契約社員として雇用されている従業員でも、次の2つの条件のいずれかが当てはまる場合は、厚生年金に加入する必要があります。

①1週間の所定労働時間、1ヶ月の所定労働日数が、正規従業員の4分の3以上である。
②以下の5つの条件を満たす労働者
1、週20時間以上の労働時間である
2、年収106万以上である(1ヶ月当たりの賃金が88,000円以上)
3、1年以上の雇用期間が見込まれる(2021年の年金制度改正法で、1年以上から2ヶ月超と変更される予定)
4、従業員501人以上の勤務先で働いている(2022年には101人規模、2024年には51人規模へと変更される予定)
5、学生でないこと

厚生年金保険の加入手続き方法とは?

厚生年金保険の加入手続きは、原則、事業所が行います。

提出書類

厚生年金保険の加入手続きの際には、次の書類の提出が必要となります。

・新規適用届
事業所が新たに厚生年金保険へ加入する場合、必要となる書類です。

・被保険者資格取得届
新たに加入対象となる従業員を雇用した場合、必要となる書類です。なお、新たに雇用した従業員に扶養家族がいる場合は、「被扶養者(異動)届」も一緒に提出する必要があります。

これらの書類は、事実発生から5日以内に管轄地区の年金事務所へ提出しなければいけません。ですから、事業所側は、スムーズに手続きが行えるよう準備しておきましょう。

添付書類

「厚生年金保険新規適用届」を提出する際には、それぞれの場合に応じた添付書類が必要となっています。

【法人事業所の場合】
法人(商業)登記謄本(コピー不可)

【事業主が国・地方公共団体もしくは法人である場合】
法人番号指定通知書等のコピー

【強制適用となる個人事業所の場合】
事業主の世帯全員の住民票(コピー不可・個人番号が記載されていないもの)
事業所の賃貸契約書のコピー(個人事業主の所在地と登記上の所在地が異なる場合)

なお、これらの書類は、直近の状態を確認するために使われます。したがって、提出日から遡って90日以内に発行されたものを提出するよう求めらています。

提出方法

書類の提出方法には、年金事務所の窓口、郵送、電子申請のいずれかで行えます。提出先は、事業所の所在地を管轄する年金事務所、もしくは都道府県ごとの事務センターとなっています。

従業員が退職した場合

厚生年金保険に加入していた従業員が退職した場合は、事業所側で「被保険者資格喪失届」を作成し、年金事務所へ提出します。提出方法は申請手続き同様、窓口、郵送、電子申請のいずれかで行えます。

厚生年金の保険料について

事業所と被保険者の双方で負担

厚生年金の保険料は、給料の18.30%が保険料額となります。算出した保険料額は、事業所と被保険者(従業員)の双方で折半して支払います。つまり、それぞれが9.15%の保険料を支払うことになります。

そのため、資本金が少ない中小企業は、厚生年金の保険料負担が事業の運営を難しくさせる場合もあります。ですから、任意加入の場合は、今後の事業の資金や財務状況も考慮した上で慎重に決定することができるでしょう。

原則70歳まで支払う

厚生年金保険料は、原則として70歳まで支払うことが定められています。ただし、会社員や公務員などが60歳や65歳で定年を迎え、無職となった場合は、厚生年金の加入対象者の対象外となります。

一方、再雇用制度などを適用させ、定年退職後も継続して働く場合は、70歳まで厚生年金に加入することが義務となるため、保険料を70歳まで支払い続ける必要があります。

適用事業所が厚生年金保険に加入しない場合は罰則の対象に!

厚生年金保険の適用事業所が、厚生年金保険に加入しない場合は、厚生年金保険法により罰則されます。厚生年金保険法第102条には、事業主が正当な理由もなく厚生年金に加入しなかった場合、「6ヶ月以下の懲役、もしくは50万円以下の罰金」がペナルティとして科せられると定められています。

厚生年金加入の強制適用事業所であるにもかかわらず、加入手続きを怠るなら、年金機構から「厚生年金加入に関する加入勧奨状」や「来所通知書」などが送付されます。内容を確認し、速やかに厚生年金加入手続きをする必要があります。

また、近年、厚生年金保険料を納付しない事業主が増えている、と報告されています。その多くは、厚生年金適用対象外の条件として定めている「雇用契約が2ヶ月以内の労働者」の解釈を間違えて適用している、というケースです。

正規雇用者であるのに、最初の2ヶ月を試用期間として設定して非正規雇用として扱ったり、意図的に2ヶ月雇用を何度も繰り返したり・・する行為が見られています。このような故意的な行動をとり、厚生年金保険料を納めることを退ける場合は、保険料を遡って徴収される可能性があります。

厚生年金保険へ加入するメリットとは?

では、厚生年金保険へ加入することには、事業所にとって、また従業員にとってどのようなメリットがあるのでしょうか?

事業所側が得られるメリット

メリット1:従業員が安心して働ける環境を提供できる
厚生年金保険は加入することで、従業員が安心して働ける労働環境を提供することができます。その結果、離職の防止や人材採用の活性化へとつながります。

メリット2:節税効果
企業側が支払う厚生年金保険料は、経費として計上することが認められています。そのため、節税効果を期待できます。

メリット3:社会的信用による事業拡大効果
厚生年金保険に加入することは、企業価値や従業員のモチベーションアップ、社会的信用などによる事業拡大にもつながります。それは短期によるものではなく、長期的なメリットとして続きます。

従業員側が得られるメリット

メリット1:保険料は事業所と折半負担
厚生年金保険料は、事業所と被保険者の双方で負担することになっています。つまり、従業員は保険料の面で優遇されています。老後に支給される年金額も増えることが一番のメリットと言えるでしょう。

メリット2:国民年金よりも老後に受け取れる年金額が多い
厚生年金は老後に受け取る年金というイメージがありますが、「老齢年金」にさらに2つの年金がプラスされたものを厚生年金といいます。それは被保険者が亡くなった際に配偶者や扶養親族に支払われる「遺族年金」と、被保険者が障害を負ったときに支払われる「障害年金」です。

・老齢年金
厚生年金の場合、老齢年金は65歳になったときに、国民年金の老齢年金に上乗せして支給されます。

・遺族年金
遺族年金は、厚生年金の被保険者が亡くなったときに、遺族に支払われる年金です。年金事務所に「年金受給者死亡届(報告書)」を提出し、手続きをします。

・障害年金
障害年金は、ケガや病気などで生活に支障がでたときに支給される年金です。障害年金は、20歳以上の年金加入者であれが受け取ることが可能です。なお、障害年金を受け取れる時期は、医師の診断書をもとに決定された障害認定日が基準となり支給されます。

また、障害基礎年金の1級もしくは2級に該当する場合は、障害厚生年金に障害基礎年金が上乗せされて支給されることになります。

メリット3:傷病手当金や出産手当金などを受給できる
厚生年金の被保険者になるなら、健康保険や雇用保険などの社会保険全般に加入するということになります。それにより傷病手当や出産手当金、育児休業給付金などを受給できます。

厚生年金に加入するデメリットとは?

では、厚生年金に加入するデメリットとは何でしょうか?多くのメリットが得られる厚生年金ですが、給与の手取り金額が減少する、ことが挙げられます。人それぞれ状況は異なりますが、厚生年金に加入義務の対象者に該当するなら、加入義務が生じるため、将来のための貯金として保険料を支払う必要があるでしょう。また、厚生年金の支給額は、国民年金の加入期間が関係してくるため、計算方法が複雑というデメリットもあります。

まとめ

厚生年金保険は、一定条件を満たしている事業者や労働者には、加入することが義務付けられています。法改正も随時行われており、加入対象者の範囲も拡大しています。加入対象でもあるにもかかわらず、不加入の場合は、法にしたがって罰則が科せられることもあります。ですから、常に最新の法に精通し、申請漏れや申請手続きが遅れないように注意しましょう。


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