確定申告の場所ってどこ?住所変更・海外居住期間中など確定申告場所の基礎知識
個人事業主やフリーランス、起業したばかりの自営業の中には、住民票の住所と事業所の所在地が異なる方もいることでしょう。引っ越したばかりで、住民票の住所と現住所が異なる方もいるかもしれません。
では、確定申告はどこですればよいのでしょうか?この記事では、いくつかの実例を交えながら、確定申告をする場所の考え方について解説していきます。
目次
確定申告場所に関する所得税法の基本的な考え方
原則:1月1日に住民票のある管轄地区の税務署へ
所得税法では、確定申告を行う場所に関して、1月1日に住民票のある自治体内の税務署で行うものと定めています。住民票は、実際に住んでいる自治体にあるため、「勤務先の近くだから・・」とか「駅から近くて交通の便がいいから・・」などの理由で、確定申告を行う税務署を選ぶことはできません。なお、住民票の住所の管轄税務署は、国税庁の公式サイトから検索すると容易に探せます。
源泉徴収票の住所と現住所が違う場合:現住所の管轄地区の税務署へ
源泉徴収を受け取っている方の中で、控除申請や副業収入などの申告をするために確定申告する場合、原則として、源泉徴収票に記載されている住所地は、住民票のある現在の居住地が記載されているはずです。
しかし、1月1日から確定申告期限日の間に、引っ越しなどをして源泉徴収票と現住所が異なるケースが発生することもあります。そのような場合は、現在の住所の管轄地区の税務署で確定申告を行います。
住民票と異なる住所で申告できる例外ケース
前述したように、確定申告場所は原則、住民票のある自治体の管轄地区の税務署と定められていますが、「所得税法上の特例」として、住所地以外の土地を管轄している税務署に確定申告書を提出できる例外もあります。
具体的な例として、個人事業主で自分の住んでいる自宅とは別に、都道府県や市区内など自宅とは異なる住所に事業所や店舗を持っている場合などが挙げられます。このような例に該当する場合は、事前に「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」を提出しておくと、住所地以外の税務署でも確定申告を行うことができます。
届出書は、本来の納税地を管轄する税務署と、変更先である納税地を管轄する税務署の両方に提出する必要があります。なお、提出時期は特に定められておらず、手数料が発生することもありません。
「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」の概要
・対象者
「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」は、納税地を変更する方が、手続きの対象となっています。
・提出期間
提出期間に関して定められていることは特にありません。この届出書を提出した日以降に納税地が変更となります。
・届出書の入手方法
届出書は、最寄りの税務署の窓口で直接入手することができます。また、国税庁のホームページからPDFファイルをダウンロードし、印刷したものを使用することも可能です。さらに会計ソフトを利用し、電子申告をするという方法もあります。
・税務署の開庁時間
税務署は、月曜日~金曜日(祝日除く)の、8:30~17:00まで営業しています。なお、税務署には「時間外収受箱」と呼ばれる書類専用のポストが必ず設置されており、閉庁時でも書類類を投函し提出することができます。
・記入ポイント
まず届出書の表題・冒頭の「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」の不要な文言「・消費税」を二重線で削除します。その後、基本情報を記載します。1の「納税地」には、変更前の住所、届け出先には変更前の管轄税務署を記載します。
続いて2の「居所又は事業所等の所在地を・・」の項目は、住所地から居所地もしくは住所・居所から事業所に納税地を変更する場合は、「ことを便宜とする」に「レ」点を入れ、内容を具体的に記載します。居所・事業所から住所地へ納税地を変更する場合は、「必要がなくなった」に「レ」点を入れ、内容を具体的に記載します。
確定申告場所はどこ?申告先に迷いがちなケース
確定申告場所を迷ってしまうケースはいくつかありますが、しっかりとルールが設けられています。該当する方はもちろんのこと、自分には関係ないと思っている方でも確定申告の基礎知識として、覚えておくことができるでしょう。ここでは4つのケースをご紹介します。ではさっそくみていきましょう。
ケース①国内で転居した場合の確定申告場所は?
確定申告の手続きは、毎年2月16日から3月15日までの1ヶ月間と定められています。(令和2年度はコロナウイルス感染症の影響により、確定申告期間が延長されました)確定申告書は、前述したように、住民票のある自治体を所轄する税務署に対して提出するものです。
例えば、ある年の10月1日に○○市から△△市へ引っ越しをした場合は、翌年の確定申告は△△市を所轄する税務署が確定申告場所となります。
ケース②海外に居住している期間中の確定申告場所は?
海外に住んでいても、日本国内で一定の所得がある場合は、確定申告が必要となります。海外転勤などが理由の海外在住者の場合、日本国内に事業に関わる事業所があるなら、その事業所の所在地を所轄する税務署に確定申告を行います。事業所がない場合は、海外に居住する前に納税地としていた住所を所轄する税務署が確定申告場所となります。
なお、海外に居住しているゆえ、本人が確定申告をできない場合は、代理となる納税管理人が本人の代わりに確定申告を行います。そのためには、納税管理人の届出書を事前に提出しておく必要があります。
ケース③亡くなった人の確定申告は?
所得税の申告をしていた納税者が確定申告前に亡くなってしまった場合は、相続人が確定申告を行う「準確定申告」を行うことになります。亡くなった方の死亡時の居住地が納税地、つまり確定申告場所になります。
所得の計算は、通常、1月1日から12月31日までですが、年度の途中で亡くなった場合は、1月1日から亡くなった日までの所得を計算します。亡くなった方の確定申告は、通常の確定申告期間(2月16日~3月15日)ではなく、相続開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内に確定申告をするよう定められています。
また、準確定申告の場合は、通常の確定申告書類に加えて、相続人の氏名や住所などが記載した確定申告書の付表も一緒に提出する必要があります。還付金を受け取る場合は、「委任状」の提出も必要となります。
ケース④国内に住所も居住もない場合は?
国内に住所も居所のないとしても、日本国内に勤務する事業所がある場合は、その事業所の所在地を所轄する税務署が確定申告場所になります。勤務する事業所もない場合は、「麹町税務署」が管轄税務署となります。
e-Taxや郵送でも確定申告ができる!
確定申告には、申告会場の窓口に持参するたけでなく、管轄地区の税務署に郵送したり、国税局の納税サイト「e-tax」で申告や納税をすることも可能です。
確定申告会場の窓口に直接提出する方法
毎年2月16日から3月15日までの確定申告期間は、税務署の通常窓口に加えて、臨時の確定申告会場が設置されます。税務署敷地内のテントや市町村の役場、図書館、公民館、商工会議所などが挙げられます。臨時の確定申告会場は、各自治体によって設置している会場や期間は異なりますので、各自治体に問い合わせることをおすすめします。
確定申告会場はいつも混んでいますが、提出時に税務署員が必要書類を確認してくれたり、記載事項をチェックしたりしてくれるので、確定申告初心者にはおすすめの提出方法となっています。
郵送で提出する方法
確定申告は、郵送でも提出することが可能です。封筒の消印が、確定申告期限最終日よりも前の日付であれば、期限内に提出したとみなされます。確定申告の期限は、原則、土日が重ならなければ、3月15日です。つまり、3月15日の消印が押されていれば、期限内に提出したことになります。
3月16日以降の消印、つまり提出期限を過ぎた消印になってしまうと、ペナルティが発生しますので、余裕をもって郵送するようにしましょう。また、郵送の方法は、「郵便物(第一種郵便物)」、もしく「信書便物」として送付します。確定申告書類はA4サイズなので、角形2号の封筒であれば、書類を折らないで郵送することが可能です。
切手を貼った返信用封筒と複写した確定申告書を一緒に同封すると、受領印を押した確定申告書を返送してくれます。受領印を押した確定申告書は、住宅ローンなどを組む際などに必要となることがありますので、手元に保管しておくと安心でしょう。
e-Taxで電子申告する方法
近年、自宅のパソコンやスマートフォンを使ってインターネット上で確定申告を完結させる電子申告「e-Tax」の利用が推奨されています。e-Taxの電子申告は、自宅から好きなタイミングで利用することができる、というメリットがあります。事前の準備が必要ですが、一度e-Taxで申告をすると基本データが残るため、翌年からの申告は容易に行うことができます。
手書きの確定申告では添付が必須だった源泉徴収票や各種控除の証明書などの添付書類の提出を省略できるのもメリットと言えます。なお、e-Taxで申告をする場合は、「マイナンバーカード」と「ICカードリーダーライター」を準備する必要があります。ではここで、e-Tax申告の手順を簡単にご紹介しましょう。
ステップ1:住民票のある役場で「電子証明書」を入手する
ステップ2:ICカードリーダーライターと購入する
ステップ3:電子証明書を使用するために必要なソフトをパソコンにインストールする
ステップ4:e-Taxの「開始届出書」を開始届作成コーナーで作成する
なお、e-Taxを利用して確定申告データを送信する際にも、提出先税務署を入力する必要があります。ステップ4の「開始届出書」には、納税地と提出先税務署を入力する欄があります。開始届作成コーナーでは、郵便番号を入力すれば、住所と提出先の管轄地区の税務署が自動で入力されるようになっています。
参照:e-Tax国税電子申告・納税システム「作成・送信する開始(変更等)届出書の選択」
まとめ
・確定申告場所は、所得税法で、確定申告をする人の住民票がある自治体を管轄している税務署で行うことと定められている。
・確定申告期間中の申告場所は、税務署だけでなく、役場や公民館、ショッピングモールなどのイベント会場などが確定申告提出場所になる自治体もある。
・住民票のある住所以外に、居所や事業所を納税地とすることができる。その際には、「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」を提出する必要がある。
・確定申告書は、管轄地区の税務署に提出する方法、郵送による提出、e-Taxを利用する電子申告での提出方法の3つの方法から選択できる。
・確定申告初心者の方には、税務署員がその場で申告書類の記入をチェックしたり、添付書類を確認してくれたりする、窓口に直接提出する方法がおススメ。
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